提督はBarにいる。
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EX回:12 鎮守府の秋祭り~演習編①~
「あー、あー、マイク~チェック、マイク~チェック、ワン、ツー……。さぁ皆様、大変長らくお待たせ致しました!これより、我が鎮守府の艦隊VS日本本土よりお越しいただいた提督との模擬演習を執り行いま~す‼」
瞬間、わあっと盛り上がる観客達。
「実況は私、金剛型戦艦四番艦・霧島と、解説には『演習番長』こと大和型戦艦の武蔵さんと、『鎮守府のはた迷惑パパラッチ』、青葉さんの計3人でお送りします。」
「うむ、よろしく。……ってなるかァ!おい霧島ぁ、後で覚えておけよ?」
「あぁん霧島さん酷いっ!青葉はた迷惑なんかじゃないですよぅ!」
おい実況・解説席。トリオ漫才をやれと誰が言った。まぁ、解説の人選は悪くない。流石は霧島、艦隊の頭脳と呼ばれるだけはある。武蔵は先程の渾名の通り、その運用コストの問題で演習を数多くこなしている。演習のルールについて精通しているし、艦娘の分析力も高い。青葉はその情報網の広さでデータを活かした解説が望めるしで、まさにうってつけだ。
「さてさて、茶番はこの位にして。演習の編成としては如何です?武蔵さん。」
「そうだな、高速戦艦が2、航空戦艦1、正規空母1、駆逐と軽巡洋艦がそれぞれ1か。なかなかバランスの取れた編成だな。戦艦の火力をどう活かすか、それがカギだろうな。」
茶番だと自覚があった霧島を、武蔵が華麗にスルー。しかし武蔵の解説は尤もだ。戦艦の大火力、そして同じ編成である事による戦略の差が勝敗の分かれ目といった所か。さてと、ではそろそろウチの艦隊を錬度(レベル)付きで紹介しようか。
旗艦:金剛(改二)Level135
謂わずもがな我が鎮守府の最高錬度にして筆頭嫁艦。その自慢の攻撃力と高機動、そして敵の砲弾すら弾き飛ばす拳の強さは、そのまま接近戦でも活かされる。
「フフフ、勝ったらテートクにディナーを申込みマース!」
と、演習前に語っていたらしい(取材:青葉)。まぁ、ディナー位なら幾らでも付き合うさ。嫌いな奴に指輪渡すワケもなく、寧ろこっちからお願いしたい位だしな。
二番艦:比叡(改二)Level116
説明不用のお姉様Loveの金剛型二番艦。ケッコン指輪さえ「お姉様とお揃い!」と大喜びだった(俺の立場ェ……)。錬度は姉妹の末っ娘霧島(Level120)には負けるが、姉譲りの高火力高機動は顕在。
「お姉様とディナーデートなんて……こいつはメチャ許せんよなぁ…」
等とブツブツ呟いていたのを青葉が聴いて教えてくれた。殺されないかなぁ、俺(泣)。それで比叡の背後から物凄い気迫というか、妖気のようなモノが見えてたのか。
三番艦:日向(改)Level97
航空戦艦となって純粋な火力は目減りしたものの、その代わりに得た航空機運用能力を活かし、対潜・対空戦闘、支援砲撃の上手さはピカイチ。多くは語らず動きで魅せる、寡黙な仕事人。そんな感じの戦いをする。最近飾りのように提げていた軍刀では接近戦は難しいと知り、日本刀に変えてから俺と剣術の稽古に励んでいる。飲み込みが早く、腕前は中々。
「まぁ、相手は格上だ。なるようにしかならないさ。」
とは、試合前の談。
四番艦:赤城(改)Level110
空母の中では二番目に錬度が高い彼女は、他の鎮守府のような暴食空母ではなく、どこかのゴローちゃんのような一人での食べ歩きをこよなく愛するグルメ。そして空母筆頭の加賀と後で食べ歩くらしい。艦載機の運用も上手く、バランスの良い安定した戦果を稼ぎだす。稀にだが油断すると手痛い被弾をしてしまうのが珠に傷か。
「はあぁ、巡回帰りですぐに演習ですか…トホホ……。」
五番艦:龍田(改)Level48
普段は駆逐艦を率いての遠征旗艦が多い龍田だが、時代遅れとなった艤装ながら高い回避能力で敵の懐に潜り込み、手にした矛で相手を切り裂く戦法を得意とする。錬度の低さを腕でカバーしている典型的な例だ。
「赤城さん。間宮さんの大判焼き、冷めちゃったけど食べる?」
六番艦:夕立(改二)Level90
駆逐艦最強、否、最狂戦力。普段は元気一杯の天真爛漫娘だが、一度スイッチが入ると『ソロモンの悪夢』の異名よろしく、ちょっとアタマの可笑しいレベルの戦果を叩き出す。ただ、今日はドーナツ屋を出店しており、完売すると浴衣姿で遊び回っていたせいか、浴衣姿での参戦。そして、
「食べ過ぎでお腹苦しいっぽいぃ~……。」
と言っていたのが不安材料か。
「夕立のドーナツもあるけど、食べるっぽい?」
赤城は龍田と夕立からそれぞれ甘味を貰い、口一杯に頬張っている。相変わらず緩いなぁお前ら。これから演習なんだよ?解ってる?
「さぁ両艦隊出揃いました‼ここで今回の特別演習のルールをご説明致します。」
実況の霧島がそう言ってルールを説明する。
・制限時間は30分
・時間切れまでに旗艦を撃沈判定にするか、艦隊を全滅させた方が勝ち
・勝利条件のどちらも満たされていない場合、美保鎮守府提督の勝利となる
・過度の攻撃、その他残虐な行為は禁止
要するに、だ。ウチの鎮守府のチームは敵を全滅させるか旗艦を仕留めなければいけないってワケだ。
「では、今より10分間の作戦タイムとなります。」
とは言っても、ウチの方針では作戦会議はしない。……いや、俺を交えた作戦会議はしない、だな。俺は滅多に前線に出向く事はない。だからこそ、普段から俺は細かい指示は出さずに、出来るだけ艦娘達に考えさせるようにしている。
「では提督、お互いに握手を。」
相手の美保鎮守府の提督は、少し小刻みに震えている。武者震いだろうか?握手を交わすと、その手はジットリと濡れていた。手汗?歴戦の提督が演習で?どうにもさっきから腑に落ちない。
「では……演習、始めっ‼」
霧島の掛け声を号令として、演習が始まった。
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