異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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遺跡出現までの10日間【2日目】 その7
【2日目】 その7
「大丈夫ですか……?」
肩に質素な毛布がかけられる。顔を上げると全身を鉄の鎧に包んだエルフさんがこちらを心配そうに見ていた。
「………………」
声が出ない。何もしゃべる気力がない。
「しかしひどい……『マダー』にはそこまで強い魔物はいないはず、いくら新参の冒険者でもここまでやられるとは……一体中で何が………」
鎧を纏ったエルフさんは何も言わない僕を優しい瞳で見つめると疑問を口にする。周りを見渡すと沢山の兵士と思われるエルフさんたちが傷ついたエルフさん達に毛布を掛けたり治療をしたりしている。
「それには僕が答えるよ」
「パ、聖騎士パラディン様!?」
顔を上げると青い髪を後ろに束ね、青色と銀色が混じったような豪華な鎧を纏った青年が立っていた。スラリとした鼻筋、キリッとした眉、サファイアのような瞳をしており男の僕から見てもかっこいいと思う姿をしている。背中には見たこともないようなかっこいい形の大剣が背負われており、その姿には強者のオーラを感じざるを得ない。
「恐らく新しい遺跡が出現する予兆だとおもうよ」
「予兆……?」
聖騎士と呼ばれた青年の言葉に鎧を纏った兵士と思われるエルフは頭に? を浮かべる。
「うん、稀にあるんだ。普段は予兆はすべて女王様が予知してるみたいなんだけど今回は少しタイミングが遅くてね……沢山の被害が出たんだ……」
「なるほど、なので自分達、小隊長以下の兵士が大勢呼ばれたのでありますか……。他の遺跡はどうなっているのですか?」
兵士さんの質問に聖騎士と呼ばれた青年は巨大な木、第一遺跡『マダー』を見上げながら答える。
「おそらくもう王都が対応してるだろうから今遺跡に入ってる人たちは皆外にはじき出されているね、ここは僕がやったけどたぶん第二は賢者パンディットのイルリルさん、第三は特級達数人で対応していると思うよ」
「あ、あの賢者が出てくるなんて……よっぽどの事態だったんですね………」
「小隊長! 閉鎖処理の指揮を!」
「わかった、今行くぞ! すいません、自分はここで」
「うん、頑張ってね」
「はっ!」
少しと奥の方にいる兵士エルフさんに呼ばれた小隊長と呼ばれたエルフさんは聖騎士と言われた青年に敬礼をすると駆け出していく。
「君がエリザベータ様が言っていた少年だね」
「!?」
エリザベータさんの名前が出てきたので僕は思わず肩を震えさせる。
「僕の名前はシグルズ・マックール、アイスル国の聖騎士だよ。いやぁ、でも無事でよかった。君は一人で『マダー』に乗り込んだのかい?」
「………仲間が……いました……」
「そうなのか……災難だったね……」
僕の言葉にシグルズさんは瞳を伏せた。
「皆……みんな死にました……僕のせいなんです………僕が弱かったから……ライトさんもローラさんも皆……うぐっ……」
「辛かったね……でも、君のせいじゃないよ」
シグルズさんがやさしく僕の肩に手を乗せる。ミントのような香りが僕の鼻をくすぐる。
「遺跡出現はあと8日後だ、もう暗くなるから今日はゆっくり休もう」
「!?」
シグルズさんの言葉が終わった瞬間『セリムの宿』の前に移動していた。あまりの出来事に思考がついて行かない僕は目を白黒させる。
「ハハ、そんな驚いた顔されるとちょっと困るなぁ……」
シグルズさんはちょっと困った顔をする。
「僕の能力。ま、正確にはこの『聖剣』の能力なんだけど……。とりあえず今日はゆっくりおやすみ、あ、『レバルドオウム』忘れてきちゃった……明日届けとくね、それじゃ」
シグルズさんは手を振ると僕の視界からシュッと消える。もういいや、この人についてこれ以上考えるのはよそう、次元が違いすぎる。
「…………」
僕はゆっくりとした足取りで『セリムの宿』の入り口を通る。
「ちょ、ちょっと! 大丈夫ですか!?」
他の冒険者の会計をレジでしていたアカリちゃんが駆け寄ってくる。
「大丈夫です……」
かすれた声で何とか答える。
「血だらけじゃないですか!? 一体何があったんですか!?」
アカリちゃんが騒ぎ立てるので人が集まってくる。あまり注目は浴びたくないな……。
「すいません、今日はゆっくり休ませてください。明日説明しますから……」
もう疲れた……。僕はアカリちゃんから離れると階段を上がり自室に入る。僕が遺跡に潜ってる間にアカリちゃんがシーツを変えてくれたのかシーツがきれいになっている。僕は無造作に鎧を脱ぐと布団にゆっくり横になる。
「ローラさん……ライトさん……」
少し心が落ち着いてきたが再び目尻が熱くなる。ぐにゃりと視界が歪んだ。
僕が弱かったから……僕に力がなかったから……みんな守れなかった……。
目を閉じると瞼から熱い雫が静かにこぼれ落ちた。
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