万華鏡
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第八十話 本番その五
「そうしてたわ」
「それが出てるな」
「速いのね」
「持久力もあるな」
それも、というのだ。
「いい感じだよ」
「そうだったらいいけれど」
「まあ今はな」
「今は、よね」
「完走しような」
それは絶対に、というのだ。
「何があっても」
「うん、それでだけれど」
「彩夏ちゃんと景子ちゃんは多分な」
その二人は、というと。
「後ろにいるよ」
「そこになのね」
「あの娘達も大丈夫だよ」
「そうね、それに里香ちゃんも」
「あの娘だってな」
一番不安そうだった彼女もだというのだ。
「前に本番と同じ距離完走出来たんだ」
「だからよね」
「ああ、大丈夫だよ」
完走出来るというのだ。
「絶対にな」
「そうよね、出来るわよね里香ちゃんも」
「絶対にな」
それはというのだ。
「安心していいよ、ただな」
「ただって?」
「いや、あたし等学園内走ってるけれどな」
それで、というのだ。
「慣れてることは慣れてるけれど」
「それでもよね」
「ああ、広いよな」
その学園内がというのだ。
「つくづくな」
「確かに広いわね」
「こんな広い学校滅多にないよな」
「他にはね」
それだけ広いというのだ、八条学園内は。
「ないと思うわ」
「だからマラソンコースもな」
こちらもだというのだ。
「目茶苦茶長いよな」
「女の子のランニングコースとしてはね」
「相当だよな」
「全くだな」
こうした話をしてだった、そして。
その走る中でだ、二人で学園内の様々な場所も見た。
水族館や動物園、植物園にだ。
博物館に美術館、図書館と学園内の様々な場所を見た、そうして。
琴乃はそうしたものを見ている中でだ、隣を走っている美優にこんなことを言った。
「ねえ、走ってるのは辛いけれど」
「それでもだよな」
美優もその琴乃にこう返す。
「見ているとな、学校の中」
「次は何を見ようかとか思って」
「進めるよな」
「そうよね」
二人でその景色を見つつ走りながら話した。
「自然とね」
「グラウンド走るよりもよくね?」
美優はこうも言った。
「これって」
「確かに、グラウンドって何の愛想もないけれど」
「このコースはさ」
「何か走ってても面白いわね」
「ああ、そうだよな」
「これならね」
このコースを走っているととだ、琴乃は語った。
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