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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
日常番外
  暴走する極々一部の人々


 基本的にどのような場合であれ、既存の組織に新参者が参加する際には、新参であるが故に相手に舐められない様にする事が大事である。
 そう言ったある種の緊張感を抱いて、同盟参加の際に渡された情報を頼りに忍び連合の頭領達の集う談義の場に足を踏み入れたうちはマダラは、目の前で固く閉ざされた襖の前で軽く息を吐いた。

 刀や忍術こそ使わないものの、この談義だって立派な戦場だ。
 うちは一族の頭領として無様な姿を晒す事は彼の本意ではなかったし、何よりも武では自分に及ばない者達に舐められる事は更に彼の望む所では無い。

 ある種の緊張感を抱いて、襖へと手をかける。
 ——そうして開かれた襖の先の光景に、彼は目を見開いたのであった。



「止めないでくれ、猿飛殿! 今回ばかりは流石のオレの堪忍袋も我慢ならん!!」
「いーから落ち着け、このあんぽんたん! 今度はどこの電波を受信してきやがった!!」

 不自然な黒みを帯びた影に拘束されながらも、血走った目を見開いて尋常ならざる様子で声を荒げているのは千手柱間。
 そしてその正面には猿飛一族の頭領の姿があり、決して狭くない室内に散らばる様な形で忍び連合の主立った頭領達の姿もあった。

「くっそ! この暴走癖とあの残念な盆栽さえなければ人間としても忍者としても完璧だって言うのに……っ!」
「人を一昔前のラジオみたいに言わないでよ! オレは至って正常だ! 錯乱なんかしていない!!」
「そう言う奴に限って普段は常識忍ぶっているんだ!!」

 どこか疲れた様子の山中の当主と菓子を平らげている秋道の当主は、片方は頭痛を堪える様に、もう片方はどこか面白そうにその光景を眺めている。
 普段から持参している菓子を摘んでいた秋道の当主が、マダラに気付いて会釈した。

「あ、マダラ殿。随分と早かったね」
「……この戯けた光景は一体なんだ」
「世の中には知らない方が夢を見られることって、色々あるんですよ……」

 にこやかに挨拶して来た秋道の頭領にマダラが訊ねかければ、その隣で頭を抱えている山中の頭領が遠い目になる。
 訳が分からないままに眉間のシワを深めたマダラ。そんな彼に声をかける者がいた。

「良い所に来た、マダラ殿! この阿呆を何とかしてくれ!!」
「阿呆とは何だ、阿呆とは!!」
「良いからお前は黙ってろ!!」

 言い争っていた二人が、マダラの方を向いてそれぞれの表情を浮かべる。
 何かを思いついた様な其の片割れの表情に、マダラはほんの少しだけ嫌な予感がした。

「――そうだ、マダラは賛成してくれるよね?」
「悪魔の囁きに耳を貸すな、マダラ殿!!」

 に、と悪巧みを思いついた子供の様な表情を浮かべたその人が、両腕にチャクラを流して自身を拘束していた影を振りほどく。
 力任せに術を解かれた奈良の頭領が尻餅をついた音が、誰の耳にもどこか不吉な響きを伴って聞こえた。

「ねぇ、マダラ。物は試しなんだけど、一緒に戦争に行かない? 大丈夫。オレとお前が組んだら、城の一つや二つなんて大した労力も無く落とせるさ」

 戦嫌いで有名な仇敵の滅多に無い言葉に、流石のうちはマダラも言葉を失う。
 嫣然とした微笑みを浮かべている面をまじまじと見つめ返すマダラをどう思ったのか。
 尚もその人は麻薬にも似た言葉を連ねる。

「なぁ、良いだろう? 大丈夫、絶対に損はさせな――いだいっ!!」
「えーかげんにしろ、このシスコン!!」

 蕩け出しそうな微笑を浮かべていた中性的な容貌が苦痛に歪む。
 頭を抱えて蹲ったその背後には、両眉を吊り上げている猿飛の頭領の姿があった。

「……一体、これはどういうことだ」

 軽く頭を振って先程の衝撃を振り払ったマダラは、彼にしては珍しくどこか途方に暮れた声を上げる。
 青年の純粋な問いかけに室内で様子を伺っていた頭領達は疲れた様子で視線を交わし合った。

「いいから、誰か教えてやれよ」
「いや、でもなぁ……」
「ほら、いうじゃないか。傷は浅い方が良いって。皆が一度は通った道だろう?」

 段々とマダラが苛つき始めた頃、役目を押し付けられたらしい山中の頭領が「実は……」と囁きかける。

「実はですね、柱間殿の妹君に縁談が来たのです」
「縁談?」

 それでどうしてこんな事になっているのだと言外に問い掛けたマダラに、皆が視線を逸らす。

「いや、それが……。なんでも以前妹君の姿を垣間見た大名のご子息殿のお一人が柱間殿に是非とも妹君を妻として迎え入れたいと仰られて……それが、その」
「あんな扇子よりも重いもんを持ったことが無さそうな大名のどら息子なんぞにオレの大事な妹を……!? しかも、側室に迎え入れたいだって……!? 冗談じゃない!!」
「その仕返しに大名のご子息を襲撃に行こうとするお前の思考回路の方が冗談じゃないわ!!」

 憤然と声を張り上げたシスコンを極めた叫び声に、マダラは軽く目眩を覚えた。
 則ち、こんな阿呆なことを言う相手に自分は憧れ、長年その背を追いかけて来たのかと思うとほんの少しばかり(彼にしては珍しく)涙が零れそうになった。

「大丈夫だよ! ちょっと行って来て相手の寝首を掻いて来るだけだし、絶対失敗なんてしないから!」
「それのどこか大丈夫なんだ! 不安しか掻立てられんわ、このボケ!! お前は出来立ての連合を壊滅状態に陥れるつもりかぁ!」

 一際高い抗議の声を上げた猿飛佐助が、ついにあまりの興奮のせいでか息を詰めた。
 げほごほと咳き込む彼の背を宥める様に撫でながら、周りの頭領集達の何とかしてくれという視線にマダラはますます眉間の皺を深めた。
 なんでオレがこんな面倒くさそうな輩と絡まなければならぬ、と言わんばかりの視線に、各頭領達も俺達だって関わりたくないよ、という切実な意思を込めた眼差しで返す。

「あー、でも。だったら、どんな奴だったらミト殿の婿に相応しいと柱間殿は思っているんだ?」
「ば、馬鹿! このシスコンにそんな事訊ねたら……!」
「オレより強い奴である事は第一条件! 少なくとも、オレの樹界降誕を食らっても二本の足で立っていられる奴じゃないと!」
「あー、そうかい」
 
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