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真田十勇士

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巻ノ四十二 大谷吉継その二

「少し大坂を回ってな」
「そしてですか」
「そのうえで」
「城も見たい」
 町が囲んでいるその城もというのだ。
「よいな」
「大坂城もですか」
「あらためて」
「うむ、間違いなく天下の名城じゃ」
 そう確信するからこそというのだ。
「よく見たい、よいか」
「はい、それではです」
「我等はお供します」
「これまで通り」
「そうさせてもらいます」
「ではな」
 それではと応えてだ、そしてだった。
 幸村と十勇士達はそのうえでだ、大坂の町を回りその賑わいを見ると共に。
 城を外から見た、城は確かに巨大でだ。
 堀は広く深い。しかも城壁も石垣も高く門は堅固で高い櫓が数えきれないまでにある。その城を見回ってだ。 
 幸村は十勇士達にだ、こう言った。
「この城はそは陥ちぬ」
「やはりですか」
「そうですか」
「難攻不落」
「そうした城ですか」
「うむ、相当な数で囲んでもな」
 それでもというのだ。
「容易には陥落ちぬ、四方を幅のある堀と川に複雑に囲まれておるしじゃ」
「城壁も石垣もですな」
「実に高くほぼ垂直です」
「我等なら登れますが」
「忍でも未熟ならば」
「登られぬな」
 その城壁や石垣をとだ、幸村も言った・
「とても」
「左様ですな」
「とてもですな」
「しかも門はです」
「櫓がよい場所にあり」
「鉄砲や弓矢もです」
「門の二階から撃てますな」
 そうなっていた、門の造りは。
「そうじゃ、しかも櫓からも撃たれる」
「門を進もうにも」
「そうしてもですな」
「あの門も抜けにくい」
 とてもというのだ。
「しかも外でこれで城の中はな」
「まだ見ていませぬが」
「そこもですな」
「おそらくは」
「相当ですな」
「それは見てからじゃ、しかし」
 それでもというのだ。
「天守が高いな」
「その高い天守からですか」
「攻めて来る敵の動きが見える」
「それで、ですな」
「守りやすい、この城を攻め落とすことは難しい」
 これが幸村の見方だった。
 しかしだ、ここでこうも言った幸村だった。
「しかし難しいがじゃ」
「それでもですな」
「攻め落とすことはですか」
「不可能ではない」
「そうですか」
「うむ」
 その通りという返事だった。 
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