グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第89話:職業選択の自由アハハ~ン♫
前書き
サブタイトル……懐かしいと思った方。
仲良くしましょうね。
何が「アハハ~ン♫」なの?
と思った方。
若いッスね。
(グランバニア城:プライベートエリア)
ジョディーSIDE
憎き宰相の服を中庭に乾しながら、私は絶望感に苛まれる。
あの宰相は絶対に私の痴態を皆様に報告してるはず……
もう明日から……いや今日の午後から、私は人々に後ろ指指されながら生きて行くことになるだろう。
本心を言えば、宰相の服をビリビリに破いてやりたいのだけれど、そんな事をすればメイドとしての職も失うことになるので、精一杯気持ちを抑え込んで我慢してます。
そんな最悪な精神状態の中、とある人物が洗濯物干し中の私に近づいてきた。
「やぁジョディー……聞いたよウルフから(笑) ビアンカのパンツと間違えちゃったんだって?」
「へ、陛下!? そ、それは……あの……ち、違うんですよ……わ、私はですね……」
やっぱりあの宰相言いやがった! そして早速陛下が私の事を咎めに来たわ……
「大丈夫だよ言い訳しなくて。君が同性愛者だって事は知ってたし、ビアンカに気があることも感付いてた。まぁパンツ使ってのコッソリ○ナニーくらいは、見逃すつもりだったからね……ただ今回は、相手を間違えてのオ○ニーミスってのが面白かったけどね(笑)」
「………………」
もう恥ずかしくて顔も上げられないわ……
陛下が許して下さっても、ビアンカ様等はお怒りのハズだし、これから如何やって生きて行けば良いのか……
「それと安心して良いよ。ウルフは僕にしか言ってないからね。ビアンカやスノウ等……それにユニ達には今回のミステイクは伝わってないよ」
「え……本当でございますか!?」
「本当でございますよ。アイツだって君を苦しめたい訳じゃないんだよ。僕に報告したのは、僕に対しては絶対に嘘を吐かない……まぁ自らの野望を完遂させる場合を除いてだけど……兎も角、僕に対しては敬意を持って接するって事の表れなんだよ」
「し、信用できるんですか?」
「出来る。アイツは信用に値する人間だ。ただ気を付けないと、この国を憂いで暴走するかもしれないけどね」
暴走されたら困るのでは?
「そんな訳で、あんまり落ち込まなくて良いよ。君の痴態は僕とウルフ……あとソロにしか知られてないから」
「陛下とソロちゃんは良いですけど、あの宰相は……」
陛下が仰るのなら安心して良いのだろうけど……
「あははははっ。まぁそう言うなよ……アイツは信用できるし有能なんだ。何より物事の善悪・重要性などを理解している奴だから大丈夫なんだよ。だからさぁ……もう少し敬意をはらって接してやってよ。ジョディーのウルフに対する敵対心は、誰が見ても明らかで感じ悪すぎる。周囲へ対する示しも悪い。アイツは君より年上だし、地位も上なんだよ」
「も、申し訳ございませんでした!」
突然陛下からウルフ宰相閣下への態度について指摘を受けた。
マオ先輩の件で勘違いをしてたし、確かに端から見て良くない態度で対応してたわ。
「うん。今日から……いや今からウルフへの態度を改めてよね。君より年上で地位も上、そして何より君の弱みを握ってるんだからさ(笑)」
「は、はい! 現時刻よりウルフ宰相閣下へは最大級の敬意をはらって接したいと思います……弱みを握られてるので(笑)」
「よかった。じゃぁさぁ……ちょっと話が変わるけど、頼まれて欲しいことがあるんだ」
「は……私にですか?」
私の答えを聞いた陛下は満面の笑みで新たな話題を提示してきた。
「実は娘の事なんだけど……」
「姫様? リュリュ様のことですか?」
「いや……リュリュは取り敢えず大丈夫。別の娘の方」
「……マ、マリー様の方でしょうか?」
「う~ん……マリー様の方なんだよねぇ~」
マリー様とは私がメイドになった時から面識がある。
ただ当時は彼女が姫様だとは知らずに接してたので、凄くフランクな間柄だった。
色々陛下なりに思いがおありでマリー様・リューノ様・リューラ様……それとリューナ様も身分を秘匿して生活させてた訳ですが、上級メイドになって事実を知らされた時は本当に驚いたわ。世界中で一番姫様らしくない娘が、グランバニアのお姫様なんですもの!
「姫様が如何したのでしょうか?」
「う~ん……今回のウルフの陰謀の所為で、マリーとリューノから王位継承権を剥奪したじゃん。だから義務教育を終了したら働かないとダメだよって言ったんだよね。そしたら働きたくねーって言い出して……」
「はぁ、マリー様だけが……ですね?」
「うん。リューノは元々王位継承権を当てにしてなかったから、城下にある喫茶店に就職できるように自ら話を進めてたらしいんだけど……」
「はぁ、マリー様の方は何も考えてなかった……と?」
「うん。何も考えてないだけなら良いんだけど、働きたくないとか言うし……だから思わずキツめの口調で叱ったら、『じゃぁ城のメイドになる! 雇ってよ!』って言うし……」
「いやダメですよ! マリー様にメイドはさせられませんよ! 地位が如何とか、生まれが如何とかじゃなくて、あの部屋を見たことありますか!? あんな暗黒空間を形成できる人物をメイドになんて出来ませんよ!」
「解ってるよぉ~……僕だってアイツをメイドには出来ないって旨を伝えたよぉ~……でもさぁ『如何してお父さんは私を排除しようとするの!?』って泣いちゃってさぁ……これ以上言えなかったんだよぉ……」
「はぁ……陛下って本当に娘に甘いのですね」
「ウルフにも言われた」
アイツも言いたいことを言うなぁ……
「では頼み事というのは、私がマリー様に『お前にメイドは無理』と伝えることですね?」
「うん、そうなんだ。勿論、無料とは言わない。コレを受け取って」
そう言って私の手に握らせたのは……パンツ!?
「つい先刻までビアンカが穿いてたパンツ。今回こそは本物だよ」
「あ、いや……あの……へ、陛下……こ、困り……ます……あの……」
凄い凄いわ! 白地に可愛くスミレ草をあしらった柄のビアンカ様パンツ! で、でも……良いの!?
「要らないのなら持ち帰るけど?」
「いいえ、凄く欲しいですぅ!!!!」
即答してしまった……ド変態じゃん私!
「じゃぁもう洗濯物には手を出さないでね。ムラムラしたらソレ使ってね」
「はい。了解しましたぁ!」
私の意識がビアンカ様のパンツに移ったことを見た陛下は、爽やかに今回の事に釘を刺して去って行く。
そっとパンツに頬摺りをしてハッと我に返る。
また誰かに見られたら大変だわ。
今後は誰にも見られることのない自室で行為に耽ることにしよう。
ビアンカ様のパンツを綺麗に畳んで懐に仕舞い込み、マリー様を説得する件に思いを馳せる。
パンツを受け取ってしまった以上、手抜きは許されない。
……………困ったわねぇ。
ジュディーSIDE END
(グランバニア城・中庭)
アローSIDE
「聞きましたわよマリー様。義務教育を卒業したら城のメイドになるつもりなんですってね」
「あら耳が早いわねジュディーさん。そうなのよ……お姫様じゃ無くなっちゃったから働かないとダメみたいなの。だから宜しくね先輩♥」
「『宜しくね』じゃないですよ……マリー様には絶対無理ですよ! 自分の部屋すら真面に片付けられない女が、国家の象徴的建物の掃除するなんて有り得ませんよ」
やはり同じ事を思うか……
マリーの妥協案を聞いた時、誰もが同じ事を思っただろう。
あの暗黒空間を形成する女に、他人の生活空間を掃除させるなんて不可能だと。
だが職探しも、他の職に就く為の努力も嫌な女には、何も考えず就職できるメイドという職業にご執心の様子だ。
「何よぉ……自分の部屋と他人の部屋は別物よぉ! 私だって仕事と割り切れば掃除くらい出来るわよぉ」
自分の部屋と他人の部屋が別次元なワケねーだろうに!
「マリー様……私もメイドをやってますが、一日中仕事でお城を綺麗にして、家に帰ってまでも掃除を怠らないなんってキツイです。自分の部屋は後回しにしよう……って思いながら多少の散らかりを見て見ぬ振りします。ですがマリー様のは問題外です! どんなに毎日仕事で掃除してても、あの部屋になるまで放置することはないし、放置できません!」
「だから言ったでしょマリー! 貴女にメイドは無理なのよ……お父さんだって言ってたのに、泣いて自らの意見をゴリ押ししたって事実は変わらないのよ」
「うっさい、うっさい! お姫様として産まれて何も考えてなかったんだから仕方ないでしょ! アンタこそ進路は如何するのよリューノ!?」
マリーのヒステリックな声がグランバニア城の中庭に響き渡る。
昨日からオイラ達はコイツの将来について知恵を出し合っているのだが、当人がこの通りなので一向に話が前に進まない。
「昨日も言ったでしょ……私は城下にある“アマン・デ・リュムール”ってカフェで働こうと思ってるの。オーナーさんとも仲良いのよ」
「お前だけ抜け駆けしやがって……リューラとアローは!?」
「オイラ達のことも昨日言っただろ! オイラは陸軍の野球部に呼ばれてるんだ」
「私は近衛騎士隊……」
「あ~……そう言えばそんな事言ってたわね」
「マリー様は魔法が得意なのですから、魔技高に進学されては如何ですか?」
「はぁ? 何で左団扇な人生を送れるはずだった私が、今更勉強をしなきゃならないの!? 嫌~よ、面倒臭い」
コイツ、ダメだ……そんな考えリュカさんが許すはず無いのに。
「やっぱりメイドよ! 城勤めのメイドだったら楽じゃん!」
「楽なんかじゃないですよ! 特にあの汚い部屋を制作できる人物には!」
もっと言ってやれジュディーさん。
「だから何度も言ってるじゃん。プライベートと仕事は違うのよぉ」
「じゃぁ聞きますけど、リュリュ様が『私も料理に目覚めたから、城の専属コックになる』って言ったら認めますか? 出てきた料理を食べますか!?」
「う゛……そ、それはぁ……」
「無理ですよね!? ですが、それと同じ事をマリー様は仰ってるのですよ! 掃除能力が壊滅的に存在しないのに、その能力を使う職に就こうとしてるんですよ!」
「うぐぐっ……じゃ、じゃぁ私は如何すれば良いのよ!? もうチマチマした努力とか絶対にしたくないわよ! やりたい事しか、やりたくないんだからね!」
本当に最低だなこの女……
「じゃぁやりたい事をやって下さいよ。何でやりたくもないし、出来もしない事を職にしようとするんですか?」
「……私のやりたい事って何?」
知るかよ、お前のやりたい事なんて!
「マリーはさ、何時も『私は歌姫よ』とか言ってたじゃん。だからさぁ……歌を歌うことを生業にすれば良いんじゃない?」
「おぉ……なるほど。良いわねアイドル!」
何だ『アイドル』って?
「じゃぁ芸術高等学校に進学か?」
「ふざけんなリューラ! チマチマ努力するのは嫌だと言っただろ! 私ほどの容姿と歌唱力を持ってすれば、直ぐにでもトップアイドルよ!」
リューノの提案を受け、何処かトリップしたマリーが自らの未来を夢見ている。
メイドになられるよりかはマシだろうから、オイラもジュディーさんも何も言わないで居る。
ただ……如何やって歌姫になるんだろうか?
アローSIDE END
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