真似と開閉と世界旅行
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ゲーム、スタート〜
前書き
新しい世界。・・・ですが説明が・・・・・・説明が長い・・・!!抜けてる設定がないか不安ですが・・・ではどうぞ。
「うおおっ!」
ガキン!
曲刀と曲刀がぶつかり合う。だが向こうは怯まずに二発目を放ってくる。
「・・・っ」
それが頬を掠め、俺の左上に表示されている青い横線が減少する。・・・“HPバー”と言う名の命が削れたと言うわけだ。敵であるトカゲ人間・・・リザードマンロードと呼ばれるそれは曲刀を構え、その剣にライトエフェクトを纏わせる。
「!」
それに合わせて俺も同じ構え・・・単発重攻撃技《フェル・クレセント》という突進技を同時に放つ。
ガァン!
だがあくまでも武器を逸らし、ダメージを回避するだけ。お互いに背を向けた状態で俺は曲刀、擬音を納め、背中に背負った刀・・・迷切を引き抜き、振り向き際に振るう。
ーーーカタナ用ソードスキル《一閃》
ズパァン!
技の出が何より速く、威力も高いこの技はリザードマンロードを振り向かせることもなく。そのHPをゼロにする。
「グルアァァッ!?」
大きい叫び声を上げ、その体は無数のポリゴンとなり、ガラスを割るような音と共に爆散する。
「・・・ふぅ」
俺、大澤 亮・・・いや、PCネーム“コウハ”は息を吐き、迷切を鞘に納める。
「レベルアップ・・・と」
目の前に表示される文字を眺めながら、俺はこの世界の始まり・・・二年前のあの日のことを思い返していた・・・
「はああっ!」
ソードスキル《リーバー》が当たり、イノシシのモンスターの体力をゼロにした。
「よっし!」
大分ソードスキルの扱いにも慣れてきた。
「・・・ホント、店に並んだ甲斐があったなぁ・・・」
俺は大きく広がる青空を見てそう呟く。・・・実はこれ、ゲームなのだ。ゲームと言ってもテレビの前でコントローラーを持つのではなく、“意識そのもの”をゲームに飛ばしている・・・と言うべきか。
“ナーヴギア”
それが、まったく新しいゲームジャンルを開拓したゲームハードの名前。ディスクとか入れているのではなく、ヘルメットのような形をしたそれを被り、本来脳が体に送る信号を全てナーヴギアが受け取り、それをゲーム世界に反映すると言う、初めて聞いた時は誰しも理解に苦しんだと思う。
「・・・風が気持ちいいな・・・」
そのまったく新しい技術のナーヴギアを使用したまったく新しいゲーム・・・それがこのVRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)“ソードアート・オンライン”だ。ナーヴギアによる接続は、完全ダイブと呼ばれ、多くのプレイヤーが感動した事だろう。ただ、最初の頃は微妙過ぎるソフトばかりで、俺はナーヴギアは持っていたが、棚で誇りを被っていた。その時に兄がこのソードアート・オンラインのベータテストに当選したと聞いたのだ。
「(最初は興味なかったけど・・・)」
毎日兄がウキウキしながら話す内容に段々と俺もその仮想世界に惹かれ、学校をサボってまで数日間ゲームショップに並び・・・初回ロット僅か一万であるそのゲームを手に入れることが出来たのだ。俺は兄のように機械に精通している訳でもなく、妹のように剣道に打ち込んでいる訳でもない。そんな中途半端な俺がやってみたいと思ったこのゲーム・・・これで中途半端な自分と別れられると感じたのだ。だからこそ、この世界で強くなる。そして兄妹の度肝を抜いてやると意気込んでいたのだ。
『これは、ゲームであっても遊びではない』
それがこのゲームの開発ディレクター茅場 晶彦の言葉。茅場 晶彦については兄から、弱小ゲーム会社のアーガスを急成長させた男・・・位しか聞いてない。だが、その男が偉大であるのは自分でも分かる。
「・・・」
俺はカトラスを見る。そう、このゲームに魔法の類いは存在しない。戦闘で頼りになるのはセンスと・・・
「・・・はっ!」
ビュンッ!
剣技だけだ。しかもスキルは多々あり、鍛冶系や製造系、果ては料理とか釣りとか日常的なスキルもあるらしい。金さえあれば武器も防具も、家だって買えるし。昔流行った某狩りゲーがパワーアップしたようなものだ。・・・先程言ったが、兄が当選した稼働試験・・・ベータテストは、僅か千人のみが選ばれ、更に正式版の優先購入権まであると特しかないものだった。しかもその兄はベータテスト中暇さえあればダイブしていて、学校位でしか話す機会がないという・・・まさに筋金入りのゲーマーだったのだ。そして二〇二二年十一月六日の日曜日。正式サービスが開始。俺はわくわくしながら数十分も前からスタンバイし、この世界を見て感動した。俺ははやる気持ちを抑え、マニュアルを見て、やり方をしっかり学んでからフィールドに出て・・・今に至る。
「・・・そろそろ一回落ちて飯食べようかな・・・」
視界の端に表示されている時刻は午後五時ちょいを記していた。
「メニューメニュー・・・っと」
右手の人差し指と中指を揃え、一度掲げてから真っ直ぐ振り下ろす。この世界でプレイヤーが許される魔法かもしれないメニューを呼び出すアクション。すぐに鈴が鳴るような音と共に紫色の半透明な板が出てくる。
「えーっと・・・あれ?」
思わず声が出る。何故なら・・・“ログアウトボタンがなかった”から。
「・・・バグ?」
最初ならこんなバグもあるか。だが少々困った。ナーヴギアにはログアウト以外に自発的にフルダイブを解除する方法はない。つまり、家族がいない人や一人暮らしでピザの注文してた人なんかは涙目な事になるだろう。・・・その時だった。
リンゴーン リンゴーン
「・・・っ!?」
突如大きなサウンドが鳴り、思わず耳を抑える。・・・そして体に目が行ったとき、体が青色の光に包まれていた。
「なっ・・・」
一瞬景色が揺らぎ、すぐに視界が戻り、石畳が広がる広間が目に入る。
「ここ・・・“はじまりの街”?」
ログインした時に訪れたはじまりの街。そこの中央広場に俺は立っていた。
「うわ・・・」
周りには沢山の人。明らかに一万近くはいる。つまり、皆同じように転移されたのだ。周りの人はざわめき、段々と荒れた声も聞こえてくる。
「あっ・・・上を見ろ!」
不意に誰かの大声が響き、空を見ると空は真紅に染まり、英語で何かが表示されていた。
「ワー、ニン・・・グ。システム・・・アナウ、ンス」
情けない程英語が苦手な俺は苦労しながら英語を読む。・・・読み終わった瞬間、空からまるで血のように赤い液体が滴り、球体を作った後、赤のフード付きのローブを着た巨大な人影に姿を変える。・・・フードの中に顔は無く、少々不気味なそれをGM(ゲームマスター)だと思い、俺は何か言うのを待つ。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
「・・・は?」
理解が追い付かず、それに答えるかのように声は響く。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
「・・・!?」
茅場晶彦・・・!兄の話ではこういった表舞台には上がらない人物らしいのだが・・・
『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、“ソードアート・オンライン”本来の仕様である』
「仕様・・・だって?」
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはない』
城。というのは恐らくこのゲーム・・・SAOの舞台である百層からなる石と鉄で出来た・・・“アインクラッド”の事だろう。茅場はまだ言葉を繋いでいき、次の言葉に戦慄を覚えた。
「・・・また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合ーー』
・・・僅かな間。
『ーーーナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
「・・・!」
・・・茅場はつまり、無理矢理ログアウトしようとしたプレイヤーを殺す、と宣言したのだ。そして俺は思い出す。兄が言っていた事を。ナーヴギアの重さの三割がバッテリセルだと。その気になれば脳内電子レンジになるなと俺は前に笑ったが・・・洒落にならないことを理解すると、昔の自分を殴り倒したくなった。
『ーーー警告を無視してナーヴギアのーー』
しばらく呆けていた間に茅場の話は続いていた。
『ーーー残念ながら、既に二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
どこからか悲鳴が聞こえた。・・・俺が無事、という事は兄も無事である確率は高いだろう。
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体を心配する必要はないーーー』
茅場の声は既に頭に入らなくなっていた。だが再び、茅場の一言が俺に衝撃を与えた。
『・・・今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』
俺は嫌な予感を振り払おうとしたが、すぐに茅場の声がそれを遮る。
『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
「ーーーーー!!」
俺は左上に表示されているただ三國志が好きだから、という理由でコウハと名付けたPCネームの上にあるHP(ヒットポイント)バーを見る。この数字が俺の命で・・・
「体力がゼロになれば・・・死ぬ・・・!?」
茅場が淡々と百層までクリアすれば全員解放するだの言っているが、俺の思考回路は既にオーバーヒート寸前だった。事実だと思う一方でゲームの演出か何かだと考え・・・
『それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実である証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』
俺は言われるままにメインメニューを開き、アイテム欄を確認する。・・・そこに表示されたリストの一番上にそれはあった。
「・・・手鏡?」
俺は戸惑いながらアイテム名タップし、浮き上がった小ウィンドウからオブジェクト化のボタンを選択する。すると効果音と共にただの装飾もない手鏡が現れる。それを覗き見ると俺が設定したアバターの顔が映るだけだった。・・・その瞬間、
「わ・・・っ!?」
突然白い光に包まれ、少しして視界が晴れた時・・・違和感を感じた。
「え・・・」
そして気付いた。周りにいた全てのプレイヤーの・・・背丈や顔が一気に変わっていた。
「あ・・・!」
俺も慌てて手鏡を見る。・・・そこには、兄や妹と三人でいないと兄妹と分からない程どちらにも似てない顔。手なんか加えた事のない黒髪。・・・“コウハ”の顔ではなく、リアルの・・・“亮”の顔がそこにあった。
「な、な・・・」
手から鏡を落とし、破砕音と共に鏡が砕け散る。・・・そうだ。確かナーヴギアは顔全面を覆っていた・・・つまり、脳からの信号だけでなく、顔の形まで把握できる・・・
「しかも・・・」
初起動の際に、ナーヴギア側からの登録作業で体のあちこちを触った覚えがある。あれを利用すれば体の可動範囲をナーヴギアに記録させデータ化させる事も可能になる。現に周りのプレイヤーは顔だけでなく、体格や背丈、終いには性別まで変わっている者もいた。
『諸君はなぜ、と思っているだろう。なぜ私はーーSAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』
・・・わかってる。ここまでしといてそんな容易く考え付く答えではない位・・・
『私の目的はそのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら・・・この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』
何処と無く籠っていた感情が消え、茅場は再び無機質な声で喋る。
『・・・以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君のーーー健闘を祈る』
その言葉と共に茅場は消えていき・・・ゲームに付き物のBGMが聞こえてきた時、全てのプレイヤーが事態を理解した。
「嘘だろ・・・なんだよこれ、嘘だろ!」
「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」
「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」
「嫌ああ!帰して!帰してよおおお!」
耳を塞ぎたくなるような叫びを出せる程の絶望。だが俺は未だその事実を夢のように感じていた。・・・そしてしばらくすると、何人かが人混みを避けて街の出入口に向かうのが見えた。この状況で真っ先に外へ向かうものは、このゲームのことを知っている・・・即ちベータテスト参加者だと言うことがわかった。・・・どうする。彼等を追えば確実に他のプレイヤーより早めにスタートを切れる。けど・・・
「やだ・・・嘘よ・・・」
「お姉ちゃん、しっかりして!お姉ちゃん!」
・・・多分、人が一斉に動き出したらこういった人物は人波に呑まれ、離ればなれになってしまうかもしれない。・・・こんな時程、自分のお人好しな性格が嫌になったことはなかった。
「・・・すみません!そこで立ち止まっていると危ないですよ!」
「け、けどお姉ちゃんが・・・」
栗色の髪の少女がうずくまっているもう一人の少女を見る。
「無理矢理にでも腕を引っ張って宿屋か何処かに向かってください。・・・早く!」
「は、はい!」
少女は無理矢理姉と思わしき人物を引っ張って行く。
「他は・・・」
よく見ると大人に混じって小さな子供もいる。俺は急いでその子供達も助けていく。
「君達、ここにいたら危ない!取り敢えず人混みから離れて!」
子供も誘導し、ひたすら残っている人はいないか探す。そう、ひたすらーーーーーーーー
リザードマンロードが落としたアイテムの確認を終え、俺は溜め息を吐く。
「(あの時の行動は・・・間違ってたかな)」
俺はそう考えて首を振る。
「いや・・・こんな考え方してたら、勝手に名前使った彼女に怒られるよな・・・よっし、帰るか!」
俺は来た道を引き返していく。・・・新しいこの世界での・・・物語は始まった・・・
後書き
コウハ
「新しい世界〜」
咲
「名前が分かりにくいだろうが」
亮←戻した。
「まあそう言うなって。久々のメインなんだしさ」
咲
「俺もちゃんと出るっつーの」
亮
「さて、この世界の俺は何 亮なんだろうな」
咲
「最初は記憶が戻ってるんだろ?」
亮
「ああ。だから大澤って言ったけど・・・実際の名字は違うよ」
咲
「それはいつ公開?」
亮
「隠すことでもないから、次回にでも」
咲
「ふーん・・・それじゃ、また次回もよろしく!」
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