真似と開閉と世界旅行
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息抜き〜
前書き
切り所を見失った結果がこれだよ!前後編にすればよかったと思ったのも後の祭り。ではどうぞ。
亮~
「・・・ん・・・」
ゆっくりと目を開く。そこには天じょ・・・
「・・・」
「・・・」
・・・ではなく少女がいた。俺と目が合い、数秒固まったのち・・・
「ら、藍様ー!目を覚ました、藍様ー!」
・・・凄い勢いで部屋から飛び出していった。
「・・・えーっと」
取り敢えず辺りを見渡す。やたら懐かしい和式の部屋・・・んで
「・・・すー・・・」
少し離れた位置に、俺と同じように布団で寝ている親友がいた。
「・・・えい」
俺は自身の布団を咲に被せる。・・・数秒後・・・
「・・・ぶっはぁ!?」
汗を流しながら布団の中から飛び出してきた。
「あ、起きた」
「起きた。じゃねーだろ!暑ぃだろうがよ!・・・つか」
咲が俺と同じように辺りを見渡し・・・
「ここ、どこだ?」
まったく同じ疑問を抱いたのだった。
「ここは紫様の家だ」
声がした方を見ると、やたら尻尾に目が行く女性が現れた。
「あんた、確か・・・」
「八雲 藍だ。こっちは私の式の橙だ」
「初めまして!」
「・・・いや、一回助けてくれたろ。ネギまの世界で」
「なんだ、覚えていてくれたのか」
「当然。なあ、亮?」
「あ、ああ・・・」
・・・実はちょっと曖昧だったのは伏せておこう。
「・・・えっと。藍さん、紫は・・・」
「さんはいらない。・・・紫様は今野暮用で出掛けている。取り敢えず居間に来てくれ」
藍に言われ、居間に移動する。
「・・・さて、君達は世界の最後を覚えているか?」
「・・・紫が作ってくれたスキマに飛び込んで・・・」
「俺は死ぬかと思ったらいきなりだったな」
藍は頷くと空中に手をかざす。
「・・・ああ。テイルズオブグレイセス、並びにテイルズオブジアビスの世界は問題なく進んでいる。・・・どうやら異端による影響はなかったようだ」
「そうか・・・ん?俺達って同じ“テイルズ”の世界に行ったのか?」
「だね。シリーズが違うみたいだけど・・・」
「・・・取り敢えず、君達の媒体を出してくれ」
「媒体?」
咲が訪ねると藍は咲の指を指す。
「君達の仲間が光となって必ず何かに宿ったはずだ」
「・・・」
咲は指輪を取り出し、俺は葬解を取り出す。すると藍は何かを呟き・・・
「う・・・わ!?」
突然、葬解と指輪が輝きだし、視界を白に染める。
「・・・う」
そして光が収まり、目を開くと・・・
「亞莎!?」
「詠!?」
亞莎と詠が現れていた。二人はゆっくりと目を開き、周りを見る。
「これは・・・?」
「ボク、死ななかったの・・・?」
二人も大分混乱しているようだった。
「・・・一応、私が二人を元の世界の存在に戻した。これならあの世界にも帰れる」
「そんなことができるのかよ?」
「紫様に預かっていた力だ。・・・一応私も傍観者だからな」
感心していると、スキマが開き、紫が現れる。
「紫様、如何でしたか?」
「・・・一足遅かったわ。彼女達の保護には成功したけど・・・彼女達以外は全滅したわ」
その言葉と同時に新たなスキマが開き、三人の傷だらけの女性が落ちてくる。・・・あれ、こいつって・・・
「高町・・・なのは?」
「・・・ええ。そうよ。それに、あなた達と面識がある・・・ね」
「・・・!?」
藍が三人を部屋に運ぶのを亞莎達が手伝う。俺達は紫に向き直る。
「・・・どういうことだ?」
「それはこちらが聞きたいわね。始まりはいきなりだったわ。今までにあなた達と関係を持った世界がいきなり襲われ始めたの」
「えっ!?」
俺は驚く。それって・・・
「今私はFate、ネギま、Angel Beatsの世界の人間を全て一つの世界に集結させ、対抗しているわ。だけどまさかなのはの世界にまで手が及ぶとは思わなかったわ・・・」
「・・・それで何かやつれてんのか?」
「・・・久々に全力を出したわよ。多大な被害を出したけど、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての救出には成功したから・・・あの世界自身は消滅の心配はないわね」
「なんだってそんなこと・・・」
「それも私が聞きたいわ。・・・それに、どうやらあなた達の世界にも何かが起きたようね」
その言葉に俺と咲は同時に立ち上がる。
「それ、ホントか!?」
「それで、みんなは・・・!」
「落ち着きなさい。そちらにはリョウコウが向かったわ。・・・きっと程なく解決すると思うから・・・あなた達には再び世界に飛んで貰うわ」
「・・・だけど、分かるのか?残りの三人を見つけるなんて・・・」
「私を誰だと思っているの?・・・ただ、少し時間は貰うけど」
「それは構わないけど・・・その間俺達は」
「そうね。息抜きもかねて幻想郷を巡ったらどうかしら?」
「・・・そんな呑気な・・・」
俺は呆れるが、隣で咲は「面白そうだな」と言っている。
「亮さん、幻想郷に行くんですか?」
亞莎が背後からやって来る。
「ん、ああ・・・」
「でしたら紅魔館に行きませんか?」
「紅魔館・・・レミリアか」
「はい。私、一時期彼処にいましたから」
「ボクも興味深いわね」
「・・・つっても俺は特に知り合いが要るわけでもないんだが・・・」
「適当に廻るだけでも息抜きになるわよ。ほら、行くわよ」
「・・・しょうがねーな」
すると咲がいきなり右下辺りを見る。
「・・・お前もわりと行きたいだけだろ。正直に言えよ」
「?」
「・・・だから、別にデートとかじゃないっての。変なこと言ってんじゃねえよ!」
「お前・・・どうした?」
闇の使いすぎで頭がおかしくなったのか・・・?すると咲はしまった、という風な表情を作り、方天画戟を取り出す。
「お前ら、取り敢えずコレに触ってくれ」
「あ、ああ・・・」
俺達は全員方天画戟に触れる。・・・すると。
『初めましてッス!』
「うおわぁっ!?武器が喋ったぁ!?」
思わず手を引いてしまう。
『そ、そんなに驚かれるとショックッス・・・』
「アビスの世界で出来た俺の相棒。ダークリパルサーって言うんだよ」
『どうぞリパルと呼んでくださいッス!』
「・・・よ、よろしく」
亞莎と詠なんて完全に絶句してるし・・・すると紫が咳払いをする。
「そろそろ飛ばすわよ」
紫がスキマを開き、俺達はその中に入る。
「・・・おー」
スキマを通り抜けた先は森の中だった。そしてすぐ目の前に屋敷が会った。
「・・・あれが紅魔館です」
亞莎が俺の隣に立ち、説明してくれる。・・・どうやら咲達は別の場所に飛んだみたいだ。
「とにかく行ってみるか」
俺は歩き出し、門を通ろうとする。
「あ!亮さん、待っ・・・」
「せやぁぁ!」
「うわっ!?」
いきなり拳が飛んできて、俺は跳んで避ける。
「ちょ、なに!?」
「珍しく私が起きてる時に来たのが運の尽きですね。・・・不法侵入者は追い返します。覚悟!」
「わわわっ!?」
状況が掴めないままに女性が拳を放ってくる。
「ま、待ってください!」
亞莎が間に入り、女性が宙を飛んだ。
「「・・・へ?」」
投げられた本人と見ていた俺が同時に呆けた声を出す。
ズガン!
「ふむっ!?」
女性が落下してようやく亞莎が投げ飛ばしたのだと理解する。
「あ・・・す、すみません美鈴さん!大丈夫ですか!?」
「あ、あはは・・・相変わらず、凄いですね・・・亞莎さん・・・」
・・・数分後。
「すみません。つい侵入者かと思って・・・」
「ああ、いや。俺が勝手に入ろうとしたのが悪かったから・・・ごめん」
「と言うより美鈴さん。さっき珍しく起きてたって言いましたよね?・・・また咲夜さんに怒られますよ?」
「えと、実はさっき怒られたばかりで・・・」
「・・・だから起きてたんですね・・・」
「あはは・・・それにしても」
美鈴は俺を見る。
「な、なに?」
「この人が亞莎さんの恋人ですか。先程も不意を突いたつもりが避けられてしまいましたし・・・中々強いようですね」
「・・・あのさ美鈴。俺、アンタと一度会ったことあるんだけど」
「・・・はい?」
俺は一から説明する。
「あー・・・そう言えばそんなこともありましたねぇ」
「・・・軽いね。俺、恨まれてるのかと思ったけど」
「いえ、特に気にしてませんよ。・・・あ、でもパチュリー様は少し怒ってましたね」
「・・・そうですね。次に会ったら捕まえて実験台にするって・・・冗談ですから逃げようとしないでください」
「今のは冗談と思えなかったんだよ!」
「・・・とにかく、お嬢様にお取り次ぎしましょうか?」
「あ、はい。お願いします」
俺達は屋敷に通される。
「こちらがレミリアさんの部屋です」
「・・・よく迷わないな」
「お手伝いをしてれば覚えますよ。レミリアさん、起きてますか?」
「ええ、起きてるわ」
部屋の中はやたら広がった。
「久しぶりね、亞莎。それに、亮」
「・・・相変わらずみたいだね」
「そういうあなたは変わったわね」
「・・・そうかな。自分じゃよくわからないけど・・・」
レミリアは相変わらず見た目に似合わない妖しい笑みを浮かべる。似合わなそうなのに似合うとはこれ如何に。
「事情は聞いているわ。随分苦労しているようね」
「・・・ま、実力が足りなかったからね・・・もう少しでも強ければ・・・」
するとレミリアは俺に近づいて来る。
「・・・だったら強くなればいいわ」
「・・・え?」
「ここは幻想郷。常識なんてないこの世界では、限界なんて言葉もないわ」
「・・・」
思わず唖然とする。
「投擲術なら咲夜。体術なら美鈴。魔術ならパチェに習えばいいわ」
「・・・凄い教師だ・・・」
「私も手伝います」
亞莎が微笑みながら言ってくれた。
「そう、だな・・・よし!」
俺はレミリアに礼を言って、外に出る。・・・その時だった。
「亞莎ーーっ!!」
「えっ!?・・・フ、フラン!?」
少女が凄い勢いで亞莎にタックルをかます。・・・ちなみに亞莎はタックルされる瞬間に上手く腰を引き、衝撃を逸らしていた。
「亞莎!また来てくれたの?」
「うん。ちょっとだけだけどね。フランは寝てなかったの?」
ああ。吸血鬼って夜行性だったか。
「さっきまで寝てたけど、咲夜が教えてくれたんだよ!だから早起きして急いで来たの!」
「そっか。じゃあちょっと遊ぶ?」
「うん!」
亞莎が申し訳なさそうにこちらを見る。
「いいよ。遊んであげなよ」
「は、はい。すみません・・・」
俺は亞莎と別れて・・・しばらくしてから一人で屋敷を歩いたことを後悔するのだった・・・
咲~
「・・・」
「・・・咲」
「・・・なに?」
「ここ何処よ」
「・・・さっぱり分かりません」
「・・・はぁ!?」
俺達は当ても無くさ迷っていた。
「ちょっと!ここのこと知ってるんじゃないの!?」
「知り合いがいてもその世界を知ってる訳じゃないんだよ。・・・幻想郷なんて始めてだし」
「ろくに地理も知らないのにただ歩いてたわけ?」
「・・・いいだろ別に。・・・それに」
俺は少し顔を逸らす。
「・・・詠と二人きりなのって久しぶりだしさ・・・」
「咲・・・」
『(すっごい居づらいッス・・・)』
「・・・でも、確かにこのままじゃ不味いよな。なんか辺りが森になってるし」
「本当にここの地理どうなってるのよ・・・」
俺は闇を集中させる。
「取り敢えず空から眺めて見るよ。・・・ふっ!」
Bモードを発動した瞬間・・・
「うっわ!?どけどけぇ!」
「へ?・・・どわぁ!?」
高速で飛んできた何かと激突し・・・お互いに墜落した。
「いっつー・・・」
「ちょっと咲!?大丈夫なの?」
「お、俺よりもう一人は・・・」
少し離れた位置に倒れていた金髪の少女がゆっくりと立ち上がる。
「いたた・・・急になんなんだ・・・」
俺は急いで少女に駆け寄る。
「わ、悪い!大丈夫か?」
少女はとんがり帽子を叩きながら俺を見る。
「ん?・・・ああ、平気平気。私も普段より飛ばしてたからな」
「あ・・・」
俺は少女を見て思い出す。いくら最後に東方をやったのが遥か昔でも、コイツは忘れない。
「・・・済まなかったな。えっと・・・」
「霧雨 魔理沙だぜ」
だと思った。
「なあ魔理沙?なんでそんな急いで・・・」
「ああ、ちょっと知り合いの所にな。何でも新しい人形がどうとか・・・んで、代わりに珍しいキノコくれるらしいから、急いでたんだぜ」
「そうだったのか。こっちもちゃんと確認すればよかったな」
「まあ済んだことは気にしないで行こうぜ。んじゃ、私は行くからな」
魔理沙が箒に跨がり、飛ぶ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!ここから近くに村か何かないか?」
「あー・・・とにかく森を南に抜ければ人間の里があったような・・・」
「サンキュな。あんま飛ばすなよ」
「忠告どうも・・・あー」
「咲、五十嵐 咲だ」
「縁があったらまたな、咲」
そう言って魔理沙は凄い勢いで飛んでいく。・・・忠告無視かい。
「・・・と言うわけで歩くか」
「・・・仕方ないわね」
そうしてしばらく歩くが・・・
「・・・」
「・・・」
お互いに沈黙が続く。・・・物凄く長い時間が経った気がするんだが・・・
「・・・咲」
「・・・ああ、俺も同じこと思ってた」
「「人間の里まったく見えないんだけど!」」
俺と詠は同時に叫んだ。
「くそ・・・よく考えたら魔理沙の奴、自信無さげに言ってたしな・・・」
「いい加減足が痛いわ・・・」
俺も足に違和感があったので、既に詠は限界だろう。
「・・・しゃーない。また誰かに激突しそうで嫌だったんだが・・・」
俺は再びBモードを発動する。
「・・・ってリパル!お前レーダーかなんかないのか!?」
『・・・あるにはあるッスけど・・・幻想郷の地図はインプットされてないッス。それに生体反応も辺りに数多くあって・・・」
「使えないわねぇ」
『うぅ・・・』
「ま、まあそう言ってやるなって」
俺は羽ばたき、少し浮く。
「詠、ちょっとそのまま」
「え?・・・ちょっ!」
俺は詠を抱き抱える。
「な、何すんのよ!」
「こうしないと詠も連れてけないだろ?」
「だ、だからってこんな恥ずかしい・・・!」
「まぁいいだろ?詠にも空を飛ぶ楽しさを教えてやるさ」
そう言って一気に空高く飛ぶ。
「わっ、わっ!?」
詠が慌て、俺にしがみつく。
「・・・ほら、見てみろよ」
「・・・?あ・・・」
意外に幻想郷の眺めはよかった。・・・まさに幻想的と言うべきか。
「・・・あ、あった。なんだ、あながち間違いでもなかったか」
遠くの方に町並みっぽいものが見える。
「よっし。飛ばすからしっかり掴まってろよ」
「わ、わかっ・・・!?」
詠が言い切る前に勢いよく飛ぶと、詠が悲鳴と怒声を同時に出すという器用なことをしたのだった・・・
亮~
「はっ!」
ドゴォ!
「ぐあっ!?」
美鈴の肘打ちが背中に辺り、うつ伏せに滑る。
「痛っつぅ・・・」
「平気ですか?」
美鈴の手を借りて立ち上がる。
「・・・参ったなぁ。あんなにあっさりやられるとは思わなかった」
「それなりに鍛錬しましたから。簡単に負けるわけにはいきませんよ」
「ねえ、さっきの動きを詳しく教えてくれるかな?」
「ええ、構いませんよ。今のはまず・・・」
俺と美鈴が体術について話している隣で・・・
「最近練習はしているの?」
「いえ、ちょっと訳ありで・・・でも力は鈍ってはいませんよ。また投げ方を教えてくれますか?」
「ええ、いいわよ。ナイフは・・・」
「ちゃんと持ってます」
あっちは亞莎と咲夜が色々やってた。つか門番とメイド長が席を外していいのだろうか。
「・・・こうか?」
「・・・そうですね。出来るなら常に気を回すのではなく、当たる直前に纏わせる感じで・・・」
「こう?」
「そうです。・・・それにしても飲み込みが早いですね」
「美鈴の教え方が上手いんだよ。昔の俺ってバカだから“習うより慣れろ”がメインだったしね」
「亮さんももう少し勉強会に参加してくれればよかったんです」
「あはは・・・ごめん」
俺は亞莎から顔を逸らす。
「でも、大分経つけどこんなにお世話になってていいのかな?」
「構わないわ。お嬢様も妹様もいい暇潰しになっているようだし・・・何より美鈴が寝ないのは有り難いわ」
咲夜のジト目に美鈴は口笛を吹きながらそっぽを向く。
「・・・でもパチュリーの態度には傷ついた・・・図書館に入った瞬間睨むんだからな~・・・」
「いえ、私ほどじゃないですけど、パチュリーさんはわりと目付きが悪い方なんですよ。ですから偶然・・・」
「明らかに回避不可なスペルを撃たれたんだけど」
「ご愁傷様ね」
咲夜の言葉に肩を落とす。・・・その時だった。
『・・・用意ができたわ』
「紫?」
『咲にも連絡をするから、用意をしてなさい』
「ああ、わかった」
俺は美鈴を見る。
「・・・て訳でごめん。行かなきゃいけないんだ」
「そうですか・・・今度は真剣勝負をしましょう」
美鈴が差し出した手を握る。
「また何時か来ます。咲夜さん」
「今度はゆっくりお茶を飲ませてあげるわ」
俺達はレミリアとフランドールに挨拶をしに向かう。さて・・・いよいよ、だな。
咲~
「・・・凄いわね」
俺達は人間の里に到着し、カフェに入る。
「・・・里って言うくらいだからもっと小ぢんまりしてるのかと思ったわ」
「・・・まあ、確かに。結構賑わってるし・・・」
俺は注文していたクレープを一口かじる。
「・・・意外に近代的なお菓子もある」
詠もケーキを口に入れる。
「確かに美味しいわね。・・・でも、こんなのんびりしてていいの?」
「俺の場合、気が使える訳でもないし、ましてや何かしら武術に長けてる訳でもない。俺は・・・」
手の平に闇を球体状に出す。
「・・・コレに長けてる。こればっかは鍛えられないからな。それに、やっぱりまた詠とのんびり過ごしたいって思ってたから・・・」
「・・・余裕がある今だけは気を緩めたいって訳ね」
「・・・そうそう。・・・詠は嫌か?」
「・・・ボクが咲のすることに嫌なんて言うと思う?」
「・・・う」
思わぬ不意打ちに顔に熱が溜まる。
「・・・ま、まあ。それならいいけど・・・」
『咲、聞こえるかしら?』
「・・・紫か?」
『ええ。用意が出来たわ。そっちはいいかしら?』
「ああ、構わない。・・・いいか?」
「もちろん。・・・それと、ボクも着いて行くわよ。・・・待ってるだけはもう嫌よ」
詠がまっすぐに俺を見る。
「・・・わかった。けど、危ないと思ったら・・・」
「危なくならなければいいんでしょ?」
「・・・頼りになる台詞だな。・・・分かった、行こうか。リパルもいいな?」
『当然ッス!』
俺達は食べ掛けの菓子を食べ、立ち上がる。さあて、いきますか・・・
亮~
「・・・」
「悪いけど、あなた達の記憶は封じなければならないわ」
「・・・マジ?」
「反応があった世界も介入の必要がない世界・・・やっぱり世界の壁が厳しいのよ。一応傍観者の知り合いに誤魔化すよう頼んだけど・・・」
「じゃあボク達も・・・」
「二人は何とかそのまま行けないかやってあげるわ。亮と咲はすぐ行くのね?」
「ああ」
「当然」
紫は頷くと俺達に手をかざす。
「・・・目を閉じなさい」
「「・・・」」
俺達は言われた通りにする。
「じゃあ、行くわよ」
紫の言葉を最後に、意識はゆっくりと消えていった・・・
愛依~
「・・・やっぱり何もなかったね」
椿が辺りを見渡しながら言う。
「あるのは廃墟だけ・・・何の世界なんだろ、ここ」
アタシは頭を掻きながら言う。・・・椿と合流した後、アタシ達は“声”から逃げる為に色々転移していた。
「・・・ふふ」
椿が嬉しそうに何かを見ていた。
「それ、なに?」
椿は顔を赤くする。
「あ・・・うん。わたし、一度危ないことしてあの人達に看病と監視をされてたんだけど・・・リョウコウって覚えてる?」
「・・・あの偃月刀持った怖い人?」
「そんなに怖くないよ。・・・その人、わたしの話を聞いてくれて、色んな悩みも相談に乗ってくれて・・・その時にこれを貰ったんだよ」
椿がネックレスの先にあるクリスタルのような物を見せてくる。
「アタシもね、撫子っていう友達が出来てね。それに黒羽も友達になってくれて・・・」
アタシ達は笑い合う。・・・何時以来だろう。こんなに楽しく笑えたのは。・・・だけど、それを不意に壊す声が聞こえた。
「ーーーやれやれ。君達は呑気だねぇ」
「「っ!?」」
振り返ると、白い布で全身を覆った人がいた。声から男とわかるが・・・
「誰だ、あんた・・・」
「誰って・・・酷いなぁ。僕は何度も君達に話しかけているのに」
「あなたみたいな人・・・知らない!」
「・・・がっかりだなぁ。じゃあ、思い出させてあげるよ」
男はわざとらしく大きく息を吸う。
「ーーー“殺せ”」
「「なっ・・・!!」」
忘れる訳もない。この声・・・!
「あ、アンタが・・・」
「そう。君達を操ってた黒幕って訳さ・・・っと」
「はぁっ!」
椿が放った暗器は容易くかわされる。
「危ないなぁ・・・こういう時だけは素早いね、君は」
「くっ・・・あなたを倒せば全部終わりになる・・・だからここで倒す!」
「・・・はぁ。どうやら何か勘違いしてるみたいだね」
男が手を上げると、更に二人の人間がやって来る。
「君達、軽く遊んであげてよ」
「・・・了解」
「・・・戦闘、開始」
片方の闇の刃を受け止めようと偃月刀を構えた瞬間・・・アタシの体は弾き飛ばされていた。
「ぐっ・・・!?」
「愛依!?・・・っ、はやっ・・・きゃあ!」
椿はアタシの近くまで転がってくる。
「椿!」
「・・・愛依」
椿は小声で話す。
「(何とか転移できない?)」
「(・・・隙が出来ないと危ないよ)」
「(だったら作るよ)剛鬼の記憶を再生・・・発動!」
椿は立ち上がり、刀を構える。
「飛天御剣流・・・九頭龍閃!!」
同時に放たれる九つの斬撃が二人を襲い。二人は飛び退る。
「・・・今だよ!」
「・・・ああ!」
アタシは転移を開始する。
「・・・まったく、このままじゃ逃げられちゃうじゃないか。・・・仕方ないね、死にかけでもいいか」
男がそう言って手を振ると・・・光の矢が現れた。・・・あれ、は・・・
「お母さんを・・・殺した・・・」
あの時のことが頭に嫌でも浮かぶ。
「あ・・・あ・・・」
「じゃ、行くよ」
光の矢が放たれる。・・・避けなきゃいけないのに、足が、体が動いてくれない。
「愛依!」
その時、何かに突き飛ばされた。それのお陰で当たらずにすんだ・・・だが。
「・・・っ」
「椿!」
椿は片腕を押さえていた。そこからは血が流れ・・・
「大丈夫、掠り傷だから」
「椿・・・は、速くこっちに!」
もう転移が完了してしまう。・・・その時気付いた。目の前にさっき椿が見せてくれたクリスタルが輝きながら浮いていた。
「リョウコウと結衣咲シィの記憶を再生・・・」
椿の体が雷に変わる。
「椿!何を・・・!」
景色が揺らぐ。・・・全ての感覚がずれる中、椿の口が動いた。
ーーーごめんね。必ず逃げてーーー
「椿・・・嫌だ!アタシ一人なんて・・・椿、椿ーーーーッ!!」
目の前に伸ばした腕は届かず・・・ただ無情にクリスタルが何かを告げる声と同時にアタシの視界と意識は遠くへ飛ばされた・・・
後書き
亮
「名前が戻った・・・」
咲
「どうせまた変わるんだろうな・・・」
亮
「さてさて、次はなんの世界やら」
咲
「もう決まってるらしいけどな。・・・それじゃ、また次回もよろしく!」
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