ロックマンX~朱の戦士~
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第四十六話 Final Weapon Ⅲ
前書き
エックスがディザイアを、ルインがダブルを下した。
そしてゼロは…。
ゼロはエックスとルイン同様、ジェネラルの近衛兵を薙ぎ倒しながら先へと進む。
ゼロ「チッ…ジェネラルはどこにいる…!!?」
苛立ちながらジェネラルを探すゼロ。
広い部屋に出たが、此処にもいないようだ。
深い溜め息を吐きながら更に前進しようとした瞬間。
「クックック…随分と苛立っているようだなゼロ」
ゼロの前に真っ黒な装束を纏った1人のレプリロイドが姿を現し嘲弄するように言い放つ。
ゼロ「…………………」
フードで顔こそ覆い尽くしているが、その声を今更ゼロが聞き間違えようがない。
ゼロ「この声…シグマか!?まだ生きていたのか……」
寧ろゼロは納得さえ感じていた。
眼前の男の狙いも大よそ想像がつくが故にゼロはそこに触れはしなかった。
シグマ「死ねぬよ…人間達とそれに従うレプリロイド共を排除し、レプリロイドだけの理想国家を創るまではな」
ゼロ「とうとうレプリロイドにまでその矛先を向けたか…かつては最強のイレギュラーハンターと呼ばれた男も堕ちるとこまで堕ちたな」
シグマ「イレギュラーか…まあ、否定はせんが…貴様も私と同じ同胞なのだぞ?」
ゼロ「同胞だと…?とうとう敵味方の区別も付かなくなったか」
シグマ「フハハハハハハハ…戯言をほざいておるのは貴様ではないかゼロ。」
そう言ってゼロの眼前に現れたイレギュラーはその漆黒のフードを取り払いその姿をゼロへと向ける。
かつてエックスに刻み付けられた両目を縦に裂くような傷は幾度甦ろうが決して消えはしない。
シグマがゼロを嘲るように冷笑を浮かべていた。
シグマ「教えてやろうゼロよ。貴様の正体を!!あれはまだ私が17部隊の隊長であった時の話だ。」
まだエックスがイレギュラーハンターに所属しておらず、ルインもまだ転生していなかった時である。
とある研究施設跡にイレギュラーが発生した。
イレギュラーハンターは当然、イレギュラーを排除するために出撃したが、結果は全て返り討ちにされた。
シグマと同時期にイレギュラーハンターに入隊したガルマですらもイレギュラーの相手にならず惨殺された。
何とか生き残ったハンターからイレギュラーの特徴を聞いたら、紅と白を基調としたアーマーを身に纏ったレプリロイドで紅い風が吹いたと思ったら破壊されていたという。
このためにイレギュラーはハンター達の間で“紅いイレギュラー”と呼ばれていた。
事態を重く見た上層部はそこで紅いイレギュラーの対処をさせたのが、当時としては最高の能力を有し、イレギュラーハンター第17精鋭部隊の隊長を務めていたシグマである。
戦いは当初シグマが優勢に思われたが、攻撃を受けても全くダメージを受けないどころか不気味な笑みを浮かべる紅いイレギュラーに対し、シグマは次第に焦りを見せ始める。
Σブレードで攻撃しても引き抜いた鉄パイプで互角の立ち回りをされてしまった。
実は劣勢に見えた紅いイレギュラーはラーニングシステムによりシグマの動きをインプットしていただけであり、インプット完了後、シグマの片腕を引き千切り形勢逆転した。
イレギュラーハンター最強の実力を有していたがゆえに紅いイレギュラーは一息に破壊しようとはせずじっくりといたぶり続けた。
しかし突如、額に浮かび上がる“W”のマークの反応によって苦しみ出したゼロは、その隙を突いたシグマの渾身の一撃によって額にダメージを負い、機能停止に陥る。
その後紅いイレギュラーはイレギュラーハンター本部に回収され、ケイン博士によって綿密な検査が行われる事になる。
意識を取り戻した肝心の紅いイレギュラー本人は、暴れていた当時の記憶を失っており、それまでとは別人のように大人しくなっていた。
紅いイレギュラー…ゼロの高い潜在能力を見込んでいたシグマは、監視も兼ねて、彼を自らの指揮する第17精鋭部隊にイレギュラーハンターとして配属させる事にした。
配属先で数々の功績を上げたゼロは、特A級ハンタークラスにまで上り詰め、新米ハンターとして同じく第17精鋭部隊に入隊したエックスとルインの良き先輩であり友にもなったのだった。
シグマ「眉根1つ動かさないとは流石だな。ゼロ…」
全てを語り終え満足そうに頷くとシグマはゼロに向かって冷笑を浮かべる。
シグマ「だがそれは即ちお前とて予感はあったと言うことだろう。そして今の話で自身への疑惑が確信へと変わった。幾ら取り澄ましていても私にはお前の動揺など手に取るように分かる」
ゼロ「言いたい事はそれだけか?シグマ…。今更そんな話を聞かされた所で今の俺に何の偽りもない」
キッとシグマを睨み据え全身に猛烈なエネルギーを漲らせていくゼロ。
最初からある程度気づいていた。
かつてのカウンターハンター事件の時、サーゲスの手で蘇った時から少しずつ記憶が蘇ってきていたから。
ゼロ「あいつらが貴様の薄汚い野望のために散っていったことに変わりは無い。俺にとってお前は不倶戴天の敵だ!!この戦争で犠牲になった多くの命の為にも俺はお前を許さない!!」
Zセイバーを抜き放ち跳躍と共にシグマに向かって振り下ろすゼロ。
それをシグマはただ薄笑みを浮かべて佇んでいるだけだった。
シグマ「慌てるなゼロ。」
シグマの姿が掻き消え、次の瞬間には真上にいた。
シグマ「今、エックスとルインがジェネラルの元に向かっているが。お前だけ持て成しがないというのも失礼だろう。」
シグマが指を鳴らすと、この部屋に1体のレプリロイドが転送された。
朱いアーマーを纏った金髪の女性型レプリロイド。
ゼロ「ルインだと…?とうとう俺達のコピーに頼るとはな」
シグマ「コピーというのもあながち間違いではないが、これは実験機の意味合いが強い」
ゼロ「実験機?」
シグマ「ルインが人間を元にしたレプリロイドであることは知っているだろう?」
ゼロ「まさか…!?」
目の前のレプリロイドの正体に気づいたゼロは目を見開いた。
シグマ「これもまた人間を素体とした物だ。苦労したぞ。人間を原子レベルにまで解体し、ようやく納得の行く物が造れたのだからな。」
ゼロ「外道が…!!」
シグマのやり方に激しい怒りを感じるゼロはトリプルロッドを抜き放つ。
シグマ「やれ」
ルインを模したレプリロイドはビームサーベルを抜き放ち、ゼロに切り掛かる。
ゼロ「チッ!!」
Zセイバーでビームサーベルを受け止める。
シグマ「ゼロよ。それは人間を素体としているが、人間としての部分は皆無に等しい。今までのようにイレギュラーを処分したらどうだね?」
ゼロ「貴様…!!」
シグマ「素体とした人間は剣の達人だったらしくてな、どうやら素体となった人間の実力も性能に反映されるようだ」
事実、ルインを模したレプリロイドはゼロに匹敵する剣技で攻撃を繰り出している。
シグマ「いやはや、ルインを生み出した者の技術力には恐れ入る。このような怪物を大量に生み出せる技術を持つ者が敵になると思ったら背筋が凍る思いだ」
ゼロ「黙れ!!今すぐ彼女を止めろ!!貴様が操っているんだろう!!」
シグマ「そう言われて素直に止めると思うかね?」
ゼロ「罪のない人間を改造し、洗脳する…貴様はどこまで堕ちれば気が済むんだ!!」
シグマ「クックック…さあ、フェイクよ。そのままゼロの相手をしてやれ。私は最後の仕事を終わらせておく」
フェイク「はい…シグマ様…」
感情のない声で応えるルインの模造品。
ゼロ「待てシグマ!!」
バスターを放つがフェイクのビームサーベルで防がれる。
ゼロ「くっ…」
再び、セイバーとサーベルをぶつけ合う両者。
相手が元人間であるためか、ゼロの剣筋は鈍っている。
しばらくして、デスフラワー全体に振動が走る。
ゼロ「(エックス達がジェネラルと戦っているのか…なら急がなければ…だが…)」
目の前にいるレプリロイドは元人間でシグマに改造され、洗脳されているだけだ。
しかし、2人がジェネラルにやられてしまっては全てが終わる。
ゼロは静かに決意した。
ゼロ「何者かは知らんがすまない…あんたを救うにはこれしか方法が見つからない。俺が死んだらキッチリと詫びを入れる。」
セイバーを振るい、ビームサーベルを弾き、足払いで体勢を崩すとトリプルロッドで動力炉を貫いた。
フェイク「……………」
そのまま仰向けに倒れ、フェイクと名付けられたレプリロイド。
ゼロ「……」
ゼロはそれを沈痛そうな表情で見つめていた。
倒れる寸前に彼女が…死を目前として洗脳が解けたのだろう。
彼女の発言に胸を痛めた。
“ありがとう”…。
それが彼女の発した言葉。
人間の肉体を失い、洗脳され、壊死しかけた心から発せられた心からの感謝の言葉であった。
ゼロ「(こんな方法でしか…殺すことでしか救えなかった……っ!!俺は…俺は何のために戦っているんだ…!!)」
ゼロは唇を噛み締めながら足を動かした。
レプリロイドに改造し、彼女の人生を狂わせた悪魔を討ち取るために。
しばらく通路を駆けたがまだ辿りつけない。
ゼロは近衛兵を薙ぎ払いながら先に進む。
『ゼロ…』
ゼロ「!?」
頭に響いた声に足を止めた。
この声には聞き覚えがある。
ゼロは導かれたかのように、足を動かした。
その先にはかつて自分を強化してくれた老人の姿があった。
何故このような場所に。
ライト『どうやら間に合ったらしい。ゼロ、この先はいくら君でも危険じゃ』
ゼロ「危険は承知の上だ。ジェネラルだけではなくシグマまで相手にするとなると、エックスとルインだけでは危険過ぎる」
友の力を信頼していないわけではない。
しかしジェネラルはレプリフォースの頂点に立ち、シグマは最強のイレギュラーなのだ。
ライト『ならばせめて…君のパワーアップをさせてもらえないか?』
ゼロ「パワーアップ?」
ライト『最初の戦いの時と同じように、君の秘められた力を解放する。そうすることでセイバーの性能が格段に上昇するだろう…このカプセルに入るかは君の自由じゃ。エックスを頼んだ』
ライト博士の映像が消え、ゼロは無言のままカプセルの中に入る。
しばらくするとゼロの内部から湧き上がるエネルギーは増大し、その金髪は銀色へ、真紅のボディは全てを漆黒へ変わっていた。
ゼロ「これならあの悪魔を倒せる…確実に…!!」
漲る力に、これならシグマを屠れると確信したゼロは急いでジェネラルの元に向かった。
後書き
エックス編やルイン編に比べれば短いですが、ルインのデータをようやく出せました。
ルインのデータが本格的に使われるのは、X7まで待って欲しい。
X4のブラックゼロは、ただの色違いでしかなかったが、この作品ではしっかりとした強化形態。
ショックアブソーバーとセイバープラス、Zセイバーエクステンドが標準装備。
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