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久遠の神話

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第百八話 最後の戦いその九

「約束を守らないんですか?」
「それは」
「それはおかしいです、上城君は確かにお願いしました」
 この戦い自体を終わらせるだ、それをだというのだ。
「ですからもうです」
「この戦いを終わらせろと」
「そうです、絶対に」
 それで、というのだ。
「貴女はそうしなければならない筈です」
「私もそう願っていました」 
 声は逃げた、言葉でだ。
「是非、この戦いで力が集まれば」
「けれど集まらなかったからですか」
「あと僅かでした」
 僅かでもだ、集まらなかったというのだ。
「ですから」
「だからだっていうんですか」
「そうです、あと一度だけの戦いで」
「けれどもう」
「この戦いは終わりです」
 あくまでそういうことにしようとする声だった、『今の』戦いはというのだ。
「ですから」
「いえ、違います」 
 樹里もこう言うのだった。
「それは」
「そうです、お姉様」
 ここでだ、聡美も声に言った。
「お姉様は間違っておられます」
「貴女もそう言うのですか」
「そうです、ですから」
 だからだというのだ。
「私はです」
「貴女は」
「もう躊躇しません」
 それで、というのだ。
「若しお姉様が約束を破られるのなら」
「今、ですか」
「弓矢を取ります」
 声の方をだ、聡美も見上げて言うのだった。
「そうします」
「貴女と私が」
「はい」
 そうするとだ、尚も言う聡美だった。
「そうしますが」
「くっ・・・・・・」
「それで宜しいですか」
「若しそうなれば」
「その時はです」
 ここでだ、智子と豊香も声に対して言ってきた。
「アルテミスとお姉様が闘うのなら」
「私達もセレネー姉様と戦います」
「お姉様であろうとも」
「そうします」
「どうしてもですか」
 聡美だけでなく二人にもだ、声は問うた。
「貴女達は私と」
「はい、例えそうしても」
「私達はお姉様をお止めします」
「必ず」
 こう言うのだった、そして。
 三人共だった、人間としての姿即ち現代の日本の服装から。
 神話の服になった、神々の本来の姿に戻った。
 三人共服は古代ギリシアの薄い金と銀に輝く服だった、丈は膝までであり足にはサンダルがある。聡美はその手に銀の弓矢を持ち。
 智子鎧兜に身を包だ、手に槍と盾を持っている。豊香もその手に赤い杖を持っている。
 その姿になってだ、月に対して言うのだった。
「私達は覚悟しています」
「若しお姉様が戦いを続けられるのなら」
「私達がお姉様をお止めします」
「そうですか、それでは」
 三人の女神達がそう言うのならだった、声は。
 不意に満月の前に浮き出る様にして姿を表した、金と銀に輝く薄い生地の膝までの服は彼女達と同じだ。
 だが外見が違う、聡美に似ているが彼女を幾分か大人にさせた感じだ、銀の髪と緑の瞳も同じだがそこが違う。
 その彼女がまさに月を思わせる幻想的でありそれでいて潔癖さを持っている美貌で姿を現してきた、そしてだった。
 宙に上がってきた聡美達と対峙しながらだ、こう言った。
「私もまた」
「遂に、ですね」
 聡美はその声の主、セレネーと向かい合いながら言った。 
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