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IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~

作者:GASHI
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第25話 「疾風vs武神」

 
前書き
思ってたよりも早く投稿できることに安心しているGASHIです。ただ、それと引き換えに課題が犠牲になってるなんてことはない・・・はず。ないよ、うん。 

 
「一夏、零、ちょっと相手してくれない?」

土曜の午後、訓練に勤しんでいた俺と一夏はシャルルから模擬戦の誘いを受けた。アリーナに到着して早々、我先にと一夏の指導役を買って出た箒、セシリア、鈴の3人に悪戦苦闘していた一夏からすれば渡りに船の申し出だったろう。面白そうなので黙って見物していたのだがこれがまた酷い。以下、3人のありがたい指導である。

(箒)「こう、ずばーっとやってから、がきんっ!どかんっ!という感じだ。」
(鈴)「何となく分かるでしょ?感覚よ、感覚。・・・はあ?なんで分かんないのよ、バカ!」
(セ)「防御の時は右半身を斜め上前方へ5度傾けて、回避の時は後方へ20度反転ですわ。」

うん、もう目も当てられないよな。箒と鈴に関しては俺ですら理解不能だ。ってか最早指導じゃない。セシリアのは理解できるんだが細かすぎる。そんなこと考えてるから実戦でトロいんだよ。これで一夏が分からないと言えば何故分からないんだと怒る。何故一夏が分からない理由が分からないんだ、お前たち・・・。

「もちろん。一夏、先にやるか?俺、戦闘データ採りたい。良いか、シャルル?」
「構わないよ。僕にも後で見せてね。じゃあやろうか、一夏。」
「おう。よろしくな、シャルル。」

一夏とシャルルが対峙する。そういえばシャルルの専用機を見るのは初めてだ。見たところ、《ラファール・リヴァイヴ》のカスタム機。機体カラーは鮮やかなオレンジに変わり、随所に量産型との違いが見られる。

「・・・よし準備OK。試合開始。」

俺の掛け声と同時に一夏がシャルルに向かって猛突進する。相変わらずのワンパターン先制攻撃である。シャルルはシールドを使って斬撃をいなし、上空へ飛び去って距離を取った。

(良い動きだ。《白式》が近接特化と知っての立ち回りだろう。)

一夏が追いつく前に素早く五九口径重機関銃『デザート・フォックス』を展開し牽制。あちこち飛び回って射線から逃れようとする一夏を正確に補足して外さない。近接への牽制方法と優秀な中距離射撃能力、多分オールラウンダーだろう。

「このぉ!」

一夏も自分が勝る加速力を駆使して食い下がっているが、射撃で牽制されて真っ直ぐ飛べないために力の入り方や斬り込み方にムラがある。しかもシャルルの奴、武装の展開と収納のスピードがかなり速い。

(俺と同じ高速切替(ラピッドスイッチ)の使い手か。)

高速切替は本来戦闘前に呼び出す主武装を戦闘進行と同時に展開することで、複数の状況に適宜対応する技能である。これを扱うにはかなりの状況判断力と器用さを要する。代表候補生でこれをこなせるとは驚いた。候補生の中では上位と言っていいかもしれない。

(しかも、俺との模擬戦を想定して極力使う武器の数を減らしてやがる。大した奴だ。)

何とか斬りかかろうとする一夏をヒラリとかわし、空いた背中にすかさず展開した五五口径アサルトライフル『ヴェント』を撃ち込む。終止余裕を持った戦いを見せたシャルルの文句なしの完勝だった。

「お疲れ様、一夏。近接のみの機体なんて初めてだから勉強になったよ。ありがとう。」

明らかに本国での訓練より歯応えなかったろうに、本当に紳士だなぁ。まあ、一夏には良い経験になったはずだ。近接に偏りがちな箒や鈴、狙撃一辺倒なセシリアと違い、両面をカバーできるシャルルは練習相手には打ってつけだ。3人と違って物腰も柔らかいし、一夏とかなり相性が良いだろう。




「シャルル、連戦ですまないが頼めるか?」
「もちろん。僕が頼んだことなんだから、断る理由はないよ。」

せっかくだし本気でやろう。そう思った零は最初から『月詠』を展開した状態で定位置に着く。なかなかの手練れが相手だからか、いつもより楽しそうである。

「いくぞ。」

零は瞬時加速を用いて急接近しながら『煌閃』を連射する。シャルルは冷静にシールドでビームを防ぎながら後ろに下がって距離をとろうとするが、《武神》の機動力を見誤ったようだ。零はすかさず懐に飛び込むと『素戔嗚』に換装して『天羽々斬』を展開、袈裟に斬りかかる。

「速いね!でも・・・!」

それを回避したシャルルはなんと六二口径連装ショットガン『レイン・オブ・サタデイ』を展開、ゼロ距離で放つ。これには流石に零も驚いた。

「マジか・・・!?」

如何に彼にとって回避が得意分野とはいえ、目の前で散弾をばらまかれては堪らない。『素戔嗚』の加速力を利用して一瞬で上方に避難したが、数発足に当たってしまった。

「良いねぇ・・・。」

思わず人格が変貌しそうになるが何とか我慢する零。セシリアの時は手の内が分かっていたから最初から楽しんでいたが、シャルルの場合はまだ見切れていない。理性を奮い立たせろ。耐え忍んで完全に掌握するんだ。そう自分に言い聞かせる。

「よく避けたね。まだまだ行くよ!」

シャルルの接近を阻むため、彼は再び『月詠』に換装、ビームスナイパーライフル『星崩』を展開して狙撃を始める。セシリアほど単純な狙撃はしていないはずだが、シャルルは器用にシールドを使って防ぎつつ近接ブレード『ブレッド・スライサー』を構えて接近の機会を窺っている。

「これは・・・。」

近づいては離れ、離れては近づく。この一連の流れを繰り返すうちに零はある特徴に気づいた。シャルルは格闘戦の最中にタイミングを見計らってゼロ距離射撃を行うが、距離を離すと射撃を牽制程度に留め、却って『ブレッド・スライサー』を構えて追い縋ってくるのだ。要するに、格闘と射撃の判断があべこべ。これによって射撃と格闘の判断がしにくい一定の距離と攻撃リズムを作り出して保っている。

(だとすると戦い方は2つ。この土俵でシャルルを上回るか、リズムを崩して隙を作るか。・・・後者の方が俺向きか。)

方法は簡単。シャルルの攻撃を射撃か格闘のどちらか一つに絞らせればいい。では、追い縋るシャルルを射撃で撃ち墜とすのとゼロ距離射撃をいなして近接戦闘で勝るのではどちらを選択すべきか?

(・・・これも考える必要はない。明らかに後者の方が楽に決まっている。)

零自身距離を問わずに高水準の戦闘ができると自負しているが、それでも好みや得意分野は存在する。日頃から束、IS学園入学後は千冬と鍛練しているのだから近接戦闘の方が慣れているのだ。そうと決まれば話が早い。あとは衝動に身を任せるのみ。

「・・・なあ、シャルル。」
「ん?何かな?」
「・・・死ぬなよ。」

その言葉がシャルルに届くのと同時に零はシャルルの目の前に立っていた。シャルルがそれを認識するより先に《武神》は漆黒に染まり、『ブレッド・スライサー』が振り下ろされる前に強烈な右ストレートがシャルルの腹部に直撃した。

「ぐふっ・・・!」

吹っ飛ばされたシャルルだったがスラスターを全開にして噴かすことで地面への激突は免れた。しかし安心したのも束の間、満面の笑顔で殺気を振り撒く怪物が眼前に迫っていた。シャルルは横に転がって彼の追撃を間一髪で回避、『ヴェント』を即時展開して放つ。回避不可能な対応速度。しかし、今度はシャルルが驚く番だった。

「・・・え?」

なんと、零は迫り来る弾丸を拳で弾き飛ばしたのだ。対IS装甲用の特殊な弾丸のため、普通ならそんな乱暴な対応をすれば手の甲の装甲は砕け散る。しかし、シャルルが見る限り彼の装甲に損傷はない。弾き飛ばした衝撃で弾丸の炸薬が爆ぜるが、その程度では零の突進を止めるにはあまりにも不十分だった。

「おらぁ!」

元々無理な体勢から放った攻撃を想定外の方法で対処されたのだから回避や防御に気を回す余裕がなかった。シャルルは成す術もなく零の怒濤の連続攻撃を受ける。

「なんっ、で・・・!?」

武具を用いずにただ殴打を繰り返しているだけなのに、見る見るうちにシールドエネルギーが減っていく。徒手空拳で攻撃されているにしては明らかに異常な削られ方である。しかし、今はそんなことよりを気にするよりもこの状況を打破する方法を模索するべきだ。

「このぉ・・・!」
「甘い!」

『デザート・フォックス』を展開して狙いをつけずに乱射しようとするシャルルだったが、零はこの挙動を読んでいた。零はシャルルが引き金を引く前に彼の手に裏拳をかまし、シャルルの手から『デザート・フォックス』を弾き飛ばす。この瞬間、勝者は決まった。




「スゴいね、零。こんなに強いと思ってなかったよ。」
「それはどうも。俺もなかなか良い試合が出来て楽しかったよ。」

戦闘終了後、俺たち3人はそれぞれの専用機の調整とエネルギー供給を待つ間を利用して歓談していた。どうやら、先程のシャルルの戦闘スタイルは『砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)』と呼ぶらしい。なるほど、言い得て妙だ。

「ところで零、最後の連打の時なんだけど・・・。」
「ああ、あれか。あれはな・・・。」

両手の装甲のみを部分展開し、ある武装を展開する。一見何の変化も見られないのだが、よく見ると手首付近に突起している場所があり、指の付け根辺りにも細工が施されている。

「対IS装甲用グローブ『拳皇』。現行ISの装甲硬度を凌駕する素材を使った拳闘用グローブでな。あの時はこれを使ったんだ。」

IS装甲を無傷で砕ける優れものである。俺は剣術が一番得意なので使う機会は『天羽々斬』等より劣るが、格闘の自由度はそれらより勝るため緊急時に重宝している。

「手首にある小型スラスターでパンチの速度を上げて、指の付け根にある装置から放出したエネルギーで拳を覆って威力を高める。しかも見た目は通常の装甲とほとんど変わらないから展開に気づきにくい。」
「ああ、だからあの時素手に見えたんだ。面白い装備だね。」

そうこうしているうちに全員が調整を終えた。

「じゃあ、今回の戦闘データは俺がまとめて夜にでも届けるから。そこで反省会とでもいこう。」

さて、それでは本題。いつも通り、一夏の特訓に入ろう。件の3人も一夏が来るのを首を長くして待っているようだし。まあ、その・・・、頑張れ、一夏。あれが理解できるようになれば、お前はきっと俺より頭良くなってるだろうから・・・。  
 

 
後書き
2つほどご意見を頂いたので報告を。

まず「《武神》と神裂 零の設定を載せてほしい」。これについては区切りの良いタイミング、具体的には2巻終了後に載せる予定です。確かに公開した方が読みやすくなると思いますし、大変参考になりました。

2つ目は「零の性格を改善してほしい」とのこと。書いてるうちは気にならないのですが、最近読み直してみるとこのご指摘は尤もだと判断しました。ただ、いきなり変えようとすると全話校正という事態になりかねないので、タッグマッチ終了後に零の性格を少し柔和にするイベントを設けることにしました。それまでは申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

他にも意見や感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。お待ちしております。 
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