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提督はBarにいる。

作者:ごません
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EX回:13 鎮守府の秋祭り~演習編②~

 実況担当・霧島の掛け声と同時に、両艦隊の夕立と龍田が飛び出す。

「おおっとぉ、両艦隊共に駆逐艦と軽巡洋艦が飛び出したァ‼武蔵さん、これにはどういった意図があるのでしょう?」

「そうだな……やはり金剛型も高速とは言えそれは戦艦というカテゴリの中での話。やはり先鋒は足の速い駆逐艦や軽巡に任せたいのだろう。」

「そうですねぇ、上空でも制空権を奪い合いが始まってますし、この序盤でどちらが主導権を握るかが決まると思われます。」

 流石に武蔵と青葉は目の付け所が違う。恐らく、金剛達が立てた戦略は、夕立と龍田を試合開始と同時に飛び出させて敵の目を釘付けにした上でその隙に赤城と日向が艦載機を発艦させ、制空権をかっさらおうとしたのだろう(そもそも作戦会議に参加してないので、憶測での物言いだが)。しかし相手も手練れ、その位の戦術は予測していたらしく、ほぼ同時のタイミングで両軍の艦載機が上がってきた。作戦としては悪くなかったが、奇策で機先を制したかったのならもう少し予想外の戦術を立てないとな。ま、及第点てトコか。



「さぁ、地上と上空では激しい主導権争いが繰り広げられている~っ!しかし、両艦隊の攻撃の要である戦艦は動かないッッッ‼」

「恐らく両陣営共に短期決戦が狙いなのだ。制空権を奪取し、相手の先鋒を退けた所で戦艦3隻の高火力で一気に仕留める。これだろう。」

「いやいや、包囲して叩くという可能性も……」

 おうおう、実況席もヒートアップしてるなぁ、確かに戦況は五分五分に見えなくもない……が、ジリジリとだが此方が押し始めた。特に海上の龍田と夕立が押し始めた。最初こそ龍田VS龍田、夕立VS夕立の構図で戦っていたものの、相手の力量を見極めるや否や、挟み撃ちになるフリをして、互いの身体を半回転。戦う相手を入れ換えたのだ。龍田は相手の夕立を、そして夕立は相手の龍田を見やると、ニコリと微笑んで再び突っ込んだ。

「夕立、突撃するっぽい!」

 夕立はその鍛え上げた脚力で敵艦隊の懐に飛び込み、そこで主砲や高角砲、魚雷等を弾切れになるまで撃ちまくる単艦突撃戦法を得意としている。もはや戦法と呼べる代物なのかは怪しいが、実はこれも夕立なりの算段が行っているらしい。

「敵だって自分の仲間を撃つのは嫌がるっぽい。だから夕立が相手の真ん中に行くと、相手は反撃し辛くなるっぽい。」

 以前夕立の単艦突撃を、危険だから止めさせようとした時の夕立の反論だ。言われてみれば確かにな、と思う。奴らに人間的な感情があるのかは解らんが、そうでなくとも味方同士の撃ち合いで戦力を損耗するなど、普通に考えたら馬鹿げた話だ。彼女には彼女なりの算段が有るのであれば、それを長所として伸ばしてやる方が理に敵っているだろう。そこで教えたのは回避を重視した立ち回り。懐に飛び込むのが危ないなら、被弾しなければ良い。単純且つ明解な回答だ。そしてもう1つ、1対1での接近戦で活きるショートレンジの打撃だ。



「ふっ!」

 短く息を吐くと共に、敵の龍田が突きを放ってくる。夕立は僅かに身体を捻り、最小限の動きでかわしつつ尚も懐深くに飛び込む。相手との間隔は30cmもない。そこから拳打を繰り出すには、腰や身体を捩るように回転を使ってスピードとパワーを乗せていく。ショートフックやアッパーを主体とした打撃を放つ。その打撃を嫌がるように龍田が後方に跳び退がろうとするが、夕立は尚も追い縋るように貼り付く。これが戦う相手を入れ換えた最大の狙いだ。

 龍田の接近戦は手持ちの槍?矛?まぁどっちでもいいや、あの手持ち武器を主体とした棒術・槍術に近い戦法だ。だからこそ相手の懐に飛び込めば、相手の強みである「リーチの長さ」を封殺できる。狙うポイントは鳩尾や顎、肝臓など人体の急所と言われるポイント。俺がミット打ちに付き合って場所を身体に叩き込んだ。その為吸い込まれるかのように相手の急所へと拳が、膝が、肘が飛んでいく。相手は防戦一方となり、動きが鈍っていく。

『相手の嫌がる箇所を探せ。そしてそこを突け。』

 俺が常々艦娘達に教えている戦術の基礎の基礎だ。相手の弱点を探る事は、相手を観察する事に繋がり、それによって受け攻めどちらにも有利に働く「目」を養う事が出来る。

「ぐっ……!」

「あぁっとぉ、夕立さんの拳が龍田さんの右脇腹を抉るっ、相手の龍田さんの表情が苦悶に歪む~っ‼」

 完璧にリバーを捉えた。あれ喰らうと内蔵が捩れたんじゃないかと思う激痛と共に息が詰まる。身体がくの字に曲がり、最大の弱点である頭が下がる。瞬間、夕立が身体を捻って右足を振り上げる。右背側からのハイキックが敵の龍田の側頭部を見事に捉え、龍田を昏倒させた。

「……っぽい!」

 ビシッと決めポーズまで決めちゃってまぁ。

「決まったああぁぁぁ!夕立のハイキックぅ‼」

「いやいやいやいや!艦娘なんだから砲雷撃で戦えよ!何で殴り合いでのしちゃってるんだ‼」

 武蔵よ、それは突っ込むだけ無駄というものだ。そして夕立、見事過ぎるハイキックでスカートの中身見えちゃってたから。お客さんかなりの数ファインダーに納めちゃってたから。凹むなよ。 
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