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神への蔑視

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第一章

                 神への蔑視
 魔界にあるとてつもなく巨大な、極彩色で異様な形のそれでいて豪奢な宮殿の中のとりわけ見事な部屋の中でだった。
 天使、外見はそうであり全身に炎を纏った赤い服の者が言った。
「面白いことを思いついた」
「面白い?」
「面白いといいますと」
「人間達に面白いことを教える、いや」
 玉座に座る赤い炎の天使は楽しげな笑みを浮かべて言うのだった。見れば髪は黒く顔立ちは整っているが何処がシニカルなものがある。
「思い出させる」
「思い出させるとは」
「それは何でしょうか」
「一体」
 彼の前に控えるそれぞれ着飾った人に似ているが何処か陰のある者達は彼の言葉に怪訝な顔になり問返した。
「ベリアル様は楽しいことがお好きですが」
「人に遊びを教えることを」
「今回は思い出させるのですか」
「そうされるのですか」
「そうだ」
 その天使、魔界に君臨する魔神達の中でもとりわけ高位の座にある者の一人であるベリアルは己の家臣達に答えた。
「人間達に思い出させるのだ」
「そうした遊びをですか」
「人間達に思い出させ」
「楽しませる」
「そうされますか」
「あの神は実に詰まらない」
 冷笑もだ、ベリアルは部下達に見せた。
「やれ禁欲だ、やれ節制だとな」
「ですな、あの神の教えは」
「禁じるばかりで」
「そこにあるものはです」
「何もありません」
「つまらないものばかりで」
「面白くとも何ともありません」
 家臣達も主に応えて言う。
「どうにも」
「しかし我々は違います」
「その神から離れ真実を知った我々は」
「あの神が言う悪を楽しみ」
「そしてです」
「様々なものを楽しむ様になりました」
「この魔界において」
 こう主に言うのだった。
「そうなりました」
「そしてこの度はですか」
「ベリアル様は人間に思い出させる」
「そうされますか」
「そうする、でははじめよう」
 こう言ってだ、そのうえで。
 ベリアルは自ら魔界から人界に向かう用意に入った、そこで家臣達に命じたのだった。
「御主達も来るのだ」
「お供させて頂きます」
「それでは」
 家臣達も応えてだった、そのうえで。
 彼等は人界に入った、ベリアルは天使の容姿はそのままだったが外見は変えた。家臣達もそれは同じだった。
 彼等は人界のある国に来た、そこは彼等もよく知る国だ。その国の首都に来てだった。
 まずは修道院に旅の貴族の一行として適当な理由をつけて入った、だが。
 その修道院を見回してだ、家臣達はやれやれといった顔で言った。
「いや、全く以て」
「つまらないものですね」
「人界の居酒屋は」
「飲んでいるだけで」
「何もありません」 
 見れば人間達はビールを飲んでいるがそれだけだ、何か仕方なく飲んでいる様なそうした感じであった。
 その彼等を見てだ、家臣達は言うのだ。
「酒は飲むことを許されている」
「そういうものでしかない感じですな」
「味も楽しまず」
「共に楽しむ肴もない」
「ビールはパンですか」
「そうですかありませんか」
「そうだ、何だこの飲み方は」
 ベリアルもだ、シニカルに笑って言った。
「確かにビールは麦から作る」
「飲むパンです」
「そう言われていますな」
「しかし酒だ」
 こうしたものであることは揺るがないというのだ。 
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