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マブラヴオルタネイティヴ~鳥と獣と海賊と~

作者:レスト
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第三話~思念と出会い~

 
前書き
更新です。

未だに感想はないのは少し寂しいですが頑張ります。

では本編どうぞ 

 



帝都・帝国軍ハンガー


 マークの要求は突然であったことと、偶発的に起きた今回の戦闘の事後処理によって先延ばしになるはずであったが、何故か数時間後に会談が行われることになった。
 マーク自身もまさか、要求した当日にそんな場が設けられるとは思っておらず、少々驚く。
 先の戦闘で接触した赤色の機体に途中までエスコートされ、三機はハンガーに通された。
 機体をハンガーの一角に立たせると、マークは主機出力を落とす。この時、普段であれば彼の中では戦闘方面の意識から普段の意識への切り替えが行われるのだが、今回は状況が不明瞭であった為にそれができずに内心で不満が鎌首をもたげた。
 手前勝手な不満を押しのけ、彼は秘匿回線を開く。そして長時間の通信は怪しまれる可能性があるために、一方的な物言いをすることになる。

「バナージ、機体を降りて俺について来い。トビア、お前は機体に残って俺たちの機体の監視だ。何かされそうになったら警告、それでもやめないのならつまみ出せ」

 そう言うとマークは回線を切り、今度は正面モニターに映り込む女性に声をかけた。

「アプロディア、お前はどうする?」

『私には命令しないのですか?』

「お前は俺の部下ではないだろうが」

 戦闘後で気が立っていたのか、マークの声に苛立ちが混じり語気も若干荒くなった。
 アプロディアは一度目を閉じ考えた後、彼女なりの答えを出す。

『携帯端末をお持ちでしたら、そちらの方に私が通信を繋げるようにしておきます』

 その言葉を聞き、マークはコクピットシートの脇に置いてある端末を取り出す。その端末の通信コードを機体に備え付けのキーボードで打ち込んでいく。
 マークは確認こそしなかったが、彼女が今後の自分たちの行動に積極的に関わろうとしていることを察する。もちろん、彼の方もモビルスーツ以外の交渉材料として彼女の存在を引き合いに出せるため、ギブアンドテイクであると一方的に考えていたが。
 打ち込みが終わると今度こそ、マークは機体から降りようとする。

「俺がいない間、機体の方を任せる。有事の際は俺が戻るまでの操縦を頼む」

 アプロディアからの返答を聞かずに、マークはコクピットハッチの牽引用ワイヤーに足と手をかけ降りていった。
 ワイヤーが降りきり、履いているブーツが地面に硬質な音を刻む。
 コクピットハッチに降下ワイヤーが巻き戻され始めるのを確認したマークは辺りをざっと見回したあと、ため息を吐き出した。

「…………大層な歓迎だ」

 彼の周りには、銃を構えた保安要員と思われる部隊が展開されていた。
 当然の反応とは言え、銃口を向けられていい気分になる訳もなく、これぐらいはいいだろうと顰め面を返していた。そこに殺気を含ませなかったのは、まだ彼が冷静さを残している証拠でもあるのだが、それを知っているのは当人だけである。

(手荒い歓迎を受けていないだろうな?)

 そんなことを考えながら、ユニコーンガンダムとクロスボーンガンダムの機体の方へ視線を送る。
 クロスボーンの方は、デュアルアイの光とエンジンの駆動音から主基を落としていない事が伺える。
 そちらにも何人かの兵士と整備士が足元にいたが、機体を見上げているだけであるため、単に物珍しくしているだけであると察した。

「…………ん?」

 次にユニコーンの方に視線を向けると、そこには未だにコックピットハッチが開いていない白亜の機体が立っていた。
 先ほどのマークは了承する前に通信を切ってしまった為に、聞き逃したのかと考えた彼は、ジャケットの内ポケットからインカムを取り出す。その際に周りの兵士が警戒の色を見せたが、後ろめたいことをするつもりが端からないマークは彼らの反応を無視した。
 耳にインカムを付け、周波数は元々繋がるようになっていた為、特にいじらずに電源を入れる。

「バナージ、応答しろ」

 数秒間の沈黙。それでマークは一瞬、「寝ているのか?」と思うが、それを確かめるよりも先にユニコーンがアクションを起こす。
 コンクリートの地面を削る音と共に、ユニコーンが両手、両膝をつくように倒れてきたのだ。幸いにも、装備していたビームマグナムは背部ハードポイントに装備していた為、それの破損と暴発は避けることが出来ていたが。
 ユニコーンの周りにいた整備兵は蜘蛛の子を散らすように退避し、保安要員らしき兵士たちはユニコーンから一定の距離をとってから手にしていた銃を構えた。
 その光景を目にした瞬間、マークは自分の向けられた銃口の事も忘れ叫ぶ。

「銃を下ろせ!敵意を見せるな!!」

 その場に響いた怒鳴り声に込められた必死さが伝わったのか、一瞬だけマークに対する警戒の念が緩む。それを察したマークは、即座にユニコーンの機体に近づいていった。
 少し遅れて、周りの兵士がマークを拘束しようと動き出し、彼の肩を掴んでくる。
 その掴まれた感触が酷く不愉快に感じつつも、彼は口を開く。

「妙な真似をしそうになったら射殺でもなんでもしろ!」

 自分を撃ち殺せと言ってくる相手に、流石にどんな対応をすればいいのか分からなくなった兵士たちはマークを拘束することを躊躇った。
 両手を地面につけて四つん這いになったユニコーンの胴体、コクピットの真下に潜り込んだマークは再度インカムを使い呼びかける。

「飲まれるな、バナージ!今はとにかくそこから出て来い!」

 事情を知らない人間が聞けば何を言っているのか理解できない言葉。しかし、ユニコーンのパイロットであるバナージにその言葉は届いたのか、胸部装甲が開き、床につっかえながらも人が通れるだけの空間をつくる。
 こぼれ落ちるように出てきた白のパイロットスーツに包まれた身体を受け止め、マークはヘルメットを外してやる。
 すると顕になった彼の顔は苦悶に歪み、真っ青になった唇は何かを押さえ込むように閉じられ、顔色は真っ白になっていた。
 近づいてきた周りの兵士は、まずパイロットの幼さに驚き、次いで彼の顔を見ると更に息を飲んでいた。

『マークさん、バナージさんは!?』

 これまでのやり取りを機体から全て見ていたトビアが外部スピーカーを使い訪ねてくる。
 内心で『インカムを使え』と思ったが、仲間を心配して聞いてきたことであった為、怒るわけにもいかないと自分を納得させながら彼は口を開いた。

「無事だ、いつものフィードバックだろう。トビア、機体を起こせるか?」

『そうですか……やってみます、退避を』

 マークはバナージの腕を自分の肩に回し、支えるように身体を立たせる。そこで初めて彼は自分たちがいる場所がトビアの機体からは死角になっていることに気付く。

(インカムを使えなかったのも当然か……)

 そんな事を考えながら、マークはユニコーンの下から出てくる。
 そしてその場にいる兵士たちに再び銃口を向けられるだろうことを思い出すと、早急に出てきた事を後悔しそうになったが、今はバナージを落ち着ける方が先だと思うことにした。
 しかし、予想に反し彼らに銃口を向ける者はいなかった。流石に病人のような状態の子供に銃を向けるのは躊躇われたらしい。
 これ幸いとマークは、その格納庫の出入り口の近くで風通しの良さそうな場所に向け足を動かした。

「なんの騒ぎだ?」

 マークが近くの壁にバナージをより掛け、トビアが自機よりも一回り大きい機体を立たせることに成功した時分に彼女はその場に現れた。
 出入り口近くに移動していたマークは比較的近くで彼女の姿を視認する。
 彼女は特徴的な長髪をおろし、赤くチャイナ服を連想させるような服を纏い、どこか鋭さを持った目をしていた。
 彼女はハンガーに足を踏み入れてから感じた、どこか浮き足立った雰囲気を感じたが故に先ほどの言葉を零していた。もちろん、所属不明の客人を招き入れるといった非常事態であるため、いつもと空気が違うであろうこと自体は予測していたが、その空気がどこか警戒ではなく困惑といった雰囲気であった為に彼女は混乱したのだ。
 彼女の声を耳にし、その困惑している雰囲気から自分が接触した赤い機体のパイロットであると察したマークはとにかく声をかけることにした。

「先ほどの赤い機体のパイロットか?」

 声をかけられ、そこで初めて自分の近くにマークとバナージがいることに気付いた彼女は、一瞬バナージの姿を見て驚いたような表情を見せるが、すぐに気を引き締め、口を開く。

「貴様がマーク・ギルダーであるのならば、恐らくそうだ」

 高圧的にも聞こえるその言葉に、普通ならムッとするところだが、彼女のどこか気品のある所作やまとう雰囲気がそれを感じさせること無く会話を続けさせる。

「まずは受け入れてくれたことは感謝する。それとここの雰囲気が浮き足立っているのはこちらが原因だ」

 その言葉に一瞬眉をひそめる彼女であったが、視界に映るバナージの憔悴した姿を確認すると合点がいったという風に一度目を瞑り頷いた。

「こちらはそちらの要求通り、交渉の場を用意した。私はその案内役を引き受けたのだが…………今すぐ来られるか?」

 彼女の視線が自分の背後にいるバナージに向かう。その彼女の視線が一瞬ではあるがこちらを気遣うものに変わる。その彼女の反応にマークは好感を持つが、そんな自分を単純とも感じた。
 マークが内心で、相手側との会談には自分を向かわせ、そしてバナージはこの場で休憩も兼ねて待機を命じようと半ば決定を下した時、背後からの聞こえる音に気付く。

「……行きます」

 弱々しい雰囲気ではあるが、そこには確かに自分の力で立つバナージがいた。

「本人がそう言っているのなら、すぐに行くのでも構わない。…………生憎と正装はないが、そこは目をつむってくれ」

 バナージの体調をしっかりと確認したわけではないが、マークは返答をする。
 少なくとも、それはマークがバナージの事を蔑ろにしているのではなく、最大限彼の意見を尊重してのことである。

(男の見栄はバレた時に恥ずかしいぞ)

 心の中で忠告を送るマークであったが、もちろんそんなモノが聞こえるはずもなく、フラつく身体を動かそうとするバナージの姿がそこにはあった。



帝国軍基地・一室


 マークとバナージの二人は案内役の女性に連れられ、機体を置いたハンガーにある程度近い軍施設の建物に向かっていた。
 移動中、二人は案内役である女性から名前を告げられる。彼女の名前は月詠真那と言われ階級は中尉らしい。ある意味で傭兵である二人には名前を教えてくれるだけで良かったのだが、軍人としても人としても真面目な彼女からの言葉を大人しく聞いていた。
 そして彼女はまず、今回の戦闘の援護活動に対して個人的な感謝の言葉を述べる。特にバナージには、窮地を救ってもらった事が大きかったのか、彼には頭も下げるほどである。
 当の二人は困惑気味であったが、礼を言われて嬉しくないことはない為、その場は素直にその言葉を受け取っていた。
 そんなやり取りを行っている内に、三人は軍施設の建物内の一室に到着する。まず、月詠が部屋の入室の際に堅苦しい言葉を述べてから、部屋の扉を開ける。
 そのやり取りにマークは若干うんざり気味な、バナージは若干落ち着かない素振りを見せた。

「御二人共、こちらへ」

 月詠からの言葉に従い、二人はその部屋に入る。
 その部屋は会議室のようで、大きいサイズの円卓に椅子、そして壁の一つが大型スクリーンとなっていた。
 二人は支持された二つの椅子にそれぞれ座り、机を挟んだ向かい側の対談相手に目を向ける。

「「………………………………は?」」

 後に「吹き出さなかったのは奇跡だ」と二人は語るのだが、自分たちに向かい合うように座るのは、月詠と同じく赤色の服を身に纏い、その大柄な体を椅子に収めた武人であった。その武人は一般的な成人男性よりも一回り大きく、明らかに体の大きさと椅子のサイズが合っていない。
 そこまでであれば二人も特に気にしない。
 だが、そんな二人が見逃せなかったのがその武人の髪型だ。
 その髪型とは、頭の側頭部にそれぞれ横に生え、その髪の先が角のように尖り上を向いているものであった。
 変わっているどころか奇天烈なその髪型に呆気に取られた二人に対して、その武人は名乗りを上げる。

「此度は、貴殿らの救援を感謝する。私は帝国斯衛軍大将の紅蓮醍三郎だ」

 その言葉にハッとして、二人はようやく意識をこれからの会話に集中させることができた。

「こちらも、今回会談の場を設けてもらった立場だ。過度の感謝は遠慮して欲しい」

「ほう?」

 値踏みするような紅蓮からの視線を受け流しながら、マークは本題を切り出す。

「俺は、独立部隊ジェネレーションズ所属のマーク・ギルダーだ」

「バナージ・リンクスです」

 二人の名乗りに値踏みの視線を切り上げた紅蓮は眉を顰める。それは既に二人の名前を知っていた月詠も同じだ。

「ギルダー殿、しばし待ってくれ。貴殿の言う部隊はどこの国の所属だ?」

 紅蓮の言葉に礼儀を感じる二人は、一応警戒はされているが最低限感謝をされていると考える。少なくとも、頭ごなしに一方的な要求をしてくるようなことはないと察せられる程には。
 話の腰を折られたが、マーク自信その質問は想定していたために特に動揺もせず
用意していた言葉を口にする。

「俺たちの部隊は国の所属ではない。更に言えば、俺たちの部隊はこの世界には存在しない」

 この答えに二人は更に混乱する。マークの言葉をそのまま受け取れば、その部隊は所属どころか元々作られてすらいないことになるのだ。

「俺たちはこの世界とは別の世界、時間的ではなく根底から違う世界から来たことになる」

「「は?」」

 今度は紅蓮と月詠が間抜けな声を洩らす番であった。
 紅蓮と月詠の二人は、突然現れた三機の新型の戦術機が偶々今回の戦闘に巻き込まれたと考えていたのだ。そして今回の会談は、その新型の技術を少しでも提供、若しくはそれを造った技術屋に繋がるパイプを欲した故のものでもある。
 しかし、いきなりのマークの発言にこれからどの様に交渉をするかを考えていた紅蓮や、純粋に三人に興味を持っていた月詠は困惑をするしかできない。

「頭のイカれた発言に取られるかもしれないが、それがこちらの認識だ。それを証明するための手段も持ち合わせている」

 そう言うと、マークは着ているジャケットの内ポケットから携帯端末を取り出す。彼のその動作を見ていて、バナージは今更ながら自分がノーマルスーツのままでいることにほんの少し恥ずかしさと居心地の悪さを覚えた。

「俺の機体の映像記録の一部を持ってきている。これを見て異世界という物の存在を受け入れるかの判断をしてくれ」

 マークは立ち上がると、その部屋の大型スクリーンの横に埋まっていた端末に有線ケーブルを繋ぎはじめる。
 マークの突然の行動に月詠は静止の言葉を言いかけるが、それは紅蓮が手で制した。

「音声はカットしてあるが、これはオリジナルのデータそのままだ。映像の加工を疑うのであればそのままデータも提出する」

 前置きとしてそれだけ口にすると、静かに映像は流れ始めた。




おまけ

~施設内移動中~

月「日本語を流暢に喋るのだな」

マ「素手でモビルスーツを倒す爺さんに一時期教わった」

月「は?」

 
 

 
後書き

今回は基本的にマーク側の視点中心になりました。
マークたちの扱いみたいなのは、次回に持ち越しです。日本帝国側がどういう対応を見せるのかとか

個人的に早くメカニック関係の話書きたいです。
量産機の生産とか色々と……

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