グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第25話:思い出のバカンス……さぁ楽しみましょう。
(グランバニア港)
マリーSIDE
港に到着~!
列車を降り、ちょっと歩けばグランバニアが誇る大きな港に辿り着く。
グランバニア城下町の北端にある海岸線を15キロメートルも占拠する港……
その内8キロメートルは軍港だ。
軍港は海岸線の東側に建設されており、一般人の立ち入りを禁止している。
まぁ当たり前か。
いくら軍事に力を入れて無くても、一般人がおいそれと進入して良い施設では無い。
つーか軍港なんかどうでもいいのよ!
私達は今、楽しい楽しいバカンス中ッスよ。
早く船に乗り込んで、優雅な一時を満喫せねば!
(ドン!)「気を付けろネーちゃん!」
ウキウキ気分で歩き出すと、柄の悪い男共とぶつかり横柄な文句を言われた。
どうしましょ……ブッ殺しちゃって宜しいかしら?
「申し訳ありません」
絶世の美女である私が優しい眼差しで連中を見詰めていたら、リューノが慌てて謝罪の言葉を口にし頭を下げた。
「ふん!」
リューノの心の籠もったお節介が功を奏したのか、横柄野郎ズは私達と同じ船に乗船して行く……
ほっほ~ぅ……どうしてくれよう、私のこの鬱憤を!
「どうした……トラブルか? もうトラブルを巻き起こしたのか!?」
乗船受付を済ませてたウルフが合流し、微妙な雰囲気の私達に話しかけてくる。
つーか“もう”って何よ!?
「ううん、何でも無いわよ」
「えぇ何でも無いわねマリー……貴女が一般人を4.5人丸焦げにしようとしただけだもんね」
失礼ね……連中の態度次第じゃ穏便に済ませてやったわよ。
「相変わらずお前は……父親ソックリだな。直ぐにトラブルを発生させる」
「失礼ね! トラブルメーカーじゃ無いわよ私は!」
「大丈夫よマリー……貴女のフォローは私がするから。旅行中頑張って平和な時間を維持するから!」
プンスカプンである!
私だってこの旅行を楽しみにしてたのだから、リューノの手を借りる事無く平穏なバカンスにするつもりは特盛りである。
ムカつくからリューノを睨み付けていると……
「分かった分かった……穏やかなバカンスを楽しもうな」(グシャグシャ)
「きゃぁ! ちょっと……止めてよね!」
この場を納めようとウルフは、理解を示す台詞とは裏腹に、私の頭を乱暴に撫でて乗船を促してくる。
今後トラブルを起こすと罰が下されると言う事だ。
もう! 私は悪く無いのに……
(ルクスリエース・バンデ号)
船に乗り込み決められた我々の船室へ入るまで膨れっ面をしてた私……
しかし、これから数日を過ごすお部屋を目の当たりにして、プンスカプン状態は吹っ飛んでしまったのである!
「す、すごい……随分と豪華ね」
リューノが私に視線を向けて呟いた。
うん。全くもって同感である。
「高かっただろうなぁ……リュカさん凄ー……」
うん。禿同である!
この船は元々高級志向の客船として名を轟かせており、通常の客船に比べれば全てが高級!
基本、通常の客船には“2等”“特2等”“1等”“特1等”“特等”と、客室をランクワケされている。
しかしこの船には“特1等”“特等”しかない。
しかも特別なのは、その乗船人数だ。
普通の豪華客船と言われる船は、少なくとも3000人くらいは客を乗せて運行するのだが、この船は違う。
800人弱と大幅に少ないのだ!
乗員を含めても1000人前後。
その分小型であるが、乗船率100%でも窮屈さを感じさせない。
……てな事がパンフレットに書いてあった。
んで、その中でも一番豪華な客室が私達の部屋へとなり、バカンスへの期待感を否応なく上昇させる。
「こんな部屋に宿泊して良いの? まるで王族扱いじゃない!」
「あのリューノさん……私達、王族よ」
「お前等は“なんちゃって王族”だろ。この部屋は本物の王族が使用する部屋だ」
うむ、王族の……それも正当な血筋である王族の私としては否定をしたいウルフの台詞だが、この部屋の素晴らしさを前に言葉が出てこない。
とは言えバカンスを満喫する為に、私達は部屋に荷物を置き、着替えて船の施設へと繰り出した。
船内にある施設は、複数のレストラン及びバー・ラウンジ・プール・フィットネスクラブ・スパ・美容室・エステ・ショップ・劇場・カジノ・医務室等があり、殆どの施設が出港してから利用可能になる。
だが、それらの施設の場所へ行き、出航後の事を考えるだけでワクワクしてくる。
珍しくお父さんが、お小遣いとして1000Gもくれたし、きっと楽しいバカンスになる事だろう。
リューノにも渡してたから合計2000G……国庫の金に手を出すはずがないから、きっとこれもバイトして貯めたんだろう。
う~ん……
ここまでしてもらっては、ウルフの忙しさにも目を瞑らない訳にはいかない。
国家の重要人物たる彼氏を、私達彼女等が困らせてはいけないのだ。
巧く丸め込まれた感があるが、この豪華客船を前にしたらニヤケ顔で許してしまうってもんよ!
一応ウルフは船長さんに挨拶しに行き、その間私達は船内を散策する。
絶世の美女である私が男無しで歩けば、血に飢えた鮫達が馬鹿面下げて集まってくる。
一緒にいるリューノの事を妹だと思ったのか……
「やあ、君達は姉妹かな? この船は初めて? どうだろう俺等と一緒に楽しまない?」
と声をかけてくる。
う~ん……海に突き落としたい♥
「マリー様……行きましょう。こんな所を旦那様に見られたら大変です。彼等の命が……」
恭しい口調で私に声をかけ、手を引いて移動を促すリューノ。
しかもその台詞が物騒だ(笑)
連中から離れて行く時、チラリと表情を確認したが、目を見開き脅えて周囲を警戒してた。
良い仕事をするわねリューノ。
最近私は彼女が好きになってきたわ。
何だか楽しくなってしまい思わずクスクス笑い出すと、手を引いてたリューノが振り返り私を見て呆れ顔をする。
でも直ぐに彼女も笑いだし、何とも言えない幸せ感を感じさせてくれる。
そんな感じでデッキに出ると、挨拶を済ませたウルフが合流。
私達を見て、
「今度は何をやらかしたんだ?」と尋ねてきた。
「失礼ね……何もしてないわよ!」
「そうよウルフ。まだ何もしてなかったわよ……ね、マリー様?」
そして爆笑。私もリューノも顔を見合わせて大笑いしてます。
「はいはい……どうせ大暴れ寸前だったんだろ。いいか、この旅では魔法使用は禁止だぞ! 特にマリーの魔法は強大すぎるから絶対に禁止だ! 船を沈没させられてはたまらん」
「解ってるわよそんくらい……ただちょっと、醜男共を海に投げ捨てたくなっただけよぉ~」
ウルフの注意に思わず反論してしまった。
しかし、それもまたリューノとの笑いを誘ってしまい、ウルフの不安を煽ってしまう。
でも止まらないの……リューノと顔を見合わせて、ケラケラ笑ってしまうんです。
きっと楽しいバカンスになるわよね。
マリーSIDE END
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