真田十勇士
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巻ノ四十二 大谷吉継その三
「決してな」
「攻め落とせない城はない」
「殿は常に仰っていますが」
「この城もですか」
「大坂城も」
「そうじゃ」
まさにという返事だった。
「そんなものはない」
「絶対はですな」
「そのこと自体が」
「ない」
「そしてですな」
「うむ、この城もじゃ」
大坂城もというのだ
「攻め落とせる。そしてじゃ」
「この城を攻めるのなら」
「どうすれば」
「南じゃ」
その方角だというのだ、幸村は今もこう言ったのだ。
「三方は海と川、堀でな」
「複雑にですな」
「幾重にも守られ」
「非常に攻めにくい」
「しかしですか」
「南も堀があるが」
しかしというのだ。
「そこは開けておりまた堀も入り組んだ形ではない」
「だからですか」
「その南からですか」
「大軍で攻めればですか」
「攻め落とせますか」
「相当な、それこそ十万かそこいらで攻めればな」
その南からだ。
「いけるやも知れぬ」
「十万ですか」
「それだけの大軍となりますと」
「どうにもです」
「そもそもその数を集めるだけでも」
「相当ですが」
十勇士達は幸村に言った。
「しかしその十万の兵で、ですな」
「南から攻めれば」
「あるいは、ですか」
「そう思うがしかしその南もな」
大坂城のそこはというのだ。
「堀は深く幅が凄い」
「ですな、その南の堀も」
「そうそうです」
「渡れるものではなく」
「やはり城壁も石垣も高く険しい」
「堅固でありますな」
「だから十万でも難しい」
それだけの兵でその南から攻めてもというのだ。
「実際にはな、しかし弱点であり特にじゃ」
「特に」
「特にといいますと」
「南東じゃ」
そこだというのだ、南の中でも。
「あそこが一番の弱み、そこの守りを固めれば違う」
「ですか、大坂の城は」
「この城は」
「そうじゃ、まあこの城はとにかく川が入り組んでいてな」
ここでこうも言った幸村だった。
「堀がある、裸とは程遠い城じゃ」
「ではその堀がなくなれば」
「その時は」
「そうなればどんな城でもな」
それこそとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「攻め落とせる」
「そうですな、では」
「この城を確実に攻め落とすには」
「堀を埋める」
「そうすればよいのですか」
「うむ、しかし自ら堀を埋めるなぞ」
このことはだ、幸村は言った。
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