I want BRAVERY
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6話 原作開始
6話 原作開始
———ガチャ
俺はその音にピクリと反応しながらロビーで息を潜める。
ちなみに、岳羽さんは既に就寝済みだ。
真田先輩はタルタロスに俺が行かなかったため、一人で外で特訓している。
タルタロスに入る時は、かならず岳羽さん以外の全員が行けることが条件だ。
誰か一人でも欠けている状態でタルタロスに挑むのは危険だと、桐条先輩に忠告されていた。
しかし、これで真田先輩が街中を徘徊しているシャドウを倒していくこととなるのだが、これは原作では大型シャドウを引き連れてくることとなる。
ある程度レベルが上がったため、もしかしたらソロで大型シャドウをぶっ倒してきてしまうんじゃないか、という不安もある。
それか真田先輩が怪我をしない、かもしれないのだ。
そんなことを考えながら、俺は原作の岳羽のポジションを、原作開始の今夜にとっている。
「ここが・・・」
女の声が聞こえる。
「ふふ・・・あ、名前?」
今、入寮のサインをしているのだろう。
それにしても女主人公だ。
これは俺にとって大きな幸運といえるだろう。
男主人公であれば、原作女キャラはほどすべてが彼を好きになるといっても過言ではない。
おそらく、俺がある程度頑張っていたとしても、キタローに勝てる自信はない。
そう考えると、これは幸運だった。
ただ、女主人公ということは、長谷川さんが転校してしまう可能性がある。
彼女が転校する原因となったのは、雑誌に彼女のことが乗ってしまったからだったはず。
どのような事を書かれたのかはわからないが、それは誤解だった。
しかし、彼女は結局転校してしまうのだ。
俺はどうにかしてそれをとめる。
俺の癒しを奪われてたまるものか。
しかし、原作の長谷川さんと今の長谷川さんはかなり立場も、性格も違うはずだ。
もしかしたら、女主人公に対してコミュが発生しない可能性もあるのかもしれない。
そうなると、
「これでよし、と」
どうなるんだろうか。
「誰もいないのかな?」
女主人公はサインし終わったようだ。
原作通りなら、岳羽さんが「誰!?」とか言っているのだが、今回は俺が。
スッと彼女の後ろに近づく。
ポケットに夜は常備しているナイフを抜く。
まぁ、今回はただのペーパーナイフだが。
「誰だ」
彼女の首筋にピタリとナイフを当てて聞く。
「え?・・・ひっ!?ちょ、ちょっと!ち、違う!怪しい者じゃありません!!」
「・・・」
暴れようとする彼女の左腕をとり、ひねり上げる。
首筋のナイフは離さないまま。
「あまり暴れるな。思わず手が滑りそうだ」
「ひっ!・・・な、なんで・・・」
「お前は誰だ?一体なんの目的で
———カチリ
影時間が終わる。
「彩!何をしている!」
「何って・・・尋問?」
「もう手を出したのか!?そんなに密着して!何をするつもりだったんだ!?」
「ぇ?・・・あーいや、この子がいきなり寮に入ってきたから」
俺は手をパッと離すと、女主人公から離れる。
「む、そうか。私の説明不足だったな。彼女は今日からこの寮に住むことになった」
桐条先輩は、自己紹介を勧めるように女主人公に目を向ける。
「え、えっと、あの・・・稲城遥です」
聞いたことのない名前だ。
(※当たり前です)
「ふ〜ん。この子って、もしかして?」
「あぁ、そうだ。前もって言っておくべきだったな」
「あの!すいません」
稲城が声を上げる。
「あなたは一体誰ですか?」
聞いてきたのは二人ではなく俺の名前。
さっき俺に脅されたせいか、その目にはすこし恐怖が伺える。
「俺は琉峰彩。月光館高校2年生。さっきは脅しみたいなことしてゴメンね?でも安心してよ」
さっき隠したナイフ、ペーパーナイフを取り出して言う。
「これペーパーナイフだから」
ペーパーナイフでも俺がやろうと思えば人を殺すことはできる、というのは言わないほうがいいだろう。
「そ、そういう問題じゃありません!た、確かに予定の時刻よりは遅れて着ましたけど、それだけでこんな対応されなきゃいけないんですか!?」
男主人公とは違って女主人公は割と活発であるとは聞いたことがある。
が、
これほどマシンガントークをするようなキャラだったとは意外だ。
「これがこの寮での挨拶なんだよ」
(※違います)
「そんなことより、転校生ってことになるのかな?」
新入生であるならば、もっと早くに寮に入っているはずだからだ
それにも関わらず、途中で寮に入ってきたということは彼女は2年生以上の転校生なのだろう。
「荷物はすでに部屋に運んである」
(一体いつの間に・・・)
今日入れられたのだろうか。
俺はちゃんと男主人公と女主人公かを見分けるために、寮の2階の階段のところで伊織と一緒に話していたはずだ。
だからその時間帯に荷物を入れにきていたらわかるはず。
となると、俺がそのにいるより前。
もしかしたら学校に行っている間に入れられたのかもしれない。
それならば納得できる。
しかし、問題が発生してしまった。
彼女の俺に対する第一印象は最悪になってしまった。
まぁ、主人公に手を出す気は元々ないが、女の子に良く思われないというのは結構悲しいものがある。
どうせこの2年生のうちだけなのだが、彼女の及ぼす影響は尋常ではない。
なんていったって、世界が終わりかけるのだから。
「わかりました」
「彩、案内してやれ」
「え?先輩は?」
「私は明彦が帰ってくるまでここで待機していなけばならない。ちなみに彼女の部屋は暗超の向かいだ」
「・・・いま先輩寝てますよね?」
嫌な予感しかしない。
あの人何故か、ある程度はなれていても俺の存在に気づくのだ。
「まぁ、『今』はな。・・・あぁ、それと」
「はい?」
「送り狼にはなるなよ?」
「・・・先輩使い方間違ってません?」
俺はため息をついて、女主人公の方を向く。
「じゃ、ついてきて」
「・・・はい」
ジーっとこっちを見てくる。
やっぱり最初にナイフを突きつけたのは間違いだったのか。
それとも腕を固めたことだろうか。
もしかすると、ちょっとドスの聞いた声で言ったのが間違だったのか。
「2階は男子ね」
「はい」
「3階は女子、で4階は会議室だから」
「わかった」
「で、君の部屋はこの廊下の一番奥の、右の方ね」
「こういう時って普通、部屋の前まで送ってくれるんじゃないの?」
「・・・」
俺はふぅ、と息を吐き出して廊下を歩き出す。
「こ、ここだ」
なんとなく声が震えている俺。
「?どうしたの?」
「い、いやぁ、じゃ、明日はたぶん岳羽さん、あ、隣の部屋の子ね、が向かえに来てくれると思うか
———バタン
「彩君!」
「うぉぉ!?」
腰にいきなり衝撃を感じる。
「どうしたの?こんな夜中に、もしかして・・・私を襲いに?」
「ち、違うから、離さんかい!」
腰に抱きついている先輩をなんとか引き剥がそうと奮闘していると、
「彩く〜ん。彩君彩君彩君・・・あれ?誰、こいつ」
「あー、えっと転校生」
「・・・そう」
先輩はジッと彼女の方を睨む。
「何ですか?ていうかあなた誰?」
彼女の方もいきなり睨まれてイラっときたのか、きつい言い方だ。
「暗超楓・・・3年・・・彩君に手出したら殺す」
「・・・稲城遥です。2年・・・彼氏さんなんですか?」
「違うよ。夫だよ」
「違う違う」
「彼は否定してますよ?一人善がりなんですね・・・フッ」
何を思ったのか、彼女と先輩の間に火花が散った。
「じゃ、じゃ俺はこれで」
ただならぬ雰囲気を感じ、俺はダッシュで逃げた。
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