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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第83話 本当の家族


リュウキとレイナの2人が、互いに小指を絡ませ、約束をしたその後の事。

「それにしても……」

 リュウキはある事を考えていた。

「……えっ? どうしたの?」

 レイナはリュウキが考え込んだ姿を見て 少し不思議に思ったようだ。だからリュウキに、聞き返していた。リュウキは、レイナの方を向くと。

「さっき、いや……あの時レイナは《倫理コード解除設定》の事を言っていただろう? その事を少しな……」

 真顔で真剣そのものでリュウキは……話す。でも……レイナはそうはいかない。その解除設定が何を意味するのか、知っているから。……身を持って知ったから。

「えッッ!!!」

 だからこそ、その言葉を訊いた瞬間、レイナの心臓がドキンっ! っと強く脈打った。
 よくよく考えたら、リュウキが口にしているそれは、さっき、《2人の秘密》として、交わしたばかりの事だった。

 それを、はっきり言ってしまうと、所謂《男女の夜の営》の事なのだ。

 《それ》を行うにはオプションメニューの凄く深い所に有る《倫理コード解除設定》。それは、本当に面倒くさい操作をしないといけない場所。普通にプレイしていれば、まずたどり着かないだろう場所。……それを解除する事によって名の通り倫理を外すことが出来るのだ。

 つまり……はっきり言うと所謂《♡デキる♡》と言う事だ。

『成人にまだなってない、良い子は意味が解らなくてもお父さんやお母さんには尋ねてはいけないよ~約束だからね♪』


 とまぁ、そんな訳で、レイナはリュウキから、その事を訊いて、思わずテンパってしまってった様だ。

「どどど……///どうしたのっ? え、えっと もう、設定は元にも、戻したよっ……//」

 更に更にレイナは挙動不審になる。
 滅茶苦茶慌てているようなので、口もしっかり回っていない。リュウキは、その彼女を見て“はッ”として直ぐに両手を振った。

「あ、いや、……違う違う。その言葉、その設定の真意を。この世界を作った茅場の事、考えてたんだよ……」
「……え?」
 
 レイナは、思ってもいない言葉がリュウキから帰ってきたから……少し冷静に戻れたようだ。レイナが落ち着いたのを確認したリュウキはそのまま続けた。

「……あの男は『目的は達した』そう言ってた。それが、あの場に現れたあの男の初めに言っていた言葉だ。……それを考えていた、この世界そのものを、仮想世界を限りなくリアルにする為にその設定を作った……って思うんだ」

 最後にレイナの目を見て言った。

「現実でも、その……《男女の秘め事》。それは勿論あると思う。……けど、ゲーム内で、それもMMO内では、そんな事する必要性ははっきり言えば無いって思う。《結婚》と言うシステムは、これまでのMMOでもあったと思うけど、その……そこまでは、別にって。でも……」

 リュウキは考えをめぐらせた。世界を創造する事が目的なら、更に追求しなければならない事があるだろうから。

「……作る事で、さらに近づけたんだって思った。《仮想空間》が《現実世界》に。この世界があの男にとっての《全て》。……ここが《現実》なんだろうな……って、思って」

 リュウキはそう言っていた。

「うん……リュウキ君の言う事、私も判るよ」

 レイナも頷いた。
 この世界で、愛して……そして告白し、受け入れられて、そこから先もあるんだから……。
 互いに愛し合ってゆく事ができるんだから。
 それがもし……ただのゲームだったとしたら? それは遊びであって、ゲームでもあったとしたら?
 愛を育むことなんて出来やしないって思えた。レイナも強く同調するけど、それでも。

「でも……「勿論」ッ」

 レイナが言う前にリュウキは言った。

「……ここではない。《現実世界》に、オレ達は帰らなければならないんだ。……絶対に現実の世界に」

 リュウキはそう力強く言い、更に続けた。レイナの顔をしっかりと見つめて。

「オレは……キミを必ず還してみせる。レイナを、勿論この世界のかけがえの無い人たちもきっと……」

 リュウキはそう続けた。
 穏やかにそう言うその瞳の置くには固く、強い決意をみなぎらせていた。そう、帰らなければならないんだ。リュウキは、この場では言わないようだが、もう1つのある事実もリュウキには解っていた。今の日本の医学の全てを結集したとしても……、出来得ない事はある。……この世界での絶対のタイムリミットの存在があるんだ。それは悪戯に不安を煽るだけだから言わなかった様だ。

「うん……。でもね」

 レイナは椅子から立ち上がり、テーブルに身を乗り出し……。リュウキの額に、自分の人差し指を当てる。

「私だけじゃないよ? ……リュウキ君も、一緒に……だからね? 絶対だよ?」
「……ああ。勿論だ」

 レイナの言葉に リュウキは頷いた。その言葉はとても自分の力になった。だからこそ……今日一日を頑張れるって思えたんだ。






 その後、暫くしてアスナが帰って来た。
 レイナは照れくさそうだったが、ちゃんとこの事をアスナに報告をしていた。……リュウキと結婚をした事を。想いが叶った事を。

 アスナは、既に解っていたようだ……。

 なぜなら……一目瞭然だったから。
 2人の表情を見たら誰だって解るって思えるんだ。昨日、この家に帰ってきた時の2人より、昨日より今日の方がずっと笑顔の質が上がっていたのだから。

 だから、アスナは 2人に最大級の祝福をしてくれた。

 そして祝福後……リュウキに釘をさしていた。

「……リュウキ君? レイを泣かせたら許さないからね?」

 そのアスナの言葉。
 それは勿論だと、リュウキは即答した。レイナは何よりも大切な人だから……と。泣かせたりなんて、したくないしさせたくない……と。

 そしてアスナはそれを聞くと更に続けた。

「リュウキ君は、ず~~っと迷宮区に篭ってる時がよくあるんだから、結婚した以上は、ちゃんと帰ってあげてね? レイの側に……。お願いだよ?」

 アスナはリュウキにそうも言った。それはアスナ自身の願いだって思える。……リュウキの行動には理由が勿論有る。だから、効率良く探索するにはそれが最も有効だから行っていた。

 でも、結婚をしたのだから、話は別だ。

 リュウキは、レイナとの時間も大切にしたいと考えていたからだ。だからアスナのその言葉。それをリュウキはニコリと笑って了承していた。レイナはとても、笑顔で喜んでくれていた。

 アスナの笑みは、まるでレイナの保護者の様だ。娘を心配する母親。それが一番当てはまる。そんな笑顔だった。その後も、アスナは続けた。

「あーそうだ。後、家だよ! ほら、新居もちゃんと考えないとね?」

 アスナがウインクしながらそう言った。

「……え? 私は別に……あ、でも……お姉ちゃんが嫌……かな?」

 レイナは少し暗めにそう言う。
 姉がそんな事……思うとは思えないけれど、やっぱり迷惑をかけてしまうかもしれない事実はあるからだ。でもアスナは首を振った。

「い~や、全~然、私は大歓迎だよ? ……でも、やっぱり新婚さんは新居じゃないとって思ってるだけだよ。レイナも同じでしょ?」
「あっ……うん///」

 アスナの言葉にレイナは顔を赤くさせていた。確かに、それは自分も思っている事なのだから。

「……成る程、そう言うものか」

 リュウキは、また1つ 学んだと同時に考えた。今の財布事情を。そして、随分と減ってしまっている事を改めて実感した。
 リズの工房でも結構散財してしまっているのだから。

「……すまない。もう少しまってもらえないか?訳あって金銭面が不足しているんだ」

 リュウキは、そうアスナに頼んでいた。珍しい光景だけど、アスナはニコリと笑いながら。

「ん? 私で良ければ協力するよ! 結婚祝いもしないとね~」

 アスナがそう言っていくれて、本当にありがたい。でも、リュウキは首を振った。

「……ありがとう、アスナ。それはありがたいが、だけど、新居の様な大きな物は、自分の金の方が良い気がするんだ」

 リュウキのその言葉を聞いて、アスナは更に笑った。

「そっか。じゃあ、暫くよろしくね? リュウキ君!」
「ああ……。よろしく頼む」
「ふふ、これからもよろしくって意味も入ってるわ」
「ああ勿論。こちらこそ」

 そう言うと、アスナはリュウキと握手を交わした。

「む~~……」

 2人のその姿を見たレイナは、何故か、頬を膨らませていた。

「……ん? レイナ、どうしたんだ?」

 リュウキはそのレイナの表情に気がついたようだ。さっきまでは笑顔だった筈だが、と。

「ふ~ん……。別に、何でもありませ~~ん!」

 レイナは、どうやらご機嫌斜め、と言った様子だ。そんな表情もよく判る。でも、機嫌が悪くなった理由が、リュウキには判らないようだった。

 当然だろう。リュウキが鈍感なのは、この世界が終わってもきっと変わらないから。 

「レーイっ? ほーら、妬かない妬かない! だって リュウキ君は、あなたが一番なんだから!」
「ッ……//あぅっ わ、わたしは、別にっ……。」

 レイナは、今度は慌てていた。そんなアスナの言葉を、そしてレイナの姿を見たリュウキは首を傾げた。

「……それは、当然なんだが?」

 そう真顔で、そして真面目に答えた。

「えっ?? な、何が??」

 レイナは、リュウキの言葉。それをちゃんと聞いてなかった様だ。アスナの言葉を訊いて赤くさせていたから。……でも、この後更に赤くさせる事になる。

「アスナが言っていた言葉。……オレはレイナが一番、と言う事だ。それはアスナの言う通りだ。……オレはレイナが一番だよ」
「ッ////」

 ぼんっ!! っと言いかねない程にレイナの表情が真っ赤になった。火山爆発? とも思える程。

「あーあっ  ほんっと お熱いね~~?」

 アスナは、手でパタパタと扇ぎながら、そう言っていた。聞いてるコチラが恥ずかしくなるような台詞を臆面もなく言っちゃうのだから。

「あ、ありがと……、りゅーきくん……」
「礼を言いたいのはオレの方でもあるさ。……それに」

 リュウキは2人のほうを見て。

「……2人に会えた事、それが本当に嬉しかったよ。レイナは勿論……アスナの事も。2人はオレの大切な人だ。……必ず現実世界へ還してみせるから」

 そう答えた。
 それを聞いた2人は……ほとんど同時に微笑んでいた。

 アスナやレイナは、これまでは、攻略の事が頭の中を多く占めていた。例え死んだとしても、この世界に負けたくないから。

 でも、キリトやリュウキに出会って世界が一変したんだ。一日一日をこの世界で生きているんだって……。だから、こんな世界も悪くないって考えていた事もあった。現実世界のこと、それを考えてない時だってあった。
 でも……還りたいと言う思いは変わっていない。リュウキがそれを改めて思い出させてくれた。

「うんっ! 私も頑張るから!」

 レイナは するっとリュウキの腕を取る。

「だね。勿論!」

 アスナも頷いていた。

 そして、その日は、リュウキは最前線の迷宮区には行かず、そしてアスナとレイナもギルドはオフにし、ゆっくりと3人で過ごしてた。その日はリュウキもずっと笑顔を見せていて。度々アスナには冷やかされて、目の保養になるね? とも言われて……。恥ずかしいけど、2人とも同意した。その時間が凄く暖かくて、楽しくて。
 確かに、ゲームの中の結婚だけれど。

 これが結婚。

 《本当の家族になる事》なんだと、リュウキは改めてそう思っていた。

 この温かさは決して忘れる事は無いだろう。ずっと……これからもずっと、と。


――……そう、思っていたんだ。
 
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