ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
第17話 友達
「さて、どういうことか説明してもらえるかしら?」
私は今部長の前で絶賛正座中です。っていうか心配かけたからってこれはないんじゃないかな!? このポジションはうちの姉妹たちであって私はこんな感じに怒られるキャラじゃないはずなんだけど!?
あの後転移してきた私は部長たちに存在を認識されるやいなやアーシアと引き離されて強制的に正座させられた。なんというか目の前で満面の笑顔の部長と朱乃さんが怖いよ。ちなみにアーシアは少し離れたところのソファーでイッセーと龍巳に挟まれて座っている。黒姉に白音もそのそばに居て、祐斗だけはそこから少し離れた位置で私の方を見てる。私はみんなに向けて目線で助けを求めるけど……みんな合掌で返してきたよ!? 助ける気ゼロですか!? 唯一アーシアだけがどうすればいいのか分からなくてオロオロしてる。うぅ……。今の私の味方はあなただけだよアーシア。
「火織、よそ見しない。さっさと説明してちょうだい」
「は、はい!」
と、とにかく説明して早くこの窮地を脱しよう。
「えっとですね? 龍巳とイッセーがアーシアのお世話になったということなので、なにかお礼しようと思いまして! それで助けて欲しいと言われたので連れてきた次第です!」
説明としては最低の部類かもしれないけど早くこの状態から脱したい! だって黒姉がずっとニヤニヤしてこっち見てるんだもん!
「……つまりそのシスターと契約したの?」
「い、いいえ! お礼なので代価はもらっていません! 契約とか、そういった小難しいものは無しの方向で連れてきました!」
「そう。……悪魔失格ね。少しそこで正座していなさい」
ノォォォォォォォォォォォウ!! え、まさか私このまま!? このいたたまれない空気の中このままですか!?
「さて、心配かけたどこかのおバカさんのお仕置きはこれでいいとして、アーシアさん……だったかしら?」
「は、はい!」
「火織に助けてくれるよう頼んだそうだけど……そもそもどうしてあなたのような信心深そうなシスターが堕天使のもとに身を寄せていたのかしら?」
「そ、それは……」
最初は戸惑ってたアーシアだけど、やがて深呼吸をすると少しづつ語りだした。
それはある聖女に祭り上げられた少女の話。欧州のある地方、そこに生まれてすぐ親に捨てられた少女がいた。少女は捨てられた先の教会兼孤児院でシスターとなり、他の孤児たちと共に育てられた。でも彼女が8歳になった頃、人生の転機が訪れた。負傷した子犬を見つけた彼女は不思議な力で子犬のケガを治したのだ。偶然、これを見ていた教会の関係者が奇跡の力を持つ少女として教会の本部へ連れて行き、「聖女」として担ぎ出された。聖女の噂は瞬く間に広がり、教会は訪れる信者に加護と言う名の治療を行わせた。この事に関して少女は不満を感じた事はなく、むしろ自分の力が役立てる事を嬉しく思っていた。少女は神様からの贈り物に感謝していた。
だけど、少し寂しくも感じていた。なぜなら彼女の傍には、心を許せる友人が1人もいなかったから。みんな彼女に優しくしてくれる。でもそれと同時に彼女の力を異質なものとしても見ている事に彼女は理解していた。
そして、転機が訪れた。ある日、たまたまケガをしている悪魔を見つけた彼女は治療してしまった。彼女の生来の優しさがそうさせてしまった。それが少女の人生を反転させた。その光景を見ていた教会関係者の一人が内部に報告した。この事実に司祭は驚愕した。
『悪魔を治療できる力だと!?』
『そんな馬鹿な事があるはずがない!』
『治癒の力は神の加護を受けた者にしか効果を及ぼせないはずだ!』
治癒の力を持った者は世界各地にいた。けれど悪魔や堕天使にまで効果を及ぼすものではなかった。教会の司祭たちは手のひらを返したように、彼女を異端視するようになった。聖女として崇められた少女は、悪魔を治療できるというだけで今後は魔女として恐れられ、あっけなく教会から捨てられた。行き場のなくなった少女を拾ったのは極東にあるはぐれ悪魔祓いの組織。少女は敬虔なシスターであったにもかかわらず捨てられた。神は救ってくれなかった。でも一番ショックだったのは、教会で自分をかばってくれる人が誰もいなかったことだ。少女の味方は誰もいなかった。
「……きっと私の祈りが足りなかったんです。私、抜けているところがありますから。きっと気付かないところでバカなことをしてしまったんです」
そう言って、アーシアは笑いながら涙をぬぐった。
「おかしいですよね。会ったばかりの皆さんに、こんな話をして。きっとこれも神の試練なんです。私が全然ダメなシスターなので、こうやって修行を与えてくれているんです。今は我慢の時なんです。いつかお友達もたくさんできるとしんじてます。私、夢があるんです。お友達と一緒にお花買ったり、本を買ったり……おしゃべりしたり……」
その後はもう言葉になっていなかった。原作読んで知ってはいたけどやっぱり直に聞くと納得出来ない。彼女を教会から遠ざけなければならない理由が天使側にはあったらしいけど、いくらなんでもこれはないでしょ。さんざん利用して都合が悪くなったら捨てるって、よくそれで神の名を語れるわね。
周りを見渡すと皆もだいたい同じようなことを考えているような顔をしていた。特に祐斗は反応が顕著ね。自分と同じ教会に利用されて切り捨てられたからかしら。……でも誰も動かない、いえ動けないのね。正直みんなどうすればいいのかわからないんだろうね。でもそんな中イッセーだけが
「アーシア、俺が友達になってやる。いや、俺たちはもう友達だ」
イッセーの突然の言葉にアーシアはキョトンとしてる。さすがはイッセーね、そんな言葉がすぐに出てくるんだから。
「悪魔だけど大丈夫。アーシアの命を取ったりなんかしないし、代価もいらない! 遊びたい時に俺を呼べばいい」
そう言ってイッセーはアーシアの両手に自分の手を添えた。そして
「ん、我も友達」
その手に龍巳の手も添えられる。
「私も友達になるにゃ」
「私もです」
「僕もいいかな?」
「あらあら、では私も」
そう言ってみんなも手を添えていった。
「……どうしてですか?」
「どうしてもこうしてもあるもんか! 俺たちのこと庇ってくれただろ! あの神父に食って掛かってまで悪魔の俺たちを庇ってくれただろ! だったら友達にだってなれる! 悪魔だとか人間だとかはこの際関係ない! 俺たちはアーシアの友達だ!」
「……それは悪魔の契約としてですか?」
「違う! 俺達は本当の友達になるんだ! 話したい時に話して、遊びたい時に遊んで、それから、そうだ! 明日買い物に行こう! 本だろうが花だろうがなんどでも買いに行こう! な?」
そこでアーシアはついに耐え切れなくなり涙をこぼした。でもそれは悲しいからではなく、うれしいからだろうね。
「みなさん。私、世間知らずです」
「明日俺たちと一緒に街に繰り出せばいい! いろんなものを見て回れば、んなもん問題なくなるさ」
「……日本語もしゃべれません。文化も分かりませんよ?」
「大丈夫、お姉さんが教えてあげるにゃ」
「……友達と何をしゃべっていいかも分かりません」
「我も話すの苦手。それでも話せてる。アーシアならしゃべれる」
「……私と友達になってくれるんですか?」
「ああ、これからよろしくなアーシア」
「よろしくにゃ」
「よろしくです」
「よろしく」
「よろしくお願いしますわ」
「よろしくね、アーシアさん」
「……みなさん。ありがとうございます」
泣きながらも笑顔を浮かべるアーシア。と、そこでみんなが部長の方を向いた。
「あらあら部長? 部長はどうしますの?」
「……はぁ、朱乃、あなた分かって言ってるでしょう? ここで断ったら私が悪者みたいじゃない。私も友達になるわ。よろしくね、アーシア」
「はい!」
でもそこで部長は難しい顔になる。
「……さて、じゃあ今後どうするか考えるわよ。アーシアは未だに堕天使側の人間。助けるにしても友達になるにしても何らかの対策をしなければ即戦争よ。アーシア、堕天使達があの教会で何をしようとしているのか分かるかしら?」
「え、えっと、私の神器を抜き出して、堕天使に移植すると……」
その言葉に事情を知らないイッセー以外の面々が不快そうな顔をする。
「あ、あの、それなら神器を抜いてしまって開放されれば、アーシアも今まで通りの生活に戻れるんじゃないですか?」
「いいえイッセー。確かに神器が彼女の不幸の原因だけど、それは出来ないわ。神器を抜かれた人間は死んでしまうの」
それを聞いたイッセーは驚いた顔をした。
「それを聞くとアーシアを教会に返す案は却下ね。でもそんな重要そうな計画に横槍を入れてしまえば戦争の引き金になりかねない。……なかなか難しい問題ね」
それを聞いて皆困った顔になった。アーシアも泣きそうになってる。……そろそろ私も発言していいかしら?
「あの~~~~」
そう声を上げると皆驚いたような顔でこっちを見た。うん、絶対みんな私の存在忘れてたよね?だって私だけまだアーシアの友だちになってないのに誰も何も言わないもん。未だに部屋の端っこで正座だし。
「な、何かしら火織?」
目が泳いでますよ部長?
「さっきアーシアを連れてくる際に堕天使から聞き出したんですけど、なんでもこの計画は上に黙って行った、つまり独断専行らしいですよ? 向こうはこっちを舐めきってたみたいなんであっさり教えてくれました」
その私の言葉に皆驚いた顔をした。
「火織、そんなことを予め聞いていたってことは……こうなることを予想してた?」
「まあなんとなくは」
そう言うと、みんなはなんだか疲れたような顔をした。なんで? 私変なこと言った?
「火織、もうしばらくそこで正座していなさい」
「なんで!?」
理不尽だ! なんて言葉はあっさりスルーされた。うぅ……。そろそろ足が限界なんだけど。誰か助けて~。やっぱりアーシアだけはこっちを心配そうに見てくれるけど、他のみんなは完全に無視してきてるよ。私だけ蚊帳の外。私達仲間だよね?
「とにかくこれが独断専行なら話は簡単だわ。アーシアを匿った上で堕天使どもにはこの領地から出ていってもらいましょう。断るようなら実力で排除するわ」
「あの、そんなことをして戦争にはならないんですか?」
「彼女たちが上の命令で今回の計画を行なっていたとすればなったかもしれないわ。でも独断専行なら話は別よ。これならもし戦いになっても問題にならないわ。この程度の小競り合いは世界各地で行われているもの」
「じゃあ……」
「ええ、善は急げよ。早速これから『ドォォォォォォ……ン!』何!?」
今後の方針を部長が言おうとした時に、いきなりの爆発音、そして振動が旧校舎を揺るがした! みんながいきなりのことに混乱する中、私はすぐに立ち上がって指示を出す。
「龍巳は部屋の入口へ! イッセーとアーシアは部屋の中央に! 黒姉と白音は仙術で周りの状況を!」
指示を出した後窓から外をそっと覗きこむ。するとそこには大勢のはぐれ悪魔祓いを引き連れたドーナシーク、カラワーナ、ミッテルトが! っていうかあいつら何やってんの!? 魔王の妹に手を出したら戦争になるかもしれないってついさっき忠告したばっかだよね!?
「火織! 外の様子は!?」
「部長! ここから見えるだけで堕天使3名、それに大勢のはぐれ悪魔祓いがいます!」
「部長、先ほどの攻撃で旧校舎全体にかけていた結界が破られていますわ!」
「まずいにゃん! ここ、はぐれ悪魔祓いに完全に囲まれてるにゃん!」
「堕天使の数は分かる!?」
「今のところ3人だけです!」
3人!? じゃあレイナーレは来てないの!? なにかおかしい。こんな無茶な攻勢に出たというのに一番強いレイナーレが来ていない? まさかこれは……陽動!? じゃあ敵の目的は!
「きゃ!?」
「アーシア!?」
アーシアの悲鳴とイッセーの叫び声に振り向くとそこにはアーシアを羽交い絞めにしているレイナーレが!! 結界を破った後ここに直接転移してきたの!?
「この娘は返してもらうわ!」
くっ! うかつだった! もう少し早く気付いていれば! アーシアが邪魔でレイナーレに手が出せない! 他のみんなもその場を動けないでいる!
「イッセーさん! 龍巳さん! みなs」
そしてアーシアとレイナーレは転移して私達の前から姿を消した。
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