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真田十勇士

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巻ノ六十 伊達政宗その四

「まことにな、ではな」
「はい、さすれば」
「これより北条攻めに加わってもらう」
 彼が連れて来た軍勢もというのだ。
「よいな、ではじゃ」
「はい、存分に戦わせてもらいます」
「その様にな」
 こうしてだった、政宗は秀吉の下に降ることにより家を守った。この時家康は無言で始終政宗を見ていたが。 
 秀吉は政宗と会った後でだ、秀長と二人になり彼に言った。
「では話そう」
「朝飯の時のことをですな」
「関東は竹千代殿じゃ」
 家康にというのだ。
「任せる、そしてな」
「伊達家はですか」
「米沢ではなくだ」
 伊達家の旧領から離してというのだ。
「仙台に行かせようぞ」
「そうされますか」
「野心がある」
 それを見抜いている言葉だ。
「あのまま米沢、会津に置いてはな」
「そこを地盤として」
「隙があれば動く」
「隙がなくともですな」
「隙を作ろうとする」
 策を仕掛けてというのだ。
「あの者はそうした者じゃな」
「そうかと」
 秀長もこう答えた。
「あの左目を見ますと」
「強い目じゃったな」
「はい、実に」
「あれこそ竜の目じゃ」
 政宗が独眼竜と呼ばれているからこその言葉だ。
「野心に満ちたな」
「ですな、だからこそ」
「あの者はそのままにしておけぬ」
「転封ですな」
「仙台までな」
「そして会津にですな」
「忠三郎じゃな」
 蒲生氏郷、彼だというのだ。
「あの者を入れよう」
「会津に」
「そしてじゃ」
 さらに言った秀吉だった。
「関東の竹千代殿じゃが」
「むしろですな」
「伊達家より危ういと思わぬか」
「はい」
「竹千代殿は確かに律儀じゃ」 
 家康のこの徳分は天下によく知られている、この戦国の世にあってとかく約束を守る。義理堅い者として知られている。
「天下一のな」
「律儀殿ですが」
「しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「わしに何かあればじゃ」
「野心はですな」
「あの御仁も持っておる」
「天下へのそれを」
「家臣も揃っておる」
 家康の下にはというのだ。
「武辺者にじゃ」
「近頃は本多親子も加わりましたし」
「それにじゃ」
 さらにというのだ。
「南光坊天海という坊主が入ったな」
「かなりの学識の持ち主だとか」
「そう聞いておる、東国でな」
「これまでは武辺の家でしたが」
「知恵袋も揃ってきた、それにじゃな」
「はい、以心崇伝ですが」 
 秀長の方からこの僧の名前を出した、それも剣呑な顔で。 
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