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アイシャドー

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第二章


第二章

「それでもわからないのね、やっぱり」
「男の子だから」
「そうなのよ」
 彼女はその小さな身体に思いきり不平を述べていた。
「こっちも苦労してるのにね」
「何か皆抱えてる悩み同じなのね」
「折角奇麗にしても細かいところまでわかってくれないなんてね」
「参ったわね」
 女の子達は鏡の前で腕を組んで困った顔になる。そうしてそのうえでぼやくばかりだ。それでも化粧はちゃんとするのを忘れない。例え気付かれなくてもだ。
 この小柄な女の子である間道唯にしろ同じである。彼女なりにかなり苦労している。しかし相手の友樹は全くわかっていない。それが問題なのだった。
「あれ、唯ちゃん」
 その友樹と一緒に帰っているその時だった。彼が不意に声をかけてきたのだった。帰り道のバス停に二人横に並んで歩いている。右手には土手と川がある。土手は緑で覆われている。
「今日何かあったの?」
「何かって?」
「いつもと雰囲気が違うけれど」
 こう言うのである。
「雰囲気がね。どうしたの?」
「ええ、ちょっとね」
 唯はここで応えるのだった。
「わかる?ちょっと変えてみたのよ」
「変えた!?」
「そうよ、わかるかしら」
 少し思わせぶりに笑ってみせてきた。
「少しね。どうかしら」
「何を変えたの?」
 ところが友樹には何を変えたのかわからない。それもさっぱりだった。
「一体何を」
「まあ何かっていうと」
 内心いじけるし憮然としながらも応えるのだった。
「ちょっと髪型変えたんだけれど」
「あっ、そうだったんだ」
「ええ、そうなのよ」
 実は髪型はそのままだったがそれは内緒にした。やはりそういうことには気付かないのだった。なお彼女が変えたのはそれだけではないのだ。
 実は化粧はそのままだがコロンを変えているのだ。そのせいで変わったように思われるのだがやはり友樹はコロンにも気付かないのだった。
「髪型をね」
「ふうん、いいんじゃない?」
 友樹は気付かないまま納得していた。
「すっきりしていね」
「そうでしょ?喜んでもらって何よりだわ」
「うん。それで唯ちゃん」
 ここからは友樹が主に進めてきた。
「バスから降りたらだけれど」
「何?」
「いいお店見つけたんだけれど」
 その背の高い身体を少しばかり折り曲げて彼女に言ってきたのだった。鼻が高くきりっとした顔である。そうして長い髪を後ろでくくって束ねている。そんな顔であった。
「行く?一緒に」
「お店って?」
「うん、ハンバーガーショップ」
 彼が言うのはここのことだった。
「行く?唯ちゃんハンバーガー好きだよね」
「ええ、そうだけれど」
 ハンバーガーというところに彼の男の子としての気遣いを見るのだった。女の子ならここでアクセサリーや化粧品の店になる。ところが食べ物に、それも肉に関わるところがやはり男の子だった。しかしそれはどうしようもないことでもあった。お互いそれはわかっていないが。
「マクドじゃないの?」
「うん、そことは別でね」
 そこではないというのだ。
 
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