ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン~神々の狂宴~
第三話
前書き
どーも皆さんお久しぶりです、Askaでございます。……久しぶりに前書き書いたけど何も書くことがないという。
刹「じゃぁ使わないでくださいよ……」
「なーガっさん、どこに進むんだ?」
「とりあえずまずは《魔女の村》に行きましょう。近いですし」
カズは、打てば響くようにあっさりと答えるハクガを見る。
ハクガの容貌は、一か月前の物とは大きく異なっていた。純白だった陣羽織は漆黒に。どちらかと言うと東洋風だった装備は西洋風になっている。まぁ、それは自分もなのだが。階梯が四になった証であるが、ハクガの場合はもっとすごい。
そもそも、今のハクガのアカウント(?)は、新規の物なのだ。以前ハクガが使っていた光と水の二重属性をもつ六門神《蒼の月》のアバターは、現在は妹のハクナが使用している。現在彼が使用しているのは、闇と水の二重属性である、《混沌月湖》のハクガ。階梯は四。
この姿は、彼の本来の六門世界でのアバターだという。カズがハクガに初めて出会った時、すでにハクガはハクナの中に別人格として宿っていた。そのため、《蒼の月》がハクガのアバターもしくはハクナとハクガの共用のアバターなのだと思っていた。
だが、ハクガのアバターはこうして別の物が存在している。カズはハクガがなぜ意識だけになってハクナの中に入り込んでいたのかよく知らないが、そこには一体どのような過去があるというのだろうか。
六門世界にはしばらくの間アクセスできていなかったが、小波たちが残していたデータによって、試験空間の様なものを作ることは可能であった(今回日本から連れてきた、セモンの友人たちのアバターも、そこでしばらくの間、動かすのに慣れてもらっていた)。そこで意識が戻ったハクガのアバターを初めて見た時の驚愕を忘れることができない。
一体なぜ、ハクガは元の肉体に戻った途端に、全く違うアバターを得るに至ったのだろうか。それに関して、小波たちが仮説を打ち立てた。
中国や日本における、陰陽道や太極道などに用いられる《陰と陽》の考え方の応用で、人間の《存在》は精神である『魂』と、肉体である『魄』の二つに分かれるという。六門神のアバター作成には、この『陰陽魂魄』の存在が関わっているのではないかという考え。ユーザーの肉体によって作成されるアバターも異なるのではないか、と。
それならなんとなく分からなくもない。誰一人として全く同じアバターをもたないことも理解できる気がする。だがここで問題となるのが、『属性が変わってしまった事』だ。
小波の仮説理論を聞いたハクアが、反論を出しだのだ。
『六門神の《本質》は『魂』の方に宿る』と。《本質》は六門属性にもかかわる。ならば、魂自体は以前と変わっていないハクガは、属性はそのまま光・水になるのではないのだろうか。
結局のところ、詳しいことはよくわからずじまいだった。というかそもそもカズの頭では何を言っているのか半分すら理解できていない。自分は前衛馬鹿だ。良くわからない難しいことはハクガかリーリュウのあたりが考えればいい。
「よっしゃ、行こうぜ、ガっさん」
「はい」
目指すは《魔女の村》だ。
***
《白亜宮》には、純白の通路を隔てて無数の部屋がある。この城はその構造自体が不安定なもので、通り手が望む部屋を出現させる、という形式になっていることが多い。
その部屋は、普通の部屋であったり、明らかにサイズが合わない巨大空間であったり、中には確実に別の場所ではないかと思えるような部屋まで存在している。
そう――――たとえばこの部屋では、青空が見える。
空間にあるものは少ない。ちょっと古風で和風な家が一軒建っているだけだ。周囲を木々で覆っている姿は、田舎にある家々を想像させる。縁側には長い白髪を垂らした少女と、癖っ毛の少年がいる。少女の膝の上に頭をのせて、まどろむ少年。空は青く澄み渡り、遥かかなたにぽっかりと白い雲が浮かんでいる。
のどかな風景だ。なぜこんな風景が《白亜宮》の王城の中にあるのか。
ふと、少年の眼が開く。
「始まったかな、侵入が」
「はい、お兄様」
少年は、いわばこの世界の《神》であった。だから、この世界で起こった全てのことを知覚することができる。ありとあらゆる事象をつかさどる、全知全能――――そう、全知全能。ああ、なんて良い響なのだろうか。少年はその響きが好きだった。
薄目を開ける少年にむかってほほ笑む白髪の少女は、その紅蓮色の両目を細めて、少年の頬を撫でた。
「それじゃぁ、そろそろ動かそうかなぁ……どう思う?グリヴィネ」
「お兄様の仰せの通りに。……私たちは、お兄様についていきますから」
「そっかぁ……」
グリヴィネ、と呼ばれた少女は、静かに微笑むだけ。ただ、それが少年にとってはたまらなくうれしいものでもある。誰も僕に逆らわない。ここは僕だけの世界。
「じゃぁ、動かそう。――――ノイゾ」
「御身の前に、我が兄」
どぷり、と、庭に生えていた樹木、それが生み出す影が、水面のように揺れた。ず、ず、ず、と音を立てて、闇の中から姿を見せるのは、青い髪の少女――――ノイゾだ。
「一行の前になんか適当にMobでも配置しといて。ただしホムンクルス部隊及びオートマトン及びグリーアの配置を禁ずる。それと、キリト君達に絶望を。エインに再び挑戦させて、叩き潰せ。エインには《神哭神装》を許可する」
「御意に」
そうして再び、どぷりと沈んでいくノイゾ。縁側には、少年とグリヴィネの二人だけが残った。
「ふぁ~あ……ねむ……グリヴィネ、もう一眠りするから」
「分かりました……おやすみなさい」
満足そうに目を閉じる少年の頬を、グリヴィネは再び撫でた。
***
「エインヘルヤルにもう一度挑む!?」
「正気なの、キリト!」
アスナとリズベットが口々に叫ぶのを、キリトは真剣な表情で聞いていた。
「ああ……危険なのは分かってる。だけど、俺はもう一度奴に挑戦しなきゃいけない気がするんだ」
根拠なんてない。だが、今を逃せばもうチャンスは無い気がしていた。エインヘルヤルは強力だ。重力攻撃に熊悪魔による物理攻撃。そして何より、取り巻きのガイコツ達。彼らに勝つ自信は、正直なところない。
だけど、いつかは戦わなくてはならないだろう。キリトにとって、それはいまだ。そんな気がしていた。
「……どうするの?」
「作戦はある。あの重力攻撃さえどうにかできれば、あとは何とかなるはずなんだ」
キリトの立てた作戦はこうだ。
エインヘルヤル自身は、そこまで戦闘能力が高くない……それでも十分高いが……ことが前回の戦闘で証明されている。問題は、彼女が連れている巨大な熊型の悪魔。そこで、集められる限りのプレイヤー達を使って、熊悪魔の攻撃を妨害する。その隙に、キリト達の手によってエインヘルヤルを倒す。
この作戦で肝になるのは、キリト達いつものメンバー以外のプレイヤー達を、どれだけ集められるか、という事だった。リズベットの話によると、アンダーワールドへのダイブに反対したプレイヤー達も多いというから、多分彼らは今回も来てくれないだろう。人間だれでも、危険な事には首を突っ込みたくない。
だが、あの時は彼らにとっては関係ない世界の救出だった。しかし今回のALO
は、彼らにとっても日々をくらす世界なのだ。きっと協力してくれる。そんな直感がキリトにはあった。
「SAO時代の攻略組の人たちに頼んでみるわ」
「サクヤに取り持ってみる。もしかしたら力をかしてくれるかも」
アスナとリーファが口々に言って、それぞれメッセージ欄を開く。
「おう、キリの字。俺らは協力するぜ」
そう言って手を掲げるクライン。
「みんな……」
「パパ……」
キリトはユイの頭をなでると、背に背負った《聖剣エクスキャリバー》の柄に触れた。
「――――ありがとう」
勝てる。根拠のない確信が、キリトの中に広がった。
***
『――――と言うわけだ。我が兄の指示だよ』
「……お兄様の口から、聞きたかった」
それはあくまでも自分のわがままでしかないことは知っている。それに、本気でそう思っているわけでもない。たぶん今、お兄様はお昼寝中だ。だったら邪魔しないのが一番だ。お兄様は自分のやりたいことを邪魔されると怒る。時々それが怖い。
エインは怒られるのが嫌いだった。エインにとって、お兄様は誰より大切な人だ。自分を生み出してくれた神様だ。それに、たった一人の親友のお父様でもある。
この仮想世界の侵攻を任されたとき、エインは誓ったのだ。何があっても、お兄様のために総べて叩き潰してみせると。
『そうそう、《神哭神装》が許可されたよ。自由に使っていいそうだ』
「……」
つまり、本気を出してもいい、という事だった。やっぱり、お兄様の口からききたかった。
だけど、ノイゾ伝えではあっても、それはお兄様からの命令であることに代わりは無い。だったら何があっても従わなければならない。強制されることが、エインには――――いや、お兄様の眷属として存在するならば、だれにとってもうれしいことだ。
だから、ほら――――
「――――――――はい、お兄様」
そしてエインは振り返り、遥か目下の世界を睥睨し、呟くのであった。
「吹けば消滅るはかなき生命よ――――私が今動かない事を」
――――――せめてもの慈悲と、思いなさない。
後書き
今回は前回で番の無かったハクガ&カズのチームと、キリト君達原作組、そして《白亜宮》の話でした。
刹「それにしてもご都合主義ですね、最近の話は」
まぁ、ね……そうでもしないと進まないし。
刹「はぁ……」
どうした刹那?俺の低モチベが移ったか?
刹「……とりあえず次回もお楽しみに!」
無視された!?
※六門神募集はまだまだ継続しております。
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