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遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜

作者:ざびー
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十六話 ー星の聖域、ですよー

 
前書き
前回予告した通り、お待ちかね?のデスガイドさんのターンッ!
対するは、ガチ勢三人衆の一人(え沢蟹?知らないな……)、プレアデスさんです! 

 
優希が権現坂道場でデュエルしているのと同時刻。
レオ・デュエル・スクール(LDS)でもまた二人の決闘者が対峙していた。

「へぇ、僕の相手って今巷で騒がれてる君だったのかい」

LDSのメインコートでデュエルディスクを構えながらそういうのは、言わずと知れたLDSエクシーズ召喚コースの首席、志島 北斗だった。
余裕綽々といった感じだが、彼は知らない。
……今回、被害者になるという事を。

そして、メインコートに立つ者がもう一人。
鮮やかな緋色の髪の毛と、闇色のようなブラウスが特徴的な少女は頭に被った赤帽子で顔を隠しながら……

(モブ如きが粋がって……、哀れですねぇ〜)

……笑いを堪えていた。

クスクスと笑いを堪える表情は少女特有の可愛らしさを持つ反面、隠しきれない黒い本性が滲み出ていた。

(あぁ、それにしても優希さんとジュニアユース選手権で戦うからと言って、少しでもお側を離れるのは寂しいものですね……)

顔を上げ、明後日の方向を見上げるその表情はなんとも言えない悲哀さと恍惚としたものが感じられた。

『志島北斗、常闇 冥。両名準備はよろしくですか?』

「あぁ、問題ない」

審判に二人とも名前を呼ばれ、北斗は即座に反応して言葉を返す。だが、常闇 冥と呼ばれた少女は上の空。心ここにあらずといった風貌だ。

(あぁ、優希さんが恋しいです。こんな奴、さっさと片して帰りましょう)

そして、何を隠そうこの少女ー常闇 冥ーは優希の憑きモノである『魔界発現世行きデスガイド』の精霊、通称デスガイドである。

今も優希の事を想い慕い、あらぬ想像に(ふけ)ってはいるがその実力は並の決闘者より遥かに上である。

「ふふ、戻ったら優希さんと……久々にちょっと強引にでも…「おい、君!準備はいいかね!」……ちっ」

審判の呼ばれ、強引に現実に引き戻された事が癪に障ったのか、小さく舌打ちをする。
そして、営業スマイルを対戦相手である北斗に向け、一言。

「精々、本気できてくださいね?じゃないとすぐに終わっちゃうので」
「っ⁉︎」

背中に氷水でもぶち込まれたような悪寒を感じ、後方に飛び退く。
一瞬だが、彼女の殺気に当てられた北斗にはたっぷりと冷や汗を流していた。

「まぁ所詮こんなもんですね。」

はぁ、ため息を吐くと審判に準備が終わった節を伝え、ようやくデュエルとなる。

「頑張りなさいよ!北斗!」
「オメェ、最近いいとこないんだからな〜!」
「煩い!外野は黙って見ろよ!」

観客席から真澄と刃が檄を飛ばす。
北斗もいつもの事なのか、皮肉には憎まれ口で返すとデュエルディスクを構え、相手であるデスガイドを見据える。

「それではデュエルを開始します。
ーーアクションフィールド、オン!」

宣言とともにアクションフィールドがセットされ、二人のいるデュエルコートが姿形を変えていく。

「発動、『星の聖域(コスモ・サンクチュアリィ)』‼︎」

天井は星々が燦然と輝く見事な夜空へと変わり、何もなかったコートには古代ギリシアの様な神殿が幾つもそびえ立つ。

「さて、始めましょうか。
伝統に集いしデュエリスト達が!」

声を大にしてお決まりの口上を口にする。

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞う!」

「見よ、これぞデュエルの最終進化系。アクションーー」

「「ーー決闘(デュエル)!」」


「私の先行!」

先行を取ったのは、デスガイドの方だ。だが、先行1ターン目のドローはないのでデッキからカードは引かずに進めていく。

「『闇の誘惑』を発動して、二枚ドロー!その後、コストとして『魔界発現世行きデスガイド』を除外します。」

デスガイドもとい、冥は己の分身とも言えるカードを躊躇なくコストとして除外する。
普段なら自信のカードをこんな風に使う事はまずないが、今回は別だ。

「手札から『トランス・デーモン』を召喚します。そして、カードを一枚伏せます」

些か派手さの欠ける立ち上がりだが、最後の仕上げとばかりにニヤニヤと、悪戯を思いついた童子のような笑顔を浮かべ、手札の一枚を発動させる。

「魔法カード『プレゼント交換』!」
「ぷ、プレゼント交換⁉︎」

意外なカードの発動に会場が一時騒然となる。
知る人ぞ知っているマイナーなカードなのだが、その効果は互いのプレイヤーはデッキからカードを一枚裏側で除外し、エンドフェイズ時に相手に渡す効果。
ある意味最強のサーチカードである。

効果の演出なのか、二人の目の前に蓋の開いた箱が現れる。どうやらここに入れろ、ということらしい。

さて、プレアデスはどんなカードを渡してくれるんですかね〜?まぁ、どうせ使えない上級モンスターでしょうが。

冥はデッキから主戦力である『暗黒界の龍神 グラファ』を入れると、何が贈られてくるのか予想する。
北斗もカードを選び終えたのか蓋が閉じ、それぞれの箱はリボンと包装紙により綺麗に梱包される。

「さて、私はこれでターンエンドです。そして、ターンの終わりに『プレゼント交換』の効果でお互いに除外したカードを手札に加えます。
一体どんなカードが贈られてくるんですかね〜。女の子の好きそうなカードだと嬉しいです」
「ふんっ、言ってろ」

再びプレゼント箱が二人の前に出現すると、リボンが勝手に解かれていき中に入っていたカードが互いの手札へと加わる。

「暗黒界……!ふん、噂通りか。だけど、僕には関係ない。ドロー!」

気合充分。威勢良くデッキからカードをドローする。

「いくぞ、僕のフィールドにモンスターが存在せず、相手のフィールドのみモンスターが存在している時、『セイクリッド・シェアト』は特殊召喚できる。こい、シェアト!」

星座の水瓶座が刻まれた瓶を持った少年が召喚される。
サイバー・ドラゴンと同じ召喚条件の割にレベル1、攻撃力は100と心許ないが、重要なのはそこではなく……

「『セイクリッド・グレディ』を召喚!そして効果発動!手札から『セイクリッド』モンスターを召喚する。僕は『セイクリッド・ポルクス』を召喚!さらにポルクスの効果発動!召喚成功したターンに『セイクリッド』モンスターを手札から特殊召喚する。僕は『セイクリッド・カウスト』を特殊召喚!」
「わー、めんどくさいですねー」

瞬く間に北斗のフィールドにモンスターが並ぶ。

「へぇ〜、北斗の奴いつも以上に張り切ってるじゃない」
「そりゃそうだろうよ。あの常闇 冥って奴今まで後行ワンキルやらしてんだろ?それに……」
「確か、北斗と同じエクシーズ使い……だったかしら?」
「ま、エクシーズ召喚コースの首席としては負けるわけにいかないんだろうぜ?」

そう言いながら視線を向けるのは、常闇 冥(デスガイド)である。
後行ワンターンオーバキルやら、エクシーズ召喚やら、良くも悪くも目立っていた。

「僕はカウストの効果発動!『セイクリッド』モンスター一体を対象にそのモンスターのレベルを1上げる事ができる。僕は『セイクリッド・グレディ』のレベルを1上げる!」

これでグレディのレベルは1上がり、レベルは5になる。

「さらに『セイクリッド・シェアト』の効果発動!自分フィールドに存在する『セイクリッド』モンスターと同じレベルにする。僕はグレディを選択し、シェアトのレベルは5となる」

これで北斗のフィールドには、レベル4と5が二体ずつ揃った事になる。

「僕はレベル5となった『セイクリッド・グレディ』と『セイクリッド・シェアト』でオーバレイ・ネットワークを構築!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!『セイクリッド・プレアデス』!」
「早速プレアデスのお出ましか!」
「もうほぼ予定調和みたいなものだけどね……」

セイクリッドの代名詞、プレアデスがフィールドに召喚されると観客となっているLDSから勇ましい声援が響く。

「まずはそのリバースカードを取り除こうか。プレアデスの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使い、フィールド上のカード一枚を手札に戻す。君のリバースカードを手札に戻してもらおうか?」

ヤケにキザったらしい台詞とともにプレアデスの剣から光が放たれる。

「おっと、チェーンです。リバースカード『マインド・クラッシュ』発動!
効果は知っていると思いますが、カード名を宣言。そして、そのカードが相手の手札にあれば、それを捨て、なければ私がランダムで手札を一枚捨てる。」

ピーピングとハンデスの二つが一枚でできるカードだが、失敗すればアド損。だけど、現在プレアデスの手札には私が渡したグラファが存在するためハズすことはまずない。

「私は『暗黒界の龍神 グラファ』を宣言!そして、もちろんありますよね?」
「ちっ……ほらよ!」

舌打ちを鳴らすと、冥から贈られたプレゼントを投げ返す。冥はそれを危なげなくキャッチすると、にこやかに微笑む。

「ありがとうございます。プレゼントついでに置き土産もどうぞ?」

直後、黒い稲光が夜空を駆け、プレアデスを撃つ。

「グラファは手札から捨てられた時、フィールド上のカードを一枚破壊します。よって、プレアデスを破壊!」
「くっ……」

エースモンスターを破壊されるも、まだモンスターが二体居るためかさして北斗に焦りは見られない。

「しょうがない。バトルだ!『セイクリッド・カウスト』で『トランス・デーモン』を攻撃!」
「ちっ……、『トランス・デーモン』が破壊されたことで除外された悪魔族を手札に加える。私は『魔界発現世行きデスガイド』を手札に加える!」
「それがどうした!『セイクリッド・ポルクス』でダイレクトアタック!」
「きぁあ⁉︎」

ポルクスの攻撃を直に喰らい、冥の華奢な体は大きく吹き飛ばされる。しかし、空中で体勢を立て直すと、地面に両脚と片手をついて着地する。そのアクロバティックな動きに観客から驚く声が漏れる。

「……マジで、やってくれましたね」

服についた手で埃を払いつつ、北斗を睨みつける。だが、残りライフに大きな差ができた事で心に余裕が出来たのか北斗に臆する様子は見られない。
今のラッシュで、冥のライフをきっかり半分、2000ポイントまで削ったのを確認し、客席にいる刃と真澄は小さくガッツポーズを取る。

「メインフェイズ2に移行し、僕はレベル4の『セイクリッド・ポルクス』と『セイクリッド・カウスト』でオーバレイ・ネットワークを構築!」

再び紅い渦が地上へと現れ、光球となった二体が吸い込まれていく。

「悪を滅する正義の光よ、ここに光臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4『セイクリッド・ビーハイブ』!」

二体目となるエクシーズモンスターが北斗のフィールドに君臨する。……と、同時に架空の宇宙(ソラ)に一筋の光が走る。

「よし、これでターンエンド!」

エンド宣言をすると共に流れ星が落ちた方向へと駆け出していく。北斗にとってこのアクションフィールドは大の得意ステージであり、アクションカードの効率的な確保の仕方は勿論知っている。しかし、冥はその事を知っておりながらも、暫し駆ける彼の背中を眺め、ゆっくりとターンを始める。

「そう急がなくてもいいのに。私のターン、ドロー。おっと、これは……」

たった今引いたカードを見て、一瞬だが、目を丸くする。しかし、ニヤリと口角を上げて笑みを浮かべる。

「私ってついてますねぇ。今引いた『RUM ー 七皇の剣(セブンス・ワン)』を公開します」

北斗へと見せつけるように、北斗七星の描かれたカードを掲げる。そして、そのカードを見た者達は絶句する。それは前回のデュエルで後行ワンターンオーバーキルの要因となったカードであるからだ。

「させるかよ!」

冥が『七皇の剣』を公開とするとほぼ同時に台座に祀られるように鎮座するアクションカードを引っ掴み、なんの躊躇いもなくそれを発動させる。

「アクションマジック発動『コスモ・アロー』!
このカードは通常のドロー及び効果で手札に加えられたカードが魔法カードの時、それを破壊する!」
「なんてことをっ⁉︎」

掲げられたカードの中心を寸分違わずに光の矢が打ち抜くと、冥から悲痛な叫び声が上がる。

「くっ、せっかくの浪漫を!もう許せないですよ!魔法カード『手札抹殺』発動!」
「ここでそれかよ‼︎」

北斗にとって最恐の手札交換カードが発動され、北斗は二枚、冥は三枚の手札を交換する。

「手札から捨てられた『暗黒界の狩人 ブラウ』と『暗黒界の術師 スノウ』の効果発動!スノウの効果により、『暗黒界の門』を手札へと加え、ブラウの効果で一枚ドロー!」

手札交換を行ったというのに、冥の手札は三枚から五枚へと増える。そして、その中からお目当のカードを見つけ出すとそれはもうにこやかに、ーー残虐なーー笑みを浮かべる。

「魔法カード『友情 YUーJOU』を発動します」
「ゆ、友情⁉︎」

敵同士なのに⁉︎という突っ込みが外野からちらほら聞こえてくるが冥はそれを完全に無視すると説明を続ける。

「私は北斗さんへと握手を申し込みます。そして、もしもあなたがそれに応じれば私と北斗さんのライフを合計し、それを半分にした数値となります」
「はっ?誰がそんなのするかよ!」

現在、北斗のライフは4000に対して、冥はその半分の2000なのだ。握手に応じるメリットなど北斗にはこれっぽっちも存在しない。しかし、北斗にそんな態度を取られても不機嫌になるどころかより一層笑みを深める。

「え、ナニ言ってんですか……?するんですよ、あ、く、しゅ」
「…………は?」
「『友情 YUーJOU』は私の手札に『結束 UNITY』が存在する時、それを見せることで強制となります」

北斗は公開された結束と友情の二枚を確認して、絶句する。
これでまた二人のライフ差は0へと戻る。

「ささ、握手しましょ?」

食虫花が甘い薫りで、獲物を誘うように、冥もまた満面の笑みーー通称営業スマイルーーを浮かべ、獲物(北斗)へと右手を差し出す。
さらにデスガイドが現界する際にモデルとしている自身のカード、『魔界発現世行きデスガイド』は愛くるしい姿で多くの若者を魅了する。そして、北斗もその例に漏れず、その笑顔を間近で見てしまったためか、頬を赤らめる

「……馬ッ鹿じゃないの?」
「おぉ、恐ぇ……」

それを見た真澄から半ば呆れられているのに気が付かず、笑顔を向ける冥へと手を差し出す。

「えぇ、握手に応じてくれてありがとうございます」

両者の手のひらが重なり、結ばれる。

ーーその瞬間

「っ⁉︎」

ーーニヤリと冥の口元が三日月を描く

「ギャァァアァァ⁉︎」
「えっ⁉︎」

直後、断末魔のような悲鳴がアクションフィールドないし、LDS全域へと響き渡る。

「く、ふふふフフ……」
「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
「ちょっ、どんな握力してんの」⁉︎」

北斗が絶叫を上げ続ける中でも、ミシミシッと骨が軋む音が客席までハッキリと聴こえてくることにギャラリーは皆、恐怖を抱く。

時間にして、僅か数十秒。されど、数十秒もの間、悪魔としか形容できない笑みを浮かべた冥によって手を握られ続けた北斗は解放された後、地面へと崩れ落ちる。冥は時折ピクリと動く北斗を見下ろすとこれまた満足気な笑みを浮かべた。

「なんなの、あいつ⁉︎」
「や、ヤベェ……!」

プレイヤーを物理的に痛めつける(握手)という行為を働いた冥に対し、激昂するところが見かけからは想像できない凶暴さに戦慄する真澄と刃。この決闘を観戦している他のLDS生も同じようで皆一様に右手を押さえている。

「さて、ヤる事はやりましたし。ぼちぼち開始しますかね……」

ふぅ、と一息ため息を吐くと今先ほど夜空を駆けていった星の下へと行く。

「ま、待て……!」
「あら、まだ息があったんですか……」

未だ右手に残る激痛に耐えながらもよろよろと立ち上がる北斗を一瞥し、少し驚く冥。しかし、彼の行動を阻むが如く地面が割れ、巨大な遮蔽物が現れる。

「フィールド魔法『暗黒界の門』発動!」
「くっ……!」

禍々しい彫刻の施された門が北斗の眼前へと立ち塞がり、冥への下へと行かせるのを阻む。

「『暗黒界の門』の効果を発動します。効果により、墓地から『暗黒界の狩人 ブラウ』を除外し、手札の『暗黒界の狩人 ブラウ』を捨て、一枚ドローします。さらに、今しがた墓地へと捨てられた『暗黒界の狩人 ブラウ』の効果によって一枚ドロー!
そして、手札から『魔界発現世行きデスガイド』を召喚します!さらに、このモンスターの召喚成功時、デッキまたは手札からレベル3悪魔族モンスターを特殊召喚します。来い、『暗黒界の狩人 ブラウ』!」

聖域の空間へと裂け目が生じ、ブラウとデスガイドを乗せた一台のバスが現れる。

「レベル3が、二体……!」
「Yes!私はレベル3のデスガイドとブラウでオーバレイ!時空を超え、現れよ!『虚空海竜 リヴァイエール』!」

嘶きを上げ、深蒼の海竜が時空の裂け目より踊り出る。

「さらにリヴァイエールのモンスター効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使用し、除外されているレベル4以下のモンスターを特殊召喚します。これにより私は『暗黒界の狩人 ブラウ』を特殊召喚!
さらに!私はフィールド上の『暗黒界』を手札へと戻し、このカードを墓地より特殊召喚します!ブラウを贄に復活せよ、『暗黒界の龍神 グラファ』!
「くそっ……!」

地面より青黒い炎が噴き出し、不滅の龍神が姿を現わす。

「『暗黒界の門』の効果により、フィールド上の悪魔族の攻撃力は300ポイントアップします。よって、グラファの攻撃力は3000となる!
さぁ、バトルだ!グラファで『セイクリッド・ビーハイブ』を攻撃!」

グラファから黒炎が放たれ、一直線「ビーハイブへと向かう。しかし、その光景を見て、ニヤリと北斗は笑う。
ビーハイブにはダメージステップ時にオーバレイ・ユニットを消費する事で『セイクリッド』モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる効果がある。これを発動すれば、グラファの攻撃力を上回り、返り討ち……、なのだが冥がそれを考えていないはずもなく……

「この攻撃宣言時、墓地から『ブレイクスルー・スキル』の効果を発動!ビーハイブの効果を無効に!」
「なにっ……⁉︎」

ビーハイブを覆う光は霧散し、黒炎の直撃を受けてしまう。
しかし、視界を覆う砂ほこりが晴れるとそこには無事の姿のビーハイブと、僅かライフを300だけ減らした北斗が立っていた。

「僕はアクション魔法『奇跡』を発動した!これにより、ビーハイブは戦闘で破壊されず僕への戦闘ダメージは半分となる」
「よしっ!ギリギリ間に合ったか!」
「ちっ……!」

暗黒界の門は北斗の行動を制限すると共に冥の視線から北斗の姿を遮断していたのだ。冥がアクションカードを取りに行く隙を狙い、北斗もまた別のカードを取りに行っていたのだ。
冥は盛大に舌打ちすると、面白くなさそうに口元を歪める。

「カードを二枚伏せ、ターンエンドです」

「僕のターンッ、ドロー!僕は『セイクリッド・ソンブレス』を召喚し、効果発動!墓地から『セイクリッド・シェアト』を除外し、墓地の『セイクリッド・グレディ』を手札に加える。さらにソンブレスの効果を発動したターン、『セイクリッド』モンスターを召喚できる。『セイクリッド・グレディ』を召喚!そして、グレディの効果により手札から『セイクリッド・アクベス』を特殊召喚!『セイクリッド・アクベス』は召喚・特殊召喚時、『セイクリッド』モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる!」

フィールドには四体のモンスターが並び、どれも攻撃力2000超えという盤面を一瞬のうちに作った北斗に対し、冥も彼の認識を改める。
先の物理攻撃で心が折れてもおかしくない、と思っていたのだがそれでもなお諦めず歯向かってくる姿は褒めてしかるべきだろうと。

「……そうでなくちゃ、面白くないですよ」

北斗の瞳に燃ゆる闘志を見つけ、冥も笑みを浮かべる。

「バトルだ!ビーハイブでグラファを攻撃!そして、オーバレイ・ユニットを一つ消費し、ビーハイブのモンスター効果を発動する!」

グラファへと特攻をするビーハイブを白い光が覆う。
ビーハイブの攻撃力は3400まで上昇し、グラファを上回る。

「喰らえ、ビーハイブ・クラスター!」

流星雨の如く無数の光の弾丸がグラファへと殺到し、その巨躯を蜂の巣にする。そして、冥のライフへと900ポイントのダメージを与える。

「さらにグレディでリヴァイエールを攻撃する!」
「ちっ……」

さらにダメージを加えられ、冥のライフは残り1800となる。そして、あと二体の直接攻撃が決まれば北斗の勝ちとなる。

「ソンブレスでダイレクトアタックだ!」
「よし、これが決まれば……!」

ソンブレスを高く跳躍し、冥へと向かう。だが

「やらせない!アクション魔法『スター・チェーン』!ダイレクトアタックを無効にし、そのモンスターは攻撃できなくなる!」
「なにっ⁉︎」

星々に編まれた鎖がソンブレスの体をからめ取り、地面へと縫い付ける。北斗の奮闘に皆視線を奪われ忘れられていたが冥は前のターンには既にアクションカードを確保しているのだ。そして、残る『セイクリッド・アクベス』の攻撃力は上昇値を含め1300。冥の残りライフに僅かに足らない。

「くそ、だめ押しだ!アクベスでダイレクトアタック!」
「ライフで受けます」


アクベスの攻撃が直撃した冥は流石に耐え切れず、きゃっと可愛いらしい声を上げ尻持つをつく。そして、ライフは僅か500のみとなる。

「メインフェイズ2に移行!僕はレベル4のアクベス、グレディ、ソンブレスの三体でオーバレイ!」
「……三体?」

赤い渦へと吸い込まれていく三つの光玉を見て、思わず首を傾げる。『セイクリッド』エクシーズモンスターにはレベル4を三体を必要するモンスターはまずいない。

「エクシーズ召喚!出でよ、星々の護り手!ランク4『星輝士(ステラナイト) デルタテロス』!」
「へぇ……テラナイトですか?」

セイクリッドと同じく、星座を冠するモンスターの登場に目を大きくする。

「デルタテロスの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使い、フィールド上のカードを発動する!僕はその伏せカードを破壊する!」
「おっと、チェーンして『暗黒界の軍勢』を発動し、墓地から『暗黒界の狩人 ブラウ』、『暗黒界の術師 スノウ』を手札に戻します」

デルタテロスの破壊効果もフリーチェーンによって難なく躱す。だが、悪魔でこれは経過の一つに過ぎない。

「僕は『星輝士 デルタテロス』一体でオーバレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!(せい)なる騎士よ、今此処に輝け!ランク5『星輝士(ステラナイト) セイクリッド・ダイヤ』!
「なるほど……、そうきましたか」

新たなエクシーズモンスターの登場に、北斗がゲームを有利な展開に持ち込んでいる事に会場が熱気が帯びる。

「さらに『セイクリッド・ビーハイブ』でオーバレイ・ネットワークを再構築!エクシーズ召喚!ランク6『セイクリッド・トレミスM7(メシエセブン)』!」

セイクリッド最強のエクシーズモンスターが揃い踏した状況に冥はやはり笑っていた。

「いいですね、これでこそやりがいがあるってものですよ……!」
「僕はカードを一枚伏せてエンドだ。やれるものなら、やってみろ!」

手札全てを使い切り、万全のフィールドを整えた北斗は今までにないほどに闘志に溢れていた。しかし、だからこそ倒し甲斐があるのだ、と内心で思う。

「ただのモブだと思っていたんですが……やればできるじゃないですか!だからこそ、ぶっ潰す!」

全く負ける気のない冥だが、暗黒界の切り札でもある『手札抹殺』は既に使い、さらにセイクリッドダイヤには闇属性モンスターの効果を無効にし、破壊するというメタ効果がある。そう易々と破れるものでないのは誰が見ても明らかだ。

「私のターン、ドロー!まずは魔法カード『暗黒界の取引』を発動!一枚ドローし、一枚捨てます」

手札交換を行い、何かを墓地へと送った様子の冥。もっともすぐにそれは明らかとなる。

「さらに『暗黒界の門』の効果を発動!ブラウを除外し、『暗黒界の武神 ゴルド』を捨て一枚ドロー!そして、ゴルドの効果発動!このカードを墓地から特殊召喚します!さらに『暗黒界の尖兵 ベージ』を通常召喚!」

門が開き、武神が尖兵を伴い戦地へと現れる。

「さらにゴルドを手札に戻し、グラファを特殊召喚!」
「くっ……!」

易々と展開を許してしまうが、だがこれだけでは終わらない。

「バトル!グラファでセイクリッド・ダイヤを攻撃!」
「その瞬間、リバースカード『エクシーズ・リボーン』を発動!甦れ、『セイクリッド・プレアデス』!」

此処に来て、北斗の代名詞であるプレアデスが復活する。

「攻撃続行します!グラファでセイクリッドダイヤを攻撃!」
「そして、プレアデスの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使用し、グラファを手札へと戻す!」

プレアデスにより、グラファが手札へと戻される。これで冥のフィールドには攻撃力の上昇したベージのみとなる。しかし、冥の余裕を含んだ笑みは未だ健在である。

「私は此処でリバースカード『リバース・リユース』を発動します。この効果により、北斗さんのフィールドに裏守備表示で『メタモルポット』を召喚します」
「なにっ⁉︎」

何をするか、など聞かなくても理解したのか北斗の顔から余裕が一切消え去る。
北斗のフィールドに置かれた『メタモルポット』は彼にとって災い(パンドラ)の箱に等しい。そして、それがいま冥の手によって開けられようとしているのだ。

「ベージでメタモルポットを攻撃!そして、リバースした(メタモルポット』の効果が発動!互いに手札を全て捨て、五枚ドローする!」

奇怪な笑い声をあげ、二人から手札を巻き上げていくメタモルポット。そして、決着をつけるため暗黒界の門より軍勢が姿を現す。

「手札から捨てられた暗黒界の効果を発動します。ゴルド、シルバ、グラファ、スノウ、ブラウの順に効果発動!」
「なんっ……!?せ、セイクリッド・ダイヤの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使用しブラウの効果を無効にし、破壊する!」

チェーンが組まれた以上、そこに割り込む事は出来ない。よって、セイクリッドダイヤで無効に出来るのはせいぜいドロー効果を持ったブラウくらいである。

その全貌を現した暗黒界の軍隊を見て、叫び声すらあげる事もままならない北斗。

「では、効果も出揃った事ですし、チェーン処理でもしていきましょう」

北斗にとって死刑宣告にも等しい、冥の言葉が発せられる。

「まずはブラウはダイヤによって無効にされます。次にスノウの効果により、二枚目のグラファを手札に加えます。さらに相手の効果のによって捨てられたため、もう一つの効果を発動します。貴方の墓地から『セイクリッド・カウスト』を守備表示で私の場に特殊召喚します。
次はグラファの効果により、セイクリッドダイヤを破壊します。そして、スノウと同様に第二の効果発動です。相手の手札をランダムに一枚選択し、それを確認。モンスターカードなら私の場に特殊切り札します」

茫然としている北斗の手札から一枚選び、確認する。

「選んだのは、『セイクリッド・グレディ』。モンスターカードなので私の場に特殊召喚します。
そして、シルバの効果を発動。このカードを墓地から特殊召喚し、さらに第二の効果によって手札を二枚デッキに戻してください」
「くっ……」

実質三枚のハンデスを受け、五枚あった手札は一気に二枚まで減ってします。もっともそれを使う事はないのだが。

「最後に、ゴルドの効果。自身を特殊召喚し、第二の効果によりプレアデスとトレミスを破壊します」

瞬く間に手札・墓地・フィールドのカードが荒らされ、あろう事か盤石な布陣を引いたはずの北斗のフィールドにはブラフの一枚すら残っていない。

「さて、可哀想なんでさっさと終わらせましょうか」

オーバーキルを仕掛けない事は冥の温情なのかもしれないが、相手の全力を正面から叩き潰し、絶望させるのも十分に酷な事だ。

最後に楽しかったですよ?と偽りではなく、心からそういうと側に控えているシルバとゴルドへと命令を下す。

「シルバとゴルドでダイレクトアタック!」

二体の攻撃は無慈悲にも北斗のライフを散らす。











 
 

 
後書き
本日のアクションカード
『コスモアロー』
アクション魔法
通常のドロー及び手札へと加わったカードが魔法カードの時、それを破壊する。

『奇跡』
アクション魔法
モンスター一体を対象に発動する。
そのモンスターは一度だけ戦闘で破壊されず、自分の受ける戦闘ダメージを半分にする。

『スターチェーン』
モンスターの直接攻撃時、その攻撃を無効にする。その後、攻撃を無効にされたモンスターは表側表示で存在する限り攻撃宣言を行えない。

というわけで、今回は他力本願軸暗黒界vs普通のセイクリッド、でした。
単に握手(意味深)したかっただけなんや……。

プレイングミス等あれば、ご報告よろしくお願いします。

ps:感想がこれば、次回の投稿が早まるかも……⁈

 
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