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I want BRAVERY

作者:清海深々
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18話 Tartar sauce


タルタロスって英語のスペルどう書くんだろうか。
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18話 Tartar sauce

「これが『タルタロス』、迷宮だ」

 無駄にドヤ顔で話すドS女。

「俺らの学校はどこにいっちまったんだよ!」

 それとは正反対にかなり取り乱した様子で叫ぶ順平。

「ちゃんと影時間が終われば元に戻る」

「てかおかしいっしょ!なんで俺ら学校だけこんな!」

 私は言い合っている二人を横目に、実際に見るタルタロスに圧倒されていた。

(これが・・・タルタロス)

「実際に見ると、すごい迫力だろ?」

 小声で彩君が話しかけてくる。

「う、うん」

 思った以上に大きい。

 かなりの階数があるため、高いことは分かっていたが、これは予想以上だ。
 大きすぎる。
 まさに天まで届いている、といった感じだ。

 それにもの凄い威圧感がある。

「先輩たちにもわからないんですか?」

「あぁ」

 私と彩君が小声で話しているのを横に、話は進んでいた。

「事情があるのよ、どうせ」

 原作と同じでやはり、ゆかりはこのドS女を嫌っているように見える。

「わからないなら調べればいい。俺達も今、必死になって調べているところさ」

 原作とは違うセリフ。

 そういえば、真田先輩は怪我をしていない。

 これはもしかしたら、序盤から参加してくれるということだろうか。

 もし、そうなったら、かなり楽にレベルが上がるに違いない。
 それに真田先輩との仲も深まるかもしれない。

 ゲームでは毎日一人づつ帰って、ちゃんとした選択肢を選んで、高校生にしてはかなり重い話を聞いたりして、その人とのコミュを上げていく。

 しかし、実際にそこまで重い話をしなければならないのかと言うと、たぶん違うと思う。

 例えるなら、それはまるで、死に掛けた瞬間に助けてくれる白馬の王子様的な行動。
 かなり強いインパクトを一瞬の間に与える、あまりにも現実味のない話だ。

 毎日話す友達と、相談したりはしたが、たまにしか一緒に帰らない友達。
 どっちが大事だろうか。

 私はどっちもだと思う。
 つまりは、そのいつも話す普通の友達と、私のような存在はよくて同等までしかならない。
 それを考えると日々の積み重ねというのはやはり大事である。
 
「真田先輩は調べてないですけどね。シャドウ倒すだけですけどね」

 私の横から彩君が真田先輩にツッコミを入れている。

 もしかすると彼は、ツッコミ役なのかもしれない。

 私達はそこで話すのをやめ、中に入った。

 ちなみに私は話に参加できていなかった。

(こ、これは・・・ある意味主人公補正?)

「おぉ・・・中もスゲェな・・・」

「はぁ・・・何度入ってもこの気味悪さには慣れないわ」

「そうか?俺はわくわくしてきたけどな!」

「はいはい。それで被害被るの俺なんですから、大人しくしといてくださいよ」

 彩君が熱くなっている真田先輩を落ち着かせていた。

 それにしてもスゴイ。

 なんだってこんなスゴイところがシャドウの巣なんだろうか。

 将来こんなエントランスのある家に住みたい。

 私の愛の巣。

 いいかもしれない。

 案外、このタルタロスに住むっていうのもありかもしれない。

 いや、駄目。

 水なんかないだろうし、何より影時間しかないなんて、意味がない。

 私は一人変な思考回路へと入る。

「今日の探索はお前達三人だけで行け」

「3人・・・私もですか!?」

 何故驚く。

 ゆかり、それはネットゲームでいうヒーラー。

 パーティーで必須のジョブだろう。

 そんな重要な役目のゆかりが待機だとでも思ったのだろうか。

「なんだ岳羽。前からそう言ってただろう」

「えぇ〜。チョーダルイってばぁ〜」

「岳羽さん。俺らも後ろから付いてくから」

 なんか、ゲームとは違い、ギャルっポイ感じの雰囲気を出しているゆかり。

「いや、駄目だ彩」

「なんでです?」

 ピクリと顔が引きつる彩君。

「俺達二人は別行動だ」

 シャドウボクシングをしながら語る真田先輩。

「・・・マジか」

 彩君に暗いオーラが。

「彩君・・・」

「・・・あ”?」

 一瞬で顔が般若のように。

「私達二人は別行動だって・・・キャハっ♪」

 どこを聞き間違ったんだ。

 真田先輩は『俺達二人』と言ってただろう。

「おい、明彦と彩はいざという時のために、ここで待機だ」

 キリッとした表情で言うドS女。

 一体どうしたというのだろう。
 何故そんなドヤ顔なのだろうか。
 
「なっ!?美鶴!どういうことだ!俺は今日!戦いに来たんだ!戦いに!」

「黙れ。私が待機と言ったんだ」

 彼女のことは今日から女帝ということにしよう。

「・・・」

 沈黙する真田先輩。

 熱い視線を彩に送る女帝。

 なんだかわからないが、彩君のハーレムは案外もう完成間近なのかもしれない。

 だってあの女帝が既に落とされているのだろうから。

 ただ、この現実世界でハーレムを認めさせるのは苦労するに違いない。


「私と暗超でここから通信でナビゲートする」

(あれ?根暗女もバックアップ?)

「彩君」

 私はどうやら、ゲームでセリフのあった場面以外では発言する気が失せるみたいだが、彩君相手では別らしい。

 ゲームではいなかったキャラ。
 暗超楓はどういった存在なのだろうか。

「先輩のこと?」

「うん」

「桐条先輩+先輩=劣化山岸」

「・・・役に立たないわね」

「あぁ、足しか引っ張らない」





「『リーダー』を決めておく。俺と彩は強さが違うからな、お前達3人で行動するときのリーダーを決めろ」

「ハイ!ハイ、ハイ!俺!」

「髭・・・お前にそんな芸当ができるとでも?」

「なっ!彩、俺っちを舐めてもらっちゃぁ困るぜ!任せろ!」

「・・・お前が『任せろ!』って言った時に、よかった試しがない」

 弱点にズバリだ。

「稲城。お前がやれ」

「えっ・・・お、女の子ッスよ!?」

「こいつは実戦経験者だ」

「え、私もですが?」

 そこでゆかりが発言する。

 そういえば、ゆかりは既にペルソナ召還ができたのだった。

 となれば彼女はシャドウとの戦闘経験があるのだろう。

「お前は・・・無理だ。向いてない。不適だ」

「ちょ、真田先輩ひどくないですか!?」

 ひどい。
 今のはひどい。

 女の子というのは傷つきやすいんだ。
 そこはもっとオブラートに言うべきだった。

「何回誘ってもタルタロスに来ないお前が悪い」

「先輩の人の良し悪しはそこで決まるんですか!?」

「当たり前だろう?」

 しかも理由が最低だった。

「え?え?ちょっと、ちょっと待って。俺だけ?俺だけ実戦経験ないの?」

 順平が若干無視されている。

 なんとかフォローしてあげたいけど、今の私にそんな気力は沸いてこない。
 何故だ。




 で、結局は私がリーダーになると。
 ここらへんはゲームに沿っている。

 というか、私がリーダーじゃなければ主人公としての存在が危ぶまれる。

 私の視界は、ふとあるものを捕らえた。

(あれは・・・ベルベットルーム?)

 私は無意識の内に契約者の鍵を取り出し、差し込んだ。
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