アイシャドー
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第四章
第四章
「食べても意味ないじゃない」
「そういうことよ。アイシャドーをしていないお化粧なんてその程度でしかないのよ」
見ればその子はしっかりとアイシャドーをしていた。そのアイシャドーは奇麗なスカーレッドであり実に見事に映えているのだった。
「その程度のね」
「アイシャドーってそんなに大事だったのよ」
「それがわかっていないなんて未熟ね、未熟」
彼女はさらに言ってきた。
「だからよ。これからはアイシャドーをしっかりとしなさい」
「しっかりとなのね」
「友樹君が可哀想よ」
今度は彼の名前も出されるのだった。
「けれどアイシャドーをしたらね」
「もっと映えるっていうのね」
「そういうことよ。わかったわね」
彼女はまた唯に言ってきた。
「わかったらこれからはアイシャドーもしっかりね」
「いいわね」
「わかったわよ。そこまで言わなくてもね」
皆から言われたのでいささか不満な顔になっていた。
「やるから。ちゃんとね」
「頑張りなさい、それもね」
「絶対に友樹君にいいから」
「そうよね。一つ気付いてもらったら」
唯はこのことも思い出して述べた。
「後でどんどん気付いてもらえるのなら余計にね」
「やるのよ。いいわね」
「それでね」
皆こう言って唯を励ます。彼女はそれに従いそうしてアイシャドーをはじめた。早速次の日アイシャドーをしてみたのだった。
「あっ、いいじゃない」
「センスあるわよ、それ」
「そうかしら」
またトイレの鏡を見ながら皆で話をしている。皆は唯のその目を見て笑顔で言っていた。
「いい感じよ。適度に暗くてね」
「何か大人って感じになってるわよ」
「そうなの。大人なの」
唯は大人と言われて上機嫌になっていた。何故なら彼女は小柄で童顔で実際の年齢よりも子供に思われることが多いからだ。それが内心不満であったのだ。
「大人に見えるのね」
「見える見える」
「何か今までより二割美人に見えるわよ」
「うわっ、それって凄いわね」
二割増しという言葉にさらに機嫌をよくさせる唯だった。
「そんなに違うの。アイシャドーだけで」
「そうよ。他には赤とか青とかもあるから」
「色々と勉強したらいいわ」
「そうね。じゃあやってみるわ」
唯は上機嫌のまま皆に応える。
「とにかく。これで」
「憎いわね。もう完全に友樹君の心は鷲掴みよ」
「恐れることはないわよ」
「さて、友樹君私に会ったら」
今日これから起こることについて考えてまたまた機嫌をよくさせていく。有頂天にすらなってしまっていた。もう誰にも止めることはできない状況だった。
「どう言うかしら」
「目って大事だからね」
「特に唯の目って目立つから」
皆今度は唯の目を鏡から見て話す。
「効果ありまくりよ」
「もう見ない筈がないわよ」
「この垂れ目は嫌いじゃないのよ」
実は自分の目は気に入っているのであった。
「実はね」
「じゃあ余計にいいじゃない」
「そうそう」
皆彼女の今の言葉を聞いてさらに言う。
「じゃあ。今から行ってきなさいって」
「友樹君のところにね」
「言われなくてもよ」
もうそのつもりになっているのだった。
「見せに行くわよ」
「さて、どうなるかしらね」
「見ものね」
皆は朗報を確信していた。あくまで彼女達の目で見たうえで、である。
そうしてそのうえで唯を見送る。唯はそのまま友樹のクラスに向かう。実は二人のクラスは別々だったりする。一年の時には同じクラスでそれが縁になったのだ。
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