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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第四十二話 Space Port

 
前書き
全ての将校とイレギュラーを撃破したエックス達。
カーネル達は…? 

 
ルインがメンテナンスを受けている医務室から出ていくゼロ。
直ぐに出て行かないと自分もメンテナンスを受けさせられるに決まっている。
大切だと分かっているが、やはり苦手なものは苦手なのだ。
ルインにはエックスとアイリスが見舞いに行っているから大丈夫だろう。
ゼロはジャンク屋のルナから貰ったトリプルロッドを取り出すと、片手でヒュンヒュンと風車のように回しながら微笑んだ。
想像以上の使い勝手の良さだ。
Zセイバーと同等の出力を誇りながら、3段階まで伸びる機構。
更にホッピングや吹き飛ばし、反動を利用した大ジャンプが出来たり、ビームコーティングの柄を使えば盾代わりにもなる。
ゼロは次にジャンク屋が来たら次はどんな武器があるのか尋ねてみようと思った。
その時であった。

ダブル「ゼロ隊長!!」

慌てた様子でダブルがゼロに走り寄る。

ゼロ「ダブルか、どうした?」

ダブル「レプリフォースが宇宙港に向かっているデシ!!奴らは宇宙に向かう気デシ!!」

ゼロ「何だと!!?」

ダブルの言葉に驚愕するゼロ。
宇宙に向かわれたらレプリフォースの切り札であるデスフラワーがある。
そこに逃げ込まれたらこちらはかなり不利になる。

ゼロ「くそ!!」

ゼロは急いで格納庫に向かい、アディオンに乗り込むとレプリフォースの宇宙港を目指す。
それを嘲笑いながら見ているダブルに気づかずに。


































ゼロが宇宙港に向かってから数時間後、ルインのメンテナンスが終了した直後にエックス達にもダブルから伝えられた。
エックスとルインも互いに頷き、アイリスと共に宇宙港に向かった。

ダブル「いいのかねえ…兄の死をむざむざと見せるなんてよ」

ダブルの呆れたような声はエックス達には届かなかった。



































エックス達が出撃する数十分前、レプリフォースの宇宙港で程なくカウントダウンが始まりジェネラルと初めとするレプリフォースを乗せたシャトルは宇宙へと飛び立っていく。
それを見上げながらカーネルは満足そうに微笑んでいた。

カーネル「レプリフォースは決して敗れはしない。ジェネラル将軍…必ずやレプリロイドの理想郷を…」

そんな彼の前に1人のイレギュラーハンターが姿を現した。
真紅のボディに金色の長髪が特徴的な容姿端麗な青年である。

カーネル「ゼロ…」

そのイレギュラーハンターの名をカーネルが呼ぶ。
ゼロもまた無言のまま背からZセイバーを手に取ると静かにカーネルと対峙した。

ゼロ「…カーネル……もう止めろ…お前を倒せばアイリスが悲しむ」

カーネル「自惚れるなゼロ!!独立を妨げる者には容赦はしない…来い、ゼロ!!」

ゼロ「チッ!!」

2人が同時に駆け、Zセイバーとビームサーベルがぶつけ合う。

ゼロ「カーネルーーーーッ!!!!」

カーネル「ゼローーーーッ!!!!」

好敵手の名を叫びながら、何度もセイバーとサーベルをぶつけ合うゼロとカーネル。
2人の戦いは何時果てる事無く続けられている。

カーネル「チッ!!」

埒があかないと判断したカーネルは距離を取ると衝撃波を繰り出す。
ゼロは衝撃波を駆けながら回避するとバスターをカーネルに向ける。
ゼロのZバスターは撃つ際にタイムラグが発生するが既にエネルギーを収束させていた。
威力はエックスやルインの1段階チャージ以上、フルチャージ未満だが、強化パーツでパワーアップしたバスターの弾速は凄まじく、カーネルは目を見開くが何とか回避した。

ゼロ「(あれを回避しやがった…流石だなカーネル)」

カーネル「(やはり強い…とっくに分かりきっていた事だがな…)」

初めて出会ったあの時からいずれは死力を尽くして戦いたかった相手だった。
しかしゼロに想いを寄せる妹のアイリスの気持ちを思えば決して許される事ではなかったし、またお互い軍や部隊を統率する身なれば対決するに相応しい理由も、その舞台となる戦場も存在し無かった。
だが今のこの瞬間に至ってはもはや戦う理由などどうだって良かった。
刃を交える度に高まる高揚感を抑えられずカーネルは口元に笑みを浮かべる。

ゼロ「ぐっ…」

対するゼロは表情を険しくしている時間稼ぎをしているカーネルはともかく、ゼロはカーネルを殺さずに倒し、何とかジェネラルが宇宙に行くのを食い止めねばならないのだ。
カーネルを殺せばアイリスが悲しむ。
それはかつてのVAVAとの戦いで自分が無力だったが故に大切な後輩を目の前で失った時に味わった悲しみ、苦痛をアイリスに味合わせることになる。
それだけは何としても避けたかった。
しかしゼロとカーネルは実力が限りなく拮抗している者同士。
もし押されると言うのなら精神面で負けているということだ。
アイリスを思うが故に思い切った攻撃が出来ないゼロと時間稼ぎを目的としているカーネルでは自然に差が出て来ている。
今はバスターが使えるから何とか互角に渡り合えているが、バスターに慣れられると確実に不利になる。

ゼロ「(早くシャトルを何とかしなければ…しかしカーネルを殺さずとなると……)」

時間は過ぎていく一方。
その焦りが隙を生んだ。

カーネル「隙あり!!」

カーネルがサーベルを一閃するとZセイバーが弾かれた。

ゼロ「しまった…!!」

カーネル「これで終わりだゼロ!!」

カーネルがビームサーベルを大上段で振るうが、ゼロはトリプルロッドを引き抜くとカーネルのビームサーベルを受け止めた。

カーネル「何!!?」

目を見開くカーネル。
その隙を見逃さず、カーネルの鳩尾に蹴りを入れる。

カーネル「ぐ…っ」

ゼロ「たああああっ!!」

裂帛の気合と共にトリプルロッドを突き出すゼロ。

カーネル「ぐあああああっ!!」

まともに受けたカーネルは吹き飛ばされ、身体を壁に叩きつけられた。
ゼロはZセイバーを拾い、再び刃を発現する。

ゼロ「悪いが手段は選んでられないんでな!!お前を止め、ジェネラルが宇宙に行くのを阻止させてもらう!!」

Zセイバーとトリプルロッドの二刀流でカーネルに挑むゼロ。
こうなれば手段は選べない。
カーネルを殺さずに済むにはやむを得ない。

カーネル「やれるものならやってみるがいい!!」

カーネルもサーベルを振るうが、ゼロは片方のトリプルロッドで受け止めるともう片方のZセイバーでカーネルを切り付けた。

カーネル「っ…グランドクラッシュ!!」

痛みに顔を顰めたが、カーネルが放った巨大な衝撃波がゼロを襲う。

ゼロ「ぐっ…」

ダブルジャンプではかわせないと判断したゼロはトリプルロッドを床に叩きつけ、反動で大ジャンプする。
しかしそれは罠だった。

カーネル「受けるがいい!!我が最大の奥義を!!」

ビームサーベルを天に翳し、床に突き刺す。
その瞬間、カーネルのサーベルからは無数の電撃が周囲に向かって放たれゼロの方へと襲い掛かってくる。

ゼロ「ぐああああああああっ!!!!」

流石のゼロも空中ではまともに動けない。
直撃を受けたゼロは床に落下した。
しかしカーネルは苛立ちを露にしていた。

カーネル「何故だ…何故本気で戦おうとしないゼロ!!?」

仕掛けて来る攻撃は消極的なものばかりで、防ぐばかり。

ゼロ「…お前が死んだらアイリスが悲しむ……お前を死なせるわけにはいかない………」

カーネル「自惚れるな!!」

宇宙港にカーネルの怒声が響き渡る。

カーネル「そう言う台詞は私を倒してから言うんだな!!私は負けられないのだ。軍人の誇りにかけてな!!」

ビームサーベルをゼロに向けて振り下ろすカーネル。

ゼロ「っ…この…大馬鹿野郎!!」

カーネル「ぐっ!!」

カーネルの腕を掴み、激痛が走る身体を強引に起こし、カーネルを殴り倒す。

ゼロ「俺だって…イレギュラーハンターとして…戦士として…1人の男として…お前に負けたくない……だが…そんなちっぽけな誇りよりもあいつらの方が大事なんだ…っ!!誇りと…肉親や仲間のどちらが重いのか…そんなことも分からないお前は…大馬鹿野郎だああああああっ!!!!」

何度もカーネルに拳を叩きつけるゼロ。

カーネル「ぐっ…おおおおお!!」

痛みに耐えながらサーベルを振るうカーネル。
しかし、切り付けられてもゼロは構わずカーネルを殴り飛ばした。

ゼロ「ぐう…はあ…はあ…」

しかしゼロも限界を迎えており、膝を着いた。
トリプルロッドとZセイバーを拾い、トリプルロッドを杖代わりにすることで立ち上がる。

カーネル「流石だな…ゼロ…それでこそ我が好敵手…」

ゼロの連撃を受けたカーネルも身体をふらつかせながらも立ち上がる。
しかし、ダメージはゼロの方が深い。
ロッドを杖代わりにすることでようやく立てる程の重傷を負っているのだ。

カーネル「少し名残惜しいが……、これで終わりだ!!」

ゼロ「ぐっ…!!」

対するゼロもZセイバーを構えるが、確実に真っ二つにされると核心し、諦めかけたその時。

アイリス「止めてーーーーっ!!!!」

アイリスの悲痛な叫びが響き渡った。

ゼロ、カーネル「「アイリス!!?」」

目を見開くゼロとカーネルにアイリスは目に涙を溜めながらカーネルに懇願する。

アイリス「兄さん…お願い…ゼロを殺さないで……これ以上戦わないで…!!」

カーネル「アイリス…どうやって此処まで……」

非戦闘員のアイリスが此処まで来れたのはエックスとルインが敵を引き受けてくれたからだ。
敵を片付けたエックスとルインも間もなく到着するだろう。

ゼロ「っ…」

目を見開くカーネルだが、ゼロは遂に自身を支え切れずに倒れた。

アイリス「ゼロ!!」

力無く倒れたゼロに駆け寄るアイリス。
カーネルは2人を静かに見つめた。

エックス、ルイン「「ゼロ!!」」

敵を片付け、駆け付けたエックス達も重傷を負い、倒れ伏したゼロを見て、目を見開いた。

ゼロ「…俺の……負けだ…カーネル…この勝負…お前の勝ちだ」

カーネル「…何が勝ちだというのだ。お前は本気を出さなかった…もしお前が本気で来ていたら負けていたのは私だったはずだ!!」

憤りを隠さずに叫ぶカーネルにゼロは弱々しく微笑んだ。

ゼロ「そんなのは今となっては…何の理由にもならん…俺が負けて…お前が勝ったんだ…俺を殺せ…そうすれば胸を張って合流出来るだろ…」

エックス「なっ!!?」

ルイン「何を言ってるのゼロ!?」

目を見開きながら叫ぶエックス達。
しかし勝者には敗者の生殺与奪権が握られている。
カーネルがゼロを破壊すればレプリフォースの士気は上がるだろう。
ゼロの言葉にアイリスは表情を凍りつかせ、カーネルも驚愕したような表情を浮かべた。

アイリス「………」

何か言葉を言おうとしても出るのは言葉にならないものばかり。
カーネルは表情を険しくしながら、ビームサーベルを納めた。

ゼロ「……?」

カーネル「このような結果など私は認めない」

アイリス「兄さん…?」

ビームサーベルを納めたカーネルにゼロとアイリスは彼を見上げた。

カーネル「もしこのまま、お前を切れば…私は…私は本気のお前に勝てなかったということを認めることになる!!そのようなことなど出来ん!!私は!!勝利よりも誇りを取る!!」

アイリス「兄さん…!!」

つまりそれはゼロを殺さないと言っているのだろう。
アイリスの表情に笑みが浮かぶ。

ゼロ「カーネル…」

カーネル「お前の傷が癒えたその時こそ雌雄を決そうではないか…今度はこのような形でなくな…」

笑みを浮かべるカーネルにゼロも笑みを浮かべる。
エックスとルインも分かり合えたのだと歓喜した。
ゼロがアイリスに支えられ、立ち上がり、カーネルに手を差し出した。

ゼロ「その時は…俺も本気で戦ってやるよ」

カーネル「…そうでなくてはな……」

互いに笑みを浮かべ、握手を交わそうとした瞬間であった。

ドスッ

カーネル「な…っ?」

ゼロ「っ…!!」

アイリス「え…?」

エックス「あ…ああ…」

ルイン「……カー…ネ、ル…?」

突如鈍い痛みがカーネルを襲った。
それから異物を確認する。
自身の動力炉付近から出ているのはビームサーベルの光。
あまりにも突然すぎる事態に、カーネルもゼロもアイリスも、当然エックスとルインも動けない。
状況の把握も出来ずにただ唖然とするばかり。
激戦を終え、慢心創痍の状態がその間を広げる。

ディザイア「いけませんねえ…皆さん…イレギュラーは処分しなくては……」

カーネル「き、貴様は…」

カーネルが震えながら背後を見遣ると行方不明となっていたA級のイレギュラーハンター・ディザイアがカーネルをビームサーベルで貫いていた。

ルイン「ディ、ディザ、イ…ア…」

ディザイア「ルインさん。少し待って下さい。このイレギュラーを処分しますから」

ディザイアがサーベルを握る手に力を込めた。

アイリス「や、止めて…」

それが何を意味するのかを悟ったアイリスが震える声で懇願するが、ディザイアは狂気に満ちた笑みを浮かべながら叫んだ。

ディザイア「クーーークックック!!!!死ーーねーーー!!!!!!カーネルーーーーーッ!!!!!!!忌ま忌ましいイレギュラーーーーーッ!!!!!!!!!!」

ディザイアのビームサーベルの光が炸裂し、カーネルは爆散した。

アイリス「嫌ああああああっ!!」

ゼロ「カーネルーーーーーッ!!!!」

アイリスとゼロの悲痛な叫びが響き渡り、辺りにカーネルだった部品が飛び散った。

ディザイア「ふふふ…やった…遂にやったぞ…!!遂に私はレプリフォース最強の剣士。カーネルを倒したのだーーーーー!!!!!!」

狂ったように笑いながらカーネルの部品を踏み付けるディザイアにゼロの怒りが爆発した。

ゼロ「……せ…」

ディザイア「んん?何か言いましたかねえ…ゼロくーん?」

嘲笑うようにゼロを見つめるディザイア。

ゼロ「カーネルから…その薄汚い足を放せ!!」

ゼロがZセイバーを振りかぶり、ディザイアを切り捨てんと迫りくる。
だが、その動きはどうしようもなく鈍い。
容易く回避され、それと同時に足をかけられ、ゼロは床に倒れる結果となる。
次いでゼロの背中に衝撃が走る。
ディザイアがゼロの背中を踏みつけたのだ。

ディザイア「フッ…フフフフフ…いい様ですねえ、ゼロくーん。あの時は私を随分と冷ややかに見てくれましたが、もう私は以前の私ではないのですよ」

足に力を入れるとゼロのアーマーに亀裂が入る。

ゼロ「ぐっ…がああああっ!!」

あまりの激痛にゼロは絶叫する。

アイリス「止めて…もう止めてええええ!!」

ディザイア「仕方ありませんねえ…ほおら!!」

ゼロをエックスに向けて蹴り飛ばし、エックスはゼロを受け止めた。

エックス「ゼロ!!」

ディザイア「お友達よりも自分の心配をしたらどうですエックス。」

一瞬で距離を詰めるとビームサーベルでエックスを切り裂く。

エックス「が…は…」

ゼロに気を向けていた隙を突かれて、エックスも倒れ伏した。
ルインは愕然とした表情でディザイアを見つめていた。

ルイン「ディザイア…どうして……どうしてこんな…イレギュラーみたいなこと…」

ディザイア「どうして…ですか…私をイレギュラーと一緒にしないで下さい。全ては世界のため、そしてルインさん…あなたのため…」

ルイン「私の…?」

ディザイア「はい…私が力を求めたのはあなたを守るためです。見てください…エックスやゼロ、カーネルを倒したのは私です。今の私は…誰にも負けません…それこそあのシグマにも」

ルインの肩に手を置くディザイア。
ディザイアの瞳に輝く狂気の光にルインは身体を震わせる。

ディザイア「ルインさん。私はあなたを愛しています。私と共に来て下さい。」

ディザイアの言葉に対して彼女はただただ彼の異常なまでの狂気に身体を震わせるだけだった。
ディザイアは微笑む身体をそのまま抱き寄せると、その可憐な唇に自らのそれを重ね合わせた。

ルイン「――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!」

身を捩り、彼の胸を押して逃れようとするルインだが、ディザイアの腕に抱え込まれていては、それは虚しい抵抗に過ぎなかった。
ディザイアは唇を離すと恍惚とした笑みを浮かべた。

ディザイア「ルインさん。私はこれからデスフラワーに向かい、デスフラワーでエックスと戦います。そしてエックスを倒し、レプリフォースを滅ぼし、あの男も倒して英雄になります」

ルイン「ディザイア…」

ディザイア「ルインさん…もう一度言います。私はあなたを愛しています。私と共に…」

エックス「プラズマチャージショットッ!!」

ディザイア「っ!!」

即座にビームサーベルを振るい、プラズマチャージショットを掻き消すディザイア。

ディザイア「まだ立てたか…。」

エックス「彼女に…彼女に触れるな!!ストックチャージショット!!」

切られた胸部を押さえながらエックスは立ち上がり、ディザイアに対してチャージショットを4発放つ。
流石に受けるわけにはいかないと、ディザイアは回避する。

ディザイア「チッ…いいだろう…エックス。デスフラワーに来い…そこで決着をつけようじゃないか」

ディザイアと飛び散ったカーネルの部品が転送された。
エックスは呆然としている彼女を抱きしめ、ゼロを抱きしめながら泣いているアイリスを痛ましげに見つめている。 
 

 
後書き
ディザイアがカーネルを破壊した。
これにより物語は大幅に変わっていく。 
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