ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第82話 夢の初めに
その日の夜。
アスナは宣言した通り、家には帰ってこなかった。
レイナは、アスナからそう聞いていたのだけれど、やはり帰ってこないのは心配だった。でも、そこはしっかり者の姉妹だ。しっかりと連絡は取り合っていたようだ。
レイナは、アスナからのメッセージを見て何やら顔を赤らめていた様なので、色々とお節介も言われた様子だった。
「ねぇ……リュウキ君。」
そこは、寝室の柔らかなベッドの上。アスナとレイナは隣り合わせのベッドで眠っている。とても大きなベッドで、その……、2人で眠っても全く問題ない程だ。
レイナは、そこにリュウキと共に座っていた。
「……ん?」
2人は手をしっかり互いに握っていた。
『今日は片時も離れない』と言わんばかりだった。指と指……全てを絡ませているんだ。その姿を見たら、誰も2人を離す事なんて出来ないって思える。
「このベッド……わかるかな?」
レイナは繋いでいない方の手で、座っているベッドを撫でながら言う。
「……ん、何だ? 何かあるのか?」
どうやら、リュウキには判らないみたいだ。だから、レイナに聞いていた。
「あ~、やっぱりわかんないかー……。 えっと、これね?あの日……リュウキ君が泊めてくれたあの時のベッドと同じ材質……作りから、デザインまで一緒なんだよ」
レイナはそのまま撫でながら続けた。あの時の事を思い出し、そして 愛おしいそうに頬を染めながら。
「あの時……私はリュウキ君の温かさ、優しさを知れたんだと思う。初めて好きになったって事も……。だからね?私、ずっと……覚えておきたくて……。色々と研究してね?料理くらい頑張ったかも……ね?」
レイナはそう言いながら笑っていた。でも、リュウキは赤くなりながらも少し戸惑う。
「あー……ん、……悪いレイナ。あの泊めた日の事だよな? ……あの時のオレは、そんなに考えていないと思うんだが……。悪い」
リュウキは思い出しながらそう言う。
『もうっ!ムードを壊すな~~』って言ってやりたいが、そのあたりは流石はリュウキ君だ。それはそうでしょう?リュウキ君は、超ビギナーなんだから~仕方ないって思わないでしょうか?
「あはっ……だよね? だって 女の子を自分の泊まってる宿泊施設に泊めて……その上、同じ部屋で寝ちゃうなんて……。なのに、リュウキ君はアレだけ普通なんだもん!初めは相当遊んじゃってるのかな?女の子の扱いなれてる?って思ったんだよ? あ……」
レイナは、そこまで言うと、はっとして口元を抑えた。そして、やや表情を暗めている。
「……ん? どうした?」
リュウキは、その行動が気になったようだ。
「えっと……、その……、あの時、私の事 女の子としてみてくれてないのかな……。とも思ってた……」
レイナが思い出したのはその事だった様だ。
「……ん?? なぜだ? レイナはどう見ても女の子だろう? そんな事は無いぞ? それは初めからな」
リュウキはリュウキでいたって普通にそう返す。流石はリュウキ君だ。 初めは結構気にしていたレイナだったんだけど、もう口元に手を当てながら笑っていた。もう、いい思い出になっていたのだ。
「……あ、だけどな……」
リュウキは ふぅ……っと息を吐くと続けた。
「……最初にレイナが言っていた事だが、その考えと真逆だよ。あの時 異性との付き合いは殆ど無かった。どう接すれば良いのかも判らなかった…。だからあの時の事は、戸惑ったりする理由とかもはっきり判ってなかったんだ。ほら、確か あの時は アルゴと鉢合わせした事もあったよな?」
「わぁぁっ!!!! それは思い出さなくていいよっ!! っと言うより、思い出さないでっっ!!」
レイナはブンブン手を振りながら頭の上に、漫画であれば浮かんでいるであろう回想を消去!! するように、リュウキの頭上の回想を削除させた。
何せ、あの時は 確かお風呂上がりに鉢合わせしてしまったのだから。……あの時、アルゴにバスルームに入ってこられなくて良かったとも思えているが。服はちゃんと着ていたし。
「ははは……。ん?」
リュウキは、何かを思い出したようにレイナの方を見た。
「な……なに?」
リュウキは何か判ったような表情をしている。レイナにとっては、嫌な予感しかしない。そして、数秒後……考えに間違いはなかった台詞がきた。
「そういえば……、あの時、アルゴが言ってた『よろしく ヤッテル』って言うのは、この事n「だめーーー!!」ッッ!!」
レイナは素早くリュウキの口を右手でふさいだ。
「もがっ……。」
その速度はまさしく閃光……、気がついたら手で口を抑えられていたって感じるほどだ。もしかしたら、この時、閃光を……光速を超えたのかもしれなかった。ステータス以上、敏捷値以上の速度なのだから。
その後、レイナは、はっ!!っとして、離してくれた。
リュウキは息が出来てなかったから。でも そこは百戦錬磨のリュウキ。息を止めるなんて10分は楽勝で できる自信があるようだ。……んな無茶な。って思うが彼はやっちゃいますから、軽くスルーしてください。
そして、レイナの表情は真っ赤だ。
リュウキは少し考える。息を止めていた時も、ずっと考えていた。レイナが慌ててとめていると言う事は……。
「……と言う事は間違いないのか?」
そう聞いた。でも、レイナからは返答はない。
「だ、だから~~~ッッ///」
レイナはまたまた、慌てていた。でも……なんでだろう?
今までは、レイナがそう言う姿を見せても ただただ 『何で慌ててる? 何で赤くなっている?』だけだった。でも、レイナと共にいる時間が長くなって、微笑ましく思える様になっていった。
そして今は……。
「……可愛いな」
「ッッ!!」
リュウキの口から出た言葉、それは考えた言葉じゃない。自然と出てきた言の葉だった。
「何でだろう……。いや、多分そうだ」
リュウキは何やら1人で納得していた。それを見たレイナは益々慌てていた。
「なっなっ///何を納得したのっ///」
レイナは気になってそう聞いていた。聞けば恥ずかしい想いをしそうだと思っていたのだが、聞かないといられない様だ。
「レイナの事……意識した時からだよ。こんな風に思ったのはさ。解らないから微笑ましい。……そして今はッ……そのっ……」
最後まで、言おうとした時、リュウキは顔を赤らめ、思わず口を噤んだ。何を口に出そうとしているのか?そして、それは何を意味するのか……?
流石に理解できるから。
そういえば、何気なく可愛いと言ってしまったが、今思えばあの台詞も今思えば恥ずかしい台詞なのだ。
「えっ? ええっ? 今は? 今は何~~!??」
ここがチャンス!と言わんばかりに今度は攻めに入ったレイナ。そのカウンターは、本当に何と言う早さだろうか。
まさにそこでも閃光の異名が光っているとさえ思えた。
「……ぃ…おしい」
「……ふふ、聞こえないよ?」
レイナは……更にリュウキの顔に近づける。
「ッ……///」
リュウキは再び紅潮させて……、一息吐き。落ち着かせると。
「それは、《愛おしい》……。だよ」
頭をガシガシっと掻きながらそういった。
「知れた感情の1つだ。………今のレイナに、ぴったりなんだ。その言葉が……」
リュウキはそう言って赤く染めながらも笑顔を見せていた。レイナも、その表情を見て自然と笑顔になる。聞きたかった言葉だったから。言って欲しかった言葉だから。
そして。
「……私も」
レイナは赤くさせ、そして続けた。
「同じ、だよ……。私も、リュウキ君を愛してます。この世界で一番好き……、大好き。心から愛しています……」
「オレもだよ。レイナ……。愛してる。心から……」
レイナの言葉……それが合図だった。
「「ん………」」
部屋の灯りが2人のシルエットを映し出す。2人の影は1つになった。2人は互いが求めるように……再び唇を合わせあったのだ。
それは、始まりがどちらが先だったのか……誰もわからない。当人である2人にも解らなかった。
まるで、夢の様で……留めておけなかった様だ。
2人は自然に……極自然に……、彼女の思い出のベッドの上で、2人のシルエットは、1つに重なりあっていったいた。
『どうすればいいのかわからない』
『何を言えばいいのかわからない』
レイナに求婚を求めた当初にリュウキはそう言っていたのだけれど、そんな無知で子供だったリュウキだったのだけれど……。
幾ら幼いとは言っても、やっぱり年頃の 《男の子》だったから。人の本能的で……、その先を解っていたようだった。
子供だけれど、《男》なんだから。男が女を愛する時の愛情表現のひとつを。
そして、レイナの方は勿論知っている。
そんなのは学校とかで嫌でも耳にするんだ。女の子の話題ではその事も決して少なくないんだから。
男の子以上に……その《欲》はあることだってあるんだから。
そして、ゆっくりと2人は1つになっていったのだ。
リュウキは無我夢中だったけれど……、ただただ、優しく……優しく……。
彼女を傷つけたりしないようにと考えていた。デジタルとは思えない綺麗なレイナの身体。少しでも力を加えれば折れてしまいそうな華奢で、綺麗な身体。目を奪われてしまっていたが、リュウキは優しく……、ただそれだけを想いながら身体を重ね合っていった。
そして、夫婦の営みが終わった数時間後。
時刻はまだまだ真夜中。だが、日付は変わっていない時間帯。後数十分程で、恐らく朝日が差し掛かり……そして変わっていくだろう。
「ん……」
レイナは目を覚ました。目をゆっくり開けると、目の前にリュウキの顔が映っていた。レイナはリュウキの腕を枕にして眠っていたから、必然的にリュウキの顔が正面に来るのだ。
「あ……ごめん。起こしたか?」
レイナが目を覚ましたのを確認したリュウキは、申し訳なさそうにそう言っていた。
「んーん……」
リュウキの顔を見て、微笑みながらレイナは首を横に振った。
「私……きっと……きっと、まだ眠りたくないんだと思う……。だって、だって……」
レイナは、リュウキの胸にきゅっと頭を埋めて。
「だって、初めてリュウキ君と結ばれた日だもん……。今日はいっぱい、いっぱい起きていたいから……」
「……そうか。そう、だな」
リュウキもしっかりと抱きしめた。
「同じ考えだった。オレもそう……。それに……もう1つ知れた」
リュウキはにこりと笑いかけ。
「好きになった人の寝顔って、凄く可愛いものなんだって事が知れて良かった。」
「ッ……。もぅ//」
レイナは笑っていた。リュウキがはっきり言ってとても恥かしい。飾らない、計算の無い、純粋なその言葉。……嘘偽りが無い、心からそう思ってくれているのが伝わってくる。
だから……とても恥かしいけれど、心地良いんだ。
その後もぽつりぽつりと、何気ない言葉を交わして……、気がついたら本当の夢の中へと入っていった。
そして、更に1時間後。
朝日が窓のカーテンの間から差し込んでいた。その光がベッドを斑に照らしていたのだ。その光の内の1つがリュウキの瞼の部分を照らす。
「ん……」
光を感じたリュウキは、ゆっくりと瞼を開けた。そして……身体をゆっくりと起こした。朝日が眼に染みる。
「……あ、あれ……? レイ……ナ?」
ふと、隣を見てみると、昨晩ずっと一緒にいた筈の彼女の姿が無かった。リュウキは、とても心配をしていたが、それは杞憂に終わる。
「あっ! リュウキ君起きたっ?」
レイナが笑顔で寝室に入ってきたんだ。
「ん……おはよう」
リュウキは、眼を擦りながらもレイナが目の前にちゃんといる事に安堵していた。よく考えたらここまでぐっすりと眠った事、この世界に来て一度だって無い。朝日と共に目が覚めるような事だって、一度もないって思える。
「おはよーっ! もう、ご飯っ出来てるからね!」
レイナは朝一番の笑顔でそう言った。
「あ、ありがとう……//」
リュウキはまだ、やはり照れているようで少し顔を赤らめていた。
「うんっ!」
レイナは元気いっぱいと言った様子だ。リュウキは、完全に眼を覚ましベッドから脚を伸ばす。
そして、レイナの元へと向かった。
「改めて、おはよう!リュウキ君」
食卓に囲む2人。それはまるで、新婚夫婦のようで、何処か照れくさい。
「ん。おはよう、レイナ」
リュウキも漸く慣れてきたようだ。普通に返事が出来ていた。
「それにしても……」
リュウキは、レイナが作ってくれたパスタを頂きながらつぶやく。
「ん?」
「此処に来て、初めてだよ。こんなに、ここまでぐっすりと眠ったのは……。」
リュウキは改めてそう考えていた。以前、とある女性に『夜は寝るもの。睡眠は大切。』っと言われた事はある。だから、とりあえずは就寝しようとしたのだが、そんなに眠っていない。状況が状況だといえばそうだが、正直眠っても起きていても同じ事だろうと考えていたのだ。
起きていても休息は十分に出来るから……と。
でも。ここは居心地がよくて、気づいたら深い眠りに入っていたのだ。
「あはっ……やっぱり? じゃあ、中々視れないものっ視れたんだ?」
レイナは、にこ~~っと、リュウキに笑いかけた。
「……え?」
リュウキは、その意味が判らず首を傾げる。それを見たレイナは両手の人差し指と親指で、カメラの形を作ってウインクをした。
「それはね~……リュウキ君の寝顔だよっ♪」
それは、 弾けんばかりの笑顔だった。
「ッ……」
リュウキは、少し俯く。思わず顔を手で覆ってしまっていた。
「……そ、そうだな。……ん、ならオレは」
リュウキも考える。初めての事……それは何か?と。そして、特に意識せずに1つ思いついていた。この時……レイナは再び嫌な予感?が走っていた。
「……昨晩の《あの時》の事、オレも初めてd「きゃあああ~~~////まってまってぇ!!」むぐっ」
レイナは慌ててストップストップと、言いながら、強制的に言葉をシャットした。
リュウキはレイナに止められる前は仕返しと言わんばかりに言ってやろうと思っていたが、よくよく考えると自分自身も恥ずかしい事に気が付く。
「……そうだな。悪い。妄りに言うものじゃないんだよな……? こう言う事は」
リュウキはそう言っていた。改めて考えても、自分自身も相当恥かしいんだから。恥かしい……と言う言葉の意味。それも色々あるんだ。それを解る様になってきたから。
「うぅ……//そうじゃないって言いたいけど~っ、そ、その、やっぱり恥かしいから//」
レイナは頭を摩りながらそう言う。
「ん……。オレもそう思う。だからあれは……」
リュウキはレイナの方に手を伸ばし小指を向ける。
「2人の秘密……だな?」
「うっうん///」
レイナは笑顔で答えた。2人の小指は絡み合い……約束を交わした。
夢の続き。
こんな時間がずっと続きますよに……。そう願ったのは、恐らくレイナだけではないだろう。
甘く擽ったいこの空間を愛しく思っていたのは彼も同じなのだから。
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