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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN19







「桃谷の修理状況は?」

「今のところ四十%です。なにしろ、鉄鋼魚雷が四発も食らってますからね。現場ではよく爆沈しなかったなと出ています」

 府庁の自衛軍総司令部で俺は対馬宙域会戦で大破した巡洋艦桃谷の修理状況を聞いていた。

「それと、海軍技研から桃谷に短砲身で連射機能が従来より向上している主砲を試験的に搭載したいと言っていますが………」

「……茂のやつやな。了承しといてくれ。自衛海軍の任務は襲撃してくる艦隊から民間船を護衛するのが役目やからな」

「分かりました。そう伝えておきます」

 部下は俺に敬礼をして司令部を出た。

「………ふぅ」

 俺はぬるくなったコーヒーを飲む。

「いやぁ、長官の仕事が早いので私達も大分楽になりました」

 司令部付きの奴が言う。

「以前はそんなに酷かったんか?」

「えぇ。狹霧知事が司令長官代理をしていましたが、知事の仕事もあるので中々捗らなかったんです」

 成る程な。

「ところで、新型護衛駆逐艦の建造申請が書いてありましたけど………」

 司令部付きが質問してくる。

「今の自衛艦隊は旧式艦を騙し騙しで運用している状況やからな。巡洋艦はまだ運用出来るけど、そろそろ駆逐艦は退役して解体させなあかんから代わりに新型護衛駆逐艦をと申請したわけや」

「成る程。騙し騙しで運用するよりいっそ新しく建造した方がいいと言うわけですな」

「あぁ、取りあえず護衛駆逐艦六隻を申請しといたから乗組員達も喜ぶやろ」

 俺は司令部付きにそう言った。

ビィーッ!! ビィーッ!!

 その時、電話が鳴った。

「はい、自衛軍総司令部です。………はい、はい。あ、分かりました」

「何て?」

 電話を切った司令部付きに訪ねた。

「はい、狹霧長官にお会いしたいと面会が来ているとの事です。今は応接室にいるとの事です」

 面会やて? はて誰やろか………。

「分かった。行くけど大丈夫やな?」

「はい、今は比較的楽ですので」

「よっしゃ」

 俺は応接室に向かった。





―――応接室―――

「お持たせしました。どちらさんで……す………か………」

「……………」

 応接室にいたのは陸軍長官の山下やった。

 何で?

「………久しぶりだな狹霧」

「……そうですな。それで今日は何の用で?」

 俺はは応接室のソファーに座って、置かれていた御茶を飲む。

 温かいな。

「………我が陸軍師団長を襲った件は全て樋口元提督が自供して狹霧が無実だと証明された。狹霧は即刻、海軍省に出頭せよ」

 ………あ?

「ん? 復唱はどうした?」

「………お断りしますわ」

「なッ!? どういう事だッ!!」

「そのままの意味ですよ山下長官。貴女は何しに此処へ来たんですか?」

「貴様の現役復帰と謝罪だ」

「………もしかして今のは謝罪ですか?」

「あぁ、私なりの謝罪だが?」

 ……やってられへんなこれは。

「ともかく、その件はお断りします」

「な、何故だッ!!」

「勝手に人を疑った挙げ句、今度は手のひらを返すように復帰命令ですか? ふざけんなこのクソッタレェッ!! 流石の俺も怒るぞッ!!」

 俺は山下の言葉を無視して、応接室の扉をバァンッ!!と強く叩きつけて出た。





―――総司令部―――

「お帰りなさい長官。お客さんは誰だったんですか?」

「………まぁ顔見知りやな。会いたくなかったけどな………」

 司令部付きの質問に俺はそう答えた。





―――二日後、海軍省―――

「東郷ォッ!!」

バァンッ!!

 山下が海軍長官室の部屋に入ってきた。

「どうした利古里ちゃん?」

「どうしたもこうしたもないッ!! 狹霧が現役復帰を拒否したぞッ!!」

「ど、どういう事ですか山下長官?」

 東郷長官の傍らにいた秋山が慌てる。

「いいか、アイツは私に………」

 そして、山下が二人に説明をすると二人が溜め息を吐いた。

「な、何だいきなり……」

「利古里ちゃん……それは誰でも怒るさ」

「なッ!?」

 東郷の言葉に山下が驚く。

「……そこは普通に頭を下げて謝るべきです ね」

 さしもの秋山も山下にそう言った。

「私にはあれが謝罪なんだッ!!」

「「(謝罪なのか……)」」

「仕方ないだろッ!! 私は今まで謝る事は滅多になかったんだッ!!」

「……意外な事実ですね」

「まぁそれは兎も角だ、もう一回行ってキチンと謝るべきだ利古里ちゃん」

「………分かった」

 山下は渋々と部屋を出た。

「………意外とあの利古里ちゃんも可愛い な………」

「………頼みますから仕事をして下さい………」

 東郷の呟きに秋山が腹を押さえながら言っ た。






 
 

 
後書き
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