グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第88話:見ちゃイヤン。見られちゃイヤン。
(グランバニア城:プライベートエリア・洗濯室)
ジョディーSIDE
あぁビアンカ様……もう我慢できません。
何で今日はあんなに色っぽかったのですか?
何時もは洗濯物がカゴに入って置いてあるだけなのに、今日に限って色っぽいビアンカ様から手渡されるなんて!
イケナイと思いつつ、私はビアンカ様のお部屋から回収してきた洗濯物の中から、色っぽいパンツを取り出し頬ずりをしてしまう。
あぁこれがビアンカ様の香り……なんて素晴らしいのでしょうか!
私は我慢できなくなり、右手が自らの下着の中へと移動し始める……と、その時、
「ナン?」
「え!?」「あっ!!」
突如、洗濯室の出入り口から猫の鳴き声が聞こえ慌てて振り向いた。
するとそこには、扉の隙間から入り込んできたベビーパンサーが1匹と、その隙間を作ってこちらを覗いているウルフ宰相閣下が1人居られました。
「……………」
「……………」
お互い視線をズラせず固まる二人。
「ナ~ン?」
しかし、そんな事を気にしないベビーパンサーが、可愛い声で鳴いている。
み、見られた!? い、何時から……ど、何処から!??
「え~と……ご、ごめん。服を汚しちゃったから、洗濯の追加お願い」
「あ……は、はい」
先に動いたのはウルフ宰相閣下……
今度は目を合わせる事なく入室すると、未洗いの洗濯物が入ってるカゴの中へ、自身が持ってきた洗濯物を入れて踵を返す。
何も無かった事にしようとしてる? 目が合ったのに?? ドン引きしてたのに???
「ま、待って下さい!」
「あ……いや……せ、洗濯? の邪魔しちゃ悪いから……」
何で疑問系!? 絶対見てただろお前!
「待て待て待て待て~~~!!!」
私は慌ててウルフ宰相の前に回り込み、唯一の出口を塞ぐ。
このまま帰す訳にはいかない。
「ちょ、何スかぁ……?」
「「何スか」じゃねーよ! お前見てただろ!? 私の恥ずかしい姿を見てたんだろ!?」
「見てねぇッスよぉ~……パンツくんくんしながらオナってる姿なんてぇ~(笑)」
「見てんじゃねーかよ! ってか未だオナってねーし! 未遂だし!!」
「「未遂」って……オナるのがだろ。ヤバイのは完遂中だったじゃん(笑)」
「やっぱ見てたじゃねーか!」
ヤバい……選りに選って一番見られたくない奴に見られるなんて。
この野郎ニヤニヤしながら私と目を合わせようとしない。
言い触らす気だ……私の痴態を、そして私がレズビアンだって事を!
だ、黙らせないと……私の性癖の事は、秘密にして貰わないと!
「お、お願い……言わないで。誰にも私がレズビアンだって事は言わないで!」
「はぁ? いや、その事は今更言う必要ねーし。王家の皆はアンタがレズビアンだって知ってるし」
あ゛? 何言ってんだコイツ?
「お前何言ってんの? 私は今までレズである事を隠して生きてきたんだぞ!」
「だろうね。でも上司のユニさんには隠せてなかったぜ。アンタを上級メイドにする上で必要になる『リュカさんに口説かれない』って項目はレズなんで問題なしって俺達に教えてくれたのは彼女なんだぜ」
「う、嘘でしょ!?」
そんな訳ない! だって私……ずっと隠してきたんだから!
「嘘じゃねーよ。ユニさんは凄いんだぞぅ」
凄いって……何で知ってるのよ!?
「まぁ……そんな凄いユニさんでも、恋慕する相手のことまでは読み違えちゃうんだね。ユニさん、お前がビアンカさんに気があるって読んでたけど、まさかスノウさんに気があったとは……流石に判らなかったみたいだ」
「はぁ? 何言ってんだアンタ? 私はビアンカ様をお慕い申し上げているわよ!」
何でココでスノウ様の名前が出てくる?
……………ってか、マジでバレバレだったの!?
「「何言ってんだ」はこっちの台詞だ。お前、スノウさんのパンツに顔埋めてオナってたじゃん! 今先刻オナってたじゃん、スノウさんのパンツで!!」
「アホかアンタは! 私はビアンカ様の寝室から回収してきた洗濯物を見てムラムラしちゃったんだよ! スノウ様は関係ないだろ……ってかオナってねーし!」
「アホはお前だ。ビアンカさんの部屋って言うけど、正式にはリュカさんの寝室だからね。奥方のビアンカ様も使用してるリュカさんの寝室だから! だからリュカさんの愛人連中だって使用することがあるんだよ。解ってる?」
「うっ……た、確か。で、でも……このパンツがスノウ様の物だって言う証拠にはならないでしょ! 何でアンタがスノウ様のパンツだと言い切れてるのよ!?」
「だって……そのパンツ、俺が嫌がらせでプレゼントしたパンツだもん。付き合ってる女の母親にパンツ送って、『折角プレゼントしたんだから穿いてるとこを見せてよ』ってセクハラしたら、恥ずかしげもなく見せ付けてきたパンツだもの! 土下座して謝ったことは忘れないね」
「マ、マジっすか……? ってか、お前何やってんだアホ!」
「アホはお前だアホ! ビアンカさんのパンツだと思って頬摺りしてたんだろ! 凄ーアホ(笑)」
そ、そうだった……
「あ……いや、別にスノウ様だって美しくて好みだし……も、問題は無いわよ!」
「なるほど。では問題無くなったって事で俺は戻るね。じゃぁ……」
爽やかに納得した表情を見せて洗濯室から立ち去ろうとするウルフ宰相閣下……
「いや待って!! 問題無く無いわよ……もう私がレズだって事がバレてるのなら、それはそれで良い……本当は良くないけど取り敢えずは良い。問題なのはレズであろうと、こんな事をしてたって現実なのよ! 誰にも言わないでよ!」
「嫌だよ、言うよ」
「何でだ!?」
「だって超面白ーじゃん。好きな相手のパンツだと思ってたけど、実は違ったって(笑)」
「馬鹿か笑い事じゃないって言ってんだよ!」
「それにこんな面白いネタを黙っておいてやる義理は、お前に対して無い! 普段から異様に俺を敵視してるお前に対して微塵も無い!」
うぐっ……何時も嫌ってるのが、こんな所で面倒を引き起こすとは……
「て、敵視してる訳じゃないのよ。本当よ♥ ほ、ほらぁ……前任のマオ先輩が、アンタと付き合ってたからクビになった訳でしょ……だ、だから同じ轍は踏まないようにと注意してただけなのよ。本当よ♥」
「今更媚び売ったって遅ーし。それにマオさんは俺の愛人じゃねーし。それ根も葉もない噂だし!」
「根も葉もない訳ないでしょ! だって皆見てるのよ……送別会でアンタが登場した途端、あのクールなマオ先輩が顔をおもいっきり顰めたの!」
「俺の事を嫌ってたからだろ、顔を顰めたのは……何でそれが愛人説に繋がるんだよ!」
「だから愛人として付き合ってたけど、マオ先輩が結婚話を持ちかけちゃって、結婚したくないアンタは権力を使ってマオ先輩を国外追放したんでしょ! そりゃ顔を顰めるわよ……アンタの姿を見れば」
「ふざけんじゃねーよ。仮に俺が権力を使ってマオさんを追い出したとして、超フェミニストなリュカさんが、そんな酷いことを許すと思ってるの? 俺より権力を持ってるリュカさんが絶対に止めるよね!? そんな非道を行おうとすれば、絶対に止めるよね!」
……い、言われてみればその通りだわ。
コイツは権力を持ってるけど、お優しいリュカ陛下には遠く及ばない訳だし、陛下が黙認するとも思えない。
え? じゃぁ何でマオ先輩はコイツの姿を見て顔を顰めたの?
「マオさん……オジロン閣下の愛人だったんだよね」
「え……嘘ぉ!?」
そんな噂聞いたことないわよ。
「本当だよ……王家のスキャンダルだろ、これって。だから当人等は勿論、周囲の連中も口外しないで居たんだよね、ず~っと。だから一般のメイドだったお前等は知らないことだったんだよ」
よ、選りに選ってマオ先輩が、あんな禿爺の愛人~? 考えただけでも吐き気がするわ!
「でもさぁ……マオさんのご家族が体調を壊されて、彼女が看病の為に帰らなければならなくなったワケじゃん。そんな退職&帰国の報告を王家の面々が勢揃いしてる場所でしたんだけど、俺さぁ……その場で言っちゃったんだよ(笑)」
「な、何……言ったのよ!?」
「あのね『病気の家族の面倒も大切だけど、愛人のジジイの下の世話も大切じゃね? 如何するのそのジジイは? もう愛人のなり手は居ないぜ』って(笑)」
さ、サイテー!!
「もう大ブーイングだったね。室内は大ブーイングでしたよ(笑)」
「あ、当たり前だ馬鹿!」
何でそんな事言ってんだコイツ?
「折角今まで愛人関係を秘密にしてやってたのに、俺等の苦労も顧みず勝手に帰国するってムカついたんだよね。だから言ったの……あんな事(笑)」
「本当馬鹿なのねアンタ!」
「そだね……馬鹿だねぇ俺。そんな馬鹿は早々に退散した方が良いよね。じゃ、そういう事で!」
珍しく自分を馬鹿だと認めると、爽やかに手を振って立ち去ろうとする。
……………はっ! 逃がす訳にはいかないわ!
「だから待ってって! 言わないって約束してよ……先刻見たことは誰にも言わないって誓ってよ!!」
「だから嫌だって言ってんの」
く、くそぅ……ど、如何すれば……
「わ、分かったわ……」
如何にも出来なくなった私は、ウルフ宰相の右手を掴んで……
「なる……アンタの愛人になるわ」
と、彼の手を胸に押し当てて宣言した。
「俺が何時、愛人になれって言った!?」
しかしウルフ宰相は胸に押し当てられた手を振り払うと、先程までのニヤ付き顔を一変させて拒絶の意思を吐き捨てた。
「だ、大丈夫よ……結婚を迫ったりしないし、誰にも秘密で愛人に……いえ、愛玩性ペットになるわ」
「ぶっ飛ばすぞ、この馬鹿女! 俺がその気になれば女なんて選り取り見取り! 弱みにつけ込んでレイプするなんて俺の趣味じゃねーんだよ!」
「べ、別に性的な事柄だけじゃなくって……何でも言うことを聞くって事よ」
「本物の馬鹿だなお前。俺はお前の上司なの! 大抵の事柄は命令できるし、お前に拒否することは難しいの! お前が心身を費やして俺に奉仕して満足させることなんて何も無いの! つまり、お前は俺との取引材料を持ち合わせてないって事なんだよ! それなのに『何でもする』とか言われても、何にもねーんだよ!」
「ふざけるな。私だって結構な美女なんだぞ! しかも処女。今まで男とキスもしたことない! こんな良い取引条件なんてないだろ!」
「だ~か~らぁ~……そんな女は町中探せば捨てるほど居るんだよ。そして俺ほどの男なら、ちょっと口説けば落とせる女ばかりなんだよ! 何より今現在付き合ってる女だけで手一杯だし!」
「ど、如何してもダメ? 如何しても言っちゃう?」
「可愛く縋ってもダメ。絶対に言う。俺、リュカさんを尊敬してるんだもん。そんなリュカさんに無意味な……俺的に無意味な秘密を持ちたくない。だから言う」
「ビアンカ様に知られたら、絶対私嫌われちゃうわ!」
「……大丈夫だよ。ビアンカさんはそんなに心の狭い女性じゃないよ。ドン引きするくらいで済むよ」
ドン引きくらいで済むかぁ~……って、
「ドン引かれたく無いからお願いしてるんでしょ!」
「そんな事言われてもなぁ……あ、それ如何した?」
何とか言い触らされないよう懇願してると、突如洗濯室の奥に何かを見つけたウルフ宰相閣下……
「な、何!?」
思わず私も彼が見詰める先へと視線を移す。
……だが何も無い。
「おい、何だって……あれ?」
何も見付けられなかった私は、視線をウルフ宰相閣下に戻して文句を言おうとしたが、そこには誰も居なかった。
に、逃げられた!
慌てて扉を開けて周囲を見渡すが、既に奴は逃げ去っており誰も廊下に居なかった。
ど、どうしよう……アイツ本当に言い触らすつもりだわ!
ジョディーSIDE END
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