遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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十七話 ー襲撃犯、ですー
「おーい、ますみ〜ん!」
学校が終わり、下校しようと校門を出ると見慣れた後ろ姿を発見し、声をかければ物凄い剣幕で睨みつけられる。余談だが、真澄に睨みつけられ隊などという可笑しなファンクラブまであるらしい。
「……一緒に帰ろ?」
珍しく私から誘ってみると意外だ言わんばかりに真澄の顔に現れる。
いつもなら、学校が終われば自然な成り行きで一緒に下校する流れなのだが、ここ最近は気付けば私一人置いていかれている。
最近のトレンドや、スイーツとか……。その他にも色々と話したいこともある。だが真澄は気まずそうに目を伏せると断られてしまう。
「え……、ちょ、待ってよ!」
私を避けるようにして行こうする真澄の腕を半ば反射的に掴んだのだが、思い切り腕を振り払われ、体勢を崩しドテッと尻餅をついてしまう。そして、真澄は、私を見下すと、衝撃的な言葉を発する。
「しつこいのよ!」
「え……?」
不意に浴びせられた怒声に一瞬我を失う。
真澄はしまった、と表情に一瞬だけ出るがすぐに鋭い視線を私へと向けてくる。そして、少しの間を置き、重々しい雰囲気を醸し出し、口を開く。
「今まで仲良しごっこしてきたけど、所詮、私とあんたは敵同士なのよ!これ以上、関わらないで!」
「……え」
仲良しごっこ?敵同士?
思わず自分の耳を疑いたくなる様な言葉の羅列に思考が完全に凍結する。
「え……ちょっ!」
そして、正気に戻り、再度呼び止めようとした時には既に友人の背中は遠くなっていた。
『ありゃりゃ〜、フられちゃいましたね〜』
なんなら私が慰めてあげましょうか、もち夜の方も大歓迎ですよ!といつもの軽い調子で絡んで来ながら、デスガイドが側に現れる。
『……けど、最近おかしいですよね、真澄さん。普通、あんな風に距離を置くような事はしないはずですし。それに、クラスでも何か、焦っているような感じがしましまたね』
「……それは、私も思った」
急に真剣な声音になったデスガイドだが、彼女の意見には同意する。普段なら私含め仲の良いグループで談笑でもするのだが、ここ最近は近寄り難い雰囲気を出しているのだ。
しかし、真澄がこうなってしまった原因が思い浮かばない。
「おい、優希じゃねえか」
「……ん?」
思考にふけっていた時、不意に背後から声をかけられる。どこかで聞き覚えのある声だが……、
「……なんだ、沢蟹か」
「カニ⁉︎沢渡、様だ!」
素早いツッコミを返して来たのは、いつしかの沢渡 シンゴだった。肩に制服を引っ掛けるとなんともキザなポージングで私の前に立つ彼だが、何か足りない気がする。
「あーー……、取り巻き'sは?」
「ん……、あいつらは赤点取って学校で補習だ」
「三人共仲良いね〜……」
(ぱっと見、阿保そうな)お前は大丈夫なのか、と聞くまでもなく「ま、完璧超人な俺様ならノー勉で赤点回避だけどな」とドヤ顔を添えて教えてくれる。
もっとも、自分で言ってしまう辺り、残念なキャラになってしまうのだが。
(残念系)完璧超人こと、沢渡は本題を思い出したのか、コホンと咳払いをした後、真剣な表情を作り、
「ちょっと、お茶でしねぇか?」
「は……?ナンパ?」
「違うわ!」
沢渡曰く、落ち着いたところで話がしたいとのこと。なにやら、真澄にも関係しているらしい。先ほどの一件もあり、聞かないわけにもいかず案内されるがままについて行く。
◆◇◆
『ジーーー…………』
「…………」
沢渡に連れられ、近場のカフェに来たわけだが先ほどからデスガイドから照射される追求の視線が煩わしい。具体的には、沢渡と会った時からジト目で睨まれてるわけだが、いかんせん精神的に悪い。
かれこれこの状態が、数十分が続いており、いい加減どうにかできないかと思っていた時にちょうどトレイに飲み物とケーキを載せた沢渡がやってくる。
「よぉ、待たせたな」
「いや、けどホントに奢りでいいの……?」
「は?俺様の財布事情舐めんなよ?たかだか女子一人に一回奢るくらい屁でもないぜ」
「……さいですか」
タダほど安いものはない、とよく言うのでここは素直に沢渡の親切を受け取る事にしておく。沢渡が注文してきたのは、苺の乗ったショートケーキと香り豊かな紅茶。シンプルイズザベストを体現したような組み合わせだ。
「あ……、美味しい」
沢渡に勧められるがままにショートケーキを一口。
スポンジのふんわりとした食感に、程よく甘いクリーム。そして、スポンジの間に挟まれた苺ジャムの甘酸っぱさがクリームとなんとも言えない調和を醸し出している。
一口二口と味わい、うっとりとしているとこちらの様子を伺っていた沢渡と目線が合い、急に恥ずかしくなってしまう。
「……どうだ落ち着いたか?」
「え……?」
沢渡からかけられた意外な一言に思わず声が漏れる。
そういえば、先ほどまで真澄の事で悩み、落ち込んでいたのだが少し楽になった気がする。
「ま、情緒不安定の時は甘いものを食べるに限るからな」
「……ありがと」
……沢渡の癖に、と心の内で呟くが口から漏れたのはそれとは正反対の感謝の言葉だった。沢渡に気を使われていた事が癪だか、その優しさは嬉しかった。
「で、話ってなんなのさ」
「あぁ、そういやそうだったな」
ケーキを食べ終え、ようやく本題へと入る。
一段と真剣な表情の沢渡は、紅茶で口を潤した後、真剣な声音で尋ねてくる。
「おまえ、最近舞網市内で次々とデュエリストが襲われてるっていう噂は知ってるか……?そして、襲われてるのが決まってLDSの生徒って事も」
「え……、それってどういう……」
LDSを狙った襲撃犯、全くの初耳だったその話は私を狼狽させるのに十分過ぎる程だった。そして、ようやく真澄の行動の理由が見えてくる。
「……まさか」
「あぁ多分お前の考える通りだぜ。その襲われたデュエリストの中に、真澄の師匠がいる」
「……やっぱり」
沢渡の言葉によって、予想は確信へと変わる。
外見はクールかつ毒舌家な真澄だが、何かと友達想いな彼女の事だ。お世話になった人が襲われたと知ったら、仕返しに行きそうだなとは思っていた。けど……
「……なんで私を頼ってくれないかな」
漏れ出た言葉自分でも驚くほど弱々しいものだった。
今思えば、真澄にここぞという時に頼ってもらえず、悔しかったのだと思う。
確かに私と真澄は敵塾同士だが仲良しだと思ってるし互いに頼りにしていると思っていた。けど、それは違くて私が勝手に親友だと思っていて烏滸がましいにもほどがある。
「それは……違うだろ」
「え……?」
沢渡の言葉に耳を疑う。
「真澄はおまえが遊勝塾の人間だからとか、信用できないとかっていう理由で頼らなかったわけじゃないってことだよ。むしろ、逆だろ。あいつは、おまえに迷惑かけたくないから話さなかっただけだ!」
断言した沢渡の力強い言葉に少し気持ちが救われた気がした。
「けど、迷惑なんて……」
「もし、真澄になんかあったらおまえどうするよ」
「そりゃ、もちろん敵討ちする……」
「だからだよ」
沢渡は呆れた様につぶやく。紅茶で喉を潤すと淡々と語っていく。
「おまえは確かに強いし、LDSを襲ってる奴を倒せるかもしれねぇ。けど、あいつはそれを、おまえを巻き込む事を望んでねえんだよ。これは、あくまでもLDSの問題なんだよ」
「…………」
神妙そうに呟く沢渡。彼も思うところがあるのだろう、と思い何もできない事に歯痒さを感じているとダンッと苛立たしげに音を立て、沢渡が立ち上がる。
「お前……、本当にそれでいいのか」
「え……」
沢渡に怒鳴られ、思わず目を丸くする。だが、そんな状態な私などお構いなしに沢渡は言葉を続ける。
「お前なら、あいつが危険な事に首を突っ込もうとしてんなら、相手の事情なんてお構いなしに乱入すると思ってたんだがな……」
「な……」
沢渡の辛辣な言葉に言葉を失う。そんな私を見かねたのか、がっかりだぜと呟くと去って行ってしまう。
一人残された私は、呆然としながら、デスガイドへ声をかける。
「ねぇ、私ってそんなに変だった、かな?」
『えぇ、かなり。まぁ、優希さんの気持ちも分からないわけでもないですけどね〜』
相変わらず軽い調子の声音だけど、私を冷静な気持ちにさせるには十分だった。
思い返せば、授業後に真澄に冷淡な態度を取られてから様子がおかしかった気がする。
「目が曇ってるのは、私かもね……」
自嘲気味な笑いを浮かべる。
そして、沢渡に言われた言葉を理解する。
いつもの私なら、真澄が仇討ちに行こうと知った時点で話など聞かず、彼女を止めるなり、その勝負に乱入するなりしていただろう。
「……デスガイド」
『はいな?』
「……行こう!」
『えぇ、その言葉を待っていましたとも!』
デスガイドが力強く頷くと、彼女の影が四方に千切れ、飛んで行く。
『場所はすぐにわかります』
「うん、ありがと」
一言礼を言うとそのまま店を後にする。既に空は暗がり始め、不穏な気配を漂わせていた。
ーー絶対、無事で居てよ!!
◆◇◆
時は少し遡り、左右を建物に囲まれた路地にて、三人と一人のデュエリストが対峙していた。三人組の方は言わずと知れたLDSの各召喚コースの首席、真澄、北斗、刃の三人だ。そして、彼女らが見据える先にいるのは黒い外套を羽織った青年。そして、彼こそが最近LDSを襲撃している犯人であり、三人のターゲットである。
そして、師匠であるマルコ先生を襲われた真澄は一際強い視線で男を睨みつけていた。
「おい詰めた……!」
「…………」
男の背後に続く路地には行き止まりがあるのみで、他の道へと続く道は三人ががっちりとガードしている。しかし、三対一という圧倒的な不利な状況に置かれているのに関わらず、男に焦りは微塵も感じられない。あるのは、刺すような殺気と、ある目的を遂行するための執念だけだ。そして、男はデュエルディスクを構え、吠える。
「お前らLDS如きが何人増えようと変わらない!纏めて片付ける!」
「っ!行くわよ、刃!北斗!」
「「おう!!」」
左右に立つ二人から威勢のよい声が響く。
ーー絶対に、絶対にマルコ先生の仇を討つ!
『決闘!!』
「先行は私がもらう!手札から『ジェムナイト・フュージョン』を発動!手札の『ジェムナイト・サフィア』と『ジェムナイト・アイオーラ』を融合!」
「っ!融合、召喚ッ!」
冷静を装う男の表情に憤怒の感情が交ざる。だが、そんな事は知った事ではない。
「勇敢なる青き魔石よ!今ここにその武勇を示せ!融合召喚!『ジェムナイト・アクアマリナ』!」
召喚条件の緩さとは逆にタイミングを逃さないバウンス効果と守備力の高さを誇るアクアマリナ。1ターン目からの融合召喚に左右からよしっ、と小さく意気込むのが聞こえる。
「さぁ、あんたのターンよ」
「おのれ、俺らの敵め……。俺のターンッ、ドロー!」
敵愾心を込めた視線で真澄を睨む。
「俺は手札から『RR ー トリビュート・レイニアス』を召喚し、効果発動!デッキから『RR』カードを墓地へと送る。俺は『RR ー レディネス』を墓地に送る。さらに俺のフィールドに『RR』モンスターが存在することにより、『RR ー ファジー・レイニアス』を特殊召喚できる!来い、ファジー・レイニアス!」
「っ!レベル4のモンスターが二体!」
三人は早々と並んだ同レベルモンスターを見て、驚愕すると共に理解する。この男の実力は並ではない。
伊達にLDSの生徒を襲い、打ち倒してきただけはあると。
「レベル4のトリビュート・レイニアスとファジー・レイニアスでオーバレイ・ネットワークを構築!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!『RR-フォース・ストリクス』!」
陽の光が届かない薄暗い路地裏を颯爽と飛翔するのは、夜の狩人の異名を持つフクロウ。今一度大きく羽ばたくと、男のフィールドで滞空する。
「フォース・ストリクスのモンスター効果を発動!オーバレイ・ユニットを一つ使い、デッキから闇属性・鳥獣族モンスターを一体手札へと加える。俺はデッキから『RR ー バニシング・レイニアス』を手札に加える。さらに!オーバレイ・ユニットとして墓地に送られたファジー・レイニアスの効果により、同名カードをデッキから手札へと加える」
二度のサーチ効果により、実質手札消費を0となる。展開の鮮やかさにおいて、同じエクシーズ使いである北斗も舌を巻く程だ。だが、それをよしとしないのが真澄だ。
「なに、先にエクシーズ決められてんのよ!わかってるでしょうね!」
「お、おう……。次のターンに華麗なエクシーズコンボを披露してやるから、みとけ!」
売り言葉に買い言葉。真澄の叱責に半ば反射的に返すが、先にエクシーズ召喚を決められているが北斗からは余裕が感じられる。
「俺はカードを二枚伏せ、ターンを終える」
「みてろよ!僕のターン、ドロー!相手の場のみにモンスターが存在する時、手札から『セイクリッド・シェアト』を特殊召喚する!さらに『セイクリッド・ポルクス』を召喚し、効果発動!もう一度『セイクリッド』モンスターを召喚できる。『セイクリッド・グレディ』を召喚!さらにグレディの効果により、手札から『セイクリッド・カウスト』を特殊召喚する!」
瞬く間に4体のモンスターがフィールドへと並んだ光景を見て、一先ず納得する真澄。これで、エクシーズ使いとしてのメンツは保たれた、と思ったのか安堵の息を吐く。しかし、男はそれを見て、落胆のため息を漏らす。
「……闘いの場において、ため息か。腑抜けているにも、ほどがある」
「っ!なに⁉︎」
挑発するように放たれた言葉はいとも簡単に北斗を激情させる。いつもならここで真澄から皮肉の一言二言、飛び出すところだが、今はそんな状況ではない。
「すぐに吠え面かかせてやる!僕はカウストの効果発動!グレディとカウストのレベルをそれぞれ1上げる!」
カウストの弓が空へと放たれ、二体に光が降り注ぐ。星の恩寵を受けたグレディとカウストのレベルが5へと上昇する。
「僕はレベル5となったグレディとカウストでオーバレイ・ネットワークを構築!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!『セイクリッド・プレアデス』!」
紅い光の渦から現れたのは、北斗が絶対的な信頼を寄せるプレアデス。
「まだ僕のターンは終わらない!シェアトの効果発動!ポルクスを選択し、シェアトのレベルを同じにする!そして、レベル4となったシェアトとポルクスでオーバレイ!現れよ、ランク4『セイクリッド・オメガ』!」
「よっしゃ、決まったぜ!二連続エクシーズ!」
見たか!と言わんばかりに活気付く三人。しかし、男の冷淡な態度は微塵も崩れず、それどころか落胆したような表情を見せる。
「ムカつくんだよ、その態度!僕はプレアデスの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使い、フォース・ストリクスを手札に戻す!」
「ちっ……」
唯一のモンスター、フォース・ストリクスをエクストラデッキへと戻された事に対してか、男は小さく舌打ちをする。
「僕はこれで、ターンエンドだ。刃、決めてやれ!」
「おう!まかしときな!とびっきりのをくれてやるぜ!ドロー‼︎」
真澄、北斗からバトンを受け継いだ刃は猛獣のような獰猛な笑みを浮かべ、デッキトップへと指をかけ、ドローする。
そして、それを確認した北斗はあらかじめ立てておいたプランを実行する。
「僕はこのスタンバイフェイズに、プレアデスの効果発動!オーバレイ・ユニットを一つ使用し、お前の伏せカードを手札に戻す!」
「ナイスだぜ、北斗!」
二枚の伏せカードの内、一枚が取り除かれ、男を守るカードは一枚のみとなる。
「先ずは『おろかな埋葬』を発動して、『X セイバー レイジグラ』を俺は手札から『XXー セイバー ボガーナイト』を召喚し、効果発動!手札からチューナーモンスター『X ー セイバー パシウル』を特殊召喚する。さらに俺のフィールドに二体以上の『Xー セイバー』が存在することにより、手札から『X ー セイバー フォルトロール』を特殊召喚する!そして、フォルトロールの効果発動!墓地からレイジグラを特殊召喚するぜ!」
先の北斗のターン同様、複数のモンスターがフィールド上へと並ぶ。だがここまではただの準備段階である。
「俺はレベル2のチューナー『Xーセイバー パシウル』でレベル7の『XX ーセイバー フォルトロール』にチューニング!」
「……ほう」
パシウルが緑光を放つ輪へと分かれ、フォルトロールの通過する。直後、輪の中心を貫く極光が周囲を眩しく照らし出す。
「白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよ!レベル9!『XX-セイバー ガトムズ』!」
刃の十八番、シンクロ召喚により強力無比のモンスターがフィールドへと君臨する。
「俺はガトムズの効果発動!レイジグラをリリースして、あんたの手札一枚をランダムで捨てさせる!」
ガトムズが身の丈ほどある大剣を振り下ろし、斬撃が男を襲う。
「その程度……、小手先だけの戦術など数多の修羅場をくぐり抜けてきた俺らには効かん!リバースカードオープン!『ブレイクスルー・スキル』発動!その効果により、ガトムズの効果を無効にする!」
「っ!」
しかし、直撃する瞬間、霞のように消え去ってしまう。
真澄、北斗、刃が考えた必殺コンボのうち、一つを見事に破られ、焦りが生じる。そして、男はそれを見透かしたかのように鼻で笑う。
「やはりな……。お前達には、命を賭して闘う覚悟など、微塵も感じられない!仲間の復讐の為などほざいておきながらこのざまか」
ガッカリだ、と首を横に振る。
しかし、ここまでバカにされ、黙っている三人ではない。もともと3対1と圧倒的なアドバンテージがある事を思い出し、多少の余裕が見られるようになる。
「あとは、頼んだぜ真澄!俺はこれでターンエンドだ」
「えぇ、決めてやるわ!ドロー!」
勝利の為のバトンを真澄へと回す。そして、フィニッシャーの役割をもっている彼女は自らを鼓舞し、ドローする。
「まずは墓地の『ジェムナイト・サフィア』を除外し、『ジェムナイト・フュージョン』を手札に加える。そして、『ジェムナイト・フュージョン』を発動!手札の『ジェムナイト・ラピス』と『ジェムナイト・ラズリー』を融合!」
二体の魔石が極光を放ち、交じり合い、深青の光を放ち新たなモンスターが真澄のフィールドへと降り立つ。
「神秘の力秘めし碧き石よ。今光となりて現れよ! 融合召喚! レベル5!『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』!
そして、墓地に送られた『ジェムナイト・ラズリー』の効果により、墓地の『ジェムナイト・ラピス』を手札へと戻す。さらにラピスラズリーの効果発動!エクストラデッキから同名モンスターを墓地へと送り、フィールド上に特殊召喚されたモンスターの数×500ポイントのダメージを与える!」
「無駄ッ!俺は墓地から『RRーレディネス』の効果を発動する!」
「っ!墓地からだとっ!」
ラピスラズリーの放った極光も男を護るように張られた障壁に遮られてしまう。
「このカードを除外することにより、このターン俺はいかなるダメージをも受けない!」
「そ、それじゃあダメージを与えられないじゃない!」
「い、インチキ効果もたいがいにしやがれ!」
男は、北斗の放った言葉も鼻で笑い、一蹴する。
「ふん、やはりお前らには鉄の意志も鋼の強さも感じられん!さぁ、何もできないならば、潔くターンを渡せ!」
「くっ……、ターンエンドよ」
悔しそうに歯噛みしつつ真澄はターンを明け渡す。
「俺のターン、ドローッ!腑抜けた貴様らに見せてやる!俺ら反逆者のデュエルを!フィールド魔法『ブラック・ガーデン』発動!」
「っ!」
突如として、左右を建物に挟まれた路地は黒い荊へと覆われ天然の檻と化す。
「この効果により、召喚・特殊召喚が行われた時、そのモンスターの攻撃力を半分にし、さらに相手の場に攻撃力800のローズ・トークンを召喚する。
そして、手札から『RRーバニシング・レイニアス』を召喚!この瞬間、『ブラック・ガーデン』の効果が発動され、バニシング・レイニアスの攻撃力は半減し、貴様らの場にローズ・トークンが召喚される!」
真澄、北斗、刃のフィールドへと黒い薔薇が凛として咲き誇る様はどこか不気味である。
「さらに、バニシング・レイニアスの効果発動!手札からRRモンスターを特殊召喚できる。俺はもう一体のバニシング・レイニアスを特殊召喚!さらに『ブラック・ガーデン』の効果発動!
さらに、二体目のバニシング・レイニアスの効果を発動し、手札から『RRー ファジー・レイニアス』を特殊召喚する。そして、再び『ブラック・ガーデン』の効果発動!
「くっ……」
二体、三体とローズ・トークンが現れ、次第に真澄達のフィールドが埋められて行く。
そして、男のフィールドにレベル4のモンスターが三体並ぶ。
「レベル4の『RRーバニシング・レイニアス』三体でオーバーレイ・ネットワークを構築!!」
三人が見据える先で、紅い渦が展開され、三つの光球が吸い込まれていく。
「雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!『RR-ライズ・ファルコン』」
男の力強い口上と共に、光が弾け、一体のハヤブサが夜の帳が下りた空を駆ける。
「新たなモンスターが召喚された事により、『ブラック・ガーデン』の効果が発動される」
4体目のローズ・トークンが召喚され、遂にフィールドを埋め尽くされる。
「だ、だけどそのモンスターの攻撃力はたった50じゃないか!」
「それが甘いと言っている!俺はオーバーレイ・ユニットを使用し、ライズ・ファルコンの効果発動ッ!特殊召喚されたモンスター一体を対象に発動する。このモンスターはターンの終わりまで選択したモンスターの攻撃分アップする。
俺は『XXーセイバー ガトムズ』を選択し、その攻撃力を加算する!」
「なっ⁉︎」
攻撃力50だったライズ・ファルコンはガトムズの攻撃力が加算された事により、攻撃力3150まで跳ね上がる。
「さらにライズ・ファルコンは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃する事が可能!殲滅しろ、ライズ・ファルコン!」
嘶きを上げ、体から紅い残滓を振りまきながら上空を駆け上がる。
「喰らえ、ブレイブクロー・レボリューションッ!!」
「っ!うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
「北斗っ!」
遥か上空からの急降下し、限界まで加速すると、暴風を巻き起こしながら北斗のモンスターを蹴散らしていく。そして、余りあるダメージはそのまま北斗へと襲いかかり、その体を紙のように吹き飛ばし、建物の壁へと叩きつける。
そして、ライズ・ファルコンは一度上空で体を翻すと次の獲物へと狙いを定め急降下を開始する。
「次はシンクロ使いの、貴様だ!ブレイブクロー・レボリューションッ!」
「ぐ、ォォォォォォ⁉︎」
一瞬衝撃に耐える素振りを見せるも、やはり耐える事はできずに北斗同様に吹っ飛ばされ、背中を強打し、気を失う。
「さぁ、最後は貴様だっ!」
「くっ……」
北斗、刃を蹂躙したハヤブサは今一度上空で体勢を整え、降下し始める。対する真澄は、気持ちだけでも負けないためか、自らを蹂躙しようとする俺とハヤブサを睨みつけている。
「融合め、俺らの故郷を蹂躙した報いを受けろ!やれ、ライズ・ファルコン!」
主人の命令を受けたライズ・ファルコンは翼を大きく羽ばたかせ、一陣の風となり、真澄を強襲する。
「ブレイブクロー・レボリューションッ!!」
「くぅ、きゃァァァァァァァァ!」
ライズ・ファルコンの一切の慈悲なき攻撃は容赦無く真澄を襲い、その華奢な体を宙へと浮かせる。
「ぐっ……、うぅ……」
一瞬の浮遊感の後、硬いコンクリートの地面へと思い切り背中から叩きつけられ、苦しそうに呻く。そして、真澄は霞む視界の中で彼女と男を遮るように現れた人影を見る。
「真澄ッ!?」
「……ゆ、うき。なん……」
自分の名前を呼ぶ親友の声が届く。しかし、何かを言い切る前に視界は暗転し、意識を手放す。
◆◇◆
「なんっ……真澄……!」
アクション映画さながらに建物の屋上から飛び降り、真澄達と例の襲撃犯との間に降り立った優希はそこに広がっている異様な光景に言葉を失う。
北斗、刃、真澄は三人が三人とも体中に小さな切り傷を負い、気を失っている。
「真澄!しっかりして……!」
気を失い、倒れ伏す真澄へと駆け寄り抱き上げ、揺すりいくら呼びかけても返事がない。しかし、意識は無くとも息はある事を確認しひとまず安堵する。しかし、それも長くは続かない。
「貴様も、そいつらの仲間か」
見下した視線を送るその男を気丈にも睨みつける。真澄達が傷だらけの中、その男に目立った外傷は無く無傷でそこに立っている事から、数という不利を覆し、そして、それぞれが各召喚のエキスパートである三人を圧倒し、蹂躙したという事実を理解する。
そして、事態を把握すると共に仲間を、親友を傷つけられた事実に優希は止めようのない怒りが込み上げ来るのを実感する。
「お前は、お前だけは……!許さない!」
まさしく怒髪天を突くが如く怒りの感情を露わにした優希は叫び、そして、彼女を中心として風が渦巻く。
「そうか、ならばどうする」
対する真澄達を蹂躙した男は冷静に激昂する優希を睨みつけている。
「お前をぶっ潰す!」
轟ッと唸りを上げ一際激しく男の体へと突風が叩きつけられる。たじろぐもののそれも一瞬の事。男は獰猛な、それでいて冷酷な感情を瞳に宿し、襲いかからんとする優希を見据えている。
「お前は他の奴らとは違うようだな」
「……煩い!」
既に優希はデュエルディスクを構えていた。そして、男もデュエルディスクを構え直す。
「……覚悟しろ!」
『決闘!!』
後書き
ワンターンスリィィ⤴︎⤴︎キルゥゥ⤴︎⤴︎!
鮮やか過ぎて、満足街のリアリストもびっくりですね。
それでは、感想待ってます。
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