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俺の知ってる作品でバトルロワイアル

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5話:SPEC~凶~ 壱

 とある廃ビルのような建物にあるオフィスの中。古いテレビが幾つも積み重なって出来ているオブジェの前で瀬文焚流は目を覚ましていた。
「どうなってやがる・・・」
 自分が殺し合いに巻き込まれたことは理解した。状況から判断するに犯人がスペックホルダーだろうと見当もつけた。
 だが解せないことがある。
 それは、彼が握り締めている参加者名簿の一行。
「当麻―――」
 当麻紗綾。
「―――なんで、ここにいる?」
 当麻紗綾は瀬文が、この手で撃ち殺したはずだった。
 世界を救うため、自ら亡者をその身に閉じ込めて、冥界へ沈む決意をした当麻は瀬文に頼んだ。撃ち殺してください、と。そして、覚悟を決めて断腸の思いで引き金を引いた。
 そこで瀬文の記憶は途切れている。気がついたらあの会場にいて、転送されていた。黒幕らしき女の話など耳に入らなかった。
 少し前の瀬文なら刑事魂を奮い立たせ、あの女の打倒に燃えたことだろう。
 だが今は、殺し合いなどどうでもいい。あの会場では優勝すればどんな願いも叶えられる権利をやると言われたが、瀬文が叶えたい願いはあの女にどうにかできるとは考えられなかった。
 神にも近いSPECを持つ当麻でさえ、最後には自分の身を犠牲にしなければならなかったのだから・・・。
 ふいに瀬文は振り返る。背後に気配がしたし、扉が開く音もした。
 立っていたのは、着物の上に赤いジャンパーを着た中性的な顔立ちの女だった。
「あれ、お前誰だ?」
「・・・警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係の瀬文だ」
「そうか。両儀式だ」
 言って式は近くのソファーに座ってデイパックを開け始めた。
「え、あの」
「何だ?」
「いや、その・・・」
 色々と聞きたいことがあるような気がするが、瀬文には言葉が見つからない。それを察した式は面倒くさそうに適当に答えた。
「ここはオレの職場なんだ。転送先はここの屋根だったがな」
 しかし本当に本物にしか見えんな、と言ってデイパックを漁る。そして名簿を見つけて浅上や橙子、白純の名を見つけて呻く。
「おい、気をつけろ!」
 突然聞こえた声に反応し瀬文のほうを見る。どうやら式の足元を指差しているようだ。
「デイパックがどうかしたか?」
「何か出てきてるぞ!」
 式は視線を落とす。確かに、何かモゾモゾとデイパックから這い出してきている。童話の中の魔女が被る様な、白いリボンの付いた黒い帽子が見えている。どうやら這い出てくるモノが被っているらしい。
 式は今、武装をしていない。支給品を全て確認する前に“それ”が出てきてしまった上に普段から持ち歩いているナイフはどうやら没収されてしまったらしい。
 式は後ずさり、次の動きで一瞬で食器棚のほうに移動し、引き出しを開けて食器のナイフを取り出した。それを前に構える。
 常人がこのような真似をしても役に立たないが、モノの死が視える眼―――直死の魔眼を有する式にとっては食器用のナイフでもあるかないかでは大きく違う。
 式にとって幸運だったのは、転送先がよく知っている場所だったことだろう。
 そして、ついに“それ”の姿が露わになり―――――――







「ゆっくりしていってね!!」







 ――――――第一声を発した。

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
 二人と一匹の間に沈黙が走る。
 式は表情を殆ど変えなかったが、内心は動揺しているのだろう。ピクリとも動かない。
 瀬文はあまりの展開に思考が停止し、ただただポカーンと口を開いたままの状態を数秒間続けている。
「・・・なんだお前は?」
 以外にも沈黙を破ったのは式だった。
「支給品のゆっくり魔理沙だぜ。生首じゃなくて大福だぜ」
「・・・もういいや」
 わずか二、三の会話をしただけでツッコミどころがたくさん出てきた。
 その容姿は間の抜けた顔をした金髪ロングの少女の生首にしか見えず、口調は見事な棒読みだ。
「待て、支給品なら殺し合いや主催について何か知ってないか?」
 瀬文がゆっくり魔理沙に詰め寄る。
「いや、私は知らないうちに連れてこられていつの間にかバックに詰められてたんだ。申し訳ないけど何も知らないぜ」
 そのゆるい姿とは正反対にきっちりとした態度で答える。棒読み口調は相変わらずだったが。
「じゃあ、誰に連れてこられたのかは?」
「わからない。まったく心当たりが無いんだぜ。なんで支給品にされたのかもわからないぜ。自分で言うのもなんだけど、あまり役に立つとも思えないし」
 mugenに参戦したから多少戦えはするけど、と。
「そうか・・・」
 mugenてなんだと聞こうとしたが、あまり役に立つ情報とは思えないので放っておいた。瀬文は式のほうを見る。ゆっくり魔理沙には興味を無くしたのか自分のデイパックを漁り残りの支給品を確認していた。刀子のような刃物に、巨大な鋏。
 刀子の方は気に入ったのか様々な角度からまじまじと見て、嬉しそうな表情をしている。
 一方の巨大な鋏は見るなりなんだこりゃ、と呟いてすぐにテーブルに投げるようにして置いた。そして鋏の中心の螺旋に向かって、刀子を振り下ろした。
 瞬間、瀬文はかつて無いほど大きな殺気を式の方から感じた。
 殺気は一瞬で消えたが、瀬文のほうは式を凝視せざるを得なかった。そんな視線に気づいたのか式は瀬文を見て口を開く。
「ん、なんだ?」
「い、いや・・・その、それは一体・・・?」
 瀬文の指差した巨大な鋏だったモノは螺子を破壊され、ただの二つの刃物に分解されていた。
「ああ。これ、二つのナイフを無理矢理螺子で止めて鋏にしてたんだ。扱いにくいから螺子を『殺して』元に戻した。流石に空いた穴は埋められないがな」
「扱うって、使うのか?」
 殺し合い会場で、刃物を使う。
 その意味は、説明せずとも分かるだろう。
「そりゃあ、襲われたりでもしたら使うしかないだろう」
 呆れた顔で式が言う。
 考えてみれば当然のことだ。
 殺し合いに乗っているのだったら、見ず知らずの瀬文などすぐに殺しにかかっていたはずだ。
「それと、螺子を殺したってのは一体?」
「・・・オレの目はモノの死が視えるんだ」
 続けて式は、簡略化した直死の魔眼の説明をする。聞き終わった瀬文は、以外にも納得したようだった。
「そうか、お前もスペックホルダーなんだな・・・」
「あん?なんだそれ?」
 今度は瀬文がスペックホルダーの説明をする。かつて当麻がよく言っていた、SPECの説明から始めて。
「・・・ふうん」
 聞き終わった式はさほど興味が無いのかそれ以上聞いてくることは無かった。
 続いて互いにこの会場内にいる知り合いの話に移る。瀬文は当麻紗綾を、式は浅上藤乃と蒼崎橙子、白純里緒のことを話す。
 瀬文は当麻は絶対に信用できる、殺し合いには乗らないと強く説明し、式は浅上と白純は危険だと言った。
「まあ、オレの記憶が確かなら浅上は倒したし、白純は殺したはずなんだがな」
「え、殺したって」
「ああ、そういやあんた刑事だったな。最後に会った時、白純はもう人とは言えなかった。向こうから襲ってきたし、仕方が無いだろう」
「人とは言えないってどういうことだ?」
「そのままの意味だ。強いて言うなら人食鬼かな」
 まさか、と呟く瀬文に式はその通りさ、と続ける。
「白純は人間でありながら人を食べるんだ。動きも人というよりは獣だ。なんでも起源覚醒者というらしいが、その辺はオレにはよくわからん」
 式は続けて浅上藤乃について話す。
「こいつは歪曲の魔眼を有している。手を触れずにただ視るだけでモノを()げる事が出来る。殺し合いに乗っているかどうかはわからん」
 危険なのは間違いないが、と。蒼崎橙子については人形師だと説明する。
 曰く、個人的には嫌いだが、殺し合いに乗るような奴ではないと。式の話を聞くに、本人は戦闘が得意ではなく代わりに人形が戦うらしい。
 だが、式がナイフを、瀬文がいつも持ち歩いている紙袋を取り上げられたことを踏まえると蒼崎橙子も人形を取り上げられた可能性が高い。
 それぞれの体格や顔の特徴まで話し終えた式を見て、瀬文は当麻の左手について話そうか悩んだが、やめた。瀬文は結局最後まで、当麻のSPECを理解してやれなかった。
「それじゃあ、俺は行く。色々とありがとう」
「待て。オレも行く」
 立ち上がった瀬文に式はゆっくり魔理沙をデイパックに詰めながら声を掛けた。
「え、何で?」
「オマエ、その当麻紗綾を探しに行くんだよな?」
「まあ、その通りだが―――」
「その当麻ってヤツは、殺し合いを止められるんだろ?」
「・・・ああ、きっと止めてくれる」
「だったら一緒に探す。今はそれが最善だ」
 ちょ、待ってこの中微妙に臭―――、と音を立てながらデイパックの中に消えて行ってゆっくり魔理沙。
 瀬文には断る理由も無かった。
 こうして、人を殺さなかった殺人鬼と世界を救ったが自分達を救えなかった刑事のコンビは秘かに結成された。






【両儀式@空の境界】
[状態]:健康
[装備]:無銘@戯言シリーズ、二つに分解された自殺志願(偽)を袖の中に
[道具]:支給品一式、無銘@戯言シリーズ、自殺志願(偽)@人間シリーズ
    ゆっくり魔理沙@ニコニコ動画
[思考・状況]
基本思考:対主催
1:瀬文に同行し、当麻紗綾を探す
2:浅上と白純を警戒
3:橙子は殺しても死なんだろう
4:SPECについて大体の知識を得た
5:無銘を気に入った
6:ゆっくり魔理沙は人形か何かだろう



【瀬文焚流@SPEC】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:当麻と再会する
1:両儀式・・・何者なんだ?
2:浅上と白純を警戒
3:式と橙子と浅上はスペックホルダーだと思っている
4:殺し合いには乗らない
5:当麻・・・なぜここにいる?
6:ゆっくり魔理沙とは一体?
7:両儀のファッションセンス凄いな 
 

 
後書き
支給品解説。

○自殺志願(偽)
『零崎人識の人間関係 零崎双識との関係』にて人識が作成した武器。二本のナイフを螺子でくっつけて鋏のような形にしたもの。人識はこの話で双識に変装する必要があった為、自殺志願らしき武器を作る必要があった。 
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