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真田十勇士

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巻ノ八十四 高野山その一

                 巻ノ八十四  高野山
 昌幸と幸村は彼等の流罪の地でである高野山に向けて出発した、それぞれの妻子も一緒でだ。
 幸村は赤子を出している妻を見てだ、こう言った。
「折角子が生まれたが」
「はい、ですが」
「我等はこれから高野山に入る」
「そうなりますね」
「しかし大助はじゃ」 
 その子の名を呼んで言った。
「やがてはな」
「流罪からですね」
「元服する頃には許されるであろう」
「そのうえで」
「世に出る、その時に備えて文武を備えてもらおう」
「わかりました」
「そしてじゃ」 
 幸村はさらに言った。
「我が義兄弟達もおる」
「はい、大助様はです」
「殿のお子です」
「ようやくお生まれになった」
「それならばです」
「我等にとっては若君です」
「御主達にも鍛錬を頼む」
 幸村はその十勇士達にも声をかけた。
「よいな」
「わかっております」
「若君には我等の武芸の全てをお伝えします」
「忍術も剣術もです」
「その全てを」
「そうしてもらう、拙者も大助には全て教える」
 彼が知っているそれをというのだ。
「そしてな」
「立派な武士になってもらってですな」
「そしてそのうえで世に出てもらう」
「そうなって頂きますか」
「そうじゃ、拙者は出られぬやも知れぬ」
 一生だ、高野山からというのだ。
「だが大助は違うからな」
「わしも教えていこう」
 昌幸もいる、彼もまた自身の孫にあたる大助を見つつ言った。
「大助にな」
「そうされますか」
「うむ、そしてじゃ」
「文武の全てを授けたうえで」
「世に出てもらう」
 こう言ったのだった。
「是非な」
「はい、それでは」
「時はある」
 流罪になればとだ、昌幸はこのことも頭に入れていた。そのうえで幸村に対してこう話すのだった。
「ゆっくりと教えられる」
「そのことはよいことですな」
「だからじゃ、大助にな」
「全て伝え」
「そしてじゃ、世に出てもらおう」
「わかり申した」
「それと今天下は穏やかじゃが」
 それでもとだ、昌幸はこうしたことも話した。 
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