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神への蔑視

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第二章

「酒を飲むことが悪いのか」
「あの神はそう教えていますな」
「近頃は特に」
「酒を楽しんではならないと」
「その様に」
「下らんことだ」
 至って、もっと言えば極めてという言葉だった。
「ビールはパンと同じく麦から作りパンの代わりにもなるがだ」
「酒である」
「そのことは絶対のことですね」
「それを楽しまないで飲むとは」
「至極残念なことですね」
「ローマ帝国の頃は違っていた」
 ベリアルは昔の国、かつて欧州を一つにしていたこの国の名前を出した。
「あの国はどうした酒の飲み方をしていたか」
「それですか、大公が言われることは」
「人間達が忘れていたこととは」
「酒を飲むこと」
「楽しむことなのですね」
「そうだ、他にもあるがだ」
 それでもというのだった。
「まずは酒を楽しんで飲むことだ」
「そのことですね」
「まずは酒を楽しんで飲むことを」
「酒を酒として飲み」
「楽しむことですか」
「そうだ、この修道院の者達にも教えてやろう」
 その修道僧達から差し出されたビールを飲みつつだ、ベリアルは家臣達に言った。言葉をこの国の言葉であるが訛りを異常に強くさせて修道僧達は疑いはしないが理解出来ない様にして。
「ビールの楽しい飲み方をな」
「では」
「ここからですね」
「それをはじめますか」
「人間達に思い出させますか」
「ソーセージを出すのだ」 
 ベリアルは家臣達ににやりと笑って告げた。
「まずはな」
「ビールを飲みつつ食べる」
「あれをですね」
「そしてこの国ではとびきり高いだ」
 それはというと。
「あの香辛料を出すのだ」
「胡椒を」
「それをですか」
「そしてパンも美味いものを出すのだ」
 それもというのだ。
「ビールも味をよくしてやれ」
「この様なただ造っただけのものではなく」
「製造の仕方を工夫してですね」
「美味くさせたビールを飲ませ」
「楽しませますか」
「美味いものを思い出させるのだ」
 まさにというのだ。
「いいな」
「では」
「ソーセージを出しましょう」
「胡椒も美味いパンも」
「そしてビールの造り方も教えましょう」
「この修道院の者達に」
 こうしてだった、彼等はソーセージに胡椒を出してだった。修道僧達に勧めた。そして美味いパンもだった。
「泊めて頂いたお礼です」
「どうぞ召し上がって下さい」
「是非共」
 何気なくだ、善意の仮面を被ってだった。
 ベリアル達は彼等にそうしたものを勧めた、ソーセージにだ。
 胡椒を付けて食べさせてだ、彼等の顔を見た。すると。
「これは」
「何という味か」
「美味い」
「こんな美味いものははじめだ」
「ビールと共に食べると」
 そうすればだった。
「余計にいい」
「こんな美味いものを食べていいのか」
「何と罪深いのだ」
 ここでこうした言葉も出た、だが。 
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