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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第81話 信じて、信じられて



 それは甘く、そして何処かほろ苦い体験。
 まるで夢の様な時間だった。美しい空の下、2人は寄り添いながら座っていた。2人の影は、1つに混ざっている。もう、離れないと言っている様に。

「……レイナ」
「なぁに……?」

 レイナはリュウキの肩に頭を乗せ……返事を返した。

「……ありがとう」

 リュウキは短くそう一言だけ。言っていた。決して多く無い言葉だけど。……だけど、それだけで、レイナには十分伝わる。

「あの時もそう……レイナはオレの中で大きな大きな存在になっていたよ」

 リュウキは空を見上げてそう続けた。
 自分の中での彼女は、とても大きくて眩しい存在になっていた。だからこそ……直視する事が出来ずに彼女を避けてしまったのだとも思える。だけど……それは、光は生きとし生ける者には絶対に必要なものだから。光が無いと、人は、きっと生きていけないから。

「きっと……キミは光……。オレの中に残っていた闇を払ってくれた……光」

 この輝いている空にも負けない光。文字通り心から照らしてくれた。温かい光を……自分にくれた。温もりを……自分に教えてくれた。

「あはは……それは幾らなんでも言い過ぎだよー。リュウキ君」

 レイナはただ笑っていた。でも、顔は赤く、薄らと涙がまだ滲んでいた。

「……オレは嘘は言わないんだけど、な」

 リュウキは、そんなレイナを見て 微笑む。

「うん。凄く嬉しい。でもね……。」

 レイナは続けた。

「私もリュウキ君から色々と貰ったんだ。貴方の優しさもそう。守ってくれたあの時だってそう。……この世界に住む皆、貴方から貰ってる。返しても返しきれないほどに……だよ?」

 レイナは寄り添いながら……そう言った。感謝をしているのは自分も同じだと。

「……オレはただ、罪滅ぼしをしてるだけ、なんだ。きっと……。サニーを助けられなかった。彼女は人を助ける事を……自分の知識、能力で多くの人を助けられるって言ってた。自分の仕事に誇りを持ってるって……。オレとそんなに変わらない歳の人だったのに……な。」

 リュウキは懐かしむようにそう言っていた。
 それは、暗く、そして辛く、苦しい過去の闇。

 でも、今、臆す事なく言えるのも、レイナの存在のおかげだろう。間違いないって、はっきりと判る。

「……だから、だよ。サニーが出来なかったんだ。だからオレが……助けられる事をしないと、って想ってただけだよ」
「うん。確かに、切っ掛けはそうなのかもしれないよ……。それに、サニーさんをリュウキ君が想っていたから……。でも リュウキ君も優しい。凄く優しい。誰にでも出来るってことじゃない。それに……簡単にできる事じゃないって想う。だから……」

 そう言うと、レイナはもう一度、口付けを交わした。そして、リュウキの身体に手を回し、ぎゅっと抱きついて答える。

「だから、こんなにも貴方の事が好きになったの……」
「……出会えて、よかった。キミと……レイナと……」

 リュウキはレイナの事を抱きしめ返す。そして、彼女の顔を、目をまっすぐに見つめて宣誓をした。

「キミは……レイナは、絶対に還してみせる。光をくれたんだ。……だから、あの世界の光を必ずレイナに……」

 この世界ですべき事が増えた。否、絶対項目が出来たとリュウキは感じていた。必ず 現実世界と言う光を、彼女に届ける。リュウキは、この時強く心に誓った。

「……私も、きっとあなたを守る。これからもずっと……ずっと支えるから。一緒に……ずっと一緒に……」

 2人は抱き合いながら……互いに固く誓い合う。

 お互いを必ず守り通す……と。






~第61層 セルムブルグ~


 その日は、レイナとずっと一緒だった。アルスレイドの夕日を眺めた後、一緒に家へと帰った。リュウキはホームを持っていないから、レイナとアスナのホームに。

「あれ…? 2人ともどうしたの?」

 そこでは、アスナが出迎えてくれた。
 珍しい……どころか、これは初めての事だったから。レイナはいつも、リュウキに会いにいくと出て行くが(直接的には言わないけど)、連れて帰ってくるなんて事は無かった。

 でも、直ぐに状況が、アスナは判った。
 何故なら、いつもと質がまるで違っていたから。
 それは、レイナだけじゃない。リュウキ自身の表情も……いつもと全然違うんだ。

「ふふ……。雨降って地固まる、って事かな?」

 レイナとリュウキ2人を交互に見ながらそう言う。アスナは、笑っていたけど……心底安心した様だった。大切な妹に笑顔が戻ったんだから。それも……最大級の笑顔が。

「う……うんっ///」

 レイナは顔を赤らめながらも、頷いた。

「アスナも、心配かけたな……。その……ごめんな」

 リュウキは、アスナに頭を下げた。……今回の事は、皆に迷惑をかけたんだ。リズもそうアスナも……そして、恐らくはキリトにも。以前にも、迷惑をかけたばかりなのに、と。

「あは、良いんだよっ。でもね~、それよりも……」

 レイナの方を見て、そしてリュウキの方を改めて見ると。

「……レイナは、大切な妹なんだからね? よろしく頼むわよ?」

 そう言って笑っていた。

「おっ……お姉ちゃん……//」

 レイナは顔を赤らめていた。……でも以前ほどじゃない。恥ずかしさと嬉しさ、嬉しさの方が大きいようだった。そんな笑顔だった。

「ああ……オレにとっても大切な人だ。レイナは……。勿論だよ」

 リュウキは対照的にしっかりとそう答えていた。その表情はいつものリュウキだ。頼りになって……そして、とても安心できる。

「リュウキ君……」

 レイナは心の底から 嬉しかった。はっきりとそう言ってくれた事を、姉の前でもはっきりと言ってくれた事を。

「あははっ、ほんと、おあついね~!」

 アスナは笑顔で祝福をしていた。雨降りの日もあった。暗く、空を厚く、黒い雲が覆っていた日もあった。そんな空も、すっかりと晴れたんだ。 ……2人はカップルになれたんだから。

「おっお姉ちゃんも! 今日はキリト君としっかりねっ!! 次はお姉ちゃんとキリト君の番だよっっ!」
「えっっ!!」

 アスナはピクッ!っと反応した。
 今日、リズの店でまた装備を整えに行ってる事、レイナは知っていたんだ。まさかの返しに アスナは思わず動揺をしてしまった様だ。

「……うん? そうだったのか? アスナは」

 そして、リュウキは勿論知らなかった。自分がレイナを想う気持ちは 理解出来た様だけれど、その鈍感力はま~~ったく変わってないようだから。

「う……うん。まだ、一方通行っぽいけど……」

 アスナはちょっと複雑な表情をしていた。隠したりせずに、言えると言う事は、彼女も心をはっきりと決めたんだろう。

「ガンバっだよっ! 私もリュウキ君も! 応援してるからね!」
「……そうだな。でも キリトなら大丈夫……じゃないのかな。あまり無責任な事は言えないが」

 リュウキも笑顔でそう言っていた。ソロが多い……と言うか基本的に自分と同じソロのキリトだけど、多分……と。

「も、も~///」

 アスナは照れっぱなしだった。
 いつの間にか自分がしてやられているんだから、やっぱり この手の事は 妹のレイナの方が一枚上手みたいだ。いつものレイナに、戻ってくれた。それも凄く嬉しい。してやられる事、それは凄く恥ずかしいけれど、それでも良い。

 レイナは皆を笑顔にさせてくれるんだから。


 その後は……レイナの言うとおりアスナは家を出た。


 今日は多分帰れないから!っと一言だけ残して、その後はレイナに軽くウインクをしていた。どうやら……気を使ってくれたようなのだ。レイナは、アスナがあからさまだったから……顔を赤くしていたけれど。凄く感謝もしていた。

「リュウキ君」
「……ん?」

 ソファに座っていたリュウキをレイナは呼んだ。

「えっと! 出来たよっ! さぁ座って座って!」

 笑顔でテーブルへと招待した。リュウキはそれに応え、椅子に座った。レイナは、今日は腕を振るった!との事だ。そのテーブルの上に広がっているのは、沢山の料理。様々な種類の料理だ。どれも簡易でできるようなものじゃない。あの良質だと評判のNPCのレストランでも見たことが無いような料理。最高級のコースを頼んだとしても、それが霞んで見える程だ。

 見た目から楽しめる、色取り取り、鮮やかで……本当に美味しそう、人の三大欲求と呼ばれている食欲を唆る。 この世界では 著しく損なわれていた筈なのに、リュウキにしても、それは例外ではなかった。

「……凄いな。」

 リュウキは思わず目を丸くしていたのだ。

「えへへ~……そうでしょ?」

 リュウキの反応が嬉しいのか、レイナは喜んでいた。やっぱり、料理と言うものは、食べてくれる相手がいてこそ、だから。それが、愛する人なのなら、尚更だ。

「懐かしい……この感じ……」

 リュウキは目を細めながら……そして、ニコリと笑った。ある事を、思い出したのだ。

「え? 懐かしい?」

 レイナはきょとん……とする。でもちょっぴり心配だった。……以前、つまりは誰か他の女の人に?っと一瞬思ったからだ。

「爺やの料理も……こうだったんだ……」
「え? 爺、や……?」

 レイナは再びきょとんっと。でも、心配は杞憂だったとこれまた一瞬で思った。

「育ててくれた人……だよ。親も同然の人、だよ」

 リュウキはニコリと笑って。

「レイナとはちょっと意味が違うんだろうね……、オレの大好きな人の1人。だよ」
「ッ///」
「……ありがとう」
「や、そ、そんな……///」

 リュウキのその笑顔に何度見惚れた事か。その一撃に、もう負けなくなったレイナは、一緒に笑顔になる。

「私も好き……だよ?大好き」
「……ありがとう」

 料理を前に、2人は見つめ合っていたけれど。

「じゃっ じゃあ! 食べようっ!」
「ああ」

「「頂きます」」

 リュウキは合掌し、レイナと合わせて会釈をした。
 それも、あの夕日の丘で体験したのと同じ。とても楽しくて……それでいて何処かくすぐったくて……、甘くほろ苦い経験だった。


 レイナは、ちょっぴり、おかしいと感じていた。この料理だって、いつもより多く作ったのは事実だけど、いつも姉と一緒に食べているそれとは、そこまで変わっていない。そして、食べている部屋もそうだ。 だけど、料理の味から、この部屋の景色に至るまで……全てがいつもと違うと感じたから。

 いつもよりも、あっという間だった晩餐。

 それが終わって一息ついていた時だ。

「レイナ……」
「ッ!」

 レイナは、びくっ!!っと驚いた。この後……、どうしよう……っと考えていたから。

「その……、あの……」

 リュウキもレイナに負けないくらい顔を真っ赤にさせていた。それは未だかつて、見た事無い程のもの。

「オレ……こう言う事、経験が無くて……、レイナの事は好き。大好きだ。でも。そこから 先は、どうすればいいのかが解らなくて……」
 
 そう言うと、リュウキは俯かせて更に赤くなった様だ。それを見て、何だか、とても久しぶりに、リュウキのその姿が凄く可愛いとレイナは思ってしまった。

「ッ……///」

 だから、思わずレイナは抱きしめていた。リュウキも、遅れてレイナを抱きしめ返した。

「あっ……」

 リュウキはある事を思いついたようだ。

「レイナ……」

 耳元で囁く。

「なぁに……?」
「……オレは嘘は絶対に言わない。だから……レイナを好きって言うのは本当。そして、誰よりも君を信じてる」
「うん……私も……。」

 リュウキは、早まる鼓動を整えつつ、心を強く持って。

「……だから、その、け、けっこんを……してくれないか?」

 レイナに、一世一代の告白をした。

 慣れてないから(まあ、普通は慣れるものじゃない) 正直かなり、ぎこちない。そう、それは以前アスナやレイナが言った言葉。結婚は信じて信じられて、お互いが好き同士じゃないと成り立たないと言っていた。

 だからこそ……リュウキはそう言ってくれたんだろう。自分のことを信じてくれていて……そして好きだと言ってくれたから。

「ッ…………はい」

 レイナは微笑みながら、そして最上級の笑顔で受けてくれた。その瞳からは一筋の涙が流れ落ちていた。リュウキはこの笑顔……きっと生涯忘れる事は無いだろう。
 想いが伝わって、1つの形になったのだ。……とても嬉しい、と言う言葉だけでは表しきれない。

 好きと言ってくれて、その上 その最終形態と言える結婚を受け入れてくれたのだから……。



 あの日、彼の事を好きになったあの日から、ずっと……ずっと、夢見てた事が現実になったんだ。


 
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