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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN36





『その子は……』

「COREにされたんやろねぇ」

 生身の人間だと思っていた山下長官達はプリンセスの身体から出てきた聖書に驚いていた。

『仕込んでいたのはマンハッタンだな……』

 キングコアはそう吐き捨てた。

「プリンセスさん、貴女はその聖書をキングコアに渡して何をしたかったんや?」

『……あぅ』

 プリンセスは一言だけ言って聖書をキングコアに渡した。

『………』

 渡されたキングコアは最初受け取ろうとしなかったけど、五分くらい時間が経つと漸く受け取った。

『………』

 キングコアはパラパラと頁を捲る。その時、聖書から何かが落ちた。

『栞……?』

 キングコアはそれを拾いあげる。しかし、よく見ればただの栞ではない。樹脂製のカードであり、既に劣化して落としただけでカードは割れていた。

 その中には別の道具が収められていた。

『サバイバルツールだと?』

 サバイバルツールは一枚のカード状でありながらヤスリやナイフの機能がある。樹脂でそれをコーティングしていたのは栞に見せ掛けるためやったんやろな。

『……頑張れ……お前、俺に脱獄しろとこれを渡したのか?』

『………』

 キングコアの言葉にプリンセスは小さく頷いた。

『……クレイジーだな。重罪人に脱獄を促していたなんてな。それも少女がだ』

 見ていたダグラスはそう呟いた。茶々をいれんなや。

『大統領ッ!! 機関区から連絡ッ!! デバイス設置完了しましたッ!!』

 その時、イーグルの部下が叫んだ。機関区に向かった部隊が上手くやったみたいやな。

「どうするリンカーン? バージニアのワープ機関に次元潜航デバイスを設置した。後はデバイスを起動するのみや」

『……やってくれたなサギリ』

『総統閣下から伝言だ。バージニアよ沈め』

 イーグルはそう言った。その瞬間、バージニアは亜宇宙に潜航するために誘電流体の雲に覆い隠されていく。

『長居は無用だ。引き上げるぞッ!!』

 山下長官の言葉にイーグルは頷いて中央管制室を出る。キングコアは動こうにも動けない。

 ドロシー・ノイマンが管制室を既に占領しており、キングコアの制御もしていたのだ。

『サギリのおかげで時間があった。隣接ブロックに見取り図にない区画があった、脱出ポートかも』

 ノイマンはそう言った。

『リンカーン、反撃するチャンスはあったはずやけど?』

『……もう反撃するチャンスはねぇよ。それに俺はちとこいつと用事が出来てな』

 今までプリンセスを犯していたキングコアはプリンセスを抱き抱えた。

「その用事とは?」

『なに、こいつとの結婚式だ』

「……そうか、御祝いした方がええか?」

『俺達に祝いなんていらねぇよ』

「長官ッ!! ファルケナーゼの反応ですッ!! バージニア付近にいますッ!!」

 ……漸く帰ってきたな。

「全艦バージニアから後退や」

 そして徐々にバージニアは沈んでいく。

『あばよサギリ』

「じゃあなリンカーン。『賢い鼠』(ザ・ラット)」

 その直後、夕張に搭載されていた次元爆弾が爆発してバージニアを拘束していた装甲が剥がれて宇宙の水面下に沈んでいく。

 傷ついたバージニアは自分を縛っていた要塞を破壊しなかわらうごめき、次元の渦から這い出そうと身を捩らせた。

しゃらん――

 その時、神楽鈴が鳴る。帝が宙に語りかける。

 バージニアは大きく身を翻した。漸く取り返した自由を現し、鈴の音に応えて舞うと自ら次元のうねりに身を沈めていった。

「……終わったな」

 俺は長官席に深く座り込んだ。もう疲れた。疲れましたとも。

「長官、長門から集結命令が出されました」

 シャルロットがモニターを見ながらそう言った。

「……全艦回頭。長門へ向かう。……戦は終わった」

 傷ついた連合艦隊は辛くもバージニアに、COREに、イレブン=ゴーストに勝利したのであった。



「まさか狹霧が活躍するなんてな……」

「俺は何もしてませんよ長官。ただ、昔聞いた情報屋からの情報を思い出したまでに過ぎませんよ」

 俺は長門で東郷長官と飲んでいた。といっても軽めやけどな。

 連合艦隊は日本で損傷した艦艇の修理をする事になって日本に寄港する事になっていた。

 今は損傷艦艇の出しうる速度で日本にゆっくりと向かっていた。

「恐らくこの海戦に参加した将兵は全員が帝から勲章を貰うだろうな」

「でしょうね」

「お前は受け取るのか?」

「受け取り気はないですよ。自分が勲章を受け取る権利は無いです。いくら無罪となっても一度有罪で予備役に回されていたんです。噂は無くなりませんよ」

「……そうか」

 それ以後、東郷長官は何も言わなかった。

 翌日、連合艦隊日本で修理をしている中、日本陸海軍の主だった将官達は皇居にいた。

『それでは帝から勲章を渡される。海軍長官東郷毅』

 宇垣外務長官が次々と読み上げていく。

『南遣方面艦隊司令長官狹霧雪風』

『………』

『南遣方面艦隊司令長官狹霧雪風』

 宇垣長官がいくら呼び掛けても雪風は返事はしない。それは勿論、この勲章授与式に雪風が参加していない証拠だった。

「……やっぱり狹霧さんは参加してくれませんか」

「み、帝。私が引っ張ってでも連れて参ります」

 帝の言葉に宇垣長官は言うが、帝は首を振る。

「いいんだよ宇垣。狹霧さんが来なければ私が行けばいいんだよ」

 帝はそう言った。







 
 

 
後書き
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