『夢の中の現実』
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『完済間近』
父さんが、亀井サンと飲み歩くようになってから、夜も風俗で働いた。
早く完済したいから。
もし、完済して父さんに棄てられたとしても、其れは其れで仕方のないことやと思える。
だって支払いは零那がワガママで勝手にやってる事やし。
一緒に住んで迷惑かけてるやろうし、自由が無いって思ってるかもしれんし。
夜も稼ぎ出してからは、支払う日とか関係無く5日おきとかに、まとめて何十万とか払ってた。
その都度チャント計算して残金教えてくれてたから、誤魔化されてることは無かった。
女として、まだ稼げてる。
まだ利用価値が在る体に感謝した。
こんな自分でも、父さんには出来んかった完済を成し遂げれる。
もう少し。
後、もう少しで完済。
意外とあっけない。
夜に稼げたからやろうけど、どんどん残りの支払額が減っていく。
今、父さんを繋ぎ止めてるのは、お金だけなんか...
零那に対する愛しさや絆というものは無いのか...
不安で仕方なかった。
でも、たとえ完済の為に零那を利用してたとしても、零那は父さんを救ったことになる。
其の事実は残る。
父さんの為に生きた時間があるなら幸せ。
零那は、父さんを利用した。
弱みに漬け込んで一緒の時間を過ごす事を強要してきた。
其れって、冷静に考えると非道なエゴの押し付けやんか。
絶対早く解放されたいに決まってる。
早く完済して自由の身にさしてあげよう。
父さん用に通帳作って、支払う日に併せてコッチも貯金してた。
完済しても先立つものが無ければ父さんは解放されん。
零那に出来ることは、現金の用意くらい。
亀井サンと少し話す機会があった。
『そんな急いで完済せんでええんちゃうか?』
『無駄に払い続けるのもどうかと思うやん。父さん早く解放したげたいし』
『量治サンが、そう望んだ?』
『父さんの気持ちは正直ホンマ解らん』
『少なくとも零那チャンを誇りに想ってる!飲みに出た時は色んな処で娘には頭上がらんって自慢してるんやで!』
『自慢?風俗でしか稼げん汚い娘の何が!!』
『風俗も立派な職業や!俺ら極道も世間から何言われたってええねん。
揺らがん誇り持ってやっとんねん!零那チャンも誇り持って風俗やっとるやろ!』
『そら仕事やねんから、やるからには真面目に誠実にやってるつもりやけど...』
『せやろ!其れは簡単な事やない!』
『いやいや簡単やろ?それだけの額を貰うんやから、それ相応にキッチリするべきやん』
『うん、其の考えは正しいねん。
でも其れが出来る子は少ないってこと。風俗でもファミレスでも同じ。一生懸命そうやって頑張ってる子も居れば、やる気の無い子も居るやろ。
俺は、一生懸命仕事して一生懸命生きてる零那チャンが好きやねん♪量治サンのことも一生懸命考えてて素晴らしい親子やと思うねん。
せやから完済しても出て行ったりすんなよ?』
『出て行くんは父さんちゃう?零那は完済したら父さんに棄てられるんちゃうかって怖くてしゃあない』
『量治サンは零那チャンを棄てたりせぇへん!!俺が保証する!!』
『そんな保証できんやろ』
『もし量治サンが零那チャンを棄てたり追い出すようなことしたら、俺が命で償う!!』
『え、何其れ』
『零那チャン、真剣に聞いて』
『何?』
『父さんが毎日飲み出てたんは俺が無理に連れ出してたんや。どうしても聞いて欲しい頼みごとがあってな...』
『父さんに頼みごと?』
『せや。まだ聞き入れて貰えてないんやけどな、零那チャンに話すだけなら良いって、昨日やっと許可もろたんや』
『何の許可?』
『零那チャン、俺と結婚してください』
あまりにも唐突で、そんな感情どころか...亀井サンのことをそんな風に感じたことがなくて、言葉が出んかった。
『あ、返事は要りません。
量治サンには、言うだけなら良いって言われてて、零那チャンが俺のこと一切気にしてないのは解ってるから。
恋愛云々どころじゃないし、何より他人やか...どうでもいい感じやし...』
『いやいや、そこまで卑下せんといてや。どうでもいいとは思てへんし。
ただ結婚は唐突ってか考えもしてなかったし...でも亀井サンは信用出来る人間やから...』
『えっ!信用してくれてる?俺を?』
『...信用してなかったら、なんぼ父さんと仲良しでも一緒に住むとか有り得んやろ...』
『...せやな』
『うん』
『ほな、これからは完済のことと量治サンのことの次に、俺のことも少しだけ考えてくれますか?』
『まだまだ解らんことばっかやし観察する...』
『...もしかしてメッチャ照れてます?』
『うっさい!照れて無いわ!』
グッ!と引き寄せられて抱き締められた。
お客さんと抱き合うこともあるから感覚やか麻痺してる筈やのに、何故か妙に恥ずかしい。
てか...
そもそもコレが罠?
金ヅル?
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