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第5話 遺跡出現までの10日間【3日目】 その1
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【3日目】 その1
「ん……」
窓から差し込む太陽の光に顔を照らされ僕は意識を覚醒させた。食堂から漂ってきたおいしそうな匂いに食欲を刺激させられお腹が鳴る。そう言えば……色んな事がありすぎて何も食べてなかったっけ……。
「はぁ………」
重い体を起こし、ノロノロとした足取りで自室を出る。
「あ、お、おはようございます!」
自室を出ると洗濯物入れのようなものを両手で持ったアカリちゃんにバッタリと出会う。
「……おはよう……」
僕は疲れた表情を隠しながらアカリちゃんに微笑み、挨拶をする。すると彼女は顔を赤らめ視線を下に向けた。
「あ、あの……洗濯物取りに来ました!」
少し緊張した表情でアカリちゃんは顔を上げると木で作られた洗濯物入れのようなものを僕にグイッと前に突き出す。
「あ、朝の間に洗濯物をこれに入れて入口の前に出しといてくれれば、次の日までには洗濯し終わってます」
洗濯サービスがあるのか、便利だなぁ……。
「へぇ、ちょっと待っててね」
「は、はい!」
僕は洗濯物籠を受け取り自室に戻ると麻袋に入っていた冒険者用の服一着と学校の制服を入れる。
「これ、お願いね」
「は、はい、では夜に渡しに行きます!」
何故か焦った手つきで僕から洗濯物入れを受け取ったアカリちゃんは僕を上目使いで見つめてきた。
「なにか……?」
少し気恥ずかしかったので聞いてみる。
「あ、あの雰囲気変わりましたね……」
すると彼女は少し戸惑った表情をしたがすぐに答えてきた。
「そうかな……?」
「は、はい。なんか初めて会った時とは全然違います」
「ハハハ、では……」
これ以上会話を続けると『あの記憶』がフラッシュバックして心がおかしくなりそうなので、僕は逃げるようにアカリちゃんに背を向けると顔を洗うために井戸に向かって歩き出す。
「あ、あの―――――――――」
「?」
アカリちゃんが僕の左手を掴んできた、彼女が持っていた洗濯物入れがドサリと音を立てて床に落ち、中から洗濯物がこぼれ出る。
「き、昨日起きたこと……他の冒険者さんから聞きました……」
「そうなんだ……」
「そ、その……あまり気落ちしすぎないでください……」
泣きそうな声で彼女は言ってくる。
「何で僕が気落ちしてるって思うの?」
「瞳が、瞳が泣いています」
「?」
「あ、すいません。私の能力なんです……、他人の瞳を覗くとその人の大まかな気持ちがわかるんです」
「へぇ……」
それがアカリちゃんの能力なんだ……。便利なもの持ってるな、カウンセラーにでもなれるんじゃないかな……。
「ケントさんの瞳は私が今まであってきた人の中で2番目に悲しい瞳の色をしています……どうか無理をなさらずに……」
それだけ言うとアカリちゃんはパタパタと足音を立てて奥の方へ走って行った。2番目……か……1番は誰なんだろ……ま、いっか。
「ふぅ……」
木で作られた古い階段を降りると出入り口の近くにある井戸で顔を洗う。ほんの少しだが頭の中がクリアになるのを感じる。
食堂に行くといつも通り白髪のエルフ君にお金を渡しバイキング制の朝食を取った。
「な、なんか雰囲気変わりましたね……」
「ん?」
白髪のエルフ君がお金を受け取る時に僕にオドオドした表情で言ってくる。
「クールになったというかなんというか……」
「ハハハ、ありがと」
白髪のエルフ君の言葉に軽く答えると僕は自室に戻る。血で染まった防具を纏い『セリムの宿』を出る。目立ちたくはないので念のため体にはマントを羽織った。
「いらっしゃい……ってあんたか……どうしたんだその恰好……」
武器屋のおじさんのところに行くと珍しく外で店番をしていたらしい武器屋のおじさんが僕の姿を見て目を丸くする。
「ちょっと色々あって……この有様ですよ……」
「まあここじゃなんだから中へ入れ」
武器屋のおじさんはあたりをきょろきょろと見回すと僕を店の中へ入れてくれる。
「まさかあんた昨日遺跡に行ったのか……?」
「はい……」
「そうか…………」
武器屋のおじさんは僕に何も聞かずに肩をポンとたたく。
「これに着替えろ」
「!?」
突然、服をポンと手渡される。
「え……!?」
咄嗟のことにどう反応していいかわからない。武器屋の親父さんはそんな僕を見ると優しげな表情を見せる。
「あんた無理しすぎだ、表情でわかる。ちょっくら気晴らしにでもいこう。いい場所がある」
「は、はぁ……」
こうして僕と武器屋のおじさんの王都巡りが始まった。
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