リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた
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第五話
「・・・ふむ、その化物とは、一体どんな敵だったんだい?」
葵の言葉に驚いていた彼らが意識を取り戻すのに、数分の時が必要だった。むしろ、ここまでとんでもない話を聞いて数分で済んだというのは、彼らが『高町家』であるからだったのか。
(まあ、少なくとも恭也さんは吸血鬼を知ってる訳だしな。士郎さんだって、裏の世界に長いこと生きてれば、オカルト関係の知り合いくらいはいるかもしれん)
少なくとも、とらいあんぐるハートでは、吸血鬼やら人狼やら妖狐やらという人外キャラが多数出ているし、忍者もいれば退魔師もいるし自動人形もいる。この世界がとらハと世界観を同じにしているなら、士郎や恭也もオカルトには経験を持っていると考えるのが妥当かも知れない。
「どんな・・・か。真っ黒い毛玉みたいなやつでしたね。真っ赤な目をして触手を出して、体当たりでコンクリートを粉々に砕いてました。俺が現場に着いたときは、既になのはが押し倒されていたんで、手加減なしで蹴り飛ばしたんですけど・・・即座に再生を始めたので、殆ど効いていなかったんでしょうね。」
最後の俺の言葉に、士郎と恭也が眉をひそめる。
「今の葵君は、100メートルを2秒で走る事も出来るんだよね?」
「ええ。因みに、コンクリートの壁を殴ってみたら粉々になりましたよ。体も頑丈で、あれだけ飛んだり跳ねたりしたのに、どこも問題ありません。」
その言葉に、更に顔をしかめる二人。恭也が呟く。
「それだけのスピードとパワーだ。ただの蹴りでも、殺人的な破壊力になるはず。それでも倒せないとなると・・・。」
チラリ、と恭也が士郎を見ると、士郎も苦い顔をして頷く。
「うん。試して見ないと分からないが、通常の攻撃は意味を成さないかもしれないな。・・・さて―――」
そして、その鋭い視線が、なのはへと向けられた。
「なのはが私たちに何も言わずに出て行ったんだ。大事なことなんだと思って聞く気は無かったんだけど、そうも言っていられなくなったね。・・・なのは。」
「は、はい!」
いつもと違う、厳しい父親の瞳。先程から居心地悪そうにしていたなのはは、その瞳に怯えた。
「何故そんな危険な場所にいたのか。・・・聞かせてもらえるかい?」
葵を除く全員の視線がなのはへと注がれた。そのなのはは、なんと言っていいのか分からず、タジタジとしていた。
「あ、あの・・・。」
「待ってください!」
その時、この場の誰でもない声が響いた。士郎と恭也は即座に竹刀袋を掴みとり、中から鞘に入ったままの日本刀を取り出す。そして、いつでも抜刀出来るように身構えながら、テーブルの上のソレに注目した。
葵となのははソレを知っていたし、桃子は「あらあら。」とのんびりしている。そして美由紀は・・・
「うわー!フェレットが喋ってる!喋る動物って、久遠以外にもいたんだー!」
(美由紀さん久遠と会ってるのかよ!)
色々突っ込みたいことは合ったが、我慢して成り行きを見つめることにした葵。しかし、この一足触発の状況でも一切動じずに、呑気にお茶を啜っている桃子は、やはり大物だ。
「うわ、それ本物!?」
唯一、なのはだけは二人が持つ武器に驚きを隠せずにいたが。
「・・・さて、キミは一体、誰なのかな?」
ゴクリ。誰かが唾を飲み込んだその緊迫する状況のなか(相変わらず桃子さんはお茶を飲んでいる)、ソレは喋った。
「・・・お話させて頂きます。全てを。」
殺気を叩きつけられ、寿命が縮まるような思いを抱きながらも、ユーノはそう言い放ったのである。
(おー、勇気あるなー)
密かに、葵からの好感度を上げているとは知らずに。
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