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真田十勇士

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巻ノ八十三 仕置その十三

「江戸は別によいわ」
「では」
 ここでだ、服部も気付いた。そのうえでこう主に問うた。
「あちらに」
「流石じゃな、察しがよいな」
「やはりそうなりますか」
「どうも江戸は好きになれぬ」
 少し苦笑いを浮かべてだ、家康は述べた。
「それよりもじゃ」
「あちらですな」
「わしはあそこが一番好きじゃ」
「何といいましても」
「幼い頃もおって」
「そしてですな」
「長い間住んでおったしな」
 こう服部に言うのだった。
「だからな」
「何といってもですな」
「あそこが一番落ち着く」
「それ故に」
「あそこにおる」
 そうするというのだ。
「わしはな」
「わかり申した」
「何度も言うが江戸には竹千代がおる」
「それではですな」
「どうも戦の素養はないが律儀で生真面目な奴じゃ」 
「そうですな」
「しかも政は出来る」
 そちらはというのだ。
「なら何も問題はない」
「江戸については」
「あ奴に任せる、そして御主はな」
「紀伊ですな」
「基本わしと共にいてもらうがな」
「あちらもですな」
「見てもらう、よいな」 
 服部の目をじっと見て告げた。
「それで」
「わかり申した」
「では都に上洛じゃ」
 こう言ってだ、家康は大坂から都に向かうのだった。そこから一つの時代が終わり一つの時代がはじまろうとしていた。


巻ノ八十三   完


                         2016・11・24 
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