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ユキアンのネタ倉庫

作者:ユキアン
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インフィニット・ストラトス 否定の救世主 2




「あ~、久しぶりにゆっくりと空が眺められる」

最後の書類に目を通し終えて、背もたれに体重を思いっきりかけて空を見上げる。青が7に白が3か。でっかい雲が一つあるだけだけら快晴と言えるね。

「試合の方は見に行かなくても良いの?」

「痴話喧嘩なんて見ても面白くないでしょう?それに一夏、あんまり練習もしてないみたいだから結果が目に見えてるし。あっ、ありがとうございます」

虚さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら楯無さんの質問に答える。

「それに、雪片弐型、予備がないらしくて通常のブレードらしいですから完全な欠陥機になってますしね」

「しかも拡張領域に他の武器を受け入れないんだって?」

「拡張領域は空いているはずなのに空いてないと返されるらしいですよ。仕方なく、毎回手持ちで用意してるんですけど、火器管制システムも積まれてないんで銃が使えないんだって言ってました」

「欠陥どころか手抜きよね、それって」

「でしょうね。それに雪片に関しては、言えば弁償するんですけどね」

同化してしまった以上、情報はオレの中にある。だからいつでも作れる。それなのに何も言って来ない。オルコットさんも同様だ。

「うん、アレは?」

青と白しかなかった世界に異常な発光現象と共に黒が現れて落ちてくる。それはそのまま学園へと、1年生が使用している第1アリーナへとビームを放って落ちていった。

「虚さんは生徒の避難を。楯無さんは後続を警戒して下さい!!オレは状況を確認します」

ニヒトを使って第1アリーナの管制室へと通信を繋ぐ。

『むっ、対応が早いな』

「たまたま見えてましたので。それで、状況は?」

『今確認中『フィールド内に新たなISの反応!?』聞こえていたな』

「そのISを敵性体と認定。アリーナ内の生徒の避難と敵性体の排除をお願いします」

『分かっている。山田先生、観客席に居る生徒の避難誘導と教師部隊に突入命令を!!』

『大変です!!学園のシステムにハッキングされました、アリーナの遮断シールドがレベル4に設定、こちらからの命令を受け付けません!!』

「人命を優先、施設を破壊しても構いません」

『レベル4のシールドは並大抵の武器では壊せん。手の空いている者でシステムを取り戻す方が早い』

「ならオレが行きます。扉の前を空けておく様に生徒に指示を出して下さい。敵性体の方はどうしています」

窓から飛び出してニヒトを展開、第1アリーナに急行する。

『今は織斑と鳳が相手をしている。というよりそれしか手段が無い状況だ。遠巻きに牽制だけに留めさせているが、織斑がどこまでそれに耐えられるかだ』

「今、上空に辿り着きました。遮断シールドの一部、壊します」

ワームスフィアで穴を開けてアリーナに侵入する。ウィングユニットからアンカーを飛ばし、同化して扉を排除する。

「このまま敵性体の排除に入ります。生徒の誘導、頼みます」

観客席からシールドを突き破りフィールドに突入する。同時に敵性体ISに警告無しにガルム44で攻撃を加える。

「二人とも無事だね?」

「「操!?」」

「すぐに片付けるから二人とも下がって」

ガルム44を構えていない方の手でワームスフィアを丸鋸状に変形させて投げつける。投げつけたワームスフィアによって両腕を切り落とされた敵性体ISはアリーナのシールドを破ったビーム砲らしき物をこちらに向けてくるが、遅い。瞬時加速で懐に飛び込み、ビーム砲の砲口にルガーランスを突き刺す。ルガーランスを展開し、そのままプラズマを内部に叩き込む。

「はあああああっ!!」

バランスをビーム砲が爆発してバランスを崩している敵性体ISを蹴り飛ばして踏みつけ、マインブレードでコアが搭載されている部分の装甲を剥がし、コアを強引に抜き取る。完全に静止したのを確認してから敵性体ISから離れる。

「す、すげぇ、一瞬でケリが着いた」

「これが生徒会長の実力!?」

二人から思わず漏れた感想を聞きながら戻ろうとした所で楯無さんから通信が入る。

『上!!』

警告と同時に連続で瞬時移動を使い一夏と鈴ちゃんを回収してピットまで向かう。だが、ギリギリの所で間に合わないと判断して二人だけでもとピットに向かって投げ捨て、遮断シールドも観客席とフィールドを遮るシールドも楽々貫通する極太のビームがオレに命中した。







なんなんだよ、これは。目の前に広がる風景が理解出来なかった。高熱によって地面がドロドロに融けていた。操が倒したISもその破片が見当たらない。それらしき小さな山があるだけだ。そしてピットに近い場所に膝を付いた人位の大きさの紫色の山が一つ。それが操のISだと分かりたくないのに分かってしまった。全く動かないそれを見て、胃の中の物が逆流してきた。

胃の中が空になっても胃液を吐き続け、ようやく落ち着いて顔を上げるとそこには先程操が倒したISを巨大にした物が空からゆっくりと降りてきていた。そして、操が居たという痕跡を全て消し去る為か、紫色の山に向かってビーム砲を向ける。

ちくしょう、なんでオレには力が無いんだよ。やっと千冬姉を守れる力が手に入ったと思ったのに。操に助けられて、操を助けられなくて、今まさに操の全てが消されそうになっている。それなのにオレは動けない。恐怖で身体が動かない。

そしてビームが放たれる直前、もうおなじみとも言える翡翠色の結晶がビーム砲を覆う。

「やはり確実に仕留める為に降りてきたね。だけど、残念。あの程度でニヒトを倒せると思わないで」

そのまま翡翠色の結晶は巨大ISを覆い尽くし、粉々に砕け散った。視線を下にやると、そこに紫色の山はなく、操のISがその手に何かを握っていた。

「逃がさない」

操が新しく銃を取り出し、銃身から伸びる杭を地面に刺して固定した後、翡翠色の結晶が銃を覆い、砕け散ると形が変わっていた。そして空に向かって発砲すると、かなり遠くで何かが爆発していた。

「こちらは済みました。ハッキングの方はどうですか?そうですか。では、必要無いかもしれませんが引き続き警戒に務めつつ、生徒達のケアをお願いします。オレはこのまま撃墜した物を確認して可能なら引き上げてきます」

何事も無かった様に紫色の悪魔は蒼い空の彼方に消えていく。オレと操にどんな差があるって言うんだよ。あいつには簡単に出来るのに、オレには何も出来ない。



ちくしょう。









昼間の事件の報告書を作成し終えた後、オレは寮の近くの木の上に隠れていた。楯無さんは休んでいていいと言ったけど、これも生徒会長の勤めだからね。アレだけの事件があれば、やっぱり動いたか。フェストゥムの力で浮遊しながら後を付けていく。周りを見て誰も居ないと確認してから通信機を取り出したのを確認して、ワームスフィアを弾丸状に変形させて通信機を撃ち抜く。

「自主退学って形が一番穏便に片付けられるんだけど、どうする?抵抗するようなら強引に情報を引きずり出して廃人にすることになるんだけど」

オレを確認もせずに走り出す生徒に溜息をつく。読心の範囲内にいるから既に情報は抜き終わってる。素直に投降してくれれば穏便に済ませれたんだけど、見せしめとオレの能力の確認の為に廃人になってもらおう。

フェストゥムの能力であるテレポートで先回りして足を払って転ばせる。そのままうつ伏せになっている生徒の首を押さえつけて一気に精神を同化していく。

「い、いや、止めて、消える、私が消えていく」

「大人しく忠告を聞かなかったからだ。自主退学後に報告していればオレは手を出すつもりはなかったよ。さあ、もう休むと良いよ」

徐々に抵抗する力が弱くなり、完全に動かなくなった所で同化を解く。読心能力でも完全に反応が無いのを確認してから抱き上げて寮に向かう。寮の入り口には織斑先生が仁王立ちで立っていた。

「来主、何をした」

「生徒の安全を脅かす存在を排除しただけですよ。見せしめも兼ねているんで、酷い目にあってもらいました。オレには実績が無いんでね」

「人を殺めて何も思わないのか!!」

「そのセリフ、そっくりそのまま返しますよ。白騎士さん」

「っ!?」

そこに反応したら事実だと言っている様なものなのに。まあ、このまま全てを見るまでの時間を稼ぐ為にこの話題を続けよう。

「白騎士事件の際の公式発表の死者0名。本当に信じているんですか?本当に死者が0だったとしても五体満足とは言えない人だっている。ミサイルを撃ち込んだ犯人を知っていて、今でもそれを黙っている。オレには共犯にしか見えないんですけど」

「……なんのことだ」

「まあ、言えないですよね。言ったってどうにかなる事じゃないですから。ところで、織斑先生」

「なんだ」

「人を斬った感触ってどんな感じでした?ああ、ISだったから正確には分からないですよね。どちらかといえば斬るというより叩き潰すって感じですし。その後に人を殺した事に悩まされて一夏にも顔を合わせ辛かった様ですしね」

「な、「なんで知っている」」

言葉を被せた事で織斑先生の心が乱れに乱れる。これ位突いておけばオレに干渉するのは避ける様になるだろう。

「篠ノ之束は確かに天災ではあるけど万能ではないってことですよ。天才は他にも居るし、特化型が集れば超える事だって出来る。それだけのことですよ」








「全く、問題ばかり起こして。こんなのが少佐でいいの?」

ロングブレードでレールガンの弾を弾き飛ばしてボーデヴィッヒに対峙する。

「来主さん!?」
「操!?」

「また貴様か!!」

「はいはい、貴様ですよ~」

「馬鹿にして!!」

「馬鹿にするよ。君は何度も校則や国際ルールを破ってるんだからね。オルコットさんの時も思ったけど、代表候補生の選出には面接も行う必要が大であるってIS委員会に言った方が良いと思う位だから。それは置いておいて、ボーデヴィッヒさんは罰則として当分の間専用機を没収させてもらうから」

「ふん、貴様の言うことを聞く必要はない」

「残念だけど、ボーデヴィッヒさんが起こした国際問題に対して生徒会からドイツ政府に抗議を行った所、次に問題を起こした際には処分は任せるっていう誓約書。生徒会の正当性が認められる場合、その指示に従わなければ君の居場所はなくなると思え。君はそれだけの事をしでかしている」

「なっ!?」

「もう一度だけ言う。ただちにISを解除して渡すんだ。従わないようなら実力で武装解除させるよ」

「ちっ、やれる物ならやってみろ」

「そうさせて貰うよ」

話している隙にボーデヴィッヒさんがAICを発動させたのは分かっている。顔に書いてあったから。絶対的な信頼を寄せているようだけど、オレには無意味だ。テレポートで背後に回って触れる。後は、いつも通り同化して終わりだ。

「はい、と言う訳で今度のタッグトーナメント前日の放課後までISは没収させてもらうから」

驚いているボーデヴィッヒさんを無視して、同じ様に驚いている鈴ちゃんとオルコットさんに近づく。

「絶対防御を少し抜かれたみたいだね。機体の方も結構危険な状態だ。二人ともこのまま保健室に向かう様に。整備室への修理手続きの書類は後で届けるから」




二人の為に専用機の修理手続きの書類を届けて、記入が終わった所でオルコットさんは部屋に戻ったみたいだけど、鈴ちゃんはもう少し検査があるらしいのでベッドに倒れ込んでいる。そう言えばゆっくり話した事がなかったし、個人的に気に入っているからちょっとしたおせっかいをしようと思う。

「くっ、なんで邪魔したのよ。もう少しでなんとか出来そうだったのって痛たたたたたた!?」

口答えする鈴ちゃんが打ち身で痛めている右肩をぐりぐりと押す。

「客観的に見て、どうにもならなかったよ。もっと冷静なら話は変わったんだけどねぇ」

「ちょっ、ごめん、謝るから」

「分かればよろしい。もう少し大人になろうね。そうすればここまで一方的な戦いにはならなかったはずだよ」

「何よ、私達が子供だって言うの!!」

「はい、そこで怒る時点で駄目。怒ると動きが単調になる。漫画とかだと怒ってパワーアップなんてことがよくあるけど、現実は甘くない。挑発って言う戦術や戦略が存在してるんだからね」

「じゃあどうしろって言うのよ!!」

「簡単な話、流してやれば良い。で、試合が終わった後に逆に言ってやれば良い。『ねえ、今どんな気持ち』ってね」

次に鈴ちゃんが言う言葉はなんとも男らしいよ。

「「そんな女々しいことやらないわよ!!」」

全く同じことを言われても自信満々な態度を変えないなんて。ちぇっ、これで驚いてる顔を見るのって楽しいんだけどな。

「それじゃあ、女々しくない方法を教えよう。簡単な話だけど、今回、ボーデヴィッヒさんにどんな挑発をされたのか知らないけど、ボーデヴィッヒさんが鈴ちゃんの事をどれだけ知ってるって言うんだい?」

「へ?」

「どうせ上辺だけの情報だったんでしょう?オレの知ってる鈴ちゃんは怒りっぽいけど、素直で努力家で、友達思いだって知ってる。あと、一夏の事が大好きな恋する乙女だってこともね」

「さ、最後はどうでもいいでしょうが!!」

顔を真っ赤にする鈴ちゃんを可愛いと思いながら話を続ける。

「ふふ、話を戻すけど上辺だけの情報だけで挑発されてもね、本当に心まで響いて来る様な内容だった?たぶん、一夏の事とかも言われたんだろうけど、逆に言えば一夏の魅力を知らない残念な娘って考える事も出来る。ようは挑発が来るって分かっているなら、言葉の受け取り方を変えれば良いんだ」

「それって流してるだけじゃない」

「だけど女々しいことじゃない。あとは一つだけアドバイス。恋する乙女は強いのはなんでか知ってる?」

「それは、こう全身全霊全力全開だからでしょ」

「言い換えれば相手に自分の気持ちを叩き付けるってことだよね。それってね、例えるなら錠前と言う相手の心に、無理矢理自分の気持ちって言う鍵を差し込もうとすることなんだよ。これ、一夏の周りに居る女の子の大抵が当てはまることだよ。篠ノ之さんとかオルコットさんとか鈴ちゃんもだね。少しだけ止まって、よく見てみると鍵が間違ってるのが分かる時もある。無理矢理差し込もうとして錠前を傷つけずにすむよ。相手や場に合わせながら自分らしさを見せる、それが格好良い大人の姿だよ」







ISが解除されてしまった鈴ちゃんに止めを刺そうと振り下ろされた刀をルガーランスで弾き、ボーデヴィッヒさんのISだったものを蹴り飛ばす。

「暮桜を模したか。機械に身を任せるなんて、それじゃあ君は何処に居るって言うんだい、ボーデヴィッヒさん?」

「操!?」

「オルコットさんを連れて下がるんだ、鈴ちゃん。こいつはオレがなんとかするから」

再び斬り掛かってくるのを受け止めようとするがすぐに引かれてしまう。

「なるほど、オレの対策もしてあるんだ」

オレの同化の弱点、それは対象に1秒以上接触しなければならないこと。それをこいつは理解している。オレが同化した時にはそんな思考パターンは無かったはずなのに。

考えられるパターンは2つ。1つは昨日ボーデヴィッヒさんに返却した後、ボーデヴィッヒさんが組み込んだ。もう1つは遠隔で操作された場合。おそらくは後者だろう。鈴ちゃんとオルコットさんを一撃で落としたあの威力、零落白夜以外ありえない。色は黒いが、確かに雪片の形をしている。やはり死んでいなかったみたいだね、篠ノ之束。

「こんな事体になったのはオレの所為でもある。事情を聞く為にも、絶対助けてあげるよ、ボーデヴィッヒさん!!」

ルガーランスで斬り掛かり、パターンを解析する。機械であろうとAIにも癖がある。それを解析すれば同化に持ち込める。2分程切り合い、パターンを掴み、雪片が二本に増えた。

「なっ!?」

こっちもロングブレードをコールして二刀流で迎撃する。だけど、最初に動揺したのが原因で後手に回り続ける事になる。攻撃パターンも変わる。それをなんとかアンカーを使って捌いたと思えば肩に銃が生える。ハイパーセンサーで装填された弾を見て焦る。

「HEAT!?」

まだオレの後ろには二人が居る以上躱す訳にも行かない。簪さんの時と同じ様な状況に立たされたけど、先週の休みにカノンが届けてくれたイージスを同化しておいて助かった。ウィングユニットとイージスユニットを交換して展開する。

イージスはHEATを完全に防いだ。だが、零落白夜がイージスを切り裂き、左端のユニットが切り落とされた。切り落とされたユニットを拾い、同化能力で修復、再び切り落とされてを繰り返す。そして疑問に思った。こいつのエネルギーが多すぎることに。

ボーデヴィッヒさんのISはエネルギーが底を尽きかけていた。そこから今の状態になって多少回復したとしても同化した零落白夜のスペックから考えれば既に底を付いているはずだ。ニヒトと同じ様に内臓エネルギーを回復させる物が存在している。

ハイパーセンサーをフルに活用して全てを見通す。IS内部にエネルギーを増幅したり精製させている反応は無い。ならば外部供給されている。アリーナ内にそんな物は存在しない。ならば空からか。そして見つけた。衛星軌道上に浮かぶごちゃごちゃした人工衛星が。

しかし、問題がある。角度の関係上ドラゴントゥースは使えない。他の武装では届かない。ワームスフィアでは狙撃出来ない。直接行って叩き壊さなければならない。ゼロ次元経由の瞬間移動は可能だけど、こいつをそのままにする訳にもいかない。説明が面倒だけど、アレをやるしかないか。

覚悟を決めてイージスを展開したまま、真正面から謎のISに突っ込む。オレを真っ二つにしようとする右手の零落白夜を真剣白羽取りで防ぎ、同化される前にオレを斬ろうとする左手の零落白夜をオレのフェストゥムとしての、スフィンクスA型の腕で真剣白羽取りで防ぎ、オレ達を包む様に結晶で覆い尽くす。

なるほど、これがボーデヴィッヒさんという存在か。世界を知らない、原作の来主操の様に自分の世界しか知らないんだ。ならば教えてあげれば良い。時間はこれから3年程ある。今は世界が広い事と、オレは幾らでも力を貸す事だけ教えてあげれば良い。それがオレからボーデヴィッヒさんに贈る祝福だ。









昨日のタッグトーナメントの後処理が終わらない。既に一日以上経過しているのだけど、回収物の調査報告が続々上がる以上休む暇も無い。ボーデヴィッヒさんのISに強引に組み込まれていたパーツに、衛星軌道上にあった人工衛星、そして残された雪片が白く、そして弐型に変化した事。全てが詳細不明としか分からないという調査結果に頭が痛くなる。同化してみても、何も分からなかったこともだ。

「大分お疲れの様ね」

「衛星軌道上まで上がって人工衛星を確保して破損させない様に大気圏を突破して、ニヒトの整備をして、警備体制の見直し案を確認して、この報告書を読めば疲れもしますよ」

「大変だったんだね」

「まあ、状況証拠だけは確実にたまってきたから後は向こうがちょっとしたミスでもしてくれれば一気に国際犯罪者に仕立て上げれるんだけどね。そう言えば簪さん、打鉄弐式のお披露目はどうだった?」

「色々手伝って貰ったから機体と一部の武装はバッチリ。マルチロックは手こずってるから世代的には第2世代に分類されちゃうんだけど」

「マルチロック?複数の標的を同時にロックするアレ?」

「そうだよ」

「ニヒトの火器管制に普通に搭載されてるけど?」

「「え?」」

驚いている二人を見ながらコーヒーに口をつける。

「な、なんで使っていないのかしら?」

「マルチロックに対応しているホーミングレーザー、ニヒトの火器の中で一番威力が低い物なんだ。手数が必要になる様な状況も無かったし、アンカーで足りるからね。一回限りの奇襲武器かな」

その言葉に簪さんが落ち込む。よく考えてみればホーミングレーザーの時点で何処の国も開発出来ていない代物だったっけ。どうにか慰めようと疲れた頭を回転させようとした所で扉が開かれる。

「失礼する」

「ボーデヴィッヒさん、どうかしたの?」

「うむ、操に用があったのだが教室に来なかったからな」

「ああ、ごめんね。色々と仕事が立て込んでたから。今なら多少は大丈夫だよ」

「それはよかった」

話している間にもボーデヴィッヒさんはオレの傍までやってきている。それも机を挟まない様に横に回り込んでだ。何を考えているんだ?そして疲れもあった上に、敵意も無かった所為で反応が遅れ、両手で顔を固定されて唇を重ねられた。落ち込んでいたはずの簪さんとそれを慰めていた楯無さんもボーデヴィッヒさんの行動を見て唖然としていた。

「お、お前を私の嫁にする!!」

「……色々と言いたい事はあるけど、その馬鹿な知識を教えたのは誰か、教えてくれるよね」


 
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