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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
入れ替わりシリーズ
  入れ替わり発端

 
前書き
現在ブログにて掲載中の王道入れ替わりネタの始まり。 

 
 ――いや、この二人の相性が非常に悪いことは分かってはいたんだけどさぁ……。

「あら、うちはの頭領殿。まだおられたのですか? とっととお帰りくだされば良いものを」
「ふん。相変わらず口“だけ”は達者だな、うずまきの女」

 背後に阿修羅が見えてきそうな笑顔で出入り口を指差す妹と、それを一蹴して嘲る様にせせら笑う我が同盟者。
 分かってはいるけれど、この二人は本当に仲が悪い。
 もう本当に、この間の慰霊祭の時からずっとこんな感じだ。

「オレはこの戯けと連合の今後に関しての話がある。戦場に出た事もない、名ばかりのくのいちは黙って退出したらどうだ?」
「あらいやだ。かく言う私とて、他国の忍び一族との今後の関係に付いて柱間様とお話を進めようとしていた所ですのに。そちらこそ下がられたら如何です?」

 何とも刺々しい会話に、当事者ではない私の方がなんだか身の置き所がなくなって来る。
 もうやだ、なんなのこの二人。めっさ、居心地が悪いんですけど……ここ私の部屋で居心地が良い様に誂えた筈なのに。
 ちらり、と二人に視線を向ければ、片方は笑顔で、もう片方は仏頂面だった。
 浮かべる表情こそ対照的であるが、言っている内容に大差はない。要するに厭味の応酬だ、大人げないなぁ……この子達。

「その、二人共……。せめて木の葉の仲間なんだからさ、もう少し仲良くやろうよ」
「嫌ですわ、柱間様。うちはの頭領殿がお引き取りくだされば済む話です」
「――はっ。己の立ち位置も分かっていない愚か者相手に何を生温い事を。甘さも過ぎれば毒だぞ」

 ……うん。
 二人が態度を改めようとする気がない事はよーく分かったよ。ええかげんにしてくれ。
 内心で溜め息を零しながら、火花を散らしている妹の方へと向いて笑顔を向ける。

「ミト。良かったらお茶を淹れてくれないかな? 少しばかり喉が乾いてね。ちゃんと三人分、用意してくれないか?」
「……わかりましたわ」

 ちょっと不満そうにマダラを睨みながらも、ミトは不承不承という具合に頷く。隣部屋へと消えていった真っ直ぐな背中を見送って、私はマダラへと向き直った。

「――お前ね、その戦闘力至上主義なところは改めた方が良いぞ。あんな風にミトを馬鹿にする必要なんてなかったじゃないか」
「事実を言って何が悪い? あの女が役に立つのはうずまき特有の封印術のみ。それ以外に何の取り柄がある」

 弱い者に価値はない、と言い切る戦友に隠す事無く溜め息を吐く。

「ミトは弱くないぞ。そりゃあ、戦闘力は確かにオレやお前に及びはしないが――あの子は強いよ」
「戯れ言だな。力が無い者は遅かれ早かれ駆逐される――それが現実だ」

 そう言って鼻を鳴らされる。そう言う事は思ってはいても口に出しちゃダメでしょ。
 まあ、確かにこいつの意見にも一理あるけど……同時に絶対的な真実でもないと言う事にいい加減気付かないかなぁ……。
 そうは思うが、これ以上話を続けたところで直ぐさま考えが変わる訳でもないし、寧ろ平行線を辿る事は必須だ。
だから早々に話を切り上げて、座している机の引き出しを探る事にしました。

「――あ、あった」
「……なんだ、それは?」
「猫バアのお店で買ったんだ。鎮静効果とささくれ立った心を癒す効果があるらしいよ」

 複数の香木を練り合わせて作ったタイプのお香らしい。残念ながら私は詳しくないので詳細は分からないが。
 マッチを擦って、火をつける。暫くすれば落ち着いた香りが室内に漂った。

「あら、柱間様。そのお香は……」
「ん。ミト、お茶持って来てくれてありがと。嬉しいよ」
「いいえ。でも、余計なお世話でしたかも」

 そう言って差し出したミトの淹れてくれたお茶は、やはり猫バアのお店でリラックス効果があると言われていた物で、お香とセットで購入した物だった。
 少々罰の悪そうな顔をしているミトも、なんだかんだいがみ合ってばかりではいけないと思っていたのだろう。こうした心遣いがさり気なくできるミトは本当に優しい子だと思う。

「どうぞ、柱間様」
「ありがとう、ミト」
「――――……どうぞ、うちはの頭領」
「…………」

 ミトの入れてくれたお茶は他の誰が淹れるよりも遥かに美味しい。
 それは誰もが覆せない絶対的な真実なので、流石のマダラも文句を言わずにお茶を啜っていた。

「はぁ……。流石猫バアのお墨付き。なんというか、癒される……」
「爺臭いな」
「五月蝿い、余計なお世話だ」

 はぁ、と溜め息を吐けば、向かいでせせら笑う声が聞こえたが無視する。
 
 この時の私は気付いていなかった。
 珍事が起こる事に前触れなんて物は無く――それを事前に察知する手段だって無いと言う、あまりにも当たり前すぎる事実を忘れてもいた。
 振り返ってみればたいした事などない、平穏な日々に埋没した奇妙な一日の話。
 この頃の私は、私達はまだ何も知らなかった。これから先の未来に何が起こるのか、そうして私の目指し続けた夢の先に一体何が待っていたのかを。
 
 ――――これは、そう。そう言う普通の日の話、だったとだけ言っておこう。

*****

 ……とまあ、こんな感じで始まって里中を震撼させる大事件へと繋がる訳です(←嘘です)
 
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