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久遠の神話

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第百九話 戦いが終わりその九

「お待ちしてました」
「ようこそ」
「それじゃあ今からですね」
「楽しみましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 彼も席に着いた、勿論上城と樹里もだ。そうしてだった。
 全員で乾杯して飲んで食べる、その中で。
 聡美はイカ墨のスパゲティを食べつつだ、上城に笑顔でこう言った。
「これだけ美味しいものは」
「えっ、何か」
「食べたことがないです」
「いえ、このスパゲティは」
「ごく普通のスパゲティですよ」
 声をかけられた上城だけでなくだ、作った樹里も驚いた顔で言う。
「市販のパスタとソースを使った」
「はい、本当に普通のスパゲティですよ」
「特にです」
「普通ですよ」
「いえ、そうした問題ではなく」
 市販やそうした食材でもだ、調理の腕でもなくというのだ。
「ほっとしているので」
「だからですか」
「本当に。全てが終わりましたね」
 微笑んでだ、聡美は取置きを見ている顔で言った。
「何もかもが」
「そうですね、本当に」
「これで」
 二人も聡美が今何故そうしたことを言ったのか理解した、それで二人も笑顔になってそのうえで彼女に応えた。
「銀月さんにとっても」
「完全に」
「はい、ただ」
 終わったことは喜ぶべきことだった、だが。
 聡美はここで悲しい顔も見せてだ、こんなことも言った。
「お姉様は」
「あの人はですか」
「去られて」
「何処に行かれたのか」 
 このことについても思ってだ、悲しい顔になったのである。
「果たして」
「そうですよね」
「あの人のことは」
「はい、ですが」
 悲しい、しかしそれでもと言う聡美だった。
「また何時か。お姉様は罪を償われて」
「そうして、ですね」
「戻られますね」
「また会えます」
 それが出来るというのだ。
「私は信じています」
「そうですよね、また何時か」
「銀月さんはあの人と会えますね」
「必ず」
 それが出来るというのだ。
「その時が来ることを信じています」
「今は暫しの別れの時よ」
 聡美にだ、智子がこう言ってきた。
「暫しのね」
「僅かな間のですか」
「私達はまたお姉様に会えるわ」
 智子はあえて表情を消している、そのうえでの言葉だ。
「だから悲しむことはないわ」
「そうなのですか」
「お姉様は必ず」
 今は無理だ、だがそれでもというのだ。
「私達と再びね」
「楽しい日々を過ごせますね」
「私達は待つだけよ」
 ワインを飲みつつの言葉だ。
「それだけよ」
「そうなりますね、では」
「今は楽しみましょう」
 豊香はハンバーグをワインで楽しみつつ笑顔で言ってみせた。
「このワインも」
「そうだよな、美味いよこのご馳走」
 中田は笑顔でサラダも鮭のカルパッチョも楽しみながら言うのだった。
「幾らでも食えるよ」
「君よく食べるね確かに」
 樹里の父は聡美達の話は意味がわからず首を傾げさせていたが中田のその見事な食べっぷりにはすぐに応えた。 
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