アラガミになった訳だが……どうしよう
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
20話
「マキナさん、今日はうちに泊まるんですよね?」
任務完了の報告をサカキに済ませて、辛うじて回収出来たコンゴウのコアを回収用のケースに入れ終えた時、血塗れの服から着替えたカノンが聞いてきた。
一応、ゴッドイーターの身分はサカキ曰く完璧に偽装されているらしく、万が一にもバレることはないとは言っていたが、流石に支部に用意された部屋で休む勇気はないので、野宿か台場家に泊まるかで普段過ごしている。
流石に毎日世話になる訳にもいかないので、週一回だけ台場家に世話になっているのだ。カナメ達は毎日居てもいいと言っているのだが、正直そこまでは俺の気が引けるので辞退させてもらった。
「ああ、そのつもりだが?」
「久し振りにマキナさんの料理が食べたいんですけど……いいですか?」
そう言えば、最近は料理を作ることも無かったな。久し振りに何か作ってみるのも悪くないな、よし、たまには鍋を振るうとしよう。
「構わないぞ。確か前の配給でトウモロコシがあったよな?」
「えっと……ジャイアントトウモロコシですか?でも、一粒一粒が大きくて食べにくいし、味もあんまり……」
「それをどうにかするのが料理人の仕事だ、さぁとっとと帰るぞ」
粒がでかいならミキサーにかけて、液状にしてからスープの材料にでもすれば大丈夫だろう。それに、肉類をトマトで煮込んだものに何かしらでサラダでも付ければ十分か?
サラダはさっぱりとした……そうだな、大根でも使うか。
「いいね、それ」
…………最悪だ。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「君を追いかけて……って言いたいんだけど、ゴメンね今日は違うんだ」
そう言って、女は俺に右腕の腕輪と神機を見せつける。どうやら、この女は支部長の下についてストーリー進めるつもりらしいが、どうやってあの支部長を言いくるめたのか気になるな。
「ふふ、大した事はしてないよ。それに私はあの女じゃないい、ちゃんと名前は自分でだけどつけたからさ。今度からはイザナミって呼んでね?」
イザナミねぇ……ある意味ピッタリの名前だよ。主に性格的な意味でな。
「ありがとう、君もイザナギにでも改名してくれると嬉しいんだけど……君がどんな名前でも私の気持ちは変わらないよ」
あーさいで、どうせお前とやり合うのは最後の最後だ。
お互いシオが奇跡を起こす起こさないで決めるんだから、持ってる知識を最大限使おうと思えば原作通りに動くしかないだろ?
サカキ達より先にシオを手に入れても、コア自体が弱すぎてノヴァの起動に耐え切れず全部無駄になる。
お前が一人でシオを育てる為のコアを集めるというならば全力で邪魔すればいい、勝てなくともお前を釘付けにするくらいは出来るからな。
「そうだね、君達の方だったら、コア回収は彼らに任せて私を止める事に君は専念するだけでいいからね」
そういうことだ、分かったらさっさと帰れ。
「いやいや、折角君が手料理を作るって言うんだったら食べさせてよ」
……は?
何を言っているんだこいつは?
「いいでしょ?」
何でお前に料理を食わせなきゃ「あなた、誰ですか?さっきから独り言ばかりで、正直言って気持ち悪いです」
おおうっ!?
カノン、なんて事を言うんだ!?
「あら、あなたが……ふーん……成る程……そういうこと……で、私に何か用?マキナのお気に入りのあなたなら話くらいは聞いてあげるよ」
ん?なんだ?こいつしては珍しい対応だな?
まぁいい、取り敢えずこいつがキレない内にカノンを宥めて……
「ふふ、その耳は飾りみたいですね。私はあなたが誰だって聞いてるんですよ?」
「話を聞いてなかったのかな?イザナミって名乗ったのにね、ちゃんと話くらい聞こうね、低脳8Bitちゃん?」
なんだこの不毛な争いは……子供の喧嘩か?まぁいい、この女……じゃなくてイザナミの事だ、どうあっても引き下がるつもりはないだろう。
そんな事は身をもって体験しているし、いい加減諦めている。
「カノン、悪い。こいつはこうなると、どう足掻いても絶対に諦めないんだ」
「……分かりました、マキナさんが言うんだったら」
はぁ……良かったと言うべきなんと言うか。ただ、すれ違いざまに「後で説明してくださいね」と言われた時は悪寒がしたが、イザナミみたいな奴を家に上げさせるハメになったんだ、そりゃその位は言いたくなるか。
「流石マキナ、話がわかるね」
喧しい、お前のせいでこんないらん悩みまで抱えるハメになったんだ!!
それに勝手に心を読むな!!
「あら、夫婦どうし隠し事は良くないんじゃないの?」
誰が夫婦だ!!
なんでこんな重たい空気で食卓を囲まにゃならんのだ?
頼むからカノンはイザナミ睨みながら、機械的に食事を進めないでくれ。そして、イザナミ、お前もその小馬鹿にした笑みを浮かべてカノンを挑発するな!!
「マキナさん、一体何処でこの人と知り合ったんですか?」
カナメ、イザナミを知っているのか?
「ええ、支部長の懐刀と言われてる、極東支部の研究者達の中で最強のゴッドイーターじゃないかって噂の人ですよ」
ああ……そりゃな、主人公が入隊すらしていない状態での極東支部で、支部長の部下っていう比較的功績が表に出やすい立場でなら、当然の評価だな。
それにアラガミだってことは当然支部長が隠しているだろうし、ゴッドイーターと勘違いされるのも仕方ない。
イザナミの戦力も底が知れないってのもあって、俺が命懸けで戦ったとしても正直俺が勝てる未来が見えない奴だ。その上、こいつの武器以上に一対多数に向いている武器などないのだから、アラガミを狩るという能力は俺の遥か上だ
こいつが本気で俺を殺しに来たら、多分俺は殺されるだろう。
「ふふ、嬉しい評価ありがとう。それと私がマキナ傷付ける事なんてあり得ないから安心してね」
だーかーら、勝手に心を読むな!!
「あの……イザナミさん、失礼を承知でお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「何かな、カナメ君?」
「貴女もマキナさんと同じ、なんですか?」
「そうだけど?」
あっさりと答えやがったな。
まぁ、こいつの場合バレて面倒になったら皆殺しにして口封じすることに、一切の躊躇いを持たないの奴なので、おかしな話でもないか。
「貴女は人類の味方なんで「違うよ」……じゃあ、何の為にフェンリルに味方するんですか?」
イザナミはカナメの眼を覗き込むように見ると、本当に楽しそうな笑みを浮かべた。
「流石、マキナの信頼している人間だね。私に怯えているのに、決して私から視線を外さずに私への問いをやめない。そこの娘のような私達に抗う力も、武器も何も持たずに私に挑む……流石だよ。そんな君が気に入ったから、その質問に答えてあげるよ。
私がフェンリルにいるのはマキナの為だよ、それ以上の理由は一切ないし、もしフェンリルがマキナの為にならないって判断したらその瞬間に潰しにかかるよ」
カナメの質問に答えるイザナミの様子は、神という存在が仮にいるのだとしたらこういう奴だと思わせるような様子だった。
そこには損得などない、ただ自分より遥かに下の存在の動きを見て楽しんでいる。何かの拍子で気が変われば即座に殺すつもりだろうし、もしかすると殺さないかもしれない。
そんな上位種としての余裕が彼女からは溢れている。
「支部長の計画……ですか?」
なっ!?なんでカナメが知っているんだ!?
「へぇー……人類をアラガミから守る計画であるエイジス計画がどうしたのかな?」
「そんな嘘に騙されるほど愚かじゃないつもりですよ、あんな計画なんて子供の考えた計画よりも杜撰だ。少しでも耐アラガミ装甲の事を知っていれば、根本から破綻していることはすぐに分かります。
アラガミの進化に完全に対応できる装甲など不可能だ、アラガミの進化の速度がどれ程のものかを考えれば当たり前の事実だ。
世界でもトップクラスのゴッドイーターが集まる極東支部ですら、居住区を覆う装甲分のコアや素材を集めるので手一杯、いえ、実質足りてないとすら言えるでしょう。事実、アラガミによって装甲が破られることはそんなに稀ではありません。
それをあの巨大なエイジス島全体を覆うアラガミ装甲を全て、アラガミの進化に合わせてどうにかする?
不可能です。
巨大な耐アラガミ装甲だから大丈夫?
進化したアラガミに対応していない装甲なんて、ただの分厚い鉄板ですよ。
そもそも、あそこに運び込まれている資材を少しでも考えれば、その異常性にすぐに気付きます。
運ばれる食料や生活用品などから推測されるエイジス島にいるであろう人間と、その人間達が作っているであろう装甲の為に運び込まれている素材の量が全く合っていない。
いくら最先端の技術を持ってしても、あの運び込まれている素材を全て消費するのは不可能です。今の技術の十数倍は効率がいいなどという未来の技術でもあれば可能でしょうけど、残念ながら向こうにある機材は私達が使っている機材と同じです。
じゃあ、一体何をしているか?
詳しくは分かりませんし、私の想像でしかないという事を前提に話しますが……」
「ストップ、多分、それ正解だから」
イザナミがカナメを制止させる。
流石に俺としてもそれ以上話されると色々と困る、特にここにはカノンもいるからな。
原作に対して大きく影響を与える可能性は十分にあるし、こいつが止めなきゃ俺が止めただろう。
「えへへ、以心伝心かな?」
喧しいわ!!
しかし、当然というかカナメは不審そうに俺とイザナミを見る。
「マキナさん、貴方は以前人類の敵ではないと言いましたが、そんな貴方がどうしてそれを放置しているんですか?」
「あー……悪いが理由は言えない。ただ、少々無茶があるかもしれないが今の俺にはこれしか言えない。俺を信じろ」
原作がどうたらなど言えるはずも無いし、理解できるとも思えない。
それにこれ以上俺の想定外に動く奴が増えてたまるか、そんなものはイザナミだけで十分だ……
大体、カナメのような人間はそもそも関わって欲しくないという、極めて個人的な要望もあるんだよ。
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