ロックマンX~朱の戦士~
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第四十九話 海に行こう
前書き
レプリフォース大戦を終えて、ある程度一段落したエックス達。
新たな仲間を迎えて、エックス達は…。
レプリフォース大戦が終わってから、数週間後。
エックス達は現在指令室にいた。
エックス「第17番精鋭部隊隊長エックスと申します。」
ルイン「第17番精鋭部隊副隊長ルインです」
ゼロ「第0特殊部隊隊長ゼロだ。」
シグナス「君達の活躍は聞いている私は前総監が辞任したために 新たに総監となったシグナスという者だよろしく頼む。」
イレギュラーハンター前総監がレプリフォース大戦のことで辞任し、代わりに現存するレプリロイドで最高のCPUを持つシグナスが総監となった。
エイリア「私はエイリア。元レプリロイド工学員だけど、本日からオペレーターとして配属されました。」
ルイン「エイリア…?」
エイリア「久しぶりねルイン。これからよろしくね」
ルイン「うん…」
笑みを浮かべるエイリアにルインも笑みを返す。
因みにアイリスはエイリア同様にイレギュラーハンター本部のオペレーターに就任することになった。
彼女は過去のイレイズ事件の際に見習いとしての研修を経験していたため、今では優秀なオペレーターとして活躍している。
彼女がゼロ専属のナビゲーターに指名されたのは、エックス達が裏から手を回した結果だと専らの噂である。
エックス「知り合いなのか?」
ルイン「あ、うん。友達なの…」
エックス「そうか…初めましてエイリア。俺はエックス。俺のことはエックスでいい。」
エイリア「こちらこそ。イレギュラーハンターの英雄、エックスに会えるなんて光栄だわ」
エックス「………」
エイリア「?」
英雄という言葉に複雑そうな表情を浮かべるエックスにエイリアは首を傾げた。
ルイン「エイリア、エックスは英雄って言われたくないの。だから普通に接してあげて」
エイリア「ああ、なるほどね。分かったわ」
注意するように言うルインにエイリアも頷いた。
それにしても…。
エイリア「(珍しいわね…)」
ルインにしては厳しい言い方に、エイリアは不思議そうにしたが、エックスとルインの間の雰囲気にピンと来た。
エイリア「ルイン、もしかしてエックスと…」
エックスに聞こえないようにルインに耳打ちすると、ルインの頭からボンと煙が出た。
ルイン「エ、エイリア!!」
エイリア「まさか、あのルインが恋を…(見ているゲイト…?あのぽややんだったルインに春が来たわ!!)」
雲1つない真っ青な空を見上げながらかつての同僚に言うエイリア。
最早、死人扱いである。
哀れ。
エイリアに散々からかわれたルインは膨れていた。
エックス「ルイン…ほら、機嫌直して」
ルイン「むう…そういえばゼロは?」
エックス「ゼロ?そういえば、今日はジャンク屋“ルナ・アームズ”のルナが来るんだった。」
ルイン「ああ、ジャンク屋の女の子だよね。あそこのパーツって凄く品揃えがいいよね。ねえ、エックス。行こうよ」
エックス「ああ、そうだな」
エックスとルインはハンターベースの入り口へと向かう。
ゼロ「トリプルロッドの修理を頼みたいんだが」
ルナ「うひゃあ、こりゃあ随分と壊してくれたなあ」
呆れたように壊れたトリプルロッドを見遣るルナ。
ダグラスに頼んで見たのだが、あまりにも高性能過ぎて、ダグラスの手には負えないようなので、造った本人に頼んだのだ。
ルナ「こりゃあ、一朝一夕で直らねえぞ。悪いけどしばらく待ってくれ」
ゼロ「構わない。他に使えそうな武器はないのか?」
ルナ「あるにはあるけど…俺もどうにかトリプルロッド以上の武器を造ろうと足掻いたんだけど、どれも使い勝手が悪かったり、トリプルロッドに劣る性能しか出せなかった。どう足掻いてもトリプルロッド以上の物はな…」
ゼロ「見せてくれないか?」
ルナ「ああ。えっと…」
シートの上に数々の武器を置く。
ルナ「まず右から。これがチェーンロッド。セイバーにチップを組み込むことで鎖状に伸びるロッドの先端に槍がついた武器なんだ。天井や壁に引っ掛けてぶら下がったり、特定のものを引っぱることが出来る。んで、次がシールドブーメラン。腕輪のような形をしてるけどエネルギーを展開すると敵の弾を弾き返すことが出来る盾。装着した腕を振るうと、展開部分をブーメランのように投げて攻撃することも出来る攻防一体の武器。次がリコイルロッド。トンファー型の武器でトリプルロッドの元にもなった武器。チャージ攻撃なら、トリプルロッド同様に相手を吹き飛ばすことも可能で、固い敵に有効な武器。また、チャージして真下に打てば、高くジャンプすることも出来るけど、トリプルロッドの劣化版ってとこだな。」
ゼロ「……チェーンロッドが使えそうだな」
ある程度距離を置かれても敵に攻撃が届くチェーンロッドを手に取る。
ルナ「毎度あり。チェーンロッド、1800ゼニー頂きます♪」
満面の笑顔で手を伸ばすルナにゼロは内心で苦笑しながら、ゼニーのクレジットデータを彼女の電脳アドレスに送る。
Zセイバーにチェーンロッドのチップを組み込むと、Zセイバーの柄から鎖状の槍が現れた。
ゼロ「はあっ!!」
それを勢いよく振るうと近くに置かれていたスクラップ寸前のライドアーマーの装甲をたやすく切り裂いた。
ゼロ「(ほう…)」
どうやらチェーンロッドは強度と柔軟性を併せ持つだけでなく、遠心力と“しなり”を獲得することにより凶悪な威力を誇る武器らしい。
その威力はスクラップ寸前とはいえライドアーマーの装甲を一撃で両断するほどだった。
トリプルロッドでも届かない距離に敵がいたらこれを使おう。
どうやら持ち主の意思に応じてチェーンの長さが変わるらしい。
どちらかというと槍としてよりも鞭として扱った方が良さそうだ。
エックス「ゼロ…」
引き攣った笑みを浮かべながらエックスはゼロに歩み寄る。
ルイン「スクラップにする予定とはいえ、実験台にするのは…」
ゼロ「このままスクラップにするよりはいいだろう。それで?何の用だ?」
ルイン「あ、うん…実は……」
ゼロ「海?」
ルイン「うん、最近気が滅入ってるから気分転換にどうかなって」
ゼロ「海ならミッションで行くだろう」
ルイン「そうだけど、ミッション以外で行ってもいいでしょ?アイリスも行きたがってるし…ね?」
ゼロ「アイリスも?」
ゼロはしばらく黙孝すると、了承してくれたようだ。
ルイン「やった。じゃあアイリスを呼んで来るね」
ルインは急いでアイリスを呼びに行く。
エックスとゼロはかつて愛用していたチェバルの置かれている格納庫に向かった。
ゼロ「それにしても前総監がレプリフォース大戦のことで辞職したのは知っていたが、まさか代わりに来たのは、前総監以上に現場を碌に知らん素人とはな…」
ゼロもシグナスの経歴を見てみたが、戦闘力的にはB級ハンター程度だ。
優れたCPUを搭載してはいるが、現場経験は無いに等しい。
エックス「ゼロ、シグナス総監はこれから俺達の上司になるんだぞ?あまりそういう言い方は感心しないな」
ルイン「そうだよ。シグナス総監もきっといきなり総監に抜粋されて戸惑ってるんだよ。私達が支えてあげなきゃ」
ゼロ「ふう…まあ、精々そりが合うことを祈るさ」
溜め息を吐きながらそれだけ言うとゼロは自身のチェバルがある場所に向かっていく。
ルイン「でもある意味これは今までの環境を変えるのにはいいかもしれないね」
エックス「え?」
ルイン「前の総監は…現場事情を殆ど知らなかったでしょう?」
エックス「…ああ」
イレギュラー認定の現場事情等を殆ど現場にいたハンターに任せていた為に、本来ならイレギュラー認定を回避出来たかもしれないことも引き起こしてしまった。
今までのような小規模な事件かイレギュラーによる反乱なら市民の安全を理由に世論は納得はしたが、世界中に大きな被害を与えたレプリフォース大戦は総監が現場事情を知らなかったために起きてしまったことでもある。
恐らくシグマもレプリフォース大戦を引き起こすために前総監が現場事情を碌に知らないことも狙っていたのかもしれない。
ルイン「シグナス総監は前総監よりいい総監になれるよ。前総監がしなかった総監自身が現場に赴いて現実を知ろうとするその姿勢はとても素晴らしいと思うから」
エックス「ああ、そうだな…。最近、度重なる戦いでハンターの数は減り、部隊を保てなくなっている。俺はこれからのことを考えると部隊制による縦社会の組織構造よりも部隊制を廃止して横の繋がりを重視した横社会の組織構造の方がいいんじゃないかと思うんだ。」
ルイン「確かにね、ハンターの数も少なくなってきたし、騙し騙しで部隊を保つよりもそっちの方がいいかもね。シグナス総監に掛け合ってみようか」
流石にいきなりそんなことをしたら大きな反発を招きかねないため、そこは状況を見ながらゆっくりと変えていく方がいいだろう。
新たな総監と共に。
格納庫からチェバルを引っ張ってきたエックス達は何故かダグラスまでいることに疑問符を浮かべた。
ダグラス「さあ、行こうか。俺のチェバルはオリジナルの改造を施してアディオン並みの速度が出せるんだぜえ」
ルイン「ダグラス…スピード狂?」
ダグラス「ヒャッホーーーーッ!!!!」
躊躇いがちに尋ねるルインにダグラスは奇声を発しながら凄まじい速度で疾走した。
エックス「ダグラス…」
仲間の意外な一面を見たエックスは呆然となるが、エックスもチェバルに乗り込み、ルインもエックスの後ろに乗り込んだ。
ルインの愛用していたチェバルは、カウンターハンター事件が終結した際に廃棄処分されたらしい。
この時点ではルインはまだ機能停止したままなので仕方なかったのだが…。
ゼロ「とにかく行くぞ」
アイリス「私達も追い掛けなきゃ」
ゼロとアイリスもチェバルに乗り込んで、チェバルを起動させた。
チェバルが風を切って進み、爽やかな風が通り過ぎる。
ルイン「たまにはこういうのもいいかもね」
エックス「何がだい?」
ルインの呟きが聞こえたのか、エックスが尋ねる。
ルイン「ん…だって人前じゃ、こんなにエックスの近くにいられないもん。立場もあるし」
後ろから手を回してくるルインに内心ドキリとしながらもエックスはチェバルを操縦する。
ルイン「今くらい、ハンターベースを離れてる時くらい甘えていいよね…?」
彼女の甘えるような声にエックスは思わず、顔を赤らめた。
そしてしばらくして頷いた。
ルイン「ありがとう…」
海岸は誰もおらず、エックス達が独占する形となった。
アーマーはハンターベースを離れる前に解除しており、人装姿。
寄せる波に足を入れて凉を楽しんだり、水をかけあったりしていた。
ゼロはそれに加わらず、ルインと共にはしゃいでいるアイリスを見遣った。
レプリフォースとの戦いを終え、カーネルのDNAデータとサーベルを手渡した時の痛々しい表情が今でも頭に残っている。
アイリス「ゼロ?」
自分を呼ぶ声にハッとなるゼロ。
ゼロ「どうした?」
アイリス「その…隣いい?」
断る理由がないゼロは頷くと、アイリスはちょこんと座る。
そんなゼロとアイリスから離れた場所でエックス達が密談していた。
ルイン「え?ゼロとアイリスを2人っきりにするの?」
ダグラス「そう、あの2人がくっついたら面白そうじゃないか?あのゼロがうろたえたりって…見てみたくないかエックス、ルイン?」
エックス「ゼロが色恋沙汰でうろたえるって想像がつかないよ…物凄い鈍感なんだから」
ゼロ「随分と言ってくれるじゃないかエックス」
ルイン「わああああああああ!!?」
エックス「ゼ、ゼロ!!?聞いていたのか!!?」
ダグラス「やべえ、逃げろ!!」
3人のうろたえようが可笑しかった。
アイリスは何も聞いていなかったようで首を傾げている。
アイリスがゼロを見遣ると、彼は爽やかな微笑を浮かべていた。
普段は近寄りがたい表情を浮かべる彼が見せた穏やかな表情。
ゼロ「どうしたアイリス?」
アイリス「な、何でもないわ」
さっと顔を伏せる。
顔が赤い。
顔がほてるのを彼女は感じ、高鳴る鼓動を落ち着かせると空を見上げた。
アイリス「ずっと続くといいわね…ずっと平和だといい…でないと兄さん達が浮かばれないわ……」
ゼロ「……アイリス」
アイリス「大丈夫よ私は…ゼロやルインやエックス達がいるから…」
2人は肩を並べて空を眺める。
アイリスは立ち上がるとゼロに手を差し延べる。
アイリス「ルイン達の所に行きましょう?ゼロ」
差し出された小さな手。
ゼロは少し驚いたが、少しだけ微笑んで手を握った。
ゼロ「(相手が誰であろうと関係ない。あいつらを傷つけるというなら容赦はしない…)」
アイリス「ゼロ?どうしたの?」
厳しい表情で前を見据えたゼロに、アイリスは思わず声をかけた。
するとゼロはふっと笑って彼女に答える。
ゼロ「ああ、心配するな。心に誓いを立ててたところだ。」
アイリス「……誓い?……何なの?」
ゼロ「……内緒だ」
そう言ってゼロは再び空を見上げる。
自分を待っててくれる人が出来た。
自分を心配してくれる人が出来た。
誰かのために戦うなんて性分じゃないけど、それでも、何が何でも守ってやりたいと思うようになった。
この日から彼の振るう剣はより凄まじさを帯びていった。
後書き
X5前の話を少しだけ書きました。
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