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I want BRAVERY

作者:清海深々
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5話 The Origin



 ついにやってきた。

 私がこの世界の『遙』になってから5年の月日が流れた。

 精神年齢だけを見れば34歳。

 あまり気にしてはいないが、もう三十路を超えてしまった。
 まぁ、今の体はまだピッチピチの17歳なのだけれど。

(でもでもでもぉ!この世界なら逆ハーできちゃうんだよね!)

 逆ハー。
 所謂、『逆ハーレム』の略称だ。

 私がこの世界に来た目的は全てそれなのだ。

 どうせ全部終わればリセットになるに違いない。

 つまりは好きなだけ逆ハーを楽しめるというわけだ。

(ムフフフフフ。誰からにしよっかなぁ)

 早くも頭の中では妄想が始まる。

 正直、今考えてみると別に12歳の頃に憑依する必要なんてなかった。
 どうせこの体の人格の記憶を受け継げるなら、今の時期にしてもよかったかもしれない。

 前の、というかこの体の元々の性格というものに合わせるなんていう努力も転校さえしてしまえばいらないことだ。
 この明るい性格と、自分の元のあまり社交的ではない性格はあまりにも違いすぎた。
 それゆえにかなり苦労した覚えがある。

(全く、なんであんなに友達多いのよ。しかもゲームの話なんて誰もしないし)

 そう。
 私は根っからのゲーマーだ。

 前世ではかなりやり込んでいたという自負がある。
 だから私の中での知識はほとんどがソレなのだ。

 周りの女子のする、ファッションの話や面白い番組の話なんて全く興味がなかった。
 特に小学生の頃は、誰々君が好きだとかなんやらという話では全く付いていけなかった。

(天田君はともかく、私があんな餓鬼に欲情するわけないでしょう)

 小学生の男子といえば、下品なことを言って笑ったり、ちょっと気になる女子をイジめたりなどと、かなり低俗だった。

(今考えれば、私結構モテてたのかな)

 わりと男子にちょっかいを掛けられていたことを考えると、やはりこの顔はイイんだろう。

 まぁ、どうせこっちに転校するってわかってたし。

 とにかく今日から私は『ペルソナ3ポータブル』の女主人公になる。
 1年しかないからこの1年を目いっぱい楽しむ。

(ゲームでは全くなかったけど、頑張ればあんなことや、こんなことまで・・・キャフッ♪)

 なんて妄想に入る。

 まぁ、あまりここでボーっとしてわるわけにはいかない。

 遅くなりすぎると影時間のタイミングが原作とズレてしまうかもしれない。

 私はそう思い、イヤホンから流れる曲を変えながら電車に乗るために改札を通った。











(ここか)

 寮のある駅巌戸台商店街に着いた。

 改札口から出た時、突然イヤホンから流れ出る音楽が止まった。

(フフ。時間ピッタリね)

 内心ほくそえみながら、私は周りを見渡す。

 緑色の空。

 棺桶のオブジェクト。

 ところどころにある血溜まり。

 まさに、

(影時間!)

 内心ワクワクが止まらない。

 原作開始の時間になればこうなるとわかっていた。
 それでもやはり興奮せずにはいられない。

 私自身に適正があることは端からわかっていた。
 それなのにも関わらず、今までには影時間を体験したことはなかった。

 たぶん、月光館学園周辺でなければならないのだろう。

 桐条グループの実験の失敗でこうなったということは、原作からも知識としてすでにある。
 そしてその実験の失敗の影響範囲がこの地域ということなのだろう。

(うふふふ。ここからよ、ここから私の物語が始まるのよ!)

 当たり前のことだが、影時間の中人の気配はない。
 そしてシャドウも見当たらない。

 私は地図を片手に原作の寮へと向かう。

(最初に会うのは誰かな?真田先輩?それとも伊織かな?)

 そこで私は思い出す。

(あ、違った。出迎えはあのビッチ岳羽だ)

 思わず思い浮かべた原作の女キャラに舌打ちをする。

(確かあのブス、最初はペルソナ召還するのチキってる奴よね)

 原作で最初に出会うのは岳羽ゆかりという女の子だ。
 彼女のイメージカラーはピンク。
 冬の制服ではピンクのセーターを着ていて、夏服ではそれを腰に巻いている。

(あれ、お洒落だと思ってんのかな?ピンクをアピールする女って・・・なんかウザくない?)

 きっと前の世界での私のイメージカラーは黒だっただろう。
 しかし、今の私は赤。
 中身と外見の不一致が私を苦しめる。

(はっ!そうだ。これを武器にすればいいのよ・・・時に憂う顔を見せる女、いいわ!これイケル!)

 すべては男を落とすため。
 前の私は男と付き合ったことはないが、高校生なんてヤリたい盛り。
 ちょっと気がある風を装えば、すぐに落ちる。

(まぁ、岳羽と桐条さえ邪魔しなければ、だけどね)

 そう、これが問題なのだ。

 ゲームとこちらの世界の相違点。

 それはゲームでは見られなかったイレギュラー。

 たとえば、もし私が真田先輩と付き合わなかったら、彼は桐条と付き合うかもしれない、ということだ。

 そしてあることに対する対策も立てなければならない。
 それはどうやって股を掛けるかということだ。

 ゲーム内でなら掛け放題だった。
 しかし、こちらではそううまくはいかない。

 これは大きな問題なのだ。
 この問題がある分、おおきなメリットもある。
 それは、

(ガンバレば原作キャラと肉体関係を持つことも・・・キャハッ♪)

 一人で盛り上がりながら、二股以上を掛けるための対策を練る。

 方法は3つある。

 まず1つ目。
 これは一番現実的だ。
 恋人になったときと、なる前とで私の対応が変わらなければバレはしない。
 ようするに、『スキンシップの激しい』子になればいいのだ。
 これならば、浮気現場、ヤッテる最中ではなく、デートとかの最中を見られてもごまかせる。

 2つ目。
 これはあまり現実的ではない。
 それは、完全に隠し通すことだ。
 これは難しいだろう。
 ほぼ毎日寮で顔を合わせるのにどうやったら隠せるのだろうか。
 解決法としては、『このことは皆には秘密だよ?』とでも言っておけばいい。
 理由は恥ずかしいから、とか他のことも友達でいたいから変に気を使って欲しくない、とか。
 案外これが一番イイのかもしれない。

 最後に3つ目。
 公言する。『私、一人の男じゃ満足できないから、逆ハーします。いいよね?受け入れて』って。
 なんてビッチ発言。これはビッチ岳羽以下だ。
 正直ハーレムを認めさせるというのはかなり難しい。
 よく小説でハーレム物を読むこともあったが、あれはない。
 ありえない。
 正直女の立場から言わせて貰うと、無理、その一言に尽きる。
 自分の愛している人が他の人も愛している、なんて受け入れられない。
 だから、この3つ目の案は正直無理だ。

 結論としては、一つ目と二つ目の一部を採用という形になるかな。
 『普通に抱きついてきて、手を握ることにも抵抗のない天然の女の子』でいくしかない。
 関係が実際になれば、こんどは『皆には秘密だよ?』でいく。
 これで完璧だ。

(あぁ、そうだ・・・そういえば、チドリ。お前だけは駄目だ)

 結論ができたこところで、思考するのをいったん止め、現実に意識を向ける。
 そこにはこれか一年間過ごす月光学園の寮があったのだから。

「ふぅ・・」

 自分でも不思議だが、どうやら緊張していたみたいだった。
 大きく息をはいて、寮の門の扉を掴み、開けた。
















 
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