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真田十勇士

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巻ノ四十一 石田三成その二

 しかしだ、同時にこうも言った。
「ただそれはそれがしも同じですが」
「将としては正しくとも」
「大将のものではありませぬ」
 そこは違うというのだ。
「石田殿は大将ではありませぬな」
「ご自身も大将にはです」
「興味がおありではですな」
「ありませぬ」
「あくまで将ですな」
「関白様にお仕えする」
「忠義の心もお強いと聞きましたが」
 石田のこのこともだ、幸村は言った。
「それ故に」
「はい、関白様にきつい諫言も厭わず」
「あくまで、ですか」
「将でありべきと考えておいでなので」
「ご自身が自ら出られる」
「そうした戦をされます」
「まさに将ですか」
 幸村はこの言葉は瞑目する様にして出した。
「あの方は」
「左様です」
「そのこと自体はいいですが」
「どうしても大将にはなれぬ、なるつもりもない方です」
「わかりました」
 ここまで聞いてこう言った幸村だった。
「まだお会いしていませぬがある程度は」
「石田殿がですな」
「はい、では都において」
「お会い頂ける様」
「わかりました」
「必ずです」
 兼続の言葉は保障するものだった。
「後悔はしませぬ」
「会ってもですな」
「源四郎殿とも気質が合うかと」
「それがしもそう思いまする」
「それでは」
 こうした話をだ、幸村は都に入る前に兼続とした。
 そして都に入りだ、まずはだった。
 その都を見てだ、彼は唸って言った。
「ふむ、前に来た時よりも」
「さらにですな」
「よくなっていますな」
「いや、家も人も多く」
「道も奇麗ですな」
 十勇士達も言う。
「前に来た時も見事でしたが」
「あの時よりもです」
「よくなっています」
「これはです」
「よい町並みですな」
「これが都の正しい姿か、いや」
 幸村は自分の言葉を訂正した。
「むしろ前よりもな」
「栄えていますな」
「おそらく応仁の前よりも」
「あの時よりも」
「そうじゃ、この栄え方はな」
 まさにというのだ。
「本朝開闢以来じゃ」
「そこまでの栄え方で」
「そしてそれをされているのがですな」
「関白様ですな」
「その通りじゃ」
 まさにというのだ。 
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