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真田十勇士

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巻ノ四十二 大谷吉継その四

「少しでも戦を知っている者がするか」
「いえ、全く」
「その様な愚か者は知りませぬ」
「聞いたことがありませぬ」
「自ら城の堀を埋める馬鹿者なぞ」
「これまでいたとは思えませぬ」
「拙者もそうした者は知らぬ」
 幸村も言う。
「これまでな」
「ましてや関白様です」
「あの方は大層頭の回転の早い方」
「その方がその様な愚かなことをされるか」
「想像もつきませぬな」
「それはない」
 秀吉ならばとだ、また言った幸村だった。
「到底な」
「では、ですか」
「この城はですか」
「陥ちませぬか」
「やはり」
「まずない、そこまでの馬鹿者が城を仕切らねば」
 それこそというのだ。
「ないわ」
「ですか、では」
「この大坂城はですな」
「まずは、ですな」
「陥ちませぬな」
「そうなる、この城を攻めても陥ちぬ」
 幸村は言い切った。
「その南から攻めてもまずな」
「南東もですな」
「攻めてもですな」
「そうじゃ、そのことがあらためてわかった」
 この度見回ってというのだ、その周りを。
「守る者は相当な愚か者でもないと攻め落とすことは無理じゃ」
「自ら堀を埋める様な馬鹿者が主でなければ」
「とても」
「そういうことじゃ、では宿に戻りな」
「はい、そして」
「明日にはですな」
「この城に入ろうぞ」
 大坂城にというのだ、こう話してだ。
 幸村はこの日は宿に入り休んだ、そしてその次の日だった。
 幸村は十勇士達と共に景勝のところに来た、その彼に兼続が言った。
「では」
「これよりですな」
「はい、参りましょう」
 こう幸村に言って来た。
「城の中に」
「では」
「あの城は大層広いので」
「迷わぬ様にですな」
「しかとです」
 実際に強い声で言う兼続だった。
「ついてきて下され」
「それでは」
「本丸まで行き」
「その本丸で」
「関白様と会います」
「いよいよですな」
「はい、しかし」
 ここでこうも言った兼続だった。
「その前に少し時間がありまして」
「関白様のご都合で」
「あの方もお忙しいので」 
 天下人故にだ、この国を預かっているだけあり多忙である。このことは幸村でなくともわかっていることである。
「ですから」
「少しですな」
「時間があります」
「それで、ですか」
「その待つ間です」
 こう幸村に言うのだった。
「ここでもお会いしたい方がおられまして」
「その方が、ですな」
 幸村はそれが誰なのかすぐに察して言った。 
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