真田十勇士
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巻ノ四十一 石田三成その一
巻ノ四十一 石田三成
越前から近江に入った上杉家の大名行列はさらにだった、南に進み。
そのうえでだ、都に近付いていたが。
兼続はその中でだ、また幸村のところに来てこんなことを言った。
「都でお会いして頂きたい者がいますが」
「その方は」
「石田三成というのです」
「石田殿ですか」
「ご存知ですな」
「はい、羽柴秀吉殿の懐刀と言われる」
「そうです、まだ若いですが」
それでもというのだ。
「非常に出来た者でして」
「その御仁とですな」
「お会いして頂きたいのです」
「そういえば直江殿は石田殿と」
「実は知己、それも友としてです」
「交遊がおありですな」
「口が過ぎて頑固者ではありますが」
それでもというのだ。
「その心根は非常によき者です」
「だからですか」
「源四郎殿にもお会いして欲しいのです」
是非というのだ。
「宜しいでしょうか」
「はい」
是非にとだ、幸村も答えた。
「宜しくお願いします」
「それでは」
「石田三成殿といえば」
ここでさらに言った幸村だった。
「関白様が近江におられた頃にでしたな」
「はい、寺の小坊主でしたが見出され」
「そしてですな」
「関白様に仕えられる様になったのです」
「それからとんとん拍子にでしたな」
「身を立てたのです」
「政で有名ですが」
とかくそちらで知られた者だ、その為天下の者は石田を秀吉の政で助ける者だと思っているのだ。だが。
幸村はその彼についてだ、こう言ったのだった。
「いくさ人でもありますな」
「お気付きですか」
「はい、賤ヶ岳でも活躍され」
そしてというのだ。
「武具や兵糧の調達等もです」
「見事だと」
「はい、そうしたことを見ますと」
「石田殿はですな」
「いくさ人です」
そうなというのだ。
「それがしはそう思います」
「確かに。石田殿の実はです」
「直江殿もそう思われますな」
「あの方はいくさ人です」
彼の友である兼続もこう見ていた、石田のことを。
「紛れもなく」
「左様ですな」
「一見ただ筆を取っているだけの方ですが」
「いざとなれば」
「刀を手にして自ら戦われる」
「そうした御仁ですな」
「そうなのです、しかし」
ここでだ、兼続は幸村にだ。少し困った顔になってこう話した。
「あの御仁は実は戦になると自ら前に出てです」
「戦われる方ですな」
「矢面に平然と立たれます」
「柴田勝家殿との戦でもそうでしたな」
「大谷吉継殿と共にです」
石田と共に羽柴家において能吏と言われている彼と、というのだ。大谷もまた世間ではそう言われて思われているのだ。
「ご自身が真っ先に突っ込まれました」
「兵達を率いられ」
「兵達が死地に赴いているならです」
「ご自身もですな」
「そうせねばならぬという方なので」
「それは正しいですな」
幸村は石田のその姿勢はよしとした。
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