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真田十勇士

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巻ノ六十 伊達政宗その五

「この者はです」
「確かに学識はあるそうじゃな」
「しかし僧侶でありながらです」
「徳はないか」
「そこが天海殿とは違う様です」
 この僧とは、というのだ。
「陰険にして目的の為には手段を選ばぬ」
「そうした者じゃな」
「曲学阿世の者と聞いています」
 秀長の知っている限りだ。
「中には天魔外道ともです」
「言われておるか」
「はい」
「その者が徳川家に入ったか」
「かなり厄介かと」
「では、じゃな」
「はい、徳川殿は駿府に置いたままではです」
 そうしていればというのだ。
「厄介です」
「地盤をさらに固めてじゃな」
「伊達家以上にです」
「危ういな」
「だから兄上のお考えはです」
 家康を関東に転封させることはというのだ。
「よいかと」
「そうじゃな」
「はい、そして徳川殿は常にです」
「大坂に置くべきか」
「地元に置いてはです」
 関東、そこにというのだ。
「あの御仁は政も見事なので」
「地盤をすぐに固めるな」
「そして力を蓄えます」
 そうなることが目に見えているというのだ。
「ですから徳川殿はです」
「大坂にじゃな」
「留めておきましょう」
「そうじゃな、それがよいな」
「他の大名も領地と大坂、都を行き来させてです」
「そうして金を使わせてな」
「力を削ぐべきですが」
 とりわけ、というのだ。
「徳川殿はです」
「別格じゃな」
「そうです、ですから」
「出来るだけ力を溜めさせずにおくか」
「そうしましょう」
「ではな」
「はい、そしてですが」
 秀長は秀吉にさらに言った。
「それがしが何かあれば」
「竹千代殿、そして伊達もか」
「止めまする」
 断固とした言葉だった。
「そうしますので」
「わかった、ではな」
「何がありましても」
「御主が生きておる限りはか」
「無闇なことはさせませぬ」
 絶対にというのだ。
「お任せ下さい」
「では何としても生きよ」
 こう返した秀吉だった。
「御主はな」
「そうします」
「わしの命じゃ」
 まさにというのだ。
「そしてな」
「兄上の天下のですな」
「柱じゃ」
 それだというのだ。
「大黒柱はわしじゃが」
「その兄上をですか」
「支える柱じゃ」
「だからこそですか」
「死ぬのは許さぬ」 
 断じてという言葉だった。 
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