『ある転生者の奮闘記』
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TURN37
「良かったのかい雪風? 帝からの勲章授与式だったのに……」
「ええよ。俺には勿体無い物や」
俺はそう言って持ってきた日本酒を建てられた小さな石に振り掛ける。
「それにしてもリンカーンとプリンセスの墓を建てるなんてな……」
「いくら原作がエロゲーやったとしてもこの生きている世界では人間やしな」
「……それもそうだな」
俺と茂は石に手を合わせた。そこは横須賀の海が見える場所やった。
「今から技研で飲むかい?」
「それもそうやな。酒代は?」
「安心しろ。二パックのビールが冷蔵庫で冷えている」
「技研が家みたいやな」
「中々新居には帰れんからな。御波が技研を家だと認識しないようにしないとな」
「そこは東郷長官に言えよ。予算が増えれば人員も増えるしな」
「それもそうだよね~」
その後、茂と技研で飲んで家に帰る。
「ぅ~茂の野郎。御波ちゃんの話が長すぎるんや」
ちょっと千鳥足やけどな。ん? 家の前に誰か……。
「……帝?」
「はい、帝ちゃんです」
玄関前に帝がいました。何故に敬語。
「何故此処に?」
「勲章をあげるためですよ」
帝がほらほらと勲章を出す。
「いやだから自分はそのような物は受け取る権利はありませんよ」
「駄目です。受け取って下さい」
「いやですから……」
「へくちゅ」
その時帝がくしゃみをした……待てよ。
「帝、此処に何時間いましたか?」
「軽く五時間はいました」
……おいおい……。
「……取りあえず上がって下さい。身体を温めなければなりません」
「初めて皇居以外で家に入りますよ」
俺は帝を家に入れた。
「護衛はいないのですか?」
「明石大佐が周囲にいるので大丈夫です」
……よく反対されなかったよな……。
「粗茶ですが……」
俺は帝に温かい御茶を出した。
「ふぅ……暖まります」
帝がほふぅ~とほわほわした表情をしている。
「まぁこたつでも。ミカンはちゃんとありますし」
「冬にこたつの上にあるミカンは必需品ですからねぇ」
帝は慣れた手つきでミカンの皮を剥いでミカンを食べる。
「それじゃあ勲章です」
「いやですから……」
帝が思い出したように勲章を俺に渡す。やからいらんのに……。
「是非とも受け取ってほしいんです狹霧さん」
帝はそう言って俺に土下座をした。
「み、帝ッ!?」
「無実であるのにも関わらず、貴方を予備役にしてしまった罪は私にあります。本当にごめんなさい」
……まさかの土下座すか。この場面を宇垣外務長官や山下長官が見たら大激怒しそうやなぁ。
……はぁ、仕方ないよな。
「……分かりました、分かりましたから勲章は受け取ります。なので土下座は止めて下さい。誰か来たらどうするんですか」
「お~い雪風ぇ。お前技研の携帯端末忘れてるってェェェッ!? 帝ッ!!」
「都合ええなッ!!」
フラグやったのか、一応茂に事情を説明する。
「はぁ~成る程な。帝が雪風に土下座をしているから雪風が土下座して足を舐めろとかでも言ったのかを……」
「お前さぁ、額に風穴開けられたいんか?」
「サーせん」
茂の額に拳銃を構えると茂は土下座をする。
「結局、雪風も勲章は受け取ったわけだな」
「受け取ってもらって良かったです」
「……茂に言われるとムカつくな」
「何でさ?」
無視や無視。
「……フフ」
俺と茂のやり取りを見ていた帝が笑う。
「それじゃあ私は帰ります。そろそろハルさんが心配すると思うのでってきゃッ!!」
「おわっ」
正座から立ち上がろうとした帝がこけて俺に倒れかかる。
「大丈夫ですか?」
「………」
「帝?」
「へ? ……あぁ大丈夫です」
帝は呆けていたが、直ぐに態勢を整えて玄関に行く。何故か早足で。
「それじゃあ、また今度です」
「あ、はい。送らなくて大丈夫ですか?」
「は、はい。明石大佐がいますので」
ん? 帝が狼狽してるよな。そして帝はそそくさと家を後にするが……何か引っ掛かるよな……。
「なぁ茂。何か引っ掛かるよな?」
「そいつは奇遇だな。俺もだ」
何だったかなぁ……多分帝の事やと思うんやけど……帝……帝?
「そういやさ帝ってさ、超能力があったから帝になってんな?」
「……そうだな」
「確か帝の超能力って相手と触れあう事で「みなまで言うな」……」
俺は茂を見る。茂はかなりの冷や汗をかいていた。
「……バレた……よな?」
「……バレたんじゃね?」
……ヤバイよな?
「……全てを知っていたなら何故言わなかったのか? と言って軍法会議にかけられそうやな」
「……同伴者の僕もいるしね……」
俺と茂の背中は明らかに暗かった。
「帝は話せば分かってくれるかもしれんけど、山下長官なんぞに知られたら刀を振り回しながら摩耶に来そうやな」
山下長官にバレたらかなりめんどくさくなるな。
「……僕もしまいには津波が別れようなんて言いそうだよ……」
『……はぁ』
俺達の心は非常に暗かった。
後書き
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